透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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長くなりました、でもこんぐらいしないと面白くないので…‥お許しを。

とにかく見どころがたくさんなので、ぜひ最後までご覧ください。

それでは本編へ……どうぞ‼︎


マッシュ・バーンデッドと聖女バルバラ

 

 

 

 秤アツコ奪還・並びにベアトリーチェ討伐を目的とした作戦を開始した、マッシュ一行。

 ここから協力してユスティナ聖徒会との戦闘を開始―──

 

 

 

 

 

「――光よォッ!!!」ドォォォォォォォォォン!!!!!!

 

 

 

 

 

──と同時に、アリスが光の剣・スーパーノヴァから光弾を発射した。

 秒速2000m──音速の6倍に達する"光の刃"が、前方を塞いでいたミメシス達をその武器もろとも消し飛ばし、マッシュが進むための突破口を作り出した。

 

 

 

 

「うわぁっ!?本当になんなんですかあの子は!?」

 

「完璧で究極な勇者、天童アリスです!」

 

「いやぁ〜〜結構驚いた……ちっちゃい体なのによくやるねぇ」

 

「本当にね……ふふっ、心強いわ」

 

(いやお前達も人のこと言えんだろ、あの光弾の衝撃と閃光で敵味方両方の目が眩んだのに、何故お前達は普通に立ったままなんだ)

 

「……思い出した。あの光は、以前マダムを襲った光だった――あの子の、攻撃だったんだ」

 

「マダムを襲った……あ、もしかして僕が弾き返したアレ?」

 

「…………もう何もツッコまないからな」

 

「な、何はともあれこれで道が開けました……皆様、行きましょう!!!」

 

 

 

 

 

 サクラコの掛け声と共に、マッシュ達はスーパーノヴァが開いた"光の刃"の飛跡に向かって直進した。ミメシスが攻撃を繰り出してくる前に、アルとヒヨリ、そしてゲヘコがミメシスの頭を撃ち抜いていき、その動きを止める。

 

 

 

 

 

「邪魔だァッ!!!!」

 

「亡霊はおとなしく眠ってな!!!!」

 

 

 

 

 撃ち抜かれてよろめいた複製に対して、ネルとツルギが近接戦を仕掛け、銃弾や蹴り、銃床での打撃で次々と彼女たちを蹴散らしていく。

 敵へ近づいた二人を狙う別の使徒からの攻撃は、ホシノとミネが防弾シールドで防御し、一発たりとも攻撃を通すことはない。

 

 

 

 

 

「後ろは任せて」

 

「―──はっ、こりゃ心強え」

 

「ツルギさん、救護はおまかせを」

 

「頼む」

 

「止まらず進もう、スミレちゃん、ミカさん――連撃です」

 

「OK!!!!!」「お任せを!!!!!」

 

 

 

 

 

 スミレ・ミカ・マッシュがその身体能力を生かし、とんでもない速度の連撃を叩き込み、立ち塞がる信徒達を蹴散らしていく。

 無数の使徒で塞がっていた街道は徐々に開けていき、遂にマッシュとスクワッドがバシリカに向かうための突破口が確保された。

 

 

 

 

「――先生、ここは私ら(シュークリームクラブ)に任せて先に行ってくれ!!」

 

「でも」

 

「多分私らは、こいつらの相手で限界だろうし……足手纏いに、なると思うんだ……!」

 

「こ、これでも!私、戦えるんですよ!」

 

「行ってくれっす、先生ッ!!」

 

「―─仕方ない、ここは指揮官が必要だ。このマコト様も残ってやろう」

 
「あっ、じゃあ私も〜」
 
「では私も」
 
「……私も残ろう」

 

「アズサさん、アンタは先生たちと一緒に先に行ってくれ!」

 
「だ、だが……!」

 

「その姫様はさ、アンタの家族でもあるんだろ───だったら、迎えに行ってやりなよ。ここはアタシらに任せとけって」

 
「……!」

 

