透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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シリアス?マッシュ君に殴られて吹き飛ばされました。ビナー戦…‥開始です。細かいことはもう気にせず、お楽しみください


話は変わってしまうのですが、皆さんダンダダンと言う作品を知っておりますでしょうか?遠い未来、あれをクロスさせた何かを書こうとかなと思っております、多分結構先になってしまいますが。



マッシュ・バーンデッドと報復の預言者(ビナー・ヴェンデッタ)

 

 

 

 

作戦決行日

 

 

 

 

 

『――それでは、作戦内容を確認します』

 

 

 

 

 

 通信機からヒマリ声が入り、マッシュ達がその声に耳を傾けた。

 

 アビドス砂漠。ビナーの出現率が最も高く、発見事例が最も多く報告されている場所。気に入っているのか、それともマッシュを誘き寄せるためなのかはわからないが──

 その場所に、連邦捜査部シャーレ顧問・マッシュ・バーンデッド、アリウススクワッド所属生徒(槌永ヒヨリ除く)、七囚人の一人にして"災厄の狐"こと狐坂ワカモが立っていた。

 

 

 

 

『各員、一言一句聞き逃さないようにお願いします……まず、最初の作戦は――』

 

 

 

 

 

 ヒマリが続けて作戦を説明する。この作戦の発案と指示は全てヒマリとエイミに任せられており、マッシュは彼女らの指示通り動くだけ……なのだが。

 

 

 

 

 

 

「狙うは?」

 

『顔面』

 

 

 

 

 

「手加減?」

 

『無用』

 

 

 

 

 

「泣いても?」

 

『許さない……!!!』

 

 

 

 

 

「外道に慈悲は無し」

 

『慈悲は無ーーーし!!!』

 

 

 

 

 

 マッシュたちは目とヘイローを赤く光らせ、強く殺気立っていた。

 相手はキヴォトスを害する機械――そして、マッシュにとっての因縁の相手であるの以上、ある意味仕方ないことである。

 

 

 

 

 

『皆さん、お気持ちは理解しますが……これは作戦です、どうか私情を―─』

 

「ベアトリーチェ本人じゃないにしろ、もはや関係ない。彼女の力を使っているのなら、それは私達の敵だ」

 

「先生、もう原型が無くなるくらいボコボコにして」

 

「まかセロリ」

 

『あの聞いてます!?この作戦の指示は私がするのですから、私の話を聞いてくれませんか!?』

 

「――すまない、少々頭に血が上り過ぎていた」

 

「僕もごめんなさい」

 

 

 

 

 

 これまでアリウス分校を暴力で支配してきたベアトリーチェの影が、敵意を以てマッシュを付け狙う因縁の相手に取り込まれ、より強大な脅威となって再び眼前に現れる……

 これまで長く彼女たちを苦しめた魔女が亡霊のごとく蘇ったこの状況に対して、頭に血が上って我を見失いかけるのも、仕方ないのかもしれない。

 

 

 

 

 

『皆さんがそう思うのも、頭に血が昇ってしまうのも無理はありませんし、そこまで殺気立つのも仕方ありません………しかし問題は……その』

 

 

 

 

 

 

「――ふ……うふふふっ……うふふふふっ♡貴方様、このワカモはいつ暴れれば良いのでしょうか?」

 

「もう少し待ってて。ヒマリさんがいいって言うまで待機だよ」

 

 

 

 

 

 

『今にも飛び出しそうな人がいる時点で、とても不安なのですが……!?』

 

「ずっと楽しみにしてたもんね、砂漠のビナー退治」

 

 

 

 

 

 ワカモは尻尾を揺り動かし、ビナー・ヴェンデッタの討伐を待ち望んでいた……その様子はまさに、獲物を狩る獣の目。

 

 ワカモはシャーレに来てからと言うもの、マッシュの言いつけを守り、趣味としていた破壊行動を長期に渡って控えていた。

 彼の下で働く日々が幸福そのものだったことに違いはないが、自分の趣味から遠ざかったストレスはワカモ自身すら知らない内に少しずつ蓄積し、今回の作戦開始時点でついにそれが爆発したのだ。

 

 

 

 

 

「あれ、そういえばイズナちゃんは?」

 

「イズナは置いてきたました、あの子はまだこの戦いにはついてくることが出来ませんので…」

 

『います!いますよ!?イズナはここで、ヒヨリ殿やニーナ殿達と共に頑張りますからね!!』

 

「あら、うふふっ」

 

「イズナちゃんはそっち担当なんだ……まあ体力も持久力もあるからね」

 

