言葉は不要……ただ、見て行ってください‼︎‼︎
「あれが……あれが、先生の……本気」
「……待って、私も一歩間違えたらあの状態の先生と戦ってたってこと!?」
「……私たちが戦っていたのは、全力とは程遠い状態の先生だったのか?」
「二人とも運が良かったね、とてもじゃないけどあんなの、相手できるわけないよ」
「本当に…」「戦わなくて良かった…!」
サオリやミカは、封じられていたマッシュの実力に希望を見出すと同時に、まかり間違えばその拳が彼女たちに降り注いだかもしれない事実に、悪寒と恐怖を感じずにはいられなかった。
「―――スウ……ぅ…ぁ……ぐ…」
「痛いですか、苦しいですか? ……今貴女が感じている痛みや苦しみを、アリウスのみんなは味わってきたんです」
(あの、流石にそのレベルの痛みはありませんでしたよ…?)
(殴られたり撃たれたりした事はあったけど、流石にそうなるレベルはないよ…?)
(多分苦しみのベクトルが違うと思うのだが……)
頭から血を流しながら、全身の激痛に藻掻いているベアトリーチェ。彼女の姿に、これまでの仕打ちを受けてもなお同情を覚えてしまうスクワッドの面々。ハンマーを杖の形に戻し、トレーニングウェアのポケットにしまおうとした…その時のことだった。
「愚かな――男だァ…!!」
「わっ、起きた」
「この……程度の傷…!!いくらでもファンタジムで…!!」
「ま、まずい!?先生、また回復されるぞ!!」
「もう遅い‼︎――ファンタジム‼︎」
ベアトリーチェは立ち上がるとともに再びサモンズの杖を出現させ、それを天に掲げて高らかに叫ぶ……のだが、先程とは打って変わり、負傷した肉体の回復速度があまりにも遅かった。
「な……なん…だ……なぜ、なぜ、ここまで遅い…⁉︎」
「貴女自身が、もうそこまでの体力がないって事なんじゃないですか?」
「なんだと……⁉︎」
「じいちゃんが昔『魔法を使うのにも、気力とか体力が必要なんじゃよなぁ』って言ってましたよ……いくら魔力がありふれてても、それを扱うだけの体力がなかったら、意味ないんじゃないですか?」
「――」
「これなんていうんだっけ……宝の持ち腐れ?まぁ、宝と呼べるだけの力なのかどうかは知りませんけど」
ベアトリーチェは確かに、キヴォトスを手中に収めて自らの思うがままに作り変えるだけの魔法と、それを扱うための魔力が存在する――しかし、体力に関してはただの人間と大差ない。彼女自身は、単なる人の身だったのだ。
「つまり――もう詰みですよ、ベアトリーチェ」
「………何十年……何十年も、この計画のために時間を費やしてきた――私自身の身体を強化し、やりたくもない教育をわざわざ行ってきた……面倒な子育ても、わざわざしてやった――何十年もだ‼︎」
「……どの口がそれをほざいてるんだ」
「私は崇高なる存在、完全な無欠な生命を得るにふさわしい器を持つ、完璧な大人………そんな――そんな私が…!!!!貴様のような、貴様のような下郎に……負けるはずが――負けるはずがないんだァァァァァァッ!!!!!」
ベアトリーチェは咆哮し、自らの肉体に鞭打つ形で魔力を肉体に渦巻かせた。同時に彼女は、自らの胸に深々と杖を突き刺すとともに自らの肉体に取り込んで融合させ、溢れ出した魔力を用いてその肉体を幻想──いや、狂気のままに作り変えていく。
「この私の肉体で、お前を擂り潰す!!!」
「良い筋肉ですね……でもちょっと盛りすぎかな?大きければ良いってもんじゃないんですよね、筋肉って」
「黙れぇェェェェッッ!!!!」
ベアトリーチェは肥大化した硬質の両腕を豪快に振るい、マッシュを殴りつけようとする。しかし今のマッシュには、そんな力任せの単調な攻撃が当たるわけがない。
「――良いことを教えやろう、マッシュ・バーンデッド!!」
「え、今更なんですか?まだ何かあるんですか?」
「貴様の……出生についてだ!!!」
「「「「「!?」」」」
「先生の、出生…?――何で、そんなこと知ってるの?」
「先生、駄目だっ!!!その女の言葉に耳を傾けるなっ!!!!」
「子供は黙っていろォ!!!!」
ベアトリーチェはマッシュを精神的に攻撃することでその戦意を削ぎ落とすため、彼の出生、本当の父親…そして、彼が生まれた意味を教えようとしていた。アリウススクワッドは既にそれを知っていたがために、サオリはマッシュにそれを聞かせまいと必死で叫ぶ。
しかしその叫びも、ベアトリーチェが投げつけた瓦礫によって掻き消されてしまった。ミカがとっさにサオリたちを庇うが、暴走した魔力を帯びた腕に投げられた瓦礫は彼女たちを容赦なく打ち据え、ミカは右の翼を、サオリは左腕の骨を折られ、その場に崩れてしまう。
「よく聞けマッシュ・バーンデッド………私に魔法の知識を、経験を授けてくださった、実力を与えてくれた方こそ、イノセント・ゼロ様―─」
「ぐっ……やめろぉぉーーーっ!!!!!」
「そのお方こそ…お前と血縁で繋がった生みの親、真なる父親だ!!!! フッ、フハハハハハハッ!!!!」
