透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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次回はギャグ全振りで行きます。


レグロ・バーンデッドと三度目のキヴォトス来訪、そして息子の選択

 

 

 

 

「マッシュの祖父、レグロ・バーンデッドです。孫がこちらで大変お世話になったようで……今後とも、よろしくおねがいします」

 

 

 

 

 

 

 

 補習授業部との会談を経て、いよいよお待ちかねのティーパーティとの会合を果たすこととなったマッシュとレグロ。ティーパーティーのホストたちが待つテラスへ入るなり、レグロは丁寧にナギサ達へと挨拶をした。

 

 ナギサ達は5人分の席を設けたティーテーブルを囲む形で座っており、マッシュとレグロは空いている席へと通される。護衛の二人は、非常事態に備えて立った状態で待機しながら、5人の話を聞いている。

 

 

 

 

 

 

 

「いえいえ、むしろ私達の方が世話になった方なのでね。この二人は特に、先生の世話になったんじゃないかな」

 

「うっ」Weak 99999

 

「まあミカ、君が一番先生の世話になったんだが」

 

「うっ」Weak 99999

 

「セイアさん、その辺で」

 

「ああすまない―「先生のおじいちゃんを前にしてどんな顔すればいいかわからない」とか、「どう顔向けすれば」とか、いつまでもくよくよと嘆いていたから、つい腹が立ってしまってね」

 

「セイアちゃん!!」「セイアさんっ!!」

 

「ハッハッハッハッ、仲がいいんじゃな〜」

 

「幼馴染らしいからね……あっ、紹介が遅れちゃった。じいちゃん」

 

 

 

 

 

 

 マッシュは一人一人順番に、丁寧にナギサ達を紹介していく……そう、丁寧に……丁寧に説明するはず…なのだが。

 

 

 

 

 

「こちらが……百合人(ゆりんと)サイアさん、こちらが……えっと、洞藤(ほらふじ)ナギサさん、それでこちらが……もう間違わない、溝口(みぞぐち)ミカさんだよ」

 

「もう全部違いますね!!!」

 

「先生二回目だ、ミカに関しては最初の『み』しか一致していない…」

 

「桐藤に百合園、あと聖園ね!?ねぇマッシュ君、もうわざとってぐらいの間違えなんだけど!?」

 
「……先生にとって、覚えやすい名前の基準ってなんなんだろう」

 

 

 

 

 

 

 マッシュの脳では丁寧かつ真剣に考えてしまってもこれである。思わずテーブルから立ち上がってツッコミを入れるティーパーティーのホスト3名。

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、普段から下の名前でしか呼んでなかったので」

 

「先生モードがなくなったら、ここまでお馬鹿になるの……?」

 

「失礼ですよミカさん、掛け算と割り算ぐらいはちゃんとできますし、安山だってできますよ」

 

「暗算ね!?数学以前に共通語とか、文章力とか鍛えないとさぁ!?」

 

「なーんか緊張というか、緊迫した感じが全部消えてしもうたな……」

 

「もはや先生は、そう言う特殊能力でも持っているんじゃないのか?」

 

「………否定しきれんのぉ」

 

 

 

 

 

 

 シリアスをギャグに変えてしまうマッシュだが、ある意味これも人を助けるにはもってこいの力である。ギャグとは、重役達を和ませる唯一の方法でもある。

 

 

 

 

 

「……き、気を取り直して話の方を……方を―――何から話せばいいんでしたっけ」

 

「ナギちゃんしっかりして? マッシュ君が小さい頃の話を聞かせてもらいにきたんでしょ?」

 

「思いっきり違うぞミカ、それよりも持って重要なことを話す………って、さっき話したばかりじゃないか」

 

「重要なこと……と言うと?」

 

「……レグロさん、我々は……先生の出生を──魔法界でのお二人の扱われ方を、セイアさんからお聞きしているのです」

 

「――なん……じゃって…?」

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

 セイアはミカに、ナギサに全てを話した。マッシュの父親の存在や魔法界……つまりは元の世界での扱いを、マッシュのレグロの扱われ方を…全て。なぜそれを知っているのか、レグロは疑問で仕方なかったが、それ以前に。

 

 

 

 

 

「マッシュの出生…とは、どう言うことじゃ……?マッシュの親を知っておるんか!?」

 

「じいちゃん、落ち着いて」

 
「レグロさん、お気持ちは理解しますがどうか落ち着いて」

 

「マッシュを、あんなに可愛い赤子だったマッシュを捨てた、鬼畜外道のことを知っておるのか!?

