肌寒くなる季節ですね、私それぐらいになるまでこれを書き続けたんですね……もしかして毎日投稿してる私ってやばいんですかね?
まあ、そんなことは置いて……本編へ、どうぞ。
「っ、やめろッ!!」
『……退け、第八分隊長』
「それ以上やれば、ヘイローが壊れるぞ!?」
「ふん……」
殴り飛ばされて転がったアズサに駆け寄る。全身の痣と傷から血を流して震えるアズサの前には、黒いスーツを着た謎の大人……いや、岩の怪物──ベアトリーチェが配下とするゴーレムが立っている。奴はアズサに限らず、多くのアリウス生徒に躾や教育という名目で苛烈な暴力を加えていた……ああ、またこの夢か……これで、何回目だ。
『こいつは我々に反抗した、罰則に従って懲罰を行うのは当然のことだ。もう一度云う。退け、第八分隊長。退かなければ貴様の隊も懲罰の対象とする――同じ罰を喰らいたいのか?』
「っ……!」
「ゴホッ、こほっ……笑わせ、ないで……誰が――」
『ほぅ、まだそんな軽口を叩けるか、身体は頑丈な様だ……それなら』
「待てッ!待ってくれ!」
『何だ?やはり、お前も反抗するつもりか――』
「――私がッ!私が……指導する!」
『何?』
その言葉に幹部は目を細める。私は俯いていた顔を上げ、歯を食い縛った。目に入る岩の拳は刺々しく、これまでの「懲罰」によって赤黒く黒ずんでいる。もうこれ以上は、誰も傷つけさせない。
「……また無駄な事を」
「ヒヨリも、ミサキも私が指導した生徒だ!姫だってそうだ……!皆、優秀な戦績を残しているだろう!?こいつも、アズサを私に預けてくれたら、一人前の兵士に育て上げてみせる!」
『……ふむ』
「だから任せてくれ、私が……私が責任を持って、コイツを指導するから…だから…!!」
『駄目だ。我々に課せられた命令は、マダムに反抗する者に教育を施すこと……貴様の意見は却下する』
「…そ、そんな…!」
『だから退け……さもなくば――』
怪物が再び、腕を振り上げる。体が動かなかった……動けば、アズサがまた殴られるから……家族が泣くから。
……もう嫌だ、……誰でも、どんな奴でもいい………家族を、仲間を…私を――――助けて
『――おい』
そう願った時
いつも、彼が現れ―――
「っ…………!!!!!」
夢が覚める。
(……また、あの夢を見た。先生がいつもいいところで、都合よく私達を助ける……そんな夢を――そんな、ご都合がすぎる夢をみる自分に……本当に反吐が出る)
「サオリン〜?手が止まってるよ〜?」
「―あっ…すまない。少し、考え事をしていた……そしてその呼び方はやめろ」
「可愛いからいいじゃ〜ん♪……それで、大丈夫?無理しちゃダメだよ」
「気にするな……任務に戻る」
「任務っていうかお仕事ね?ただの雑草抜きだけど……な〜んで雑草ってこんなにすぐ生えるのかなぁ」
トリニティ総合学園内にて。サオリが率いるチームカスタードは、ミカとともに雑務を行っていた。雑草抜きから中庭や生垣の整備・掃除などさまざまだが、指定された範囲が広いこともあって相当に体力を消耗する仕事でもある。これを体力トレーニングに丁度いいと取るか、ボランティアとしてやりがいがあると取るか、ただひたすら苦労の係る仕事と取るかは状況によるだろう。事実、サオリ達アリウス生は積極的に活動しているが、ミカは余り乗り気ではないらしい。
「…………」
「…ねえほんとに平気?そんな気難しそうな、抱え込んでるような顔されたら心配しかしないんだけど」
「……そこまで、顔に出ていたのか…すまな『謝るのもなーし』」
「何もされてないのに、謝られるのは嫌。私はただサオリが心配なだけなんだからさ」
「…………そうか」
「それで何を悩んでるの?……私に話せない事?」
「…こればかりは、その、誰にも…相談できない」
したくないというのが本音、あまりにも都合が良すぎる夢、そんな夢を誰かに話せるわけもない……それにサオリは、この夢を自分の願望だと、散々やらかして来た自分が「かつてそうして欲しかった」という烏滸がましい願いが見せている物だと、勝手に思い込んでいた。
「……それはマッシュ君にも?」
「先生には、余計に相談できない事だ」