『お任せください主殿!このイズナ、忍者らしくこのペダルを全力で漕ぎます!!!』

 

「忍者要素はないでしょ」

 

「ミサキ、ツッコむのは野暮だぞ」

 

『――あの、そろそろ作戦内容の確認をしたいのですが』

 

「あ、ごめんなさい」

 

『……ンンッ! それでは改めまして、最初からご説明いたします』

 

 

 

 

 やっと本腰に入れたヒマリは、今回の作戦内容について説明。マッシュ達は今度こそ、真剣にその話を聞く。

 

 

 

 

 

『まず今回の攻撃目標"ビナー・ヴェンデッタ"の特徴として、謎の赤いバリアであるミステリーバリアが常時展開されている事が判明しました。 その強度は非常に高く、先に交戦したカイザーPMCの対物ライフルや対戦車砲も、一切が無効化される耐久力を持っているようです』

 

『だからきっと、先生のパンチでも割るには時間が掛かる……その間にビナーの攻撃はもっと激しくなるし、回復だってされちゃう』

 

 

 

 

 

 

 ベアトリーチェの神秘によるバリアを常時展開しているビナーには、どんな攻撃もほとんどかすり傷程度で済んでしまう……

 このバリアを突破できず、カイザーPMCの対デカグラマトン部隊は一方的に叩かれて壊滅した。せめてもの幸運は、ヤルダバオトやファンタジムの力が引き継がれていなかったところか。

 

 

しかしマッシュ達は一味違う。

 

 

 

 

 

『ですので、あのバリアを破壊するのであれば……時間をかけず、一撃で破壊する必要があります』

 

「そこで出番なのが……ヒヨリ専用の武器、オーバードレールキャノンだな」

 

「エンジニア部も恐ろしいの作ったよね。あの工房から直接ここまで砲弾を飛ばす兵器なんて、普通作れないよ」

 

「下手したら禁忌でしょアレ」

 

「でもロマンがあるしかっこいいよ?」

 

「かっこいいからってどんな物作っても大丈夫なわけじゃないでしょ」

 

『自信は全くないんですけど……が、頑張ります!!絶対に当てます!!』

 

『エンジニア部も、手を貸すよ』

 

 

 

 

 

 

 マッシュ達の通信機からヒヨリの勇気ある声と、エンジニア達の声やシャーレ所属生徒らの声が聞こえてくる。ついでに何かを漕ぐ音も。

 

 ヒヨリ達がいる場所は、エンジニア部が管理する工房のハンガー……そこに存在しているのは、砲身長が軽く25mに達する、エンジニア達が作り上げた規格外兵器(オーバードウェポン)──通称『オーバードレールキャノン』。

 

 アリスが持つ光の剣「スーパーノヴァ」を原型に、デカグラマトンへの超長距離狙撃を目的として開発された新兵器であり、連邦生徒会の許可が無いと絶対に使えない戦略兵器。その操縦席に乗っている狙撃手こそ、ヒヨリである。

 

 

 

 

 

 

『………緊張します…けど、がんばります!!』

 

「その息だヒヨリ……あー……あと、他部隊のみんな…その――頑張ってくれ」

 

 

 

 

『かける言葉がないなら無理に励まさないでくださいよォ!?』ギコギコギコギコッ!

 

『なんで……なんでレールキャノンの発電だけ自転車発電なんだ!?』ギコギコギコ‼︎

 

『私達もそっちに行きたかったなー…!!』ギコギコギコギコッ!!

 

 

 

 

「一発撃ったらミレニアム全体の電力が2分くらい落ちる……だから別の形で確保した電力を使わないといけないってのは理解できる……けど、なんで人力発電?」

 

『一番、効率が、いいからね、はぁ…はぁ』

 

『い、今50%貯まりましたよー!……ぜぇ…はぁ……』

 

『ま、まだ半分………しんどいよ……』

 

『忍法――自転車こぎこぎぃぃ!!!』

 

 

 

 

 

 エンジニア部が威力を底上げしまくった結果、このレールキャノンは一発あたりの必要電力が膨大なものになってしまった。しかも今のミレニアムは詳細不明ながら大事な時期であるらしく、2分も電力が止まってしまっては大変なことなる……ので、仕方なしで自己発電することとなった。

 

 現在、ニーナ率いる残りのシャーレ生徒とイズナ、エンジニア部の3人が朝からずっとペダルを漕ぎ続けて、巨大なコンデンサーバンクにやっと50%の電力が溜まったところ。なお、発射してしまえば一度に電力が消費されてしまうので、もう一度同じ苦労を繰り返すのだが。   

 

 

 

