やっと、やっと熱が下がってきました……現在37・0、ふぅ‼︎元気が戻ってきたゼェ‼︎
妹先生も完治し、隔離から完全に解放され自由の身になりました。治ったばかりなのにブルアカのイベントストーリーを読み漁ってるのは、すごいと思います。
それでは本編へ……どうぞ!
「……のぉ、皆」
「どしたのじいちゃん」
「どうかされましたか?」「何かお困り事が?」
「今から向かう先は……学園なんじゃよな?」
「うん、ゲヘナ学園。エデン条約について話したよね。ちょっと他とは違って治安は悪いけど、いい子達がいっぱいる素敵な学校だよ」
「先程先生がお話されていた通り、ゲヘナ学園は我らアリウス分校が一度戦火を交え、そして先生の仲介によって和解を果たした学園の一つでもあります」
「そうじゃよな?学校じゃよな?――じゃあなんで学校へ行くのに、ワシにこんなガチガチのバリアを貼らせているんじゃ?」
「僭越ながら申し上げますと…お祖父様のお体では、命の危険に曝される可能性が極めて高いと判断されたためです」
「こうして私達二名がお祖父様と先生の直衛に回ったのも、七神行政官と掛け合ったアリウススクワッド、並びに主力4チームに所属する全隊員の決定によるもの。和解の機会を得た学園にこのようなことは言いたくありませんが……それだけの危険が伴う、と思っていただいて間違いはないでしょう」
「一歩間違えたら大変なことになるからね」
「学校なんじゃよね!?もう一度聞くけどゲヘナって学校じゃよね!?現在進行形で戦争やってる場所じゃないよね!?」
シャーレで一人息子のマッシュと再会し、シャーレに常駐する生徒たちとも新たな出会いを果たしたレグロ。マッシュの発案により、エデン条約に関わった各学園への謝意を伝えるとともにレグロを生徒たちに紹介するため、まずはゲヘナ学園とトリニティ総合学園へと向かうこととなった、のだが……
知っての通り、ゲヘナは未だキヴォトスで最も治安が悪い学園である。
無論、未だ銃弾や手榴弾が日常的に飛び交うゲヘナにおいて、外部より転移した人間であるレグロが向かうのは危険極まる。 文字通り生身で戦場に立たされるに等しく、その結果は目に見えて最悪としか言えない。
「バリア付きの服をもらったのは嬉しいんじゃが……なんでタキシード?」
「趣味らしいよ」
「趣味……」
「あとじいちゃんってタキシード似合うし、エンジニア部の皆から『ちょうどいいや』って思われたんじゃないかな」
「──確かに、素晴らしい着こなしです」
「あの技術屋三人組、リーダーやベアトリーチェの頭を割ったという杖の一件もあって、ただのトンチキ連中かと思っていたが……中々粋なものを仕立てたな」
「マッシュだけじゃなく君たちにもそう言ってもらえるとは、嬉しいような…でも複雑じゃな、そもそもワシみたいな老人よりも、マッシュやサオリさんみたいな若い子の方が似合うと思うんじゃが」
「じいちゃん……世の中にはね、いろんな人がいるんだよ」
「マッシュ?急にどうしたんじゃ?」
「本当に、いろんな人がいるんだ……僕の体を見て興奮する人とか」
「まままマッシュ!?なんかいつもより暗くない!?」
「せ、先生!しっかり!」
「これはリーダー達に報告だな……先生に欲情する異常者出現の可能性あり、引き続き警戒を厳とされたし、と」
「あぁ、ごめん皆……最近なんか自分の身がいろんな意味で狙われてる感じがしてさ、何がなんだかわかんなくなってきちゃって」
マッシュの体を興奮のまま触りつくそうとした生徒や、マッシュの心臓そのものを狙ってきた大人などを直接相手にしてきたマッシュ。
「い、色々と大変だったんじゃな……」
「でも楽しかったのも事実だよ。大変だったけど、その分いろんな事を学べたし」
「そうかそうか…………のぉ、マッシュ」
「?」