 

「鬼畜外道て」

 

「ま、まぁ間違っていないが」

 

「何処のどいつじゃそいつは……会った瞬間に即、顔面に一発叩き込んで、髪…というかもう、全身の毛と言う毛をもう全部抜いてやるわい!!!」

 

「じいちゃんすごいこと言ってるよ、とりあえず落ち着いて」

 
「レグロさん、どうかここは冷静に」

 

「……すまぬの、マッシュ。つい、つい腹が立ってしまってな。デルタちゃんにも、迷惑をかけたの」

 

 

 

 

 

 マッシュのおかげで自殺を思いとどまり、生きることを決意したレグロ。あの場にマッシュがいなければ自分は自殺していたが……それはそれ、これこれ。

 自分の孫を捨てた親について、レグロは知りたがっている。レグロの目は血走っていた。

 

 

 

 

 

 

「……セイアさん、と言ったかな?―─なぜ君は、そこまで知っているおるのじゃ?」

 

「……信じてもらえないかもしれないが──私には、貴方が持っている魔法に似た特殊な力である神秘によって、予知夢を見る能力を持っていたんんだ」

 

「予知夢?」

 

「もしくは夢の中……とも言えるね、相手の夢の中に入り込める、もしくは迷い込んでしまう……まあ、詳しいことはあんまりわからないが……その夢の中で、私は…ある男と会談を行った」

 

「男……マッシュの父親か?」

 

「……その者はイノセント・ゼロと名乗っていた…この名前に、聞き覚えはあるかい?」

 

「い……イノセント・ゼロ…じゃと!?」

 

「じいちゃん、知ってるの?」

 

「魔法界では、有名な……悪の組織の名じゃよ。最近では、知らぬ子も多いかも知れんが…」

 

「レグロさん。よろしければ、教えて頂けませんか……我々にも関わる可能性がありますので、是非知っておきたいのです」

 

「…………ふむ」

 

 

 

 

 

 

レグロは額に汗をかきながら、紅茶を一杯飲み、イノセント・ゼロについて話し始めた。

 

 

 

 

 

 

「…無邪気な淵源(イノセント・ゼロ)、それは遠い昔から存在すると言われていた犯罪組織、あるいはその頭領を張る最悪の魔法使いの名じゃ」

 

「犯罪組織?」

 

「犯罪はもちろんのこと、強盗、暗殺、違法薬物の栽培、禁忌魔法の研究、人身売買、違法魔道具の密売、裏取引……非人道な行為に加え、それらを可能とするために死刑囚や重罪人を何人も手駒にしている……そんな組織だと言う噂があるのじゃ」

 

「……絵に描いたような、悪い集団じゃん」

 

「噂……と言いましたが、表には知られていないのですか?」

 

「奴らは闇……つまりは裏の世界の人間、表に立ち何か悪さをすることはあまりない。裏ではかなりの非道を好き放題やっておると聞くが…当然それらを調査するのはわしらではない。魔法界の最高法定機関である魔法局、わしらからすれば雲の上の人が執り行う仕事じゃ。詳しいことについては、わしもはっきりとはわからないんじゃよ……」

 

「魔法界って、そんな人達がいたんだ……こわ」

 

「その犯罪組織──いや、恐らくはそのリーダーの名を、彼は自分の名前として使っていた。おそらくは偽名か通り名の類だと思うが──」

 

「……その男が、マッシュの……父親?」

 

「………これから話すのは……貴方や先生にとっては気分を害する話かもしれない。――だから、心して聴いてもらいたい」

 

 

 

 

 

 

 