 

 

「ヒヨリちゃん、重労働をしているみんなのためにも……ガンバ」

 

『二重の意味で重いです!!』

 

『そして次の作戦ですが…皆さん、武器の点検は完了していますか?、レールキャノンによってバリアが破壊された時、皆さんにはその武器でビナー各部の装甲を破壊してもらいます』

 

「問題ない、いつでも撃てる」

 

「ミサイルランチャーなんて初めて撃つから、ちょっと楽しみ」

 

「油断したら腕持っていかれちゃうよ。後、装弾数がそこまでないから気をつけて」

 

「試し撃ちしてもいいですよね?」

 

「話聞いてよバカ狐」

 

 

 

 

 

 

 スクワッドとワカモが持っているのは、エンジニア部が今回の作戦に合わせて作り出した、もう一つの対デカグラマトン兵器『アグネヤストラ』

 本来はヘリコプターなどに搭載されるロケット弾発射ポッド・M261ロケットランチャーをシャーレ部員の手持ち武器として改造した、規格外武器(オーバードウェポン)の一つである。

 

 火神アグニの武器の名を与えられたこの武器は、空からロケット弾をばら撒く武装を改造したというだけあり、通常のロケットランチャーとは比較にならない発射数と範囲制圧能力を持つ……この莫大な炸薬量と超連射能力で周囲に存在する全てを破壊する脳筋ミサイルランチャー、それがアグネヤストラである。

 

 『結局は火力を限界まで上げればいい』という大艦巨砲主義(ある意味エンジニア部らしい発想)に基づいて設計されたこの兵器は、二つの意味での"腕"───つまり、その重量と反動を受け止めて命中させるだけの腕力と技量がなくては、扱えない代物となっている。

 

 

 

 

 

『そして――その間に先生は……もうとにかく頭に向かって攻撃をしまくってください。遠慮は一切いらないので』

 

「OK」  

 

『先生だけシンプルすぎない?』

 

『エイミ、逆に考えてください……シンプルだからこそ、先生の力は発揮されるのですよ』

 

『……それって遠回しに"難しいことをさせたら何も出来ないお馬鹿さん"って言ってない?』

 

『誰もそこまで思ってませんよ!!』

 

「うっ」

 

「先生がショックで倒れた!!」

 

「この人でなし〜」

 

『貴女達も小ボケに乗らなくていいんですよ!!―――ともかく、作戦内容はバリアを破壊した瞬間に総攻撃、ただそれだけなのです!』

 

 

 

 

 

 そう、作戦自体は至ってシンプル……問題なのは、ビナーがマッシュやシャーレ生徒に対しどのような行動を取るかが不明であり、同時に未だ確認されていない攻撃方法があるということ。

 ベアトリーチェの神秘がある以上、どのような攻撃パターンが存在するかわからない……だが、マッシュには負けるビジョンが一切浮かばなかった――何故なら。

 

 

 

 

 

「僕、一度は両方に勝ってますし。何よりも……勝負の確率は、勝つか負けるかの2分の1……つまり50%――」

 

 

 

 

 

 

 

「しかも筋肉は負けることがないから、勝てる確率は100%ですよ」ドーーン!

 

(『――なんて、頭の悪い理論……!!』)

 

(このワカモは、貴方様のそういう所が大好きです……!)

 

「任せてくださいよ――ボコボコにして、預言者の一体も、長い因縁も、全部終わらせます」

 

 

 

マッシュは両手を合わし前をじっとみた後――

 

 

 

「――行こう」

 

 

 

そう言って、仲間達と共に前へと進み始めた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

――奴だ、奴がいる……私の中にいる者(ベアトリーチェ)が、奴を察知している。仲間を連れて、また、この上に立っている。

 

 

 

 

 

 

 砂漠の中で復讐鬼と化したビナーは、地上にいるマッシュへ向かって登り始めていた。デカグラマトンからの指示などくだらない、知りもしない……

 ビナーが動く原動力は、マッシュを倒すことを目的とした復讐心と――ビナーの中に潜む、純粋な怨恨・憎悪・憤怒の塊となったベアトリーチェの残滓のみ。
 
 ビナーは勢いよく地表に浮上し、身に宿した力を誇示するように咆哮を轟かせた。

 

 

 

 

 

 

――私は力を手に入れた、前とは違う……覚悟しろ、マッシュ・バーンデッド……!!