「私が言うのもあれだけどさ、何でもかんでも一人で抱えんじゃダメだよ。あの先生だって、一人で抱え込んだ結果大変なことになっちゃったんだし」
「…………それも私のせいだ、余計に無理だ」
「むぅ〜サオリンの頑固者〜」
「………少し、頭を冷やしてくる」
「ああちょっと…!……んもう…」
雑草の入った袋を持ちながら、サオリはその場から少し離れていく。今のサオリはミカからしてみれば大事な友人、そんな友人が暗い顔をしている……それを黙っている見ているほど、今のミカは冷たくない。
「このまま私が言い続けても結果は変わんないだろうし……うん、やっぱりここはマッシュ君に頼っちゃおう」ピッ
一番身近、それでいて一番に解決してくれそうな相手といえばマッシュ。それしかないと感じたミカは、マッシュに通話をかけた。
「あっマッシュ君?――サオリンの顔色が悪くて曇ってるんだけど〜」
『詳しく教えてください』
「わぁ食いつくの早っ……えっとね?」
ミカは知っている限りのことをマッシュに話す。サオリは常日頃から、滅多に明るい表情を見せることないが……今回ばかりは神妙で暗い表情があまりにも目立ち、ミカにはどこかサオリの生気が薄れているようにも思えた。
『……教えてくれてありがとうございます、早速色々と対応していきます』
「うん。…できれば
『勿論』
「じゃあそう言うことで――サオリンをよろしくね」
『合点承知です』ピッ
通話が切れるの確認すると、ミカは作業に戻る。ここから先はマッシュとサオリの問題、自分が入る余地はなく意味もない。なので、彼女は大人して見守るだけだ。
「――ま、抱え込むなとか私が言えることじゃないけどね〜」
「──というわけで、ティーパーティーからも許可が出ました。遊びましょうかサオリさん」
「何がどうしてそれが認められた!?そして何故私は急に拉致されたんだ!!?」
ミカから連絡をもらったマッシュはその翌日、仕事中のサオリを拉致し、以前リンのストレス発散に付き合った場でもある複合スポーツ施設へと連れて来た。
「サオリさん、何か悩んでることがあるんですよね?」
「っ…!どうしてそれを……いや……聖園ミカか…!」
「今すぐにでも話して貰いたいんですけど、落ち込んだまま悩み事を話すのは……こう、結構しんどいと思うので――とりあえず気分転換で遊んでから解決しましょう」
「い、いや、しかしだな…?私にはまだやるべき仕事があるんだ……それに、あの場にはカスタードのみんなが…」
「あ、その点は大丈夫です、ほら」
「…?」
マッシュは端末を取り出しサオリに見せる。そこに写っていたのは、チームカスタードのメンバー達とミカ──加えて補習授業部までもが、眩しいほどの笑顔で親指を立てたグループショット。片隅には『リーダー、楽しんできてね✨』と文字が書き込まれている。
「……そ、そんな…」
「ですから、今日はとことん遊びましょう。それを、みんなが望んでいるんですし」
「………そこまで言うのならそうしよう。皆の気遣いを無碍には出来ない」
「決まりですね、ではでは早速遊びましょう。何からいきますか?」
「――すまない先生」
「?」
「私にはここにあるものが……そもそもどんなものなのかすら、わからないんだ……アリウス時代は、娯楽なんて一切なかったから」
「企画変更。夜通し遊びますよ。僕の権限なら"生徒のメンタルヘルスの回復"を理由に外出時間だって延長できます。利用料金も何も気にせず、今は頭を空っぽにしてとことんまで遊び尽くしましょう」
「そこまでする必要があるのか!?!??」
こうしてサオリはマッシュの案内の元、数多くのスポーツに触れることになった(強制)。
最初に訪れたのはボウリング場。偶然にも人の入りは疎らであり、周囲を気にせず全力での投球を楽しめる状況が整っていた。
「これを、あのピンと呼ばれる白い的に投げればいいのか?」
「はい。あれを全部一撃で倒したらストライク、二回で全部倒したらスペアという形で高得点が取れます」
「……成程……一撃で、仕留めればいいんだな」
「そんな殺意剥き出しじゃなくても大丈夫ですよ、戦闘じゃないんだから」
サオリは呼吸を整え、ゆっくりとボールを軽く持ち上げると――
「…フンッ‼︎」ドッパァァァァァン!!!!ガシャァン!!!