レグロは元の世界に帰ってからも、ある事を考え続けていた……それはマッシュにとって一番重要なことで、親として提案しなければならないこと。
「マッシュがいいのなら……わしは、お主がこの世界に――」
「イヤァァァァァァァ!!??」
「うお、久々の爆発だ。でも、いつものゲヘナって感じでちょっと安心する」
その瞬間、激しい爆発音がレグロの声を掻き消した。マッシュとアリウス生二人は爆発が起きた方向を警戒するが、そこにいたのは美食研究会やヘルメット団、はたまた便利屋でもなく────ゲヘナでトップクラスの問題児が集う部活・温泉開発部だった。
「ハーハッハッハッ!!さあ諸君……掘って掘って掘りまくるんだ!確実に、この下に!我らが求める源泉がある!!」
『『『『了解!!!!!』』』』
「ん〜!久々の爆発、気持ちいいね〜♪」
「ああ……フフッ、あの風紀委員長は今、別の区域で不良の対処に追われている。ここに来るまでにはかなりの時間がかかる――そして、今はシャーレ所属の生徒達も先生もいない…故に、今この時が好機!!」
「あの生徒さん達強かったもんね〜」
「さあ諸君……温泉開発部の諸君!――作業再開だ!!」
『うぉぉぉぉぉ〜!!!!』
これが『いつも通りのゲヘナ』の光景だが、レグロにとっては初めて見る光景だ。あまりの突然さに、レグロは耳を押さえながら物陰に隠れて困惑する。
「何ここ!?世紀末!?世紀末なのマッシュ!?」
「これでもだいぶマシになった方だよ」
「これで!?と言うかあの子達は何!?」
「温泉開発部──ゲヘナ学園においては美食研究会と並ぶ最悪クラスの部活動、もといテロリストとして名を轟かせる破壊的活動集団です。見ての通り、違法改造された大型重機や、大量の爆薬と火工品をかき集め、温泉の発掘を目的とした活動を続けています」
「そ、それで発掘を……ん?ちょっと待って、許可は?」
「ほぼ100%、完全に非認可です。連中の最も質の悪い点は、温泉を掘るためなら他学園の地にまで兵器で穴を開け、その地に建設されている既存の建築物やインフラすらも迷いなく爆砕する暴挙にあります……被害を受けた場所は、もはや三桁を下りません」
「今回もそんな感じだろうね、じゃなかったら風紀委員を怖がる必要なんてないし、さっきみたいに風紀委員到着までの時間について気にする理由もないし」
「アウト!どう考えてもアウト!そ、それはそれとして、これからどうするんじゃ?」
「勿論止めるよ、先生としてお説教をしないと……とはいえ、戦闘はなるべく避けたいんだよね。じいちゃんもいるし、うーん……デルタちゃんはどう思う?」
「エコーがレグロさんの護衛に回ったとはいえ……この状況であの集団が相手では、些か分が悪いのは認めざるを得ませんね」
この状況では、レグロが戦闘に巻き込まれる可能性は十分にある。どうしたものかとマッシュは考えるが…これまで先生として活動してきた状態とは異なり、今のマッシュは祖父との再会を果たした孫。
「部長やってるあの子さえ無力化すれば全部解決なんだけど……今回はいつにも増して人数も爆薬も多いなぁ」
「……なら、一時的に注意をこちらに向けられればいいんじゃないか?」
「じいちゃん天才、でもどうやって注意を向けよう」
「私も良いご判断かと思いますが、現状私達の装備で効果的な陽動を行うことは困難です。何か別の──」
「そこはワシに任せておくんじゃ――危ない事をしている子供を注意するのも、また大人の役目じゃからな」
「え!?ちょ、ちょっとレグロさんっ!?」
マッシュ達に守られながら物陰から身を出したレグロは、腹一杯に力を込め……マッシュも聞いたことがなかったような、これまでにないほどの怒号を飛ばす。
「コゥラァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!」
「「「「⁉︎」」」」ビクッ!