 

 

 

 

『████████████───!!!!!』

 

 

 

 

 地平線の果まで砂漠を揺るがすような轟きが、熱を帯びて陽炎を生む空気を震わせて鳴り響いた。今この瞬間、ビナーとベアトリーチェによる劫火の如き憤怒によって、怨敵マッシュ・バーンデッドとアリウススクワッドに対する報復が、盛大かつ壮大に────

 

 

 

 

 

ドドドドォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 

 

『██████ッッッ!!!!!!!???!??!?

 

 

 

 

 

始まることはなかった。

 
 ビナーが圧倒的な威容と狂気を溢れさせて咆哮を上げたその直後、猛烈な炎の五月雨とともに爆発の嵐がビナーを包んだ。ミステリーバリアによる防御があったためにダメージはないものの、唐突な攻撃による爆風と衝撃に、ビナーは驚愕と衝撃のあまり、咆哮の最中だった喉を苦悶に唸らせた。

 

 

 

 

 

 

『ワカモさぁぁぁん!?』

 

「アンタ何やってんの!?さっき装弾数が少ないって話したばっかりだよね!?」

 

『ビナーもびっくりして止まってるね』

 

「だ、だって……!今までこんなに素晴らしい武器を、ずっと使わずに我慢していたのですよ!?そろそろ我慢の限界だったんです…!!」

 

「うーん、実にワカモちゃんらしい」

 

『██████ーーー!!!!!!!!!

 

「あ、ビナーすごい怒ってる」

 

 

 

 

「いきなり何をする!?」と言わんばかりに、ビナーは再び大口と複眼を開いて、眼前に捉えたワカモたちを威嚇する。

 ワカモは早く新武器を使いたくて仕方がないあまり、地表から飛び出したビナーを見た瞬間、我慢していたものが爆発してしまったようだった。

 

 

 

 

「目が大きく開いて……開いて……」

 

「―─嫌なものを思い出させてくれる」

 

「終われば、全部忘れるよ」

 

「……そうだな」

 

「██████…!!」

 

 

 

 

「一度ならず二度までも我々を愚弄するか……‼︎」と言わんばかりに、殺意の篭もった眼で彼女らを睨みつけるビナー。しかし今のビナーには、ベアトリーチェの力──その出自を辿れば、かのイノセント・ゼロに行き着く──が満ちている。複眼を開いてマッシュとアリウススクワッドを睨みつける姿には、ヤルダバオトの異形が重なって見えるようだった。

 

 

 

 

 

「……───██████」

 

 

 

 

 勝利を確信したビナーが、見下したかのような目を彼女らに送った――その瞬間。

 

 

 

 

 

ドドドドォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 

 

「姫ぇ!!?」

 

「コ、コラ、アツコ!!?ダメだろう!!??」

 

「だって…顔見てるだけでもう腹立っちゃって……」

 

「気持ちはわかる、わかるぞ?でもな…?」

 

「ビナー、めちゃくちゃ怒り出しましたね……ヒマリさん、これって結構まずいのでは?」

 

『とってもまずいです!!!怒りで我を忘れた獣がどう動くのか、分析するのは難しいんですよ!!?』

 

『あ、みんな。ビナーが凄い勢いでエネルギー貯め出したよ』

 

「………よし」

 

 

 

 

 マッシュはミサキとワカモを片腕ずつ抱え、サオリはアツコをお姫様抱っこの形で抱える。

 大型装備を手にした二人を抱えるマッシュの筋力もさることながら、自身も同じ装備を背負いながら同時にアツコを抱え上げたサオリの身体能力も、エデン条約事件の時点に比べて大きな成長を見せていた。
 これもまた、マッシュに恩を返したいという一心で繰り返した特訓の成果か。

 

 

 

 

 

 

「退避〜〜」

 

「██████████ーー!!!!!

 

 

 

 

 

 撃ち込まれた大径の熱光線から、マッシュとサオリは全力で逃げる。そしてこの攻撃を合図に――─ビナー迎撃作戦(新たなる神話)の始まりが、このキヴォトスの歴史に刻まれることとなった。

 

 

 

 

D E C A G R A M A T O N
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▒▒▒BINAH VENDETTA▒▒▒
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「クククッ……やはり力を与えておいて大正解でした。これほどまでに心躍る展開はありません」

 

 

 

 

 

キヴォトス某所にて、ゲマトリアはマッシュとビナーの戦闘を見守っていた(勝手に)。

 

 

 

 

「しかし…シャーレの生徒達が共闘するとは予想していなかったな。てっきり全て一人でやるものとばかり思っていたが」

 

「成長したのでしょう。人という存在は、個人で何もかも達成できるわけではありません。我々もまた、個人で実現できることには限界があるのですからね」

 

「ゴルゴンダの言う通りです――それに先生は、ああやって他人と協力することによって、その力を発揮しますからね……クククッ」

 

「……所で、何故あの映像をこの廃映画館で?」

 

「繰り返しになりますが、先にお伝えした通りこの戦いは神話です。新たな神話が生まれる過程…つまり歴史が動く瞬間であり、先生の成長と活躍を記録する英雄譚であり、同時に神々と英雄による決闘なのです。神話としても、歴史としても、闘技としても、至高の領域に達する戦いに立ち会う機会を得たからには──シアターで目に焼き付けるのが一番でしょう?