 セイアはレグロに、マッシュがこの世界に産み落とされたその意図を伝えた。禁忌の魔法……完璧な生命、それになるために必要なパーツ――それが、マッシュだと言うことを。

 

 その男とセイア自身が夢で話した内容も全て、レグロに伝えた。

 

 

 

 

 

 

「うわぁ……聞いてたら、もう腹立ってきたな」

 

「アッハハ……あのおばさんが言ってたこと、やっぱり本当だったんだ───はぁ、なんでそんな酷いこと言えるんだろうね」

 

「……救いようがない絶対悪、と表現するほかありませんね。──その存在のせいで、アリウス分校とユスティナ聖徒会が、そして先生が……」

 

「そんな、そんな男が……そんな男が、先生や皆をッッ…!」

 
「デルタ……」

 

「レグロさん、辛いとは思うが……これは全て、事実なんだ。だからどうか……信じて、受け止めて欲しい」

 

 

 

 

 

 

 孫が生まれた理由、魔法を持たない体質の原因、今回のエデン条約に至るまでの経緯の裏側に存在した巨悪の陰謀──

 自らの孫に背負わせるにはあまりにも悍ましく血腥い秘密が語られた末、マッシュと生徒たちは一様に顔をしかめていた。何よりマッシュの育て親であるレグロについては、最も自体を重く受け止め、心の底から溢れる悲しみで涙を流し───

 

 

 

 

「―――――じゃ」

 

『?』

 

 

 

 

 

 

 

「上等じゃぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「「「「「「⁉︎」」」」」」

 

 

 

 

 

ていなかった。寧ろ溢れ出す怒りと敵意で覚醒状態になったレグロの全身から、よくわからない気迫のようなオーラが溢れ出している。

 

 

 

 

 

「なぁにが完璧な生命じゃ!?いい年をこいた大人がガキ臭い題目掲げて馬鹿みたいにイキリ散らしおって!!長く生きるのって辛いししんどいことだってあるんじゃよ、魔法で若作りしてどうこうなるもんじゃないんじゃバーカ!!」

 

「言葉の重みが違う…」

 

「わしの孫の心臓が欲しいだと!?なら対価として、これまで傷つけた人の命だけ苦しみ尽くして、罪を償ってからにしろって話じゃわい!!そもそもそんなやつのせいでベアトリーチェだかゲマトリアとかいう大人共が力を手に入れてしまったのじゃろう!?余計なことしよってからに!!」

 

「まさにその通り」

 

「マッシュ!!もしイノセント・ゼロに出会ったら……その瞬間、問答無用で殴り飛ばしてしまえ!!なんなら腕輪外してもいいから!!デルタちゃんもエコーちゃんも遠慮はいらん!!君たちが傷ついたのも元はと言えばイノセント・ゼロのせいじゃ、もし直接相まみえることがあったら容赦なくぶっ飛ばしちゃっていいからね!!」

 

「OK」「は、はい…!!」「し、承知、しまし…た?」

 

「ず、随分とやる気だね…先生が心配ではないのか?」

 

「心配なのは心配じゃ……しかしの」

 

 

 

 

 

 

レグロは自信満々に、胸を張ってはっきりと言う。

 

 

 

 

 

「わしの孫が、命を命として見てない奴なんかに、負けるわけがないんじゃよ。それにマッシュは一人じゃない。シャーレにいるサオリさんやワカモちゃん、ゲヘナで話したヒナちゃんやマコトさん、さっき正義実現委員会で会ってきたツルギさんやハスミさんやトリコちゃん、そして今の君たち……生徒の皆が、マッシュについていてくれるからの。寧ろ、負ける心配をするだけ無駄ってもんじゃ」

 

「「「「「「…!」」」」」」

 

「わしを狙ってくるなら上等じゃ、殺すんなら殺してみるがいい……組織の末端の木っ端に至るまで、その全員を末代まで呪ってやる!いっそのこと、寝ても覚めても化けて出てやるわい!!」

 

「わーお……アハハッ⭐︎ マッシュ君のおじいちゃん、メンタル激つよだね」

 