「わっ、じいちゃんの怒鳴り声なんて初めて聞いたな」
「な、なんだ、あの老………――ッ!?やばいっ、シャーレの先生だぁッッ!!?」
「あちゃ〜……」
レグロの怒号に温泉開発部が驚き、カスミとメグが跳ね上がった瞬間にマッシュが登場。マッシュの姿を見た瞬間……温泉開発部一同の顔は真っ青に色褪せる。そこでデルタとエコーが前に踏み出し、レグロとマッシュへの射線を切りつつアサルトライフルとサブマシンガンの銃口を向けた。
「動くなっ!!連邦捜査部シャーレだ!!武器と爆薬を捨てて投降しろ!!」
「あ、また部長が大変なことに…!!」
「おはようみんな、本気のデコピンをされたくなかったら、黙って武器を地面に置いて、投降してね」
『はぃい!!!』
「マッシュの姿を見ただけでこれとは……本当にすごいのぉ、マッシュ」
「君たちも守ってくれてありがとうの。マッシュの前に立った後ろ姿、実にかっこいい立ち姿だったわい」
ゲヘナでもトップクラスの実力者が集まる温泉開発部は、厄介なことに風紀委員会とも互角に戦える実力を持ち合わせている。しかし、相手がマッシュなら話は変わる。加えてその護衛には、あのエデン条約事件以降は更生(筋トレ)によって力をつけたアリウス分校の生徒。銃弾も爆薬も効かない人間兵器相手に、戦う気が起こるはずもない。
「風紀委員だ!大人しく……って先生?…なんだもう終わってたのか」
「先生、遅れてしまって申し訳ありません」
「大丈夫だよ」
「先生、すごろく以来ね。わざわざ先生を手を………ん?」
「これはまたなんというか……個性的な子達じゃな、よく見ると尻尾と羽があるし……悪魔?……いやぁにしては可愛らしすぎるというかなんというか」
そこに風紀委員会が現れる。隊を率いていたのはイオリとチナツ、そして委員長のヒナだった。ヒナはマッシュの隣にいるレグロに視線を向けた。見慣れない老人の存在に、ヒナはマッシュへ疑問を投げかける。
「先生、隣にいるご老人は…誰?」
「紹介しますね。僕のおじいちゃん、レグロ・バーンデッドです」
「マッシュのおじいちゃんです、どうぞよろしく」
「先生の……先生のおじいちゃん!?」
「そんなバカな……」
「まあ信じられないよね、だって別の世界から─―」
『先生のおじいちゃんなのに、ムキムキじゃなくてもやしみたいだなんて!!!』
「そこ?」
「もやしって酷くない!?」
「こら、みんな。失礼よ……にしても…そう、貴方が先生の」
風紀委員全員が(親子の体型の差に)驚く中で、ヒナだけは冷静にレグロの前に立ち、風紀委員会の代表者として挨拶を行う。
「ゲヘナ学園風紀委員会・委員長を勤めています、空崎ヒナと申します。向かって左にいる部員が銀鏡イオリ、右の部員が火宮チナツ。風紀委員会一同、お孫さんには大変お世話になっています」
「こ、これはご丁寧に…(子供なのにしっかりとしておるの〜……雰囲気的には17ぐらいじゃが、にしたってこう……大人らしいというか。なんにせよここまで冷静となると少ししんぱ――)」
「これからもどうぞよろしくお願いします―――お義祖父様」
「お義祖父様?」
「「「「「委員長ォ!?」」」」」