 

「否定はしないな」

 

「そういうもんってこった!」

 

(話が通じていない…)

 

 

 

 

 四人がいるのは、古びた映画館。彼らはポップコーンやドリンクを手に、場内の巨大なスクリーンに映し出されているマッシュとビナーの姿を鑑賞していた。

 

 

 

 

「そもそもこの生中継は何処から?」

 

「遠隔観測魔法です。最近覚えました」

 

「いやそれで片付けるのは『魔法ですよゴルゴンダ、魔法』……そういうことにしておきましょう」

 

「黒服、奴はパワーアップしたとのことだが…具体的にどの辺りが?」

 

「マエストロ、それはネタバレという物ですよ。キャラクターの秘密などは、自分の目で、リアルタイムで見るのが基本です」

 

「それもそうか」

 

「………まさか、この場でツッコミは私だけなのですか…?――デカルコマニー!」

 

「俺には無理なこった!!!!」

 

「薄情者!」

 

 

 

 

 

 筋肉に魅了されたゲマトリアの中で、まだ常識を残しているゴルゴンダ。黒服とマエストロは既にマッシュの魅力によって完全に脳を焼かれたらしく、相棒であるデカルコマニーは逃げようとしており、もう散々である。

 

 

 

 

 

「ゴルゴンダ、上映中は私語厳禁だぞ」

 

「誰のせいだと…!……っ…とはいえ、劇というのは静かに楽しむ物でしょうし……少し、黙りましょう」

 

「クククッ……さて」

 

 

 

 

 黒服は手を前に出し、少しばかり力を入れる。まるで何かを引っ張り出すかのような動作を行った後、静かに、囁くように。

 

 

 

 

「………クククッ、どうか私を……満足させてくださいね?」グッ

 

 

 

笑いながらそう言った。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「あぁ……貴方様にこうやって運ばれるだなんて……ワカモは幸せ者です♡」

 

「惚けてないで仕事してくれない!?」

 

「いいではありませんか、私は元々純愛キャラなんですよ?」

 

「関係ないでしょ今!?」

 

「二人とも、舌噛んじゃうから叫んじゃダメだよ」

 

 

 

 

 

 現在、ビナーの猛追を受けているマッシュ・ワカモ・ミサキの3名。ミサキはビナーの目眩ましを狙い、サイドアームを取り出して攻撃を続けている。しかし、銃弾は全てミステリーバリアの前に弾かれてしまい、この程度の豆鉄砲ではまるで効果が認められない。

 

 

 

 

「やっぱ効かないか…!」

 

「あのバリアほんとやばい」

 

「アグネヤストラも、怯むだけでダメージは喰らっていませんでしたからね……それよりも貴方様、重くはありませんか?」

 

「全然平気だよ、二人こそ大丈夫?」

 

「何とか持ててるくらい……でもずっと持ってるのは流石にまずいかも、角度によっては肩が外れる」

 

「だよね」

 

 

 

 

 

 アグネヤストラの火力と制圧力は高いが、代償としてその重量は一般の生徒に扱えるものではない。特にミサキの武器にマウントされたランチャーの重量は馬鹿にならず、本来であれば運用に一定の訓練が必要となるところだ。

 負担がかかるのはミサキとワカモだけではなく、それだけの重量物2基を生徒2名とともに両肩に乗せた状態では、マッシュといえどビナーの追撃を躱し切れる保証はない。

 

 

 

 

「─―先生、私たち二人を少し離れた場所に投げて」

 

「え、でも」

 

「ビナーの狙いは先生、私たちじゃない……それに、重石になる私達を担いだまま逃げるのは効率が悪い」

 

「寧ろ、貴方様一人の方が動きやすいかと。我々のことは、どうかお気になさらずに」

 

「……わかったよ。また……後でね」

 

「――先生、気をつけてね」

 

「どうか、ご武運を…!!」

 

 

 

 

 マッシュは二人を、少し離れた場所へと投げる。投げられた先で二人は何とか着地し、マッシュは投げた方とは真逆の方へと走り出す。ビナーは分散したミサキとワカモに目もくれず、マッシュの背を追い続けた。