「───みんな」

 

 

 

 

 道に残っている残党達を、シュークリームクラブ達とマコト・アスナ・スミレが残り、対処をすることに。アズサも残るつもりだったが、モブコがすかさずマッシュと先に向かうよう告げ、その背中を押した。

 ここで「でも……」と口ごもり、仲間を置いて進むことに消極的なままだったのが、昔のマッシュだったが……アズサと顔を見合わせたマッシュは、仲間たちへ振り返って決然と告げた。

 

 

 

 

「――任せたよ」

 
「───ありがとう、皆」

 

「っしゃあ!!!!先生から任せられたんだ――気合い入れていくぞぉぉ!!!」

 

「「「「「「お───────っ!!!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 彼女たちを信じ、任せることにしたマッシュとアズサ。二人とアリウススクワッドが目指すのは、ベアトリーチェがいる本拠地。辿り着くまで後ろは振り返らない……決して。

 

 

 

 

 

「マコトさん、指示頼んだぜェ!」

 

「私も従うよ!ご主人様のお友達なら信頼できるし」

 

「──命令を、リーダー」

 

「キキッ、いいだろう……一人で行動をすることは許さん、常に二人もしくは三人で行動しろ。先生の背後を守るのは我々だ、針一本たりとも通さないつもりで挑め。そして一人も死ぬことは許さん――必ず全員、生きて帰るぞ!!!!

 

「「「「「「「オッシャァァァァァ!!!!」」」」」」」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ベアトリーチェの本拠地、バシリカへ向かっている最中。先に通った道とはまた別の場所で、また大量のユスティナ信徒が現れていた。

 

 その中には、黒い礼装を纏ったこれまでの青白い使徒だけでなく、恐らくベアトリーチェの魔法とゲマトリアの技術で強化されたであろう未確認個体も多く混じっていた。

 

 

 

 

 

「っ…まだ、いるのか…!?」

 

「徹底的だな……そして、普通ではないものもいる」

 

「頭の羽毛に、多眼の複製……ベアトリーチェがまた何か細工したね」

 

「恐らくは強化されている、気を引き締めよう」

 

「んじゃ、おじさんが先に行くね〜!」

 

 

 

 

 

 戦場に似つかわしくない、なんともゆるい雰囲気で飛び出していったホシノだったが、相手に飛びかかるとともにその姿は一変した。

 一瞬の隙も余韻もなく、愛銃とサイドアームを組み合わせた容赦のない連撃で使徒達を薙ぎ払っていく。

 

 

 

 

「負けて、られねぇなぁ!!」

 

「サクラコ、ミネ、援護を頼む…!!」

 

「おまかせを!」

 

「いざ、救護を開始しますっ!!!」

 

「ん……ホシノ先輩ばっかりに、いい格好させない」

 

 

 

 

 そのホシノに遅れを取らないため、ネル・ツルギ・ミネ・サクラコがミメシスの大群を攻撃。

 

 飛び上がったネルがパラベラム弾を雨霰と降らせ、よろめいた使徒たちをツルギが真正面から散弾で吹き飛ばす。二人の援護射撃はサクラコ・ミネ・シロコの3人が行い、大隊規模で集まっていた使徒は次々とその数を減らしていく。

 

 

 

 

 

「っとと―…わっ!?」

 

『―──!!!!』ガシッ!

 

(力が集まって……―っまずい!!!)

 

 

 

 

 

 その中に紛れてホシノに近づいた赤いミメシスは、ホシノの攻撃をわざと受けながら、彼女の体を抱きかかえるように拘束した。

 小柄な体が地面から浮いたとき、ミメシスは赤いエネルギーを全身に蓄積し――ホシノもろとも自爆しようとした瞬間、ミネがその個体を盾で強引に殴り飛ばす。

 

 

 

 

 

「───救護!!!」ガンッ!