「あっ、間違えた、御父様……じゃなかった、お父さん、あっ、ちがうちがう、お爺ちゃん……あれ?」──CPU使用率100%
「い、委員長!ちょっとこっちに来ましょう!?ね!?」
「何やってんの委員長!緊張してるの!?とりあえずこっち来て!」
色々と間違った発言をしたヒナを、チナツとイオリが引っ張ってレグロから引き剥がす。マッシュ親子とアリウス生コンビはポカンとしながらも、風紀委員を見守る。
「何やってんの委員長!もうちょっとこう……段階があるだろ!?」
「お義祖父様って…!なんであんなどストレートに言うんですか!?」
「だ、だって緊張して……」
「気持ちは理解するけどさ…!」
「とにかく、今はまだお義祖父様なんて呼ぶのは早いんですから……ここはおじいさんとお呼びしましょう」
「そ、そうね……冷静さが欠けていたわ」
マッシュの親を前にして緊張が昂ってしまったのか、ヒナは極めて危うい発言をしてしまったことを反省した。冷静さを取り戻したヒナは、再びマッシュとレグロの元へと向かう。
「それで、先生はどうしてここに?」
「じいちゃんにゲヘナやトリニティを案内しようと思って」
「なるほど……なら、このまま私達が校内を案内するわ」
「それはありがたい…しかし良いのか?マッシュから聞いたが、仕事に追われて大変なんじゃろう?」
「前ほどじゃないから平気です、それよりも今はおじ―─んん゙ッ!!…レグロさんの身の安全や、ゲヘナを知ってもらうことがいちばん重要なことですから」
「しっかりとしとるのぉ君は……大人顔負けじゃわい」
「そ、そこまで…では」
「いいや。まだまだ若いのに、これだけの人数を統治するばかりか、目上の相手にも冷静に、なおかつ丁寧な言葉を使っている…普通の子にはできんことじゃよ――本当に偉いの、ヒナちゃんは」
「……親子揃って…‥ほ…本当に……」
「おじいちゃんも人誑しだね」
「そんな気は無いんじゃがなぁ……」
マッシュ同様、無自覚人誑しのレグロ。これはマッシュとは異なり「親としての包容力」によるものであるが、それでも生徒達には十分すぎるくらいの衝撃を与える。
「校内に向かいながら、色々と話でもしようよ」
「そうじゃな〜、とりあえずわしはゲヘナのことが知りたいの。君たちがどんな生活をしているのか、直接見てみたいんじゃ」
「私も……レグロさんについて知りたい、先生をどうやって育て上げたのか…とか」
「先生の赤ん坊の頃から……気になるな」
「私もイオリさんと同じ意見です……レグロさん、先生は小さい頃、どのような方だったのですか?」
「赤ん坊の頃のマッシュか?…ハハっ、対して変わったりはしておらんぞ?今と変わらず、素直で、優しくて、可愛げがあって」
「照れますな」
「扉をハイハイで突き破ったり、ハイハイで壁や天井を走り回ったり、後方2回宙返りを行ったりする、そんな子じゃったなぁ」
「「「「「「乳児期からめちゃくちゃアグレシッブなんだけど!?」」」」」
「指を掴まれて、青くなった時もあったの〜」
「その節は本当にごめんね」
「まあそこらへんも含めて、可愛いんじゃがな、ハッハッハッ」
この話を聞き、風紀委員会のメンバーたちは、赤ん坊の頃からとんでもない力を持っているマッシュにも驚いていたが――それを育て上げたレグロに対して、同時に尊敬と感謝を抱いていた。