 

 

 

 

「……今のうちに準備しておかないとね―ヒヨリ、そっちはどう?」

 

『あ、あともう少しでエネルギーが満タンになります!』

 

「了解……リーダー、聞こえる?」

 

 

 

 

 ミサキがサオリへと無線を繋ぎ、レールキャノンのエネルギー充填率を伝える。

 

 

 

 

『――き……聞こえてたぞ、みんなに、頑張るように……伝えてくれ…』

 

「リーダー…!?どうしたのリーダー!何があったの!!?」

 

 

 

 しかし聞こえてくるのは、苦しむように震えたサオリの声。心配になったミサキはサオリの安否を確認するが──直後、その理由を明かしたのはサオリではなくアツコの応答だった。

 

 

 

 

『こちらアツコ、リーダーは無事だよ。泣いてるけど』

 

「……なんで?」

 

『グスッ……すまない、アツコを担ぎ上げた瞬間…大きくなったな〜と思ってしまって』

 

「そんな母親みたいな……というかそっちは平気なの?リーダー、アグネヤストラ2基と姫をまとめて運んでた訳でしょ?」

 

『大丈夫だ。先生に鍛えてもらえておいて正解だった、流石は先生の筋トレだ』

 

「アレできるのリーダーとヒヨリぐらいだからね?」

 

『とにかく、今はビナーを追いかけよう。奴の攻撃が如何に強力でも、迎撃や相殺ぐらいはできるはずだ』

 

 

 

 

 

 

 バリア展開中では、サオリ達の攻撃は一切効かない……しかし、ビナーが撃つミサイルなどの攻撃に対して、迎撃を行うことは十分に可能だ。各自が応戦の準備を整え、それぞれの武器に手をかける。

 

 そんな中、ミサキは微かな不安を抱えたままだった。マッシュが最強であることは、彼女自身が身を以て経験したことである以上、十分に理解している……だが、今こうしてビナーから逃げ続けている彼を見ると、どうしても心配で胸が苦しくなる。

 

 

 

 

 

「……心配ですか?」

 

「当たり前でしょ……あんたは違うの?」

 

「まさか。勿論、心配はしていますよ……しかし、あんな蛇如きが、あの方を…先生を狩れるはずがありません」

 

「それは……そうだけど」

 

「それが分かっているなら、先生を信じなさい。―──サオリ、我々の使命は何でしょう」

 

『先生……いや、違うな。(マッシュ)を守り戦う――それが私達の目標であり、生き甲斐だ』

 

「然り…それでは皆の者、動きますよ」

 

『了解』

 

 

 

 マッシュを狙って砂漠を這うビナーに向けて、彼女達は一斉に走り出す。彼の勝利を信じて、ただ…彼女らは怪物を追いかけていくのであった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 一方その頃、ビナーに追いかけられているマッシュは、無線を通したヒマリやエイミのサポートの元、攻撃を避け続けていた。

 

 

 

 

「───降ってくるミサイルが途中で増えてる…?」

 

『しかもただのミサイルではありません、あの赤いオーラは……おそらくですが、炸薬と推進剤が魔力で強化されているのでしょう』

 

「なるほど、道理で威力とスピードがおかしいわけだ――うおっ、あぶね……魔法ってこんなにやばかったんだ」

 

 

 

 

 

 後方から飛んでくるミサイルに対し、マッシュが感じ取った違和感。以前戦った時よりも射数が多く、威力も桁違い。さらに空中で弾頭が拡散し、無数の小型ロケット弾をばら撒くミサイルも混じっている。

 魔力が付与されるだけでここまで強化されるのかと、魔法に対して感心していたのも束の間──

 

 

 

 

 

『高エネルギー反応を確認!――下!!』

 

「!!」

 

 

 

 

 ひび割れた地面から無数のレーザーが飛び出し、それらがマッシュへと降り注ぐ。彼はビナーに背を向けながら、それを感覚で避ける――しかしその先に、回避を先読みして放たれた無数のミサイルが降り注ぎ、マッシュを絡め取るように殺到する。

 

 

 

 

『先生っ!!!』

 

「だーいじょう……ぶっ」ピョン!

