『―戦闘モード始動、Type.V継続』
戦闘開始後、先に動いたのはデカグラマトンと融合したケテルだった。自身に装備された2基の機関銃の弾丸をマッシュとサオリに向け発射し、曳光弾の弾列がマッシュとサオリに飛び掛かる。マッシュは右に、サオリは左へと飛び退いて退避した。
『二人とも、ケテルのエネルギーはほぼ無限…弾数にも制限はないと思って』
『なので、まずやるべきことは一つ』
「あの機関銃の破壊だな」
「破壊は大得意…っと」ピョン!!
マッシュは機関銃の弾幕を避けながら壁へ飛び移り、射線を見極めながら壁を走る。タイミングを見て壁から跳躍したマッシュは、ケテルの機関銃目掛けて蹴りを繰り出す。
『!』ビュン!
それを予期していたケテルは、脚部のワイヤーを射出して後方へと避けると、そのままワイヤーを駆使しながら移動していく。脚部の接地面から火花を散らして進むその速度は、ケテルの巨体からは考えられないほどの高速……例えるなら戦車がスポーツカー並みの速度で移動しているに等しい。
「はっや」
『あの巨大でこれほどの速度を……やはり、預言者は恐ろしいですね』
「しかし今ので奴の動きを止める手段はわかった」
「え、本当に?」
「ああ――っ、説明をする前に、今は回避だな…頼めるか先生」
「OK」
マッシュはサオリを肩に担ぎながらケテルに背を向けダッシュを始めるが、逃げているわけではない。今彼らがいる場所はあまりにも狭く戦いづらいため、空間を最大限利用できる開けた場所に行く必要がある。
『逃さぬぞ』
「先生は指定座標まで回避を続行、背中は任せてくれ」
「OKサオリンさん」
「サオリンはやめてくれ‼︎」
『敵機、ミサイルを発射!』
「迎撃する!」
ケテルはワイヤーを駆使しながらマッシュ達を追いかけながらミサイルを発射。サオリはエンジニア部による改造が施された固有武器・アリウス製アサルトライフル改め、シャーレ仕様アサルトライフルを構え、飛来するミサイルの鼻面に次々と射撃を叩き込む。
『ミサイルをああも簡単に…!』
『流石はエンジニア部製の武器』
「少し威力が高い気もするがな…‼︎」
「サオリさん、ケテルの動きを止める方法って?」
「奴のあの移動速度だけではなく、機動能力のほとんどを間違いなくワイヤーアクションに依存している――ならば、ワイヤー射出機を破壊するまでだ」
「成程……じゃあそのためにも、急ぎますね」
サオリを肩に担いでいるマッシュは速度を速め、左右へ移動しながらケテルの機関銃を避け続ける。かなりの揺れがあるはずなのに、サオリは冷静にミサイルを撃墜し続ける、流石はマッシュと一度やり合った相手だ。
「―見えた」
『追いついた』
「やべ」
マッシュは担いでいたサオリを軽く右へと投げ、ワイヤーを巻き取る勢いのまま突っ込んできたケテルを両腕で受け止める。
「フンッ…ヌッ…!」
受け止めた巨体を前へと投げ飛ばしたマッシュは、すぐにサオリと合流。ケテルは機関銃やミサイルの発射口を冷却しながら、二人を追って到達した広場を見渡す。
『この大広場も、数多の者がよく利用し賑わっていた……だが今は見る影もない。やはり時間と言うのは恐ろしいな』
「それには同意する」チラッ
『ほう、我意見に同意とはな、アリウスの少女よ』
「頼んだ―………私はもうアリウスの生徒ではない。シャーレ所属の、先生の生徒だ」
『今がどうであれは過去は変わらない。お前がアリウスの生徒だったと言う現実は変えられない。それは神であっても不可能なことだ』
「そうだ、過去は変えられないし、私がアリウスにいたと言う事実は変わらない……だが、私が先生の生徒だと言う事実も変わらない!」
サオリはアサルトライフルを向けケテルに発砲、ミサイルを簡単に貫通させるほどの威力持つそれはケテルにとっても無視できない物。ワイヤーで移動し、避けようとする――が。
「つ〜かまえ〜た」ガシッ!
