透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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ギャグを買いてたつもりだったんです……でもいつの間にか湿度が高いと言うか、卑しい感じになっちゃいました。

年下と年上の関係って、なんか萌えませんか?


マッシュ・バーンデッドとお花のお姫様

 

 

 

「オシゴト、オワラナイ」

 

「溜まりに溜まってしまっていたからね」

 

「ヘッタハズナノニ、ナンデフエタノ…」

 

「赤ん坊化した先生の案件や、先生を狙おうとしたあの大人達の処理やら傭兵の情報やらのせいだな」

 

「………サオリさん、また遊びに『行かないぞ』」

 

「今回ばかりはダメだ。ここで終わらせておかないと、この先苦労するぞ」

 

「ウッ」

 

「……私達も手伝うから、ほら、手を動かす」

 

「………手は動かしてるもん」

 

「手首だけ動かしてどうするの、屁理屈言わずにさっさとやる」

 

「…うす」

 

 

 

 

 

 

 某日、シャーレ内でマッシュはいつものように仕事を行なっていた。最近はここに来た時と比べて比較的に仕事量が減ってきていたのだが、少し前に起きた赤ん坊騒動の処理が立て込み、マッシュは苦戦していた。

 

 

 

 

 

「……あれ、そう言えばヒヨリちゃんとアツコちゃんは?」

 

「ヒヨリならさっきワカモに連れて行かれてた。何でも昨日の夜中に冷蔵庫を漁ってたのがバレたみたい」

 

「だから冷蔵庫があんな風になってたんだ……ワカモちゃん凄い怒ってたのもそれが原因ってことね」

 

「アツコの方は……わからないな。ミサキ、何か知らないか?」

 

「ウッキウキで外に行ったのは見てたよ」

 

「ウッキウキ……はっ、まさか恋人が!?」

 

「なわけないでしょ、まだ人生ゲーム引き摺ってんの?」

 

「帰ってくるまで……まあ頑張りますか……煩悩を捨てて……っと」

 

「煩悩ってそうやって捨てるもんじゃないでしょ」

 

 

 

 

 

 

 マッシュは背筋を伸ばし先生モードを発動すると、煩悩を捨て、仕事に集中した……如何なるものも、今のマッシュの意識を惑わすことは

 

 

 

 

 

「先生、近くの市場でシュークリーム早食い競争が開催されるらしいんだけど、行かない?」

 

「行く」[先生モードがオフになりました]

 

「やった♪」

 

「煩悩を捨てるってさっき言ったよね!?」

 

 

 

 

 

 煩悩如きがシュークリームに勝てるはずもなく、マッシュは先生モードを切ると、すぐさま席を立ちアツコへと駆け寄る。

 

 

 

 

「ダメだ先生!!早食い競争は仕事が終わってからにするんだ」

 

「「ええ〜」」

 

「ええ〜じゃない!二人して同じ顔をするんじゃない!てか本当に似てきたな!」

 

「大丈夫。後で全部終わらせます」

 

「そう言ってきた結果がこれでしょ?先に終わらせておかないとあとあと絶対に後悔する……って、私この前言ったよね」

 

「ウギギッ…」

 

「とにかく、今日は絶対に行かせられない」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 サオリとミサキの目は本気……というよりも、母親が息子に『友達と遊ぶ前に、宿題を片付けなさい‼︎』と言う感じに近い。力づくにでも止める……そんな勢い、ならば話は簡単。

 

 

 

 

 

「………!!」ダッ!

 

「あ、待て、こら!!」

 

 

 

 

パリィィィィィィン‼︎‼︎

 

 

 

 

 

 二人は同じタイミングで後ろへと走り出し、そのまま窓ガラスを突き破って外へと脱出。マッシュはアツコを空中で抱えたまま着地し、早食い会場へと走り出した。

 

 

 

 

 

「コラ二人とも‼︎………行ってしまった……」

 

「……アツコ、随分アグレッシブになったね。先生の影響かな」

 

「……いや、元々あんな性格だったのかもしれない。今までずっと押さえつけてきた情動が、先生との出会いで一気に解放されたんだろう」

 