 

『………!!』ドゴォォォン!!

 

「ありがとう〜ミネちゃん……流石にあの攻撃は予想外だったなぁ」

 

「お構いなく………それにしても…死者の肉体を、まるで道具のように──どこまで命を愚弄すれば気が済むのですか!?」

 

「あの赤い個体は特攻兵器と考えた方がいいだろう」

 

「……チッ、胸糞悪いな」

 

「……ほんと、趣味が悪い」

 

「と言うわけでさ先生……あれの相手は私達がやるよ。先生達は先に行って」

 

「――わかりました」

 

 

 

 

 

 赤い個体が多く闊歩する中央区に残ることにしたのは、ホシノ・サクラコ・ミネ・シロコ・ツルギ・ネル・ヒナの計7名。マッシュとスクワッドは先程と同じように、彼女らに中央街道での戦闘を任せ、一刻も早くアツコのもとへ向かうことにした。

 

 

 

 

 

「――─サオリちゃん、それとアリウスの皆」

 

「小鳥遊ホシノ……だったか、なんだ」

 

「大事な人、絶対に助けなよ……何があっても」

 

「っ――あぁ、勿論だ……!」

 

 

 

 

 

 ホシノの言葉に強く頷いた後、サオリたちはマッシュと共に走っていった。それを見届け、少し微笑んだ後……表情を本気の顔に変え、告げる。

 

 

 

 

「ならばよし……じゃあみんな、ド派手に行くよ」

 

 

 

 自分と同じような思いをさせないためにも、先生の邪魔をさせないためにも―─ここで、ユスティナ信徒必ずを食い止め、全員で生き残って見せる。

 ホシノは強く、心に誓うのであった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「こちらの数も、減ってきましたね」

 

「なんの問題はありません、我々の勝利条件は先生があの女に勝ち、姫なる者を救い出すこと……それだけを気にしていなさい」

 

「!!──―みなさん伏せてくださいっ!!」

 

『!!!』

 

 

 

 

 

 バシリカ付近に到達したマッシュ達は突然何者かの襲撃に襲われ、それを察知したアリスはスーパーノヴァの砲身を展開し、襲撃者を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

「こ………この人って…!」

 

「……あの時の…ベアトリーチェが作った、人形」

 

「岩の人形……ほ、本物の忍術ですか…!?」

 

「いや、ベアトリーチェはこれを魔法だと言っていた……自分が手に入れた、最高の物だと」

 

「多分、これは魔物──ゴーレム、ってとこかな……それが、あんなにいると」

 

 

 

 

 

 

 マッシュ達の視線の先にいたのは、岩でできた巨体に軍服を着込んだ、上級将校のような格好をしている人形(ひとがた)の怪物の群れだった。人間離れした巨体を除けば、その体格の外観は大男そのもの………サオリたちには見覚えがあった。

 忘れるはずもない、その姿はかつて、自分たち(アリウス生徒)に暴力を振るった、ベアトリーチェの配下だった大人と全く同じだった。

 

 

 

 

 

「数は……軽く数百体を超えています!」

 

「いちいち相手をしていたらキリがありませんね」

 

「――ならば、ここは私に任せて……あなた様は、その者達とともに先へ」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!いくら貴女でもあの数の敵を相手するのは無茶よ!」

 

「これは私の覚悟であり、私の責務です……外野にとやかく言われる筋合いはありません」

 

「………」

 

 

 

 

 

 マッシュを悲しませた罪、それの償いとでも言うのだろうか……

 ワカモは狐の面を着けながら前に踏み出し、銃を構える。今まで一人で全てを片付けてきたのだ、今更になって多勢に無勢であることを気にすることはない……ワカモは孤独だったのだから――
 しかしそれは、今までは、という話だ。

 

 

 

 

「……何をしているのですか、イズナ。貴女は、先生をお守りすることが使命だったはず」

 