レグロ・バーンデッド、in.ゲヘナ学園……実はこの出会いが、後々重要になってくるのだが──―それはまた、別のお話である。
「ヒナ・バーンデッド……うん、語呂はいいわね。籍を入れても恥ずかしくない」
「委員長?」
「何? マッシュ・バーンデッドの祖父が来ているだと?」
「は、はい。温泉開発部を鎮圧させるため、風紀委員会が出向いたところ、その場所に先生とお祖父様がいらっしゃったと。そしてそのまま校内を案内して回り、現在は休息をとっている…と」
「……そうか。ならば学園の代表として一つ、挨拶をせねばならんな……老人に対しての土産は……何が適切かわかるか?」
「えーと…ご年配の方自体、ゲヘナでは見かけないので、あんまり……」
「……まあ、菓子折りくらいは持っていけばいいだろう。先生と祖父は何処に?」
「現在、風紀委員会の部室にいます」
「………………」
「マコト様、露骨に嫌な顔をなさらないでください」
マッシュとレグロがゲヘナの校内へと案内され、風紀委員会の活動拠点で会談をしている……そう聞いたマコトは、万魔殿議長として顔を見せねばならないと思いつつも、同時にヒナがいる場所に向かうことを露骨に嫌厭していた。
「……まあ、仕方ない。先生の家族に対して何の挨拶もしないなどは、学園のトップとしてはいかんからな……会談にはこのマコト様が一人で向かう、他の者達には待機するように伝えておけ」
「よろしいのですか?」
「なーに、先生の家族だ。危険な存在ではないさ……ここは任せたぞ」
「はっ‼︎」
部下に議長室を任せ、マコトは適当な菓子折り(軽く一万円は超える物)を持ちながら、レグロ達がいる風紀委員会部室へと向かう。
(……先生を育て上げた老人……か、ただ者ではないのは確かだな――そもそもどうやってあんな人間兵器を育たんだ? 一歩間違えれば死ぬぞ、ほんとに)
レグロを賞賛しながらも、本当にどうやって育て上げたのか不思議で仕方なかったマコト。色々な事を考えているうちに、彼女は目的の部室へとたどり着いた。
「さて……ンンッ、キキキッ、入るぞ! 空崎ヒ―『ほ、本当に大丈夫だと言っているじゃありませんか‼︎ 私は全く気にしていませんし!』『わしが気にするから、お願い‼︎ 本当に上を羽織って!?』…………なんだ?」ガチャ
マコトが扉を開けると───そこには風紀委員の行政官アコと、バスタオルを手に彼女と向き合っている老人…もといレグロが言い争う光景が広がっていた。マッシュとヒナはその光景を眺めながら、ソファに並んでシュークリームを食べている。
「何回も!同じ事を!言わせないでください!!この服装は私の正装なのです!!だから隠す必要なんてありません!!」
「いやぁ流石に!!流石に年頃の女の子がそんな格好はしちゃいかん!!!」
「なんですか、目に毒とでも言いたいのですか!?」
「いやそうは言っておらくんてな!!?」
「だったらこれが普通の服と言ってもいいじゃないですか!!」
「胸が見えてしまっている服は普通とは言わんよ!!」
「それは同感」
「見れば見るほど理解に苦しむなぁ……」
「そんな!?