サオリの叫び声に負けない声量で、ベアトリーチェは高らかに、マッシュの人生を嗤うように叫んだ。スクワッドは顔を青ざめ、ミカは初めて聞かされた事実に困惑し、アズサは驚愕のあまり言葉を失っていた。
「分かるか、マッシュ・バーンデッド……――私に魔法の存在を、知識を、力を与えてくださったのは、他ならぬお前の父親だ……お前は散々、アリウスとエデン条約の混沌は私のせいだと言っていたなぁ…!?ならば、ここで教えてやろう──その全ての原点は、私とあの方の出会いによるものだった。つまり、このエデン条約にまつわる全ての成り行きは──――他ならぬお前の父親の思し召しだ!!つまり貴様もまた生まれながらにして、お前自身が守ろうとした生徒共の敵でしかないのだ!!!」
「……先生の…父親が……?」
「そしてお前の正体は……彼の方が実現を目指す、血の繋がった6人の人間の心臓を用いて不老不死の心臓を造り出す禁忌魔法……造体禁忌魔法を完成させるためだけに生み出された――いわば心臓を培養するだけの器に過ぎん!!!」
「――マッシュ君は……ただ……その心臓を生贄として使われるために、そのためだけに生まれてきたって言いたいの…!!?」
「まさにその通り!!――貴様が生まれた理由は、あの方が更なる高次の存在へと進化する為のパーツになるためだけ……心臓を取り出された肉体はロイヤルブラッドともども、私の計画を完成させるための道具として廃物利用されるのみ!!!!お前は彼の方の夢を叶えるためだけに生まれ、私の計画を達成するために生きてきた―――先生という立場どころか、人間そのものからも程遠い生き物だ!!!!!」
膨れ上がった両腕の硬皮を刃へと変形させたベアトリーチェは、マッシュへと斬撃を繰り出す。刃が地面に当たった瞬間、赤い火花と衝撃波が発生するも、マッシュは何事もなくそれを躱す。
「さあどうだ、マッシュ・バーンデッド!!!己の人生に絶望したか!!?そのように生を受けながら愚かな生徒共と伍することしかできず、本来の役目も先生としての責任も果たせず、先生でありながら生まれながらにして生徒共の敵である矛盾を抱えた人生しか歩めない貴様には、魔法界にもキヴォトスにも存在する価値はない!!!――さあ、さあ!!その肉体と命を、我ら崇高なる大人の糧として、私に差し出すがいい!!!」
ベアトリーチェが話術でマッシュを追い詰め、両腕の刃をマッシュに向かって振り下ろす。
「うるっ――さいわ」ブンッ!!!
「ヅァッ!??(腕の刃が―折れて…!?)」
「フンッ!!!」
「ヌガァァ!!?!?」
まるで何事もなかったかのようにベアトリーチェの攻撃を防ぎ止めると、そのまま壁に向かって蹴り飛ばした。今度はそんなマッシュに、唖然とさせられるサオリ達。
「ふーん、僕の人生って意外と重たいんだ……意外意外」
(こいつ……!?あんな話を聞いても平然と……どんな精神状態だ!?こいつはもとより正気じゃないのか!!?)
「でもまぁ……人生重たかろうと、無価値な人生だろうと関係ないね――そんな自分を受け入れてくれる人達がたくさんいるし……何よりも―」
マッシュは自分の出生やら生まれた意味やらを聞かせられても──親に愛され、生徒たちに救われ、支えられ、慕われたからこそ───全くそれを気に病むこともなく、淡々と事実を記憶するだけだった。
「僕の人生、そのイノセント・ペロとかいう人とか、貴女みたいな大人よりも、百万倍有意義だから。無敵なんで自分、かかってこいよ」
そう、強く告げた―――
彼は、自分の運命を自分で切り開く力を持っている。力が強く、普通とは違った生まれをした自分を、受け入れてくれる家族がいる。
「強いな……本当に……」
「強すぎるよ――羨ましいくらいに」
「マッシュ君……もう、本当に………凄いなぁ」
サオリ達もまた、そんなマッシュに魅せられた。
「――――……ハッ……ハハハハハハッ!!!! もう良い…!!! お前も、お前の家族も、友も仲間も、全て……全て、終わらせてやるゥゥッ!!!」
もう勝てないと悟ったのか、あるいは過剰なダメージと魔力の暴走で気が触れたか。ベアトリーチェは全てを終わらせるため、天へと掲げた両腕に魔力を流すと、頭上に超巨大な魔力の塊を生成し、バシリカ諸共全てを消し去る形でマッシュの抹殺を試みる。
「私はもう既に、
「ベアトリーチェよりも……?」
「そんな存在を前に、お前は何ができる!!?――筋肉しか取り柄のない貴様に、何ができるというのだ!!?」
「筋肉しかないから……それで全部解決するんですよ」
「その存在は、既に
「勝ちますよ、勝って守り抜きます―――
この
マッシュは脚に力を込めると、地面が大きく割れるほどの力で踏み込み、同時に両手から血管が浮き出るほどの力を腕へと溜め始める。
「アンリミテッドバイセップス魔法・
「ッ!!!??(
そしてベアトリーチェの間合に入ると、力の制限がない本気のパンチを彼女に繰り出す。
「2…!」ボボッ!!