「はい――でも忍は、仲間を見捨てたりなんてしません」

 

「アリスも同行します!!勇者が助けるのは、パーティメンバーだけではありません!!」

 

「私も残らせてもらうわよ、援護射撃は必要でしょ?」

 

「貴女達……」

 

 

 

 

 

 ワカモと共に残ると決めたのはイズナ・アリス・アルの3名。

 ワカモは、マッシュ以外はどうなってもいいと考えている、そんな自分のためになぜ残るのか……それが不思議で仕方なかった。

 

 

 

 

「私一人で、十分なのです……余計な真似は、しないでください」

 

「あら、そう。なら勝手にしてちょうだい――私は勝手に貴女を助けるから。貴女が私のことをどう思っていようが関係ない……マッシュの友達は、私の友達……ならその友達を、私は守るだけ」

 

「…!」

 

「今まで我慢してきましたけど……もう、無理です!!アリスは残って、仲間を守ります!!勇者として、仲間を置いて進むことなんてできません!」

 

「イズナは主殿に永遠の忠誠を誓った忍……そして、ワカモ姉様の、妹分!!姉を守ることも、主殿に仕えるイズナの使命です!!」

 

「イズナ……」

 

「だから、一緒に戦います――戦わせてください、姉様!!!」

 

「………―ッ…勝手に、しなさい」

 

 

 

 

 

 出そうになる涙を堪え、武器をゴーレム達に向けて構えた。

 準備を整えたワカモは、マッシュの方を向いて、一言だけ告げた。

 

 

 

 

 

「敵は、もうすぐそこです……――行ってください」

 

「ありがとう――みんな気をつけてね」

 

「ええ、先生…いや、マッシュ君はマッシュ君の仕事をしてらっしゃい!(──やだ、今の私……かっこいい!)」

 

「えーと、こう言う時は……『ここは私に任せて先に行け!』ってやつですね!」

 

「主殿、サオリ殿……皆さん、どうかご武運を…!!」

 

 

 

 

 

 ワカモ達は、ゴーレムの軍団に向かって走り出した。その姿を見ながら、マッシュ達はバシリカへと足を運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――忌々しい……!ミメシスやゴーレムを顕現させるのにも莫大な魔力を消費するというのに……いえ、私にはまだ()()があります……それさえ、ここで使えば…!!」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

アリウス自治区・バシリカ内部。

 

 

 

 炎のように赤く派手な装飾に、闇のように黒く暗い装飾を混じえて施された聖堂。

 本当に神聖な儀式で用いられてきたのか疑問に思えるほど不気味であり、色合いもまた生き血のようだった。
 生物の体腔を思わせる生々しさと不気味さに、立ち入ったマッシュ達は思わず眉をひそめる。

 

 最奥には何かオブジェのようなシルエットが見えるが、聖堂内は明かりが乏しく、よく見えない。

 

 

 

 

 

 

「……敵、いませんね」

 

「それにここ……やけに綺麗だね、アリウスなのに」

 

「自分を祭り上げる神聖な祭壇だもん、そりゃここまで綺麗にするよ」

 

「……不気味だ」

 

「確かに…それになんか、趣味が悪くないですか?全体的に赤いと言うか……なんか暗い装飾しかないような」

 

「――子供などに理解できるはずもありませんので」

 

「うわ出た………ねぇ、みんな戦ってるのにここで傍観とか、恥ずかしくないの?」

 

「上に立つものはいつでも状況を俯瞰し、大局的な状況の変動を見極めるものです」

 

「……貴女はちゃんと強いのにね、笑えるよ」

 

 

 

 

 

 

 いよいよ、その姿を表した諸悪の根源――ベアトリーチェ。

 状況を考えれば確実に追い詰められているはずなのだが、どこか余裕を含ませた表情で、勝者を気取った雰囲気を醸している。

 

 

 

 

 

 