「…………なんだこの状況は」
レグロはアコの服装について何か苦言を呈したらしく、それにアコが反論している…ようだったが、マコトはその光景に『思ってたとの違う…』と思わされながらも、菓子折りを手に室内へと入る。
「…あれ、マコトさんだ」
「久しいな先生……所で、何があった?」
「アコとレグロさんが出会った時、アコの服装を見たレグロが突然叫び出して、自分の着ていたタキシードをアコに着せたの」
「『お年頃の女の子がそんな格好をするんじゃありません!!』って……でもアコさんは『そんな格好とはなんですか!?何か問題でも!?』みたいな感じで、もう二人の認識が食い違い過ぎてるみたいで、今に至ります」
「成程……まあ100%、アコ行政官が悪いな」
「マコト議長までそちら側なのですか!?」
「はっきり言って後輩やイブキの教育にも悪い。胸元の横だけでもさっさと塞いで欲しい、とは思っている」
「そこ……まで……!?」
一般的に考えれば、アコの服装は際どく危ない。
「自覚が無いのもまた難儀だな………まあ、そこのヨコチチハミデヤンは置いておこう」
「なんですかその変態みたいなあだ名は!!」
「ご老人……私がこのゲヘナ学園のトップにして、生徒会たる万魔殿議長・羽沼マコト様だ。よろしく頼む」
「レグロ・バーンデッドじゃ……これまた、随分と大人らしい生徒さんじゃな」
「クール、もしくは凛々しいと言ってくれ……キキッ」
「マコトさんはすごいんだ、頭がいいし、カリスマ性もある」
「キキッ……よせ、事実をわざわざ言わなくてもいい」
「でもヒナさんが絡むとポンコツ化する、なんだか勿体無い人だよ」
「喧嘩なら買ってやるぞマッシュ・バーンデッド!!!!」
「事実じゃありませんか……事実、アリウスからの情報奪取とパラダイス機構設立からは、これまで通りに逆戻りしてますし」
「なんだとぉ!!?!?」
「こらこら、喧嘩はいかんよ喧嘩は」
レグロに制されたマコトは息を吐きながら応接用の椅子に座り、レグロとアコも口論を中断して椅子へと座る。疑問や聞き出したい点を挙げればきりがないが、マコトは最初に、レグロにある質問をした。
「────時に、ご老人」
「レグロで構わんよ?」
「…なら、レグロ氏。貴方から見て、このゲヘナはどのように感じた?」
「うーん……一通り見て回って思ったことは…そうじゃなぁ」
ヒナに案内され、校内を見て回ったレグロ。フウカがほぼ独力で維持しているような給食部や、その給食部を手伝っている美食研究会、拘束された温泉開発部、そして風紀委員会の活動……さまざまなゲヘナ生と出会い、彼女たちと交流を持った上で、思ったことは一つ。
「色々と突っ込みたいし、やばいと思ったところは少なからずあるが……でも、皆が皆やりたいことを見つけて、それに対して全力で────まぁやってることは褒められたもんじゃないかもしれんが……それもまた若気の至りというべきものか、『皆、青春を楽しんでおるな〜』とは思ったのぉ」
「キキッ……その通りだ。ここにいる生徒らは皆、青春を自由に楽しんで生きている。我がゲヘナ学園は、自由と混沌を校訓とする場所。生徒達は皆、一様に破天荒かつ型破り。粗暴ではあれど、自らが決めた事に対し躊躇や妥協をしない生徒が多い」
「それでもみんな、心の底から外道って感じはないし、悪人って感じもないね……無邪気で自由すぎる子供ってぐらい……だよね、じいちゃん」
「その通り、まあやり過ぎな子達もいるけどね」
「それに関しては……私が議長に就任する前からの話だ、何も言えん」
ゲヘナのトップであるマコトも、ゲヘナの治安の悪さは理解していた。しかしそんなゲヘナを、マコトもヒナも愛しており、別段の嫌悪感は抱いていなかった。
「治安はお世辞にもいいとは言えないが――少なくとも、わしらの世界よりかは…マシじゃな」
「……待ってください、ここの方がマシとはどう言うことですか?」
「魔法界……だったか?そこはそんなに治安が悪いのか?」