(なん――だ、この、パンチは!?)
「4…!」ボボボボッ!!!
「ゴポッ、ゴハッ!?ガァゥ!?!?」
「あ、あの技は……」
「まさか……」
「ま、まさか…!!」
最初は二発、次は四発の渾身の一撃。
スクアッドパンチ……それはつまり。
「16…!!!」ズドドドドドドドドドドドドドドッ!!
「ヌガァァァァァッッ!!!?」
「2乗づつ増えるパンチってこと!?」
パンチが2乗づつ増えていくパンチである。16発目を食らったところで、ベアトリーチェの脳内に恐ろしい思考がよぎる。
(バカな――16の、2乗は…‼︎)
「すぅ………」
大きく息をつき、マッシュは渾身の力を込めたラッシュを――
「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンッ…‼︎」
256発の拳を叩き込む。声を上げる暇すらなく、ベアトリーチェはそのラッシュを叩き込まれ、勢いよく壁へと吹き飛ばされる。
「ガッハァ!!?」
「自暴自棄になって、周りを巻き込んで暴れるなんて、許されるのは学生までですよ―反省してください」
「はぁ――ぁ……ぁ…何を、言っている――私は……耐えたぞ…?――お前のその拳を、耐えた!! これで、私の勝ちだ…!!やはり、私はァ!!!貴様を打倒しキヴォトスを支配する、崇高な大人にふさわしい器なのだァッッ!!!!」
ベアトリーチェはほとんどの歯と多くの肋を砕かれ、マッシュの恐ろしい連撃を食らった…しかし、狂気に取り憑かれ支配に固執した魔女は醜くもなお耐え、勝ち誇ったかのような笑みを浮かべて立ち上がった。
しかし――彼女は勘違いをしている……
「65536」
「─────え?」
「65536」
「は…?――えっ、まっ――」
「最後に一言、言わせてもらいますけど―――」
「僕の
「「「「「……!!」」」」「──わーお……////」
マッシュはベアトリーチェの顔、体……いや、ベアトリーチェという存在の全て、肉体から精神まで、形而下から形而上まで至る、ありとあらゆる全てに満遍なく攻撃を叩き込むように───
「フンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンフンッッッ!!!!!」
合計65536発の拳を、彼女に叩き込んだ。
「ヌァァァァァァァァァァァガァァァァァァァァッッッ‼!!!!⁉⁉?!??????!?」
膨張した筋肉が引き裂かれ、体が浮き、防御も何もできない状態で喰らう無限の拳。体内にあった杖は全身の骨諸共棒切れ同然にへし折られ、全身の神経の一切が引き裂かれていくとともに、走馬灯すらも見えないほどの痛みが全身に走り――最終的に
「―───フンッッッ!!!!!」
ラスト、渾身の一発を顔面に叩き込まれたベアトリーチェは、バシリカのステンドグラスを突き抜ける勢いで吹き飛び、上空10,000mの成層圏まで打ち上げられ──
「マッッシュゥゥゥ・バァーンデッッドォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!」
アリウスからその姿を消し……――敗北した。
「――――ぁ……ぁぁ…!」
「……終わったんだ―――やっと……やっ…と…!!!」
「ぅ……ぅぅぅ…!!」
「―――勝った、勝ったぞ………マッシュが――勝ったんだ…!!!」
「――あはは⭐︎……マッシュ君は…本当に……ずるいよ……本当に……こんなの見せられたら――泣いちゃうじゃん……」
長きに渡るアリウス自治区の地獄……エデン条約の地獄が……今、この瞬間に。
「――お腹すいたな」
終わりを告げた。
書き終えました……やっと、やっと‼︎‼︎書きたい事がかけました!!
いや本当に、まさかここまで続けられるとは思っても見ませんでした……本当に皆様には感謝しかありません‼︎
え? 燃え尽きないのかって?……ふふっ、書きたい事がまたできたので、しばらく続けますよ……なんならマッシュル3期が始まった後も続けます。多分。
改めまして、コメントと評価、アイデアなど、これからもどうぞよろしくお願いします‼︎
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