ほんわか、というかほんのりというか、ちょっとしたお話です。
次回からは新たな敵……つまりは二人めの預言者(被害者)が登場します、お楽しみに。
「――は……ハハハハハッ‼︎………まさかここまでとは、いやはや……フフ、恐ろしいな。そうだろう?ジェネラル」
「……はい」
「我々が総力を尽くして挑み……敗北した、あの預言者を――奴は倒した……それも、生徒達と共に……フッ、フハハハハハハ!!!」
「っ……笑い事ではありませんよ!今回の件で、実質……奴はまた力を得たと証明されたようなものです!」
カイザーコーポレーション・会議室。
カイザーコーポレーション代表取締役・プレジデント、そしてカイザーPMC司令官・ジェネラルの二名は、同じ映像を観ながら座っていた。
その映像とは、マッシュ達がデカグラマトンを倒した瞬間を捉えた、リアルタイム中継の戦闘映像だった。
「まあ、そうだろうな。我々の兵力を持ってしても、おそらくは奴に勝てない」
「ですから!今のうちに奇襲を!」
「そこで生徒達もろとも傷つけたところで……かえって彼の逆鱗に触れ、企業ごと潰されかねない――リードを繋がれていない狂犬がその後何をするのか、君はわかるかね?」
「っ……」
「だからこそ、必要以上に我々は彼に干渉しない……身の安全のためにも」
「……このままずっと、奴の好きにさせると?」
「致し方あるまいよ……さて、そろそろ客人が来る時間だ。茶でも出さねば礼節を欠く」
プレジデントは杖を支えにしながら立ち上がる――そんな彼の背に向けて、未だ腑に落ちないジェネラルは叫ぶ。
「私は納得できませんよ!!」
「…………」
「我々カイザーは、長きにわたってキヴォトスにある企業の頂点に立ってきた。生徒達にも圧力をかけ、連邦生徒会をも黙らせてきた……アビドスだってそうだ!」
「………」
「しかし――あの男がここにきてからその全てが変わった!我々は生徒達に関与できなくなり歳入も大幅に減少した……あの男の存在が我が社にとっての巨大な障壁、それはよく理解しているはずでしょう!?」
「……何が言いたいのかね」
「あの男は最優先で排除すべきです!奴の抹殺はカイザーの総意!ならば、ブラックマーケットでも何でも手を回して兵力を掻き集め、持ちうる全勢力を持ってシャーレを排除すべきです!」
マッシュの登場によって、キヴォトスで幅を利かせていた"悪い大人"達は徹底的に排除され、これまで黙認されているに等しかった各学園での活動はほとんど不可能になった。
全ては、マッシュが『キヴォトスの英雄』と評されたことが原因でもある。そんな彼を排除すべきだと言う意見は理解はできる…―─だが、現実問題としてそれが可能であるかは別問題だ。
「ジェネラル――貴様はいつから、私に物を言える立場になったのだ?たかが16歳のガキ一人騙せない愚か者が」
「っあれは、違います!あれは、ただ…奴が、少しばかり……上手で」
「上手?子供が?我々よりも?上手?」
「………くっ」
「ジェネラル、貴様の提案も理解できないわけではない――だが今の我々が総力を上げあの男に挑んだとして、勝てると思うか?断言しよう、絶対に勝てない……寧ろ無為な損害が出るだけだ」
「…………」
「今の我々の仕事は、奴の力を観察と考察、理解し研究する事、そのためにあいつと手を組んだのだ―この私直々にな」
権力者特有の謎の圧が、ジェネラルの肩に伸し掛かる。機械の義体でありながら背筋が凍るような寒気と震えが止まらなくなる。
「……ジェネラル、お前はお前の仕事をしろ。そして仕事中は奴のことを考えるな」
「しかし…」
「二度は、言わないぞ」
「………承知しました」
ジェネラルが黙り込んだことを確認したプレジデントは、客人を迎えるため部下に茶を汲ませながら、自らは資料を手に取った。カイザーPMCの元理事とは違った、或いは遥かに上回る影響力を持つ大人の貫禄……ベアトリーチェや黒服とは異なる、また別の悪い大人。
「マッシュ・バーンデッド……我々の敵よ、どうかもっと……その力を見せてくれ。――我々の勢力拡大のために」
機械の体であるはずのプレジデントの顔には……うっすらと、黒い笑みが滲んでいるようにも見える。
「先生、お疲れ様でした……その後皆さんの様子は、どうですか?」
「みんな過去と決別できて、スッキリしたみたいです。ワカモちゃんも十分暴れられて満足したみたいだし、イズナちゃんも久々に本気を出せて嬉しそうでした」
「みなさんお元気そうでよかったです……所で、先生のご用体は?」
「例の液剤を摂取した影響で、肝臓がひどく荒れてるらしいです。シュークリームをもう2日も食べれてません……あとプロティンも飲めてなくてストレスがやばいです」
「内部がズタボロ…と」
「メンタルは折れてないのでご安心を」
ビナー・ヴェンデッタを討伐した日から大体およそ一週間後。
「トリニティからミネさんが飛んできて救護されるんですよね………あ、思い出しただけで寒気が…」
(先生が寒気を覚えるほどの相手…!?)