「治安……というか、民度じゃな……一言で言うならば、『弱肉強食』じゃ」
「弱肉強食……」
「権力にしろ能力にしろ、強いものが優遇され、弱い者は蔑まれる……まぁ、そんな感じじゃな……わしも、その弱い者の一人じゃからなぁ」
「……先生を育て上げた貴方が、弱者だとは…私は思いません」
「そうかの?」
「そうです、貴方は先生を……こう何も立派に育て上げたんです。私の恩人を、友人を、ここまでの善人に育てたのは――──貴方ですよ、レグロさん」
ヒナがレグロを励ます。魔法界の環境はお世辞にもいいとは言えないが──その中でマッシュを純朴な善人にまで育て上げ、健全かつ頑健な肉体と精神を育んだのは、他でも無いレグロである。
今やマッシュは、風紀委員会でも手に余る生徒を軽く凌駕する筋力で治安維持に貢献し、無秩序そのものだったゲヘナに新たな変革をもたらした。そればかりか、エデン条約を通じてトリニティを含む各学園の融和と進展に寄与し、キヴォトス全体に前例のない大きな変化を起こしつつある。
「ゲヘナは貴方の孫に救われた。治安の劇的な改善で経済活動にも一定の安定化や活発化がみられ、風紀委員会の負荷もかなり減っているようでな」
「まあ半分くらいは貴方のせいですがね?」
「僕だけじゃなくて、風紀委員や万魔殿のみんなが頑張ったおかげだと思いますよ」
「そうじゃな……マッシュが来るまで、間違いなくここを守っていたのは君らなんじゃ。君らも十分凄いぞ?」
「……うん、私…結構……頑張った」
「まぁ………私も、少しは、頑張ったのかもな」
「そもそも、それだけの権力を手にできたこと自体すごいことなんじゃよ? なおかつ、人を束ねたりするなんて、それこそそう易々とできることでは無いじゃろうし……わしなら絶対に無理じゃな、無理無理」
「多分僕も、長い間は無理そう……かな」
レグロは微笑みながら二人を褒めるが…二人は褒め慣れていないのか、複雑な表情のまま固まっている。
「……お世辞ではなく本音で、我々を褒めている……のか」
「………間違いなく、先生の親御さんなのね」
「君も、委員長を長い間支えているんじゃよな?組織のNo.2というのは大変じゃからのぉ。立派じゃ、とても立派じゃ」
「ほ……褒められても、何も、出ませんよ……」
「……だからこそ、わしから一つお願いじゃ。困った時や苦しい時は一人で抱え込まず、誰か相談して、溜め込んでしまった息苦しさを発散をする……これを忘れないで欲しいんじゃよ。マッシュの話を聞いてから、より一層そう思うようになったんじゃ」
「その節は…本当に、本当に…ごめんなさい」
「……努力しよう」
「………そう…するわ」
組織のトップとしての、責任の重みと孤独……それを誰にも相談せずに一人で解決しようとすること、それこそ自分を苦しめる要因の一つ。だからこそ、いくらでも誰かに相談して欲しい。レグロは親心に、そう言っていた。それを深く胸に刻み、今度からそうする……と、二人は告げた。
「――なら早速、話してもいい?」
「良い良い、こんな老人でいいのなら……いくらでも付き合おう」
「ありがとう……おじいちゃん」
「溜め込んだものを吐き捨てるのは、本当に大事なことじゃからな〜」
「……そうね――ええ、そうよ。いい機会なんだから、この際全部…言ってやるわ」
「………空崎ヒナ?どうしてこちらを向く?」
「――アコさん、嫌な予感がするんですけど」
「き、奇遇ですね…私もです」
悪寒が走ったマコトと、嫌な予感がしていたアコとマッシュ。ヒナはレグロの膝の上に失礼し、座った状態で、溜め込んでいた愚痴のほとんどを叫んだ。
「6時間ぐらい寝たい!!なんなら、朝の9時くらいまで寝ていたい!!それからご飯もゆっくり食べたい!!和食なら焼き魚にお新香もつけて、お味噌汁だってゆっくり飲みたい!洋食ならベーコンエッグにサラダも用意して、甘いコーンスープも欲しい!なのに全然、全然それができない…!!!」