『‼︎』
『い、いつのまに』
「いやぁ、長い間話をしてるんで、後ろに回り込んじゃった」
『ワイヤーを手に……しかしたった2本のみ、それで私が止められるとでも?』
「十分だよ――こうするから」
マッシュはワイヤーを持ちながら後ろへと下がると―突然マッシュの姿が消え、ケテルのワイヤーはなんと地面へと引き摺り込まれていっていた。
『ワイヤーが地面に、なぜ、いきなり―――いや、そうか。何故奴が突然が後ろに回り込めたのか……それが今わかった』
『先生……地面を掘り進めて、ケテルの後ろに飛び出したんだ』
『地面はコンクリートなんですが!?』
マッシュは、サオリがケテルの気を引いているうちに地面を掘り進み、そのままケテルの後ろまでトンネルを掘削した。そして展開されていたワイヤーを掴むと、再び掘ってきた地面へと飛び込み、元の場所へと戻った。
「複雑に掘っておいたから、ワイヤー結構引っかかっるでしょ」
「それでしばらくは動けまい!」
『ッ───、それは』
「じっくりと味わえ!」
サオリは背負っていたアグネヤストラを構え、ケテルへ向けて発射。ワイヤーが地中の中で複雑に絡まり、しかも先端のアンカーをマッシュが持っているために動けず、ケテルはアグネヤストラのミサイルをモロに喰らう。
「どんなもんじゃい」
「…確実に大きなダメージを与えた、手応えもある――だが」
『反応、依然として健在……ダメージは負ったものの、これは』
『まだまだ戦闘ができるって感じ――待って、まずい、先生避けて!』
『ドゴォン!!!』と轟音が響いた瞬間、二人の前方から超高速の砲弾が飛んできた。マッシュはそれをレシーブの体勢で受け止めようとしたが、桁違いの運動エネルギーを持つ砲弾はあまりにも重く、マッシュを後退させるほどであった。
「先生が威力を殺しきれない……だと!??」
『砲弾をレシーブって何?』
『さあ…?』
「!!」
砲弾をレシーブした状態でマッシュは壁に向かって吹き飛んでいってしまう。サオリがマッシュの元へ駆けつけようと走るが、それを拒むようにまた砲弾が飛んでくる。
『――ケテルは最初に作られた預言者だ。それゆえに技術発展度もAIの複雑性も低い、だが機体上部を換装することで様々な形態へと変化可能だ。先の姿がType.V、そしてこの姿がType.C』
煙の中から現れたのは、先ほどの姿とは打って変わり、1基の大型砲を装備した状態のケテルだった。
『流石の奴も、あの砲弾を喰らって無事であるわけがない――奴がいない今、お前を倒すのは容易い』
『っサオリさん!』
ケテルは再び砲弾を射出する。サオリは砲弾を迎撃しようとするが、余りの飛翔速度と質量に小銃弾では分が悪く、迎撃を諦め回避に徹する。彼女はアクロバティックな動きで砲撃を避けつつも、アサルトライフルでケテル本体へ攻撃を続ける。
『読める、読めるぞ。お前の動きが手に取るようにわかる……奴の真似事をしているつもりだろうが、はっきり言って所詮は劣化版だ』
「だろうな、私は先生のようにはなれない」
『ならば何故奴の真似事をする、それになんの意味が、証明になる?』
「一言で言うならば……憧れだ」
『憧れだと…?』
「ああ……そうさ!」
サオリはアサルトライフルで歩脚を集中攻撃し、ケテルの問いに答えながら注意を引き付け、その意識を誘引し続ける。
「背負われた時の大きな背、勇ましく戦うあの姿、優しく、素直で……子供らしい。わたしはそんな先生に憧れた」
『……それは奴が完璧な人間だからか』
「先生は完璧では無い、完璧であるはずがない」
『――理解できないな、奴が完璧ではないだと? 奴が完璧でないのなら、何故不完全な奴にそれを抱き続ける』
『完璧、なんて物がこの世に存在しないからですよ』
『……ミレニアムの全知』
『聞こえているのですね、流石です――いいですか、デカグラマトン。完璧なんて存在はこの世に存在しません……完璧だと思っていても、何かしら不具合があるのが、当たり前なのです』
『それはお前達ヒトだけだ、我々にはない』
『いいえ、必ずあるのです……貴方達にとっては、先生が
『なにを――!!』
ケテルが反応を感じ取り、砲台をサオリとは真逆の方へと向ける――そこにいたのは建物の柱を担ぎこちらへと走ってくるマッシュ。
『柱だと…!?』
『ちょっと予想外すぎる、どこから持ってきたのその柱』
「適当な場所から」
『何故だ、お前はあの砲弾を確実に喰らったはずだ…なのに何故』
『デカグラマトン、貴方は何か勘違いをしている……先生は初めから、貴方の攻撃を受け倒れたりなんてしていません』
『なんだと?』
「わたしは見ていたんだ、お前の砲弾をレシーブで受け、後ろへと後退していっている時……先生は」
【!】ダダダダダッ!!