「ベアトリーチェ…!姫は、アツコはどこだ!」

 

「そう焦らずとも……じきに会えますよ、あの世でね」

 

 

 

 

 

 ベアトリーチェがそう嗤った瞬間、聖堂内に赤い光が差し込み、聖堂の最奥にある物体の正体が判明した――

 

 それは、ステンドグラスの前に陽炎のごとく現れた、奇妙なオブジェクトの前に配置されている十字架に掲げられ、贄のように磔となったアツコの姿

 マスクで顔を覆われ、インナー姿で真紅の茨に絡めとられた彼女は、ぐったりとした姿のまま動かない。

 

 

 

 

 

「姫…!?」

 

「姫ちゃん…!!」

 

「そんな……っ!?」

 

「姫……っ、ほんとに、趣味が悪い!!」

 

「マッシュ・バーンデッド……貴方は私にとっての壁、そして害悪……いついかなる時も貴方の顔が脳裏に現れ――腹が立って仕方ないのですよ」

 

「こっちだってそうですよ……だからもう、終わりにします」

 

「ええ、是非ともそうしましょう………――あなた達を消すことでね!

 

 

 

 

 

 ベアトリーチェがフィンガースナップを行うと、ベアトリーチェの周りを赤いエネルギーのバリアが覆う。さらに目の前……アーチを組み合わせた高い天井を突き破って現れた、一つの存在。

 

 それは通常の生徒の倍近い背丈に、巨大な重火器を軽々と担ぎ、特徴的な黒衣とベールを身に纏った漆黒の聖女。

 

 

 

 

 

「───なんじゃありゃ」

 

聖女バルバラ(Barbara)……貴方を抹殺し、私を守る――最強の盾ですよ」

 

「っ、この、圧力……!?」

 

「な、なんですかこの、肌が粟立つ様な……ひ、酷い寒気が――……!?」

 

「あれが、マダムの奥の手……?あんなの、私達で相手に出来るの……?」

 

「……マッシュ君、気をつけて……あれはバルバラ。ユスティナ聖徒会において最も偉大と謳われた聖女―──つまりは、トリニティ創立以来の歴史の中で一番強いって認められてた人だよ」

 

 

 

 

 

 バルバラは、両手に装備した巨大な重火器をマッシュたちへと向ける。

 バルバラの背後には、まるで見世物を楽しむようにその光景を見ているベアトリーチェ。

 

この先どうするかは――もう明白。

 

 

 

 

 

「サオリさん、アズサちゃん……ちょっと下がっててください」

 

「ッ、何故だ!?アイツは只者じゃない、私たちも…!!」

 

「いいから――ここはさ、私達に任せてよ」

 

「……あんな奴に、勝てるのか?」

 

「勝てるよ、だって……ミカさんと僕のコンビだから」

 

 

 

 

 

 マッシュとミカは自信満々に前に出ると、構えを取る。サオリ達は邪魔にならないよう、少し後ろへと引く……ベアトリーチェへ直接攻撃したいところだが、今持っている武器では、あのバリアを突破できそうにない。

 

 

 

 

「バルバラ……今の貴女は…ただ、操られてるだけのお人形……そんなの、かわいそうだよね……だから私達は、貴女のために祈って

 

「貴女のために――貴女を倒します」

 

『――!』

 

 

 

 

 その瞬間、たった一瞬だが確実に、バルバラに滲んだ動揺が見えた。

 神聖なるバシリカで、最強の聖女と脳筋コンビのバトルが、今……始まった。

 

 

 

 


 

 

 

 

「フンッ‼︎」

 

 

 

 

 戦闘が始まり、真っ先に攻撃を仕掛けたのはもちろんマッシュ。真っ直ぐ、力の入った正拳突きをバルバラの顔に向けて放つ。

 

 

 

 

(堅っ、アビドスで戦ったあの蛇みたい)

 

『…』スッ

 