「……いいことだよね、これは。喜んで、いいんだよね」

 

「ああ……――しかし、先生と同じ思考の者が二人いると考えると…アズサの件もある。何というか、不安だ…」

 

「それは……まあ」

 

「――だが、姫が幸せなら…それでいいのかもしれないな。ニーナやチームカスタードにも手伝ってもらうとしよう」

 

 

 

 

 

ため息をつきながらも、常に笑顔をするようになったアツコを見て安堵するサオリ。アツコが今、心の底で笑えて、楽しそうにしているのなら、それでいい………けれど

 

 

 

 

 

「アツコが先生のようにムキムキになるのは………少し、抵抗がある…!」

 

「それは誰だってそうだよ」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「いやぁ、満腹満腹」

 

「楽勝だったね」

 

「シュークリームは飲み物みたいな物だし」

 

「終始観客の人達も対戦相手もドン引きしてたけど、勝ててよかった」

 

 

 

 

 

 

 シャーレを去った後アツコとマッシュの二人は見事、シュークリーム早食い対決に勝利。勝負内容は至ってシンプル、山盛りに積まれているシュークリームを全て食べ切ったら勝ち、というもの。

 

 

 

 

 

「私がシュークリームを先生に投げつけて、先生がそれを一口で食べて飲み込む……フフッ、この作戦にしておいてよかったね」

 

「何事も効率よく動くのは大事ですな」

 

「その通り……フフッ、みんな喜んでくれるかな」

 

「きっと、喜んでくれると思うよ」

 

 

 

 

 

優勝賞品は限定カスタードで作り上げたシュークリームの引換券、それもシャーレ内にいる全員分。アツコはこれを手に入れたくて、マッシュに早食いを手伝ってもらったのだ。

 

 

 

 

 

「…ごめんね先生、仕事中だったのに」

 

「生徒の願いを聞き入れるのも、先生の役目だから大丈夫だよ」

 

「仕事から一時的に離れられて嬉しかったんじゃ?」

 

「ハハハッ、ソンナバカナ」

 

「……先生って、やっぱり子供だね」

 

「む、なんだか小馬鹿にされた気分」

 

「そんなんじゃないよ……ただ、私とそんなに歳が変わらないのに、あそこまでやれて凄いな〜って」

 

「あそこまで?」

 

「ほら、ベアトリーチェとか、あの赤い神様と殴り合ったこととか」

 

「……あったね、そんなこと」

 
「明らかに思い出すまでに間があったよね、もしかしてもう忘れかけてない?
「そそそそそそそんなことなななななな──」

 

 

 

 

 

 マッシュが初めて死の肉薄を感じたバシリカでの戦い、ベアトリーチェとヤルダバオトとの血戦。規格外の魔法に能力、明かされたとんでもない事実に、人生で初めて腕輪を外した本気での格闘など、余りにも濃密で熾烈な戦いだった。

 

 

 

 

「先生が無事だったからいいけど……私とアリウスを助けるために、あそこまでボロボロになって……改めて聞くけど、怖くなかったの?」

 

「全然、むしろ腹立ちすぎてそれ以外全部が頭から飛んでた」

 

「……先生らしいね」

 

「あっ…でも、焦ってたりもしたかな。早くアツコちゃんを助けないと、って思って」

 

「それは先生として?」

 

「友達としてだよ」

 

「王子様とかじゃなくて?」

 

「そうそうそれもあ……なんて?」

 

「ふふっ、何でもなーい」

 

 

 

 

 

ルンルンと、回りながら前を歩いていくアツコ。そして、ある店の前に立つと、急にその足を止め、店の方をじっと見る。

 

 

 

 

 

「あれ、こんなところに花屋なんてあったんだ」

 

「……先生、私ね。花が好きなの」

 

「花?」

 

「うん、花なら何でも好き……アリウス時代は、花を見ることすら許されてなかったし、摘むことも許されなかった」

 

「………」

 

「でも今は、こうして間近で幾らでも見られるし……触れられる」

 

「……お花、買っちゃう?」

 

「いいの?」

 

「いいよ、じゃんじゃん買っちゃおう」

 