「……そういえばエイミちゃんはどこに?」
「ビナーの残骸から集まった情報と、こちらで集まった別の預言者の情報をまとめてもらっています」
「そこら辺は、二人に任せっきりになっちゃってごめんなさい」
「ふふっ、構いませんよ……これも私のお仕事ですから……それに私には、これくらいしかできませんし……みなさんのように、前線に出て戦う事もできない弱者なのですから」
「……弱者、ってのは違うと思いますけど」
「弱者、ですよ……命もかけれない…ね」
ヒマリは車椅子を動かし、マッシュの隣に移動すると、その場で自分の体調について説明を始めた。
「私は生まれつきの病弱で、この通り常日頃から車椅子で生活をしています。しかし、足が全く動かないわけではありません……ただ、自力で歩くのは、少々厳しいのです」
「そんなに…」
「だから私は、後方支援くらいでしか戦いで役には立てません……先生のような、生まれつき強靭な肉体を持っていたのなら話は別ですが」
「……そういえば、魔法界のことを知っているって聞きましたけど……どこで知ったんですか?」
「ミレニアムの防犯カメラをハッキングして、あなたのお爺様がここに迷い込んだ際の映像と音声を拝見したのです」
「さらっととんでもないことに言いましたね」
「あ、それとエデン条約での一見も少々」
「トリニティのシステムにまで手を出しちゃったんですか? バレたらやばいですよ」
「大丈夫です、証拠は隠滅しましたから」
「そういう問題じゃなくて」
「見たと言っても、あの体育館の夜を含めた、一部の戦闘のみです……それまでの生活についてなんて、ほとんど記録が残ってませんでしたし」
「ナギサさんも対策してそうですね」
ヒマリは各学園のデータネットワークに侵入して得た防犯カメラの映像から、マッシュの秘密と魔法界のことを知り得た。当初は驚愕の余り何も言えなくなっていたものの、今は少しその真実を受け入れて落ち着きをとり戻しており。トリニティでは彼の戦闘についても監視していた。
「先生の戦っている姿を見て、改めて痛感しました……頭脳だけではどうにもならない事があると」
「それは……まあ、そうですね。でも逆の事も言えますよ、脳筋だけじゃ無理な事も……たぶん、どこかにはあると思います」
「断言されないのですね」
「今までが今までだったものでして」
「……先生は苦しくないのですか? 今の、この現状に……命を狙われていると言う、運命に」
マッシュはこの世界の悪人や超位的存在にも命を狙われている。それも、元の世界でも命を狙われているにも関わらず。普通ならメンタルが折れていても仕方ないのだが――彼は違う。
「勝てばいいし、特に何も」
「……辛くはないのですか?」
「友達もたくさんいるし、助けてくれる人もたくさんいる、何よりも愛してくれている人が大勢いる。その事実だけで僕は辛くはないですよ」
「……心も強いのですね、貴方は」
「ヒマリさんだって十分強いですよ、こうやって預言者達と一緒に戦っている時点で」
「…そうですかね」
「そうですよ。人には人の役割ってのがあるって、みんなから教わりましたので」
前線に出ていゆ者だけが命をかけているわけでも無ければ、戦っているわけでも無い……後方で支援しているものも十分戦っている。指示を受け動く事もあるマッシュだからこそ、言える事。
「まあ残りの預言者達の事も任せてください、全員もれなくボッコボコにしますから」
「では私は……天才美少女ハッカーらしく、サポートいたしますね」
「よろしくお願いします」
「……ええ、ふふっ」
軽く笑うヒマリ。そして過去の自分を少し貶む――『本当にこの子があの先生なのか、あの時戦っていた先生なのか』と疑った自分を。そして同時に確信もした………マッシュが負けることは、絶対に、神に誓って無いと。
それから、大体数分後。
「部長〜、データまとめ終わったよ。次の目標は………何この状況」
「あぁ〜…そこです、…そこそこ……」
「こんな感じでいいですか?」
「完璧です………いいですねぇ、肩叩きというのは」
「じいちゃんにもよくやってたので」
「…………おばあちゃんと孫みたいだね二人とも」
「誰がおばあちゃんですか!!!!!!」
「あ、既視感の正体それか」
「怒りますよ!?」
今日の我が家
妹『……プレジデントはおじさま系キャラ、ジェネナルはくっ殺ヒロインか。なるほど』
弟『なるほどじゃねえわ』
私『妹ー?』
くっ殺ヒロインは絶対にないでしょう……てかロボのくっ殺って重要あるんですかね。
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次回はミカさんの被害者が登場します。
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