「マッシュ君、ジャンプだよ!!」

 

 

 

 

 だが攻撃を食らったバルバラは、顔を覆うガスマスクに少し傷がつく程度で終わり、すぐに右腕の大型自動擲弾砲(オートマチックグレネードキャノン)をマッシュの腹に向ける。そうはさせないとばかりに、ミカはマッシュに大声で叫び、ジャンプによる回避を指示する。

 

 そして間髪入れず、持っている愛銃─Quis ut deusに神秘を注ぎ込み、バルバラを攻撃した。紫色の光弾が綺羅びやかな飛跡を描いてバルバラに直撃し、バルバラをスタッガー状態に追い込む。

 

 

 

 

「ナイスミカさん――フンッ!」

 

 

 

 ミカがよろめかせたバルバラの脳天に向かって、マッシュは電撃のようなかかと落としを繰り出す……だがそれを、バルバラは右腕のキャノンで防ぎながら、振り抜くように上空へ弾いた。

 空中を舞う的となったマッシュに対し、バルバラは左腕のガトリング砲を構え、1000発を軽く超える弾幕を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

「ほっ、よっ、それ、よっと」

 

「青色の弾丸の上に乗り、避けて行っている!?」

 

「何それもう……なんでもありじゃん…」

 

「ねぇねぇ、私の方には構ってくれないの……かなっ!!」ビュン!

 

 

 

 

 マッシュがバルバラの弾幕を足場に、撃ち上げられる攻撃を次々と避けていくなか、ミカはバルバラに向かって飛び蹴りを放つ。

 

 

 

 

『―!』

 

「へぇ……ほんとに硬いね…!!」

 

 

 

 

 今度はバルバラが大型キャノンでミカを攻撃、それを彼女は自分の羽で防ぎながら、至近距離で神秘の弾丸を連射する。接射同然の攻撃に少しよろめきはしたものの、バルバラは健在。

 

 

 

 

「マエストロが作り上げたそれを、私はさらに自分の力で強化しました………マッシュ・バーンデッド、貴様の打撃に耐えるために」

 

「そりゃ、ご丁寧に教えてくれてありがとう――フンッ!」

 

「マッシュ君!先にあの武器をぶっ壊しちゃうよ!!」

 

「――了解…です」

 

 

 

 

 地面に降りたマッシュは勢いよく飛び出し、そのままの勢いでバルバラの持っている武器に向かってミーティアレッグを放ち、右手に持っていた大型キャノンを破壊する。

 

 

 

 

『……!!』

 

「よそ見してる場合じゃ、ないよ!!」

 

 

 

 そしてミカは、バルバラが左手に握るガトリング砲に飛びつくと、飛び抜けた腕力でそれを抱きしめながら破壊した。ひしゃげた砲身の束が砂時計のようにくびれ、千切れたベルトから砲弾がばらまかれる。

 

 

 

 

 

 

「ダブルバイセップス魔法」ミチミチ 

 

「ダブル〜――ラリアットぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 武器を失ったバルバラに向かって、二人は容赦なくラリアットを同時に喰らわせ、彼女を上空へと吹き飛ばす。そして二人はそのまま飛び上がり、二人がかりで彼女の上半身と下半身を掴んで海老反りの状態でロック

 

 

 

 

「合わせてマッシュ君!!」

 

「名付けて――合体魔法、マッスル・ツープラトンマグナム…!