 

 

 

 しかしマッシュは、向かってきたミサイルの群れを踏み台にしながら、まるで滝を登るようにミサイルの階段を駆け上がっていく。頂点に達したマッシュは、位置エネルギーを存分に発揮した踵落としをビナーに繰り出す。

 

 

 

 

『――███…‼︎』

 

「ならば連撃」

 

 

 

 

 だが、やはりというべきか。その攻撃はミステリーバリアによって防がれる。続いてマッシュはビナーに向かって連続で蹴りを打ち込む――その時、ほんの少しだけビナーはよろめいた。

 

 

 

 

(やっぱり、そういうことか)

 

『――███…‼︎』

 

「でもやっぱ硬い、ずるいな〜それ」

 

『██…‼︎』

 

「うおっ」

 

 

 

 

 

 ビナーは虫を払うように頭を振り回し、マッシュを地面にはたき落とす。マッシュを吹き飛ばしたビナーは頭部にバリアを集中展開し、自身の質量とバリアを用いてマッシュへ突進する。ありとあらゆる攻撃を無効化する今のビナーにとって、マッシュは脅威たりえない――のだが。

 

 

 

 

 

「フンッ」ガンッ!!

 

『██……‼︎』

 

『うそ、ビナーがよろめいた? 攻撃が効いたの?』

 

『……いえ、ダメージを受けているようには見えません……しかし、よろめいた――ということはつまり』

 

「フンフンフンフンフンッ」ドガガガッッ!

 

『―─█⁉︎︎』

 

「やっぱりね」

 

 

 

 

 マッシュはビナーに連続パンチを繰り出し、突進するビナーを逆に押し戻していく。ミステリーバリアに防がれたパンチにより、ビナーがダメージを受けることはない……しかし

 

 

 

 

「衝撃までは防ぎきれないんだね。そうじゃなかったら、あの武器の攻撃でよろめくわげない――そうと決まれば、押していくのみ」

 

 

 

 

 マッシュは突進を繰り返すビナーを両手の連続パンチで防ぎ止め、徐々に押し戻していく。ミステリーバリアは確かに頑丈だが、受けた衝撃を完全に無効化するわけではない……つまり、今のビナーのミステリーバリアは、マッシュの前では殴り放題のサンドバッグとなる。

 

 

 

 

 

『―██‼︎』

 

「連撃……いいよ、何回でも付き合ってあげる」

 

 

 

 

「ならば…!」とばかりに、ビナーはその巨体を高濃度の神秘と魔力で駆動させ、一層激しく強力な動きでマッシュに突進を繰り返し、尻尾に取り付けられたブレードを振るう。マッシュはそれらを拳で殴り飛ばし、蹴りで威力を殺すことで防ぎ続けている。

 

 

 

 

『衝撃でドローンの姿勢が崩れる……もう少しだけ、距離を取らないと』

 

『ヒヨリさん、エネルギーの方は!?』

 

『も、もうじき溜まります!』

 

「先生、あともう少しです!」

 

「よし……‼︎」

 

『待って、何か変……これって……熱でもない、魔力でもない――電力?』

 

『っ!?──先生!!!離れてくださいっ!!!!』

 

 

 

 

 

 ヒマリが叫ぶ頃にはすでに遅く、ビナーは自らに帯電させた膨大な電力を一気に放出し、激烈なプラズマ放電を拡散させた。赤い電撃が辺り一体に広がり、その空間放電がマッシュを直撃、無数の電撃が彼を巻く。

 

 

 

 

『あぁ…そ、そんな…!?』

 

『██████―──!!!!!』

 

 

 

 

 好機を得たとばかりに大口を開いたビナーは、砲口にエネルギーを蓄積し始め、レーザーの熱量をもってマッシュを蒸発させようとする。高圧電流が全身に流れた状態では、神経信号で筋肉を動作させる生物は動けない。

 そう確信していたからこその行動……――しかし、読みが甘かった。

 

 

 

 

 

『―██████!!?!?』

 

「ヘビさんこーちら、手〜のなる方へ〜」

 

『███…!!!』

 

 

 

 

 マッシュは動きが鈍るどころか、逆に一層活発に動き回っていた。帯電してやや髪の毛が逆立ったマッシュは、ビナーの周囲を回るように円を描いて走り続け、ドローンのカメラですら捉えられない俊敏さでビナーを翻弄する。

 

 

 

 

 

「遅い遅い」

 

『―███!!???』

 

 

 

 

 眼前の光景を理解できなかったのは、ビナーも同じだった。

 感電した生物は、電流が生じるジュール熱によって体組織の熱傷や壊死を引き起こし、皮膚だけでなく臓器に及ぶほどのダメージを受けることが常だ。

 

 それだけではなく、神経網に異常電流が流れることによって神経信号(インパルス)が伝わらなくなったり、インパルスが不規則になることも多い。この場合、筋肉を自分の意志で動かす随意運動は不可能に等しくなり、心室細動や筋肉の異常収縮を引き起こす……

