透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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アンケート結果で一番多かったお話を先に書かせていただきました。どうぞお楽しみくださいませ。


熱がほんっとに下がらねえ……


マッシュ・バーンデッドと人生スゴロク・前編

 

 

 

 

 

 某日。その日の天気は雲ひとつない快晴、気温も高すぎず低すぎず、ちょうどいい温度で過ごしやすい。そんな日の中、ここシャーレのオフィス内は───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イカナイデェェェェシロコチャァァァァァァァァン!!!!!」

 

「ん、ん…!ホシノ先輩…くるし、し、しまって…る…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マコト!?しっかりしなさいマコト!!!」

 

「予算が――イブキが――遠のいていく……ガクッ」

 

「マコトォォォォォォォォォ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナギちゃん!!ねぇナギちゃん!?ほんとに一回待とう!?これゲーム!ゲームだから!!」

 

「ナギサ様大丈夫!!大丈夫ですから!!」

 

「くっ、力が強い」

 

「主よ……この身を預けます」

 

「預けるなァァァァァ!!!」

 

「離してくださいツルギさぁぁぁぁん!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわぁぁぁぁん!? このゲームはクソゲーです!!」

 

「今回ばかりはお前に同意だ…!」

 

「まあまあ二人とも落ち着いて……あっ、またお金増えちゃった

 

「もうお前サイコロ振るんじゃねえ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イ、イズナ!信じてください!私は、このようなことは断じて致しません!!」

 

「……だ、大丈夫です…!ワカモ姉様はそんなことはしないとは、わわわわかっていますぅ……!!」

 

「ならばなぜ距離を取るのですか!?」

 

「怖いからです!!」

 

「素直でよろしい!!しかし距離を取られるのはかなり心が傷つくのでどうか!どうか側に!下手に距離を置くのはやめなさい!!」

 

「…………」(引き笑いをしながら少し離れる)

 

「イズナァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Vanitas vanitatum et omnia vanitas……VanitasVaVaVaVaVaVaVaVaVaVaVaVaVaVaVa

 

「リーダー!!リーダーしっかり!!」

 

「やらん、やらんぞ――妹達は誰にもやらんぞぉ!!」

 

「リーダー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 混沌としていた。集った生徒たちが一様に発狂する阿鼻叫喚の中、マッシュは一人冷静にシュークリームを咥えながら、再びダイスロールを始める。

 

 

 

(―――どうしてこんなことに?)

 

 

 

 その原因は───彼女たちの目の前に広げられた、一つのボードゲームにあった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

「高性能人生ゲーム?」

 

「そう…!!ついに完成したんだよ……以前レグロさんから教えてもらった魔法界のボードゲーム、それが……今朝完成したのさ!!」

 

「……何徹しました?」

 

「5日だよ(ドヤッ)できればベットかソファを貸してくれないか?」

 

「どうぞ」スッ

 

「ああ、たすか―グゥ……」ボフンッ

 

「………嵐みたいな人だな」

 

 

 

 

 

 

 連絡もなく唐突にシャーレに現れ、新たに開発したゲームの解説を並べたと思いきや、飛び込むようにソファの上に寝そべった生徒…白石ウタハ。

 そんなウタハにタオルをかけたマッシュは、彼女がシャーレへと持ってきたボードゲームを手に取る。

 

 

 

 

 

「じいちゃんの家にあったやつと一緒だ、でもやったことはないんだよな……『これはもう少し……もうすこーし大人にやってからやろうね?』って言って、長い間触らせてくれなかったんだよね…何でだろ」

 

 

 

 

 マッシュはカフェの家具を移動させて十分なスペースを取ると、ウタハが持ってきたそのゲームを床へ広げる。一見すると単なるスゴロクゲームだが、長大なルート上に用意されたマス目の総数は軽く300を超えている。カフェ内の一角を専有するほどの大きさに圧倒されながらも、マッシュはこの大きさのゲームを彼一人で遊ぶ気にはなれなかった。

 

 

 

 

 

「……一人でやるには大きすぎるし…虚しいな」

 

「それについては我々にお任せを」

 

「今回は床か」

 

 

 

 