「そ、それは大変じゃな、よく頑張っておる……よしよし」
「最近はみんな私のことを認めてくれている……けど!!やっぱり私の顔を見ただけで悲鳴を上げながら逃げていく子がいる!!私のことを何だと思ってるの……そんなに怖がらなくてもいいのに!!」
「う、うん……うん……」「ヒナさん、ちょっと落ち着いて……」
「あとマコト!!嫌がらせは最近無くなったけど――なんで仕事をこっちに持ってくるの!?自分たちの方でやりなさいよ!!!」
「そ、それはすまないと思ってる……ただ少し、すこーしだけ、お前に任せておけば早いよな〜と思ってだな……」
「私に勝ちたいなら楽しない!!次に大量の仕事を持ってきたらシュークリームとロールケーキ持って殴り込みにいくわよ!!」
「わ、わかった!!わかったからっ!!殴り込みとシューだけは勘弁してくれェ!!!!!」
「それからアコ………毎度毎度胸を見せつけて来ないで!!結構傷つく!!」
「見せてつけているわけではないのですが……そ、それに!委員長は今のままの方が──」
「貴女のそれにはたーーくさんの夢が詰まってるけど、私には何も詰まってないの!平べったいの!!だからたまに虚しくなる!!超ばにたすなの!!!」
「も、申し訳ありません!!」
「それから先生!!他の子ばっかり構ってずるい!!私だって当番やりたい、一緒にパトロールしたい、デートもしたい!!」
「構ってるというか、絡まれてるというか……」
「この前なんて小鳥遊ホシノと一緒に、ヘルメット団の制圧に行ってたって聞いた……!!その後一緒にラーメンも食べたって……!」
「アビドスをまた狙ってきてたみたいで、その時に共闘を」
「私の方が小鳥遊ホシノよりも強いし、先生と連携が取れる!!つまり私が先生の相棒!!私達が相棒なら、先生が私に構うのは当然!!!」
「やばいヒナさんが壊れ出しちゃった、ここにホシノさんがいなくて本当によかった*1……今度一緒にシュークリームを一緒に食べにいきましょうね」
「そのままシャーレに残る!!!」
「いやあの、シャーレにはワカモちゃんとアリウスの皆がいるから少しややこしいんだけど」
「なら狐坂ワカモと錠前サオリを私が倒す!!!!」
「やめて?三人が戦ったら、多分シャーレ周りが無事じゃ済まないから。こんなことでD.U.が焼け野原になったらリンさんと連邦生徒会長さんが悲しんじゃうし、多分ナギサさんが無事じゃ済まないよ*2」
その後しばらくの間、レグロとマッシュはヒナの愚痴を聞いた…一定数、マコトや万魔殿についての愚痴も含まれていたが、吐き出された総数の前に霞んでしまった。
(孫の愚痴を聞く……これやってみたかったんじゃよな〜…―――って違う違う、この子達はわしの孫じゃないない!……まずいのぉ、子供らを愛し過ぎるあまり変な錯覚が起きている……はっ!!)
「じいちゃんの浮気者」
「ま、待てマッシュ!違うぞ!?わしの孫は生涯マッシュだけだからね!!」
「つーん」
「マッシュゥゥゥゥゥ!!!!!!!」
他の子供達にも甲斐甲斐しく接するレグロを見て、マッシュは少し嫉妬を覚えた……が、その「ヤキモチを焼かれる」こと自体、レグロにとっては初の経験であったために大満足……同時に
(………感情豊かになったの、マッシュ)
マッシュが感情豊かな青年に成長した事実が、何よりも彼にとって嬉しかった。
前話のタイトルを少し変更致しました。へんになってしまったので…。
総力戦、妹先生と弟先生の反応、というか評価なんですが。
ヒエロニムス『☺️』
ゴズ『戦いたくないし嫌い』
ペロロジラ『…?』
こんな感じでしたね、ペロロジラって何⁉︎と驚かれましたが……うーん説明がむずい。
とりあえずゴズは大っ嫌いだそうです、私もですが……あ、BGMは好きと言っていました。
百花繚乱後に見たい話
-
まだ交流がない生徒との話
-
アイデェア箱から選んだお話
-
ラビット2章
-
愛が重い生徒との話