 つまり、感電した人間は自力で動けるはずがなく、しばらくはその場で止まるはずなのだ。
――だが、マッシュの場合は

 

 

 

 

「なんか体がほぐれて、めちゃくちゃ動けるようになっちゃった……ラッキー」

 

 

 

 

絶縁性を持つほど強靭な筋肉に大電流が流れた影響で、身体機能が大幅に活性化されていた。ビナーの高電圧放電攻撃は、マッシュにとってはただの電流マッサージにしかならなかったのだ。

 

 

 

『――!!!』

 

 

 

 その事実を理解したビナーは怒りが頂点に達し、マッシュへの攻撃が次第に単調なものへと変わっていく――その動きが、自分の首を絞めるとも知らずに。

 

 

 

 

 

『――ヒヨリィ!もう、たまったぞぉ!!!』

 

『あ、足が……動かねえ…!』

 

『ヒヨリ殿、あとは、任せました‼︎』

 

『――はい‼︎』

 

 

 

 

 単調な動きになった獣は、スナイパーにとってはただの撃ち抜きやすい的。ヒヨリは声色を変え、目を白く光らせて照準器を覗き込むとともに、ビナーの体を射線上に捉える。

 

 

 

 

 

『―先生、ビナーの頭をできるだけ高い位置へ。アッパーか何かで』

 

「──!…了解」

 

 

 

 

 レールキャノンに電力が蓄積され、砲口が青白く光り始める。操縦席にまで圧力がかかり、磁歪による騒音も強くなっていく――だが、視覚と聴覚のほぼ全てを狙撃に振り向けた今のヒヨリには、それら全ては意識のはるか外にあった。

 

 

 

 

 

 

『EMLモジュール接続、エネルギータービン解放。ターゲットスコープオープン、照準補正よし。出力80%……90…95』

 

「今…!」

 

『―██!!!』

 

 

 

 

 

 ヒヨリの声に合わせるように、マッシュは渾身のアッパーを繰り出しビナーの顎を全力で打ち上げる。強烈な衝撃でビナーが上へと退け反った――その瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『外しはしません…!!』カチッ

 

 

 

 

 

 

 

ドッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

『―──██████!!!!?』

 

「―命中した……すごいやヒヨリちゃん」

 

『ミステリーバリア――消失確認!』

 

 

 

 

 

 ヒヨリが射出したオーバードレールキャノンの砲弾は、一筋の光の軌跡を描いてビナーの頭を貫通した。ビナーは耳をつんざくような雄叫びを上げながら砂上へ崩れ、頭部から赤黒い液体を噴出して悶え苦しむように暴れる。

 

 

 

 

 

『皆さん、今です!!!』

 

「総員――撃てぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 そこへ追い打ちをかけるかのように、追いついたサオリ達が一斉に構えたアグネヤストラから、膨大な数のロケット弾をビナーへと叩き込む。

 連続した爆発音が重なって砂漠に響き、ビナーの絶叫を掻き消す。その威力に、思わずマッシュは唖然として見入るほどだった。

 

 

 

 

 

『先生、今です!!!』

 

「―─あっ、ごめん………うしっ」

 

 

 

 

 マッシュは黒いケースを取り出し、取り出したゴッドキラーを左腕に装備。前腕に力を込めてビナーへと飛びかかり、その勢いのまま、渾身の一撃をビナーの脳天へと叩き込む。

 

 

 

 

 

 

『──██████!!?』

 

「―──ツイン・インパクト」

 

 

 

 

 

 パンチが当たった瞬間、二度目の衝撃が放たれた。ビナーの頭部装甲に大きな亀裂が入り、そしてそこからダメージが広がってゆく。やがてビナーの装甲が小爆発とともに崩れて弾け飛び、マッシュ達は勝利を確信した───

 

 

 

 

 

───だが、それは間違いだった。ビナーは負けてなどいない……いや、ビナーだけではない

 

 

 

 

 

 

 

 

『――マッシュ……バーン……デッ…トォォ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 ビナーの中にいる怪物も――諦めてはいなかった。





シャーレ在住生徒達の新たな固有武器に関しては、違う章で出していきます……まじでおかしくなってしまったので。




そして昨日の我が家(閲覧注意)




妹『黒服ってエッチじゃない?ボディラインといい態度といい態度といい……ブルアカで一番エッチなキャラって黒服だったんだ』

弟『いやそれならマエストロやろ、あの足見てみろいやらしい』

私『なんの話してんだ君達』






次回・ビナー君が勝つために死ぬほど頑張るぞ!✨

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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