本来の下投げではなく、野球のような上投げで思いっきり投げつけた。ピンは大きく弾け飛んでレーン外にまで散らばり、ボールが飛び込んだレーン最奥のピンセッターは衝撃で悲鳴を上げたようにも聞こえた。
「ごめんなさい説明不足でした、下投げって言うのを忘れてました」
「そ、そうなのか……すまない」
「いやいや、間違いは誰にでもありますよ。あっ、ピン全破壊でも高得点になるんだ……まぁでも、僕もサオリさんに負けないように頑張るぞー」
(………何故だ、ものすごく嫌な予感がする)
マッシュはサオリに負けまいと、ボウリングの球を軽く持ち上げ、構を取り……深呼吸。軽く前に走り、姿勢良く球を下投げで投げる。
ドゴォォォォォォォォォォォン‼︎‼︎
その結果、ボールは猛スピードでの滑走によってレーンを抉りながら、レーン全体をピンセッターもろとも破壊してしまった。力加減が下手なマッシュの腕力もそうだが、テンションが上がって余計にコントロールができなくなっていた状態であることも原因の一つだった。いずれにせよ、本来ボウリングとはこのようなゲームではないし、レーンを破壊する行為は反則やマナー違反であるためあってはならない。
「…………やってしまった」
「まさか壁ごと破壊してしまうとは――流石だ先生、負けてしまった」
「いやこれ、勝ち負けとかの話じゃなくて……はっ」
「これが…遊びか…✨」
「………――次のやついきましょうか、今度はダーツってやつなんですけどね」
レーンを破壊してしまったことについてスタッフに謝罪し、後で弁償することで手を打ったマッシュは、サオリを楽しませるためありとあらゆる遊びをサオリに紹介した。ダーツやサッカー、バスケットボールやバレーボール、カラオケやテニスに至るまで、二人はとにかく遊びまくる。
時間を忘れ、目につくものに次々と飛びつくその様は、まさしく子供のそれ
「先生、次は、あれに行こう‼︎✨」
(……既視感あるなと思ったら、アズサちゃんだった…なるほど)
マッシュは自分の中にある体力を使いに使い、サオリの遊びに付き合い続けた。
そうこうしているうちに、時刻は早くも午後6時。流石に遊び疲れたのか、サオリは施設近くにあった公園のベンチで休むこととなった。ちなみにマッシュはまだまだ元気である。
「何故だろうな……気分がいい、爽やかな気分だ」
「これが娯楽の力って奴です、凄いでしょ」
「……奴が娯楽を禁じた理由が、今になってわかった……ある意味一種の麻薬だな」
「まあ遊びって一回ハマっちゃったら中々離れられませんからね。メリハリが大事です」
「それでも……いい体験だった、ありがとう先生」
「いえいえ」
マッシュはサオリの隣に座り、空を見上げる。彼はあえて急かすことなく、サオリの口から相談が来ることを待っていた。
――そして、その時は来た。
「……最近何度も、夢を見るんだ」
「夢」
「……幼い頃の記憶でな、奴が作り出したあのゴーレムに暴力を振るわれかけた時、私はいつも…誰かに助けを求めていた。夢の中ではアズサが殴られていて、私がアズサを庇う。あの頃の弱い私では、殴られるアズサや分隊員も、ニーナや他の者たちも守れずにいた」
「……」
「その時は誰も来てくれなかったが――最近見た夢の中では、いつも、先生が来てくれるんだ」
「ほうほう……何だか恥ずかしいですな」
「……そんな夢を見る自分を、私は許せない。私は、私自身を嫌悪し、軽蔑している」
「嫌悪?何でまた」
「烏滸がましいと思わないか?自分が傷つけた相手に何度も助けられ、返しきれないほどの恩を受けた……なのに私は、また助けられることを望んでいる。そんな身勝手な自分が、嫌いだ」