 

 

 

 

 

 花屋に目が行き、中へと入ったマッシュとアツコ。様々な種類、様々な色の花がたくさんおかれており、アツコはそれらに目を奪われる。

 

 

 

 

 

「これもいい……でもこっちも……うーん……」

 

「悩むね」

 

「うん、みんな綺麗だし素敵だから……あっ、そうだ先生。先生が選んでくれない?」

 

「アツコちゃんが欲しい花を買うのに、僕が選んでもいいの?」

 

「先生が私にプレゼントって感じの方が、ロマンチックでいいでしょ?」

 

「それはまあ…」

 

「だからお願い、選んで?」

 

「……そういうことなら」

 

 

 

 

 

 マッシュはアツコにプレゼントする花を一生懸命探す、植物は魔法界でも多く見てきたが、少女に似合う花を探したような経験は一度もない。

 

 

 

 

(向日葵は…なんか違うな………椿?これもなんか…うーん…)

 

「……♪」

 

 

 

 

その様子を見てアツコは楽しんでいた、マッシュが自分のために必死になってくれているのが嬉しくて仕方ない。実に乙女らしい反応。

 

 

 

 

 

「……よし、決めた。すみませーん、これとこれください」

 

「はいはーい……おっ、お客さんセンスいいね〜」

 

「そうですか?」

 

「ああ! この花は………ん?――あっ、いや、いやぁ〜ハッハッハ!アツいねぇお二人さん!」

 

「「?」」

 

「大サービス!10本持っていきな!!」

 

「え、ほんとに?やったー」

 

「いいの?」

 

「いいのいいの!!若い子は応援したくなっちゃうのが、大人だからね〜」

 

 

 

 

 

花屋の店員は何かを勘違いしているようだが、兎にも角にもマッシュは自分が選んだ花をそれぞれ5本ずつ貰い、二人は店を出た。

 

 

 

 

「…先生、どんな花を選んだくれたの?」

 

「この二つだよ…えーと、サザンカと……バラだね」

 

「赤いサザンカ……赤い…バラ……」

 

「色合いっていうか、綺麗さと言うか……本当に何となくだけど、アツコちゃんに合うかなーと思って選んだんだ」

 

「―――先生、花言葉って知ってる?」

 

「全く」

 

「……そうだよね、先生…だもんね」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

アツコは花を好んでいて、いろいろな花のことを調べ上げたりもしていた……無論、その花にまつわる花言葉もしっかりと覚えている。――故に、自然と顔が赤くなる。

 

 

 

 

 

「……先生の鈍感無知男」

 

「えぇ何で急に?」

 

「――ありがとう先生、この花、大事にするね……一生」

 

 

 

 

歳の近い、異性からの贈り物……恩人からの贈り物、アツコから見てマッシュは自身を助けてくれた恩人であり、眠りから覚まさせてくれた王子でもある。

 

 

 

 

「……えいっ」ピョン

 

「わっ…危ないよアツコちゃん、急に飛びついたりなんかしたら」

 

「先生なら受け止めてくれるって信じてたもん」

 

「だとしても…」

 

「歩き疲れちゃった……このまま、シャーレにまで運んでくれない?」

 

「急にどうしたの」

 

「いいから、いいから」

 

「……まいっか、じゃあお花、しっかり持っててね」

 

 

 

 

 

アツコはマッシュの背に飛びつき、背に担がれた状態で、花をしっかりと持つ。マッシュは彼女が酔わない程度で走り、シャーレへと戻っていった。

 

 

 

 

(……ごめんねみんな、この時間だけは、私の王子様になってもらいたいの)

 

 

 

 

アツコも一人の女の子であり、お年頃のお姫様……みんなから好かれている王子を、独り占めしたいと思うのも無理はない。これは彼女なりの可愛いわがままであり

 

 

 

 

 

(――今度、アングレカムでもプレゼントしちゃおうかな)

 

 

 

 

彼女なりの、独占欲でもある。






次回……ミサキちゃんのお話です。


はい、皆さんのご想像通り……湿度が高く思い感じです、曇らせではないとは思いますが、お楽しみに

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