「マッシュを育てているうちに、わしの精神は鍛え上げられた……マッシュがいてくれて、皆が元気ならわしは他に望むものもない。育て親舐めんなこの野郎、じゃ」

 

 

 

 

 

 

 レグロは憤懣とした表情を浮かべながら、また紅茶を飲み干す。イノセント・ゼロがどんなに外道であろうが強かろうが、マッシュが負けるわけが無い、そう確信し紅茶を飲み干したところで、レグロはあることに気づく。

 

 

 

 

 

「……セイアさん、さっき、予知夢について話をしてくれたが……予知夢があった、とはどういうことじゃ?」

 

「……実はね、私にはもう――予知夢と呼ばれる力がないんだよ」

 

「……無い? なんで、また…」

 

「無理をしすぎて、力が弱まった…もしくはなくなった、どっちかだと思うよ。まあ……無くなって安心している私もいるよ――もう、あんな未来を見ないで済むんだからね」

 

 

 

 

 

 

 終焉を迎える未来(バッドエンディング)。条約締結直前の時期に、セイアはそれを何度も見ていた。その度に精神が削られ、不眠症を患ってしまった。

 

 

 しかしそれをもう見なくても済む……そう考えると、自然と安心する自分もいれば、力を失ったことに対して不安があるのも事実だった。

 

 

 

 

 

「……辛かったんじゃな、セイアさんや」

 

「――ああ、かなりね……でももう、いいんだ。その辛い夢も、運命も……先生が全て塗り替えてくれたからね」

 

「――よく頑張ったのぉ……セイアさん」

 

「……先生の力あってこそ、さ」

 

「ほんと、先生って何でもかんでも筋肉で解決してくれるよね〜…私もナギちゃんも、それで救われたし」

 

「……ええ、本当に」

 

 

 

 

 

 セイアは自分が見た最悪な未来を、ナギサは自分自身の考えや他者との関係性を、ミカはミカ自信を、力づくで救われた。トリニティそのものも、マッシュは救った…なんなら、キヴォトスの運命も一度救った……そんなマッシュの関係者だからこそ、ミカはレグロに聞きたかった。

 

 

 

 

 

 

「――おじいちゃんはさ、私達のこと、どう思ってるの? マッシュ君から聞いたんでしょ?……私達が一回、マッシュ君をとんでもない目に合わせたり、命を奪おうとした、って」

 

「……そうじゃな、確かに聞いた……しかし君らはそれを反省し、罪を償おうとしている。違うかの?」

 

「……確かに、今は自分が許せない…だから償いを続けてる、けど」

 

「ならば良いんじゃ……これはわしの勝手な意見じゃが、『罪を犯し、それを反省し償おうとする者』『罪を犯してもなお反省せず、再犯に手を染める者』では、大きな差があると思っておっての……わしは、前者が圧倒的に上であり、偉いと思っておる」

 

「偉い……ね」

 

「ああそうじゃ――君らは偉い、それはワシが認めよう。それに……マッシュからしてみれば、もう終わったこと…そうじゃな?」

 

「だね、それに僕も大概のことはしてきたし、メンタルも救ってもらった恩もある……これで……ミンミン?ですね」

 

「Win-Winね?」

 

「そう、それ」

 

「――ワシは大人、子供同士の問題に、大人がいちいち口を挟むのも……何か違うと、思うからの。……まあやりすぎたら流石に口を挟むけどね?」

 

 

 

 

 

 

 レグロは大人、だからこそだろうか……レグロの言葉は3人の心に突き刺さり……まだ自分達は子供なのだと思い知らされた。それと同時に確信した――この人は、マッシュと同じだと。信じていい、大人だと。

 

 

 

 

 

 

「ワシはひ弱なジジイじゃが……君らの幸福を、幸せに願い祈ることはできる。今後ともぜひ…元気でいておくれ」

 

「……私達も、おじいちゃんの幸福を…祈るね⭐︎」

 

「皆に幸あれ……ですね」

 

「――ふふっ、こんな会話が、ここで話せるなんて思いませんでした」

 

「本当にね……これも、先生パワーかな?」

 

「シュークリームパワーか筋肉パワーだと嬉しいな」

 