 

 

 

 

 その状態のまま、二人は地面に急降下し、バルバラの体を叩きつける。

 特徴的な文様を描く床のタイルが砕け、バシリカ全体が揺れるほどの衝撃が走り、サオリ達やベアトリーチェは地鳴りを伴った振動によってよろめく。
 ベアトリーチェを守っていたバリアにも、その衝撃だけでヒビが入り始めた

 

 

 

 

「と…とんでもない技が……今、出たような……」

 

「なんで銃撃戦じゃなくてプロレスまがいのことやってるの?」

 

「っ、だがこれで―――なにっ!?」

 

「……少々驚きましたが、それだけです――バルバラ自身は、まだ活動できます」

 

 

 

 

 

 地面に叩きつけられたバルバラは、その膂力で二人の拘束から脱出するとともに、二人の腕を掴んで前へと投げ捨てた。空中で姿勢を安定させて着地した二人は、服の砂埃を払いながらバルバラを再び見据える。

 

 

 

 

「……アレ食らっても、まだ動けるんですね」

 

「流石は聖女だね……しかも」

 

『――‼︎‼︎‼︎』

 

「こっからが本力発揮かな」

 

 

 

 

 ひび割れたマスクからその顔が半ば覗いている状態で、バルバラはその絶叫をバシリカ中に響かせる。礼装の箇所が擦り切れ、血を滲ますように傷から青白い靄を漂わせた状態で、二人へと近接戦闘を仕掛けた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 鳴り響く轟音、拳と拳のぶつかり合い。互いに一歩も引かないで状態で続く、熾烈な殴り合い。ベアトリーチェは困惑していた……何故、何故、奴らはアレと殴り合って傷ついていないのかと。

 

 

 聖園ミカには顔に傷がつき始め、腕や足に擦りむいたような痕がついていたが――マッシュ・バーンデッドには全くそれがない。

 あれだけの神秘を持つ生徒が傷ついている状態で、マッシュが無傷の状態を保っている理由とは何か───

 

 

 

(――『シッテムの箱』か……!!)

 

 

 

 その謎の正体は、シッテムの箱によるアロナバリアの効果だった。マッシュはそのバリアを、戦闘前に薄く全身へ張り巡らせ、銃弾や破片からの防護をバリアに任せながら戦闘を行っていた。

 

 

 

 

「小癪な真似を…!」

 

「亡くなった人の体を好き勝手使っておいて、よくそんなセリフが吐けますね」

 

「っ、バルバラ!!貴女の力はそんなものなのですか!!?――聖女の力を、奴原に見せてやりなさい!!」

 

「ちょーっと黙っててよおばさん……早くこの人を、眠らせないといけないから…さァっ!!!」

 

 

 

 

 ミカはバルバラの顎を蹴り上げ、蹴り上げた足をそのまま下ろし、彼女の顔に向かって踵を叩きつける。すると、まるで拘束具のように顔を覆っていたガスマスクが完全に砕け、遂にその顔が露わになる。

 

 

 

 

「――終わらせてあげよう、マッシュ君」

 

「…ええ」グググッッ

 

 

 

 

 その表情は──少なくとも、これまで見てきたユスティナ信徒の冷酷な戦い方からは想像もつかない、人間味のあるものだった……

 痛みを、苦しみを、哀しみを押し殺したような、孤独で哀れな聖女の顔。少なくとも二人には、そんな顔をしているようにしか見えなかった。 

 

 

 伝えられる逸話には血生臭いものも少なくなかったが、それでも確かに敬虔に神を信仰し、現在のトリニティ設立の礎を築いた功労者たちともいえるユスティナ聖徒会。

 彼女たちもアリウスと同じように、醜い野望を叫ぶ大人の尖兵として利用され、使い潰され、死してなお傀儡として働かされ続けているのだ。
 
――ここで終わらせてあげよう。
 
 二人はその決心を固めるとともに、二人だからこそ実現できる新たな筋肉魔法を繰り出す───

 

 

 

 

 

「タッグ魔法───ジェミニ(Gemini)ストライク(Strike)

 

 

 

 

 

 二人は腕に力を込め、左右から挟み込むようにバルバラに飛び掛かるとともに、濁流のように壮絶なラッシュを叩き込む。

 

 

 

 

 

 

『──―!!』

 

「逃がさないよ…!!」

 

 

 

 

 