 床から現れたのはイズナとワカモ、天井や壁をすり抜けるように現れる二人に対し、マッシュはもう慣れてしまいツッコミすら放棄する。瞬間移動同然の出現方法をどのように成し遂げているのかは甚だ謎である。

 

 

 

 

「あなた様が寂しい思いをするような遊戯など、言語道断……この私、狐坂ワカモがあなた様の遊び相手となりましょう」

 

「いいね、やろうやろう」

 

(うふふっ……イズナはこの場にいますが、あの子には何の心配もしていません……シャーレには普段、当番の生徒が最低一人は必ず居り……中々、先生と二人のみの時間を共にする機会がありません……つまりこれは、あなた様とラブラブお家デートということで―)

 

「主殿、ワカモ姉様!先ほど他の学園に連絡したところ、仕事を切り上げてすぐにこちらへ集まってくださるみたいです!」

 

「お、遊び仲間が増えた。遊びは人数が多い方が楽しいしね」

 

「―――――――ええ、そうですね…(くっ…!あれがイズナでなければ怒っていたところですよ…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、ウタハが持ってきた高性能人生ゲームを大人数で遊ぶことが決定した。マッシュは初めて大人数で行うボードゲームに楽しみと期待で胸を膨らませ、ゲームに参戦した生徒たちを待ち侘びていたのだが……

 

 

 

 

「あ、そうだ。どうせなら景品もつけちゃお」

 

 

 

この決断が、後に惨劇を生むことになってしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 各学園から生徒たちが集まり、床に広がったボードゲームを囲って座る。そこでマッシュは、ボードゲームではしばしば見られることとして、ある提案を行った。

 

 

 

 それは、2チームに分けた団体戦という形式でのゲーム。各学園やシャーレ内から集った生徒たちを組み分けることで、交流を促すとともにチームワークを育み、ゴールを目指して協力することで互いの親睦を深めることができる…

 マッシュはその狙いから、生徒たちにチーム分けを任せたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

「えーではこれより……保護者チームvs友達チームによる、キヴォトス人生ゲーム対戦を始めたいと思います」

 

「うへ……1位は貰うよシロコちゃん」

 

「ん、寝言は寝てから」

 

 

 

 

 

 

「ようやくこの時が来たなぁ空崎ヒナよ……下剋上だ!」

 

「ただのゲームよ、マコト――まあでも、負けるつもりはない」

 

 

 

 

 

 

「――アッハハ、ナギちゃんさ……私達に勝つ気?」

 

「例えトリニティのトップでも、容赦はしない」

 

「え…ええと――お、お互い最善を尽くしましょうね!」

 

「……いいでしょう、かかってきてください……いきましょうか、ツルギさん」

 

(先生と同じチームがよかったなぁ……)

 

 

 

 

 

 

「リアルファイトでは負けましたが……ゲームでは、このアリスが勝ちます‼︎」

 

「はっ、言うじゃねえか……後で吠え面かくなよ?」

 

「2対1 だけどねー」

 

「るっせぇ‼︎」

 

 

 

 

 

 

「姫達も呼びたかったが……買い物に行っているのなら、仕方ないか」

 

「これが……ボードゲーム」

 

 

 

 

 

 

組み分けたチームが大幅に偏ってしまった。保護者チーム*1のメンバーは、小鳥遊ホシノ・羽沼マコト・桐藤ナギサ・美甘ネル・錠前サオリ*2・剣先ツルギ、そして彼女たちの埋め合わせとして入ったマッシュ。

 

 

 

 友達チーム*3は、砂狼シロコ・空崎ヒナ・白洲アズサ・阿慈谷ヒフミ・聖園ミカ・ニーナ・一之瀬アスナ・天童アリス・久田イズナ・狐坂ワカモ。

 

 

 

 チームとしては後者の人数が多く有利だが、戦略眼の面では保護者側が有利なので……実質的に戦力差は無きに等しい。

 そして、このチーム分けはいわゆる…『マッシュの保護者』vs『マッシュガチ勢』という構図ともいえる形となった。

 

 

 

 

 

 

「えーと説明書……うん、ルールはよくあるすごろくと同じだよ。でもちょくちょくいろんなイベントがあるみたい、持ち金はみんな50万からだって」

 