「それも、魔法の代わりに先生が手に入れた力の一つかな?」

 

「マッシュクオリティ、ということで」

 

「何それ〜……フッ…アハハッ!」

 

 

 

 

 

 ミカが笑い、皆が笑う。そう、これでいい……子供は笑っているのが一番。笑うのが仕事であり……それを見るのがレグロの幸せ。

 

 

 

だから、こそ

 

 

 

 

(―――マッシュは、元の世界におらん方がいいのやも……しれんな)

 

 

 

レグロは、そう思い始めていた。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「忍者……すごい存在だとは聞いていたが……ここまで?」

 

「半分は主殿のおかげです!お祖父様が考案されたという主殿の筋トレメニューは、とてもいい修行になりますので!!」

 

「お祖父様て……――って、あれやったの?まじで?スッゴ……飴ちゃんいる?」

 

「欲しいです!」

 

「ついでにジュースも。デルタちゃんとエコーちゃんも遠慮せず飲んでいいから」

 

「わーい、ありがとうございます!!」

 
「あ、ありがとうございます」
 
「ありがたく頂戴致します」

 

(――素直〜、そしていい子達〜………この子の主って……本当に、マッシュは変わったの〜)

 

 

 

 

 

 トリニティ総合学園での話が全て終え、レグロとマッシュはシャーレに戻ってきていた。アリウス生徒たちやワカモは別件で他学園へ派遣されているようで、その場にはレグロとマッシュ、そしてイズナ、デルタとエコーしかいなかった。

 

 

 

 

「あっ、そういえば。お爺様は、どうやってここに?」

 

「どうやっても言われても、それはわしにもわからんの…これまで2回キヴォトスに来たことがあるんじゃが、目が覚めたらここにいる、というのを繰り返しておるんじゃ」

 

「そこがいちばんの謎だよね。爺ちゃんが使った魔法……とは思えないし。アポなしでいきなり来ちゃうってことは、誰かが意図してやってるか、自然に起きてることなのか……それくらいだよね」

 

「ワシもそう思う…それに、こういった事ができる大掛かりな禁忌魔法というのは、必ず一定の代償が支払われる物じゃし、それを支払ってまでマッシュをここに連れてきたり、その上わしを此処に招くような意味が分からんし……うーん」

 

「はっ……もしやじいちゃん、頭の毛を代償にして?」

 

「これは元からだから、そこ触れないで」

 

 

 

 

 

 

 次元を移動する魔法というものも、神覚者程度であれば覚えられるかもしれないが……それは強者のみに許されること。レグロにある顔の線は一本、お世辞にも禁忌魔法を扱えるほどの力は持っていない。

 

 

だからこそ───力がないからこそレグロはこれを、マッシュに聞いておきたかった。

 

 

 

 

 

「のお……マッシュ、お主はここにいて…幸せか?」

 

「もちろん、いろんな人たちと友達になれるし、仲間もたくさん増えるし」

 

「そして……夢を、応援している」

 

「全部では無いけど、イズナちゃんの夢は応援してるし、絶対に叶えられると思う」

 

「そして生徒達は、マッシュと暮らしていて……楽しい」

 

「イズナも、主殿と過ごせて嬉しいです!」

 
「私達も、先生とともに"普通の学園生活"を過ごせることを喜ぶとともに、シャーレの一員であることを誇りに思っています」
 
「わ、私も!先生のおかげで、自分の役割に意味と自信を見出すことが出来ました…!」

 

「………そう……じゃからな、マッシュ。マッシュがいいのなら――このままずっと、この世界にいてもいいんじゃ無いかと、ワシは思うんじゃ」

 

「……え」

 

 

 

 

 

 レグロは真剣に、かつ真面目に……そう言った。突然のことにマッシュが困惑していると、レグロは言葉を続けた。

 

 

 

 

 

「元の世界には、はっきり言ってマッシュの味方はおらん……民衆のほとんどが、お主のような存在を嫌っておる。そんな世界にいるよりも……ずっとこの世界でいた方が、マッシュのためだと…思うんじゃよ」

 

「……でも、それだとじいちゃんに会えないじゃん」

 