 跳び上がって上方に逃げようとするバルバラを逃さないよう、ミカがジャンプサーブの要領で彼女の脳天を捉え……上空から下方へと叩き落とすと、マッシュはそこに追い打ちでラッシュを仕掛ける。

 

 

 上に逃げようと、攻撃を回避し二人から逃れようとも、またミカが現れてマッシュの方へと押し戻し、終わらないラッシュをひたすらに繰り返す。

 

 

 バルバラが持つ最大の脅威は、その頑丈すぎる体……なら、その体が完全に壊れるまで、何度でも同じことをし続ける――そして、体のヒビが広がってきたところで、ミカが渾身のアッパーを彼女に決める。

 

 

 

 

 

「ミカさん、ジャンプ」

 

「うん…!!」

 

 

 

 

 マッシュは腰を落として手を組むことで足場を作り、ミカは迷わずその手に足をかける。マッシュはジャンプ台のようにミカを上空へ跳ね上げ、マッシュの腕力とミカの脚力が生み出すハイジャンプは簡単にバルバラの上昇速度を追い抜いた。

 

 ミカはそのまま、持ち上げた両手を頭上で固く組むとともに、バルバラの背中へハンマーのように振り下ろす。巨人の拳に打ち据えられたような衝撃が全身を突き抜けたバルバラは、まるで叩きつけるようにマッシュの下へ落下し──

 

 

 

 

「……AMEN.(アーメン)

 

 

 

 

 最後にマッシュは、全身全霊全力の拳をバルバラの腹に叩き込む。鋼のように重い拳が深く()り込むとともに、黒い礼装を拘束するように縛っていたベルトが引き裂かれ、吹き飛ばされたバルバラは昇天したように宙を舞った。

 

 

 

 

『―ぁ……り―――が……と……ぅ』

 

 

 

 放物線を描いて床に叩きつけられたバルバラは──どこか満足そうな、穏やかな表情でマッシュを見つめながら、光を放出して爆散した。

 

 

 

 

「ワワワワワーっ!!?」

 

「あぶねっ…」

 

「あ、ありがとうマッシュ君……ナイスパンチ!」

 

「ミカさんも、ナイスでした……あとは」

 

 

 

 

 バルバラを撃破して気が緩んでいたミカは、自身が空中にいることを完全に失念していた。ばさばさと翼を暴れさせながら、生まれたての雛鳥のように墜落してしまった彼女だが───マッシュがすかさずミカの真下に滑り込み、お姫様抱っこの形で彼女を受け止めてみせた。 

 

 一方、爆散したバルバラを目の前にしてベアトリーチェは放心し、完全なる油断を晒す……倒せるはずがない、負けるはずがない、と確信していた兵器が、憎き相手になんらダメージを与えることなく破壊されたのだ……思考が停止するのも、仕方ないというべきか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(バカな―ありえない――そんな……何かの、間違いで……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「よそ見している、場合ですか」

 

「……―っっ‼︎?」

 

「天誅」ブンッ!!

 

 

 

 

 

 ベアトリーチェが放心している隙──すなわち魔力の制御が意識の外となり、バリアの展開が疎かになったタイミングを狙って、マッシュは怒りを込めた全力パンチを放つ。放たれた拳は飴細工のようになったバリアを突き破り、彼女の顔に減り込み…バシリカの奥へと吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

ガァァァッ!!?!??――……クッ…!! よく、も…私の、顔、を……」

 

「今のはバルバラさんの分、そして次は――みんなの分だ」

 

 

 

 

マッシュは拳をベアトリーチェに向けながら、鋭く強く、宣言した。




次回・マッシュ・バーンデッドと偽りの神……ご期待ください。


ゴーレムに関しては、今まで伏せてきたベアトリーチェの固有魔法のヒントにもなっています。ただそこまで難しくない設定ですので、ご了承ください。


励みになりますのでコメントと評価…どうぞよろしくお願いします

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