罪悪感、あるいは罪の意識という呪い。それは、ずっとサオリの中で蠢いていた感情。マッシュがサオリを許し、アリウスを許したと言う事実からしばらく経った後でも、それは何度も彼女を追い込んで行っていた。
「しつこいのはわかっている、レグロさんまで私を認めてくれたというのに……それでもダメなんだ。私は、私を許せない………先生を追い詰め、苦しめた……先生の力なくしては、誰一人守れない私を」
「………」
「夢の内容は、これだけじゃない……先生を本気で殺そうとした自分や、殺意や敵意を向けている自分が、何度も、何度も、何度も何度も思い出されて、自分の前に現れて、私を責め立てるんだ――私は自分を許すことができない………だから、だから…」
「これからも苦しむ……ってのはダメですよ、サオリさん」
「…っ」
「自分の事を許せない……それは、ちょっとわかります。僕もみんなを泣かせた自分を、完全に許したわけじゃ無いですし」
自分を自分で許すこととは、言うは易し行うは難し。マッシュもまた、過去に自分がやらかしてしまったことに対しては、許していなかった。
「自分の事が今許せないのなら…これから先、許せるようになるまで努力を重ねる、っていうのも一つの手だと思います」
「許せるように…?」
「言い方を変えれば、自分をもっと好きになるとか。自分が誇りに思えるもの、胸を張って周りに伝えられる自分の強みや得意なことを探して伸ばしていくんです」
「……それは」
「今すぐに、なんて言いません。ゆっくりと、じっくりと、行動していけばいいと思いますよ」
「……気持ち悪いと、思わないのか?こんな夢を見る、私を」
「ぜーんぜん、むしろ夢の中でも僕が皆を助けてるって聞いて、ちょっと嬉しくなったぐらいです」
自分を許せるように、これから行動していけばいい。極論でもあり偽善かもしれないが……マッシュはこれをサオリに勧めた。許せないのなら許せるように…許されるように、そうすれば、うまくいくと、彼は考えていた。
「どんな夢を見ようがそれは個人の勝手ですし…それを気持ち悪いっていうのは、ほら、あんまりだと思います」
「……お前は、なぜ、そこまで……人に、寄り添えるんだ……?」
「困ってる人は寄り添ってなんぼって言いますし、不幸な人を見ると力づくにでも幸せにしてやろう、って思っちゃうんですよね。最近は尚更そう思えるようになりました」
「脳筋がすぎるぞ」
「それが僕の取り柄なので……まあともかく、サオリさん」
マッシュはサオリの方に顔を近づけ、力強く答える。
「僕が好きなサオリさんを、嫌いにならないでください。それに、夢の中だろうが現実だろうが、僕は貴女を助けますよ……だってほら、サオリさんもお姫様ですし」
「―――はっ……ハハハッ…!……本当に……お前は……変な…奴だ」
「だからこその僕なので」
「……マッシュ」
「はいはい」
「……ありがとう、これで、何度目かはもうわからないが」
「全然、どういたしまして。じゃあ次はカラオケで延長線と行きましょう、アビドスの皆と一緒に歌いに行ったオススメのお店があるんです」
これから先、あんな夢を見ようと、自己嫌悪で自分が嫌いになろうと――そんな自分を愛してくれる者がこの世にいる、寄り添ってくれる。そう感じ取ったサオリは――夢を見ることが、怖くなくなった。
(……姫―――私もいつか、なれるのだろうか)
なれるのか?じゃなくて……なるんだよ!!!(血涙)って感じですね、はい。
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次回はアツコちゃん回です、お楽しみに。
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