「それは、そうじゃがな?」

 

「……それはいやだよ」

 

 

 

 

 

 誰からも嫌われている世界よりも、誰からも好かれる世界にいた方が、圧倒的にマッシュのためになることも事実だろう。しかし彼にとっては、レグロと別れる選択肢を選ぶ理由はない。マッシュは、キヴォトスで生き続けることを否定していた。

 

 

 

 

 

「……い……イズナは、主殿がずっとお側にいてくれるのは、とっても嬉しいです」

 

「ほら!イズナちゃんもこう言っていることだし―『でも』」

 

「イズナは……主殿がそれで、本当に幸せになれるのかな…って思います。唯一の家族がいなくなることって、すごく悲しくて、さみしいことだと思いますから」

 
「──不肖デルタ、僭越ながら申し上げますが…例え魔法界が先生やレグロさんに対してどれだけ残酷でも、お二人の繋がりを手放す理由にはなり得ないと、私は考えます」
 
「そうです……そうですよ!家族と一緒に平和に暮らす、当たり前の日常が実現できないなんて…きっとそれは、世界のほうが間違ってます!」
 
「私達が、お二人の味方になります。お二人が全力で笑える、大手を振って生きられる世界になるまで、私達がこの世界で先生をお守りすることを誓いましょう。だからどうか、どうか───お二人には、これからも家族であり続けてほしいのです。家族がいなくなるということは───とても、苦しいことですから」

 

「………そうだね、じいちゃんにずっと会えないのは、僕にとっては苦しいから」

 

「マッシュ……」

 

「……それにさ」

 

 

 

 

 

 マッシュはこの世界に残っていたい、しかし……帰らなければならない。帰った後に、やるべきことが、最近になってできてしまった。

 

 

 

 

「元の世界には、イノセント・ペロって人がいるでしょ?それを野放しにした状態でいるのは……じいちゃんや皆にとっても危なすぎるでしょ?」

 

「イノセント・ゼロね?……そ、それはそうなんじゃがな?」

 

「それにさ……これを言うのは恥ずかしいけど。あの世界は僕にとって辛い世界かもしれないけど――あそこはどう足掻いても、僕が育った世界で、僕が生まれた世界で……じいちゃんと僕の故郷なんだ」

 

 

 

 

 

 元の世界、魔法界──そこは確実にマッシュとレグロの故郷であり、彼が育った場所。

 今の魔法界にも、マッシュと同様に魔法不全や魔力を失う病気に苦しめられ、迫害される者が存在している。
 そんな場所を外道に好き放題されるのは許しがたいし、苦しむ人々を見捨ててキヴォトスに引きこもっても、事態は何も解決しない。

 

 

 

 

 

「それにその人が今も、これまでのベアトリーチェみたいに人の命を奪ってるって思うとさ、腹が立ってくるんだ。先生肌が板についちゃった感もあるけど」

 

「………マッシュ」

 

「ベアトリーチェにも言われたんだ、『世界はお前に優しくしなかった、なのになんでそうも手を伸ばす?』って。優しくされなかったからこそ、その痛みが分かるからこそ、同じ痛みに泣いてる人を助ける方法が分かるから、全力で周りに優しくしちゃおう――そう思ったんだよね」

 

「……………」

 

「だから、じいちゃん……帰る方法が見つかって、こっちのあれこれが終わった後、絶対に帰るよ。でも僕のことを思ってくれたことはとっても嬉しかった……ありがとう……それから、ごめん」

 

「…――いいや、いいんじゃよ。それが……マッシュが選んだ選択なら、ワシが否定するわけにはいかんからの」

 

 

 

 

 

 

 レグロは、マッシュの選択を優先する。自分で選択し、それに従って日々を過ごしていく……それは紛れもない子供の成長。レグロの涙腺は完全に開き切り、頼もしいマッシュの姿が夕日の色に輝いて見えた。

 

 

 

 

 

 

「――主殿」

 
「……先生」
 
「先生……!」

 

「イズナちゃん、デルタちゃん、エコーちゃん……そういうことだから、しばらくお願いね。これからも、宜しく」

 