「バック走をしていた」
『――あの砲弾よりも速く後方へ走り続けることによって、壁に衝突する前に砲撃から逃れたと言うのか?』
「大正解花丸、そんな君にはこれをあげよう――僕の新技を」
彼は砲弾から逃れた際、適当な柱を見つけて根本からへし折り、それを抱えてケテルの元へと走っていた。マッシュは柱を力一杯両手で握り、ビックバンダッシュに匹敵するほどの加速と共に、ケテルに向けて繰り出す。
「ローテーターカフ魔法────
『んぐっ!!!』
『魔法ってなんだっけ?』
「筋肉魔法だぞ」
『それはもう魔法ではありませんよね?』
その名前通り、大質量の物体で相手を殴り倒すという単純な攻撃だが──マッシュの筋力であればその破壊力は絶大。振り抜かれた柱がケテルを強かに叩き、大型砲の砲身がへし折れ、さらに四脚部分も破損、爆発を繰り返しながら近傍の遺構へと吹き飛ばされる。
「あっ、柱がへし折れちゃった」
『研究所を支えていた柱が……』
「サオリさん、ヘイト任せっきりになっちゃってごめんなさい」
「気にしないでくれ、わたしは先生の役に立てるだけで嬉しいんだ」
「照れますな」
『……さっきので反応が消えた――多分、勝ったと思う……けど』
『……あっさりし過ぎている気もしますね』
「しかしあれを喰らって無事でいられるか? はっきり言って多分誰でも倒せるぞ、あの技は」
ケテルは、マッシュの速度と筋力によって膨大な運動エネルギーを伴った質量体をぶつけられた。おそらくはキヴォトス人でも一撃で倒せるほどの威力……預言者であろうと無事ではいられないはずだ。
『―――Type.F起動―――全兵装パージ開始』
「!」
だが、今のケテルはもうただのケテルではない――デカグラマトンという異常進化したAIが搭載されている、規格外の超兵器だ。ケテルは武装の全てをパージし、四脚部分だけを残す――そして、その四脚部分が変形を遂げ、徐々に形状を変化させていく。
『対高脅威目標殲滅モードへと移行、最終形態への変形を開始』
「変形………かっこいい」
「言っている場合では無いぞ先生、今のうちに破壊しなければ!」
サオリは変形中のケテルに向けて発砲する…しかし、ケセドが利用していたものと同じオレンジ色のバリアによって攻撃が防がれ、さらにはビナー戦でマッシュを
「っ、ダメか」
『ケテルの反応がどんどん大きくなっていってる――しかも、あの形態って』
『……人型、散々言ってきた者が、ああなるとは』
『武器も生成されてる……レールキャノンって、また厄介な』
四脚から二脚への形態変化、ターゲットサイトのようなヘイローが一度消える。ケテルはその姿を、徐々に戦車ではなく霊長に近い存在へと変えていく。
『――ファイナルモード、変形完了――対象……抹殺』
「人型になってくれてありがとう――もっと戦いやすくなったよ」
カメラアイを備えた砲塔が胴体を構成し、前脚が腕となり、後脚はそのまま大重量の巨体を支える脚となり……最初は無かった頭部が展開されている……まるでターゲットサイトのような形状をしていた黄金のヘイローは、
『――イレギュラー…私はお前を、否定する』
「否定し続ける人生って、辛いだけですよ」
ケテル改め――第0セフィラ・デカグラマトン。アリスの固有武器・
『――消えろ』
決戦の始まりを告げた。
やっぱ最後は殴り合いですよね、これよこれ。
デカグラマトンがメインストーリーた入るって知らなかったんです……めちゃくちゃ書いちまったよ、もうやり直せねぇ。
まあ別世界線ってことで…お願いします。
イベストでのカズサちゃんとの会話やら行動やらが……なんか、湿度というか距離感がバグった感じになっちゃった……どうしよう。
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