「そして、誰かゴールした時点でゲームは終了。最後により多くの資金を獲得したプレイヤーが勝ち……ということですね」

 

「なんだ、意外とシンプルじゃねえか……ウタハが作ったもんだからめちゃくちゃ難解かと思ってたが」

 

「優勝したチームには、シャーレ限定の巨大シュークリームを贈呈するよ」

 

「先生らしい景品だね〜〜(――死んでも取るけど)」

 

 

 

 

 

 彼女らの目的はシンプルにゲームを遊ぶこと、そしてマッシュの手作りシュークリームを勝ち取ること。そのために彼女らは、本気で遊びに挑むことにしていた。

 なお、アリウス生を迎えた新生シャーレの親睦を深めることを目的としてゲームを開催したマッシュの意向は、半ば無視されつつある。

 

 

 

 

「それでは、早速始めましょう……先行は、あなた様の愛妻である、このワカモ行きます」

 

「妻ではないよね」

 

「ではでは……えいや!」

 

 

 

 

 サイコロは普通のものではなく、TRPGなどで用いられる100面ダイス。

「300マスしかないのに最大100マス進めるサイコロを使うのはどうなのか」という疑問はあるが、それについてはあえて触れずに…ワカモは威勢よくダイスを地面に転がす。
 すごろくのマスの上には生徒達の姿をデフォルメしたような駒が存在し、マッシュの駒以外にはヘイローも再現されている。

 

 

 

 

 

「わざわざ関わってきた生徒分の駒を用意しているとは……暇なのか?」

 

「開発者の想像力と作業力を舐めてはダメよ」

 

 

 

 

 一同がエンジニア部の技術力に関心をしているなか、ダイスの目が25に止まり、ワカモは駒を動かす。ここまでは普通にただのすごろく――そしてここからが、本当の地獄。

 

 

 

 

「おや? マス目についた瞬間に文字が表示されるのですね、なになに……

 

 

 

 

 

 

――妹分であるイズナを可愛がるあまり、愛が暴走、シャーレ内に拘束してしまう…『3回休み』……――はい?

 

『え?』

 

「あ、ワカモちゃんが鎖で拘束された―――何これ、どういうこと?」

 

 

 

 

 突然、ゲーム内にて「ワカモがイズナを拘束した」という文言がマス目に表示され、『3回休み』の言葉通りにワカモの駒が拘束される。

 一同は困惑……すると、突然ウタハがソファから飛び上がり、説明を開始する。

 

 

 

 

 

「説明しよう!!」

 

『!?』

 

「そのゲームはただのすごろくではない、人生ゲーム……それも、『自分の未来を暗示しかねない』という設定付きだ‼︎」

 

『なん……だっ…て⁉︎』

 

「マス目に止まった瞬間、起こりうることは全て、これから未来で起こるかもしれないと言ったものだ……気をつけたまえ……ではおやすみ―zzz」

 

 

 

 

 

 

 ウタハがまた泥のように眠る。一同は再びマス目に注目し、次にワカモの方を向く。首を何度も横に振って必死に否定するワカモ。

 

 

 

 

 

 

「ワカモちゃんの愛は純粋だけど、重いのも確かだしね〜」

 

「ん……ちょっと納得」

 

「し、心外です!!いくらそうだったとしてもそのような…………イズナ?何故距離を置くのですか?」

 

「な、何でもないですよ!?」

 

「なんとも、まあわかりやすい嘘を!」

 

「………もしかして私達…とんでもないゲームに手を出した?」

 

 

 

 

 

 レグロがマッシュをこのゲームに触らせなかった最大の理由は、「起こり得る未来の示唆」の危険性だった。この先必ず起きる未来ではなく『あり得るかもしれない未来』というものは、あまりにも危険で、心臓に悪い。

 

 

 

言い方を変えればこのゲームは――闇のゲームであった。

 

 

 

*1
マッシュの先輩にあたる3年生が中心

*2
元アリウス生徒の保護者役として配属

*3
マッシュの友人である同輩や後輩が中心




ギャグしかないですね……はい。

熱下がったと思ったら今度は一気に上がった人間です、何故弟先生は治って私だけ………くそう。日頃の行いはいいはずなのに!

コメントと評価の程、どうぞよろしくお願いします

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