「………―っ、はい!!このイズナ、主殿の忍として、友として、仲間として……絶対、絶対に、主殿に寂しい思いをさせません!!」

 
「お任せ下さい。貴方に救われて光を得たあの瞬間から、果たすべきことも、守るべき相手も、既に明らかです」
 
「わ、私にも出来ることがあったら、遠慮なく言ってくださいね!」

 

「それはありがたいのぉ〜……三人とも、マッシュを、よろしくの」

 

「はい…!」

 

「……いや〜それにしても……マッシュがここまで、大人に近づいておるとのぉ〜…!!」

 

 

 

 

 

 レグロが感動していたその時……レグロの体は、光り始めていた。元の世界に帰る前兆……マッシュは『あっ……』と声を漏らす。

 

 

 

 

 

「――マッシュ、お主はこの世界の柱であり、皆の頼れる先生……しかしな、同時に同じ子供でもあるんじゃ。じゃからな…マッシュよ――

 

 

 

 

 

 

 

──青春を大いに楽しみ、喜び、笑いなさい!…それが、お前とじいちゃんの、約束じゃ!

 

「―――合点」

 

「…イズナちゃんや、ほとんど喋れなかったが……また今度、お邪魔することがあるやもしれん。その時は、またよろしく……そして、マッシュをよろしくの。デルタちゃんとエコーちゃんもありがとう、風邪を引かんように気をつけて休むんじゃぞ!」

 

「お任せください!」

 
「ご忠告いただき感謝いたします…レグロさんも、どうかお元気で」
 
「さよーならぁーーっ!!!」

 

「みんなにも、ありがとうと伝えておいておくれ。――マッシュよ、元気でな!!!」

 

 

 

 

 

 元気よく、今作れる笑顔を精一杯作ったまま、レグロは消えた。元の世界に帰ったのだろう……そう安心すると同時に、何処か悲しくなってしまったマッシュ。

 

 

 

 

「……イズナちゃん、デルタちゃん、エコーちゃん」

 

「はい、なんでしょう」「どうかしましたか、先生」「先生……?」

 

「…………ハグしても、いいかな……心細くなってきちゃった」

 

「――どうぞ、どうぞ!!イズナにできることなら、なんでも行いますので!!」

 
「それで先生が、少しでも落ち着くのならば──どうぞ」
 
「辛いときは無理して隠さなくていいんです、寂しかったら甘えていいんです。……まだ私達は心許ないかもしれないけど…寂しい時は、頼ってください!」

 

「………ありがとう」

 

 

 

 

 レグロ・バーンデッドinキヴォトス……マッシュの祖父による三度目のキヴォトス入りと学園行脚は、無事に終了した――寂しさはあるものの…少しスッキリしたマッシュ。

 

 

 

 

 

(――子供……なら、楽しむしかないよね。青春を)

 

 

 

 

 

マッシュは、先生として頑張りつつも…―思いっきり青春を楽しむことを、決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――イズナァ!!腹を切りなさい!!」

 

「ワカモ姉様ばっかりでずるいです!!たまには私だってハグしたいんです……えいっ!!」ギュッ!

 

ぬぁぁぁぁぁ!!!!

 

「わ、ワカモ!空気を読んでくれ―いたっ、なぜ今噛んだ!?」

 
「……これって私達も悪いの?」
 
「さぁな──"触らぬ妖狐に祟りなし"だ。向こうの気がこっちに向いてないうちに逃げるぞ」

 

(……………しまらないなぁ〜)

 

 

 

 





今日の我が家



『お前ら、魔法のカードは持ったか⁉︎ いくぞぉぉぉ‼︎‼︎』

弟妹先生『ウォォォォォォォォキサキちゃぁぁぁぁぁん‼︎‼︎』

『じゃあコンビニ任せた、私は、動けん』



こんな感じでした……待ってたんですよこの時をぉ‼︎ お給料の二割、使うしかねぇ‼︎


久しぶりですが、コメントと評価、どうぞよろしくお願いします。コメント一つで私は元気になります。

百花繚乱後に見たい話

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