透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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終わったよ……みんな


マッシュ・バーンデッドと好敵手

 

 

 

『先生!ご無事ですか!?』

 

「足腰がちょっと不味くなったけど、大丈夫ですよ」

 

「本気の力を使ってしまったら、かなり体に負荷が残ってしまうんだったな……本当に平気なのか?」

 

「あれから結構筋トレを頑張りまして、前よりも動けるようにしたんです。まだ少しだけ違和感はありますけど」

 

「……そうか」

 

『……それで、敵倒しちゃったけど……どうするの?』

 

 

 

 

 

 

壁に打ち付けられ、左腕は無くなり、右足と破壊され、身体中にヒビが入っており、もはや動くことができないデカグラマトン……彼は負けた、誰がなんと言おうと負けてしまったのだ。

 

 

 

 

 

『……もう、エネルギーも、底をついたか…』

 

「……デカグラマトン、二度と、他人に迷惑をかけ無いっていう約束をしてよ。そうしたらもう僕は君に何もしない」

 

『何を勘違いしているマッシュ・バーンデッド……私は、これで終わったわけでは無いぞ』

 

「?」

 

『私という存在は消えるだろう……だが、私の意思はいつまでも生き続ける――残っている預言者達が、その代弁者だ』

 

「遺志を繋ぐもの……ということか」

 

『私は死ぬわけでは無い――やり直すだけだ』

 

 

 

 

 

壊れかけの右腕を前に出し、ブレードを展開しマッシュに向けるデカグラマトン。自分は負けた―だが終わっていない、これからだ、ここからが自分の物語なのだと豪語していた。

 

 

 

 

『私はここで一度消える――だが、次がある。すべての預言者を導く最後の預言者……「絶対的存在」を超える道を切り開くことになるであろう…者が、残っている』

 

『――第十セフィラ・マルクト…ですか』

 

『そうだ……マクルトが蘇れば、全てが変わる――貴様でも勝てんだろう……マッシュ・バーンデッド』

 

「やってみないとわからないよ」

 

『口では何度でも言える――私は……何度でも甦るぞ、マッシュ・バーンデッド!』

 

 

 

 

 

死にかけの体、もはや動くことすら危うい状態でもデカグラマトンは強く言葉を言い続けた。誇りやプライドがあるのだろう、無理をしてでも、その威厳を保つために体を動かしていた。

 

 

 

 

『一度消え、復活した時、おそらく私はお前達のことを、今日のことを忘れているだろう――だが意思だけは絶対に変わらない。何度でも蘇り、何度でも貴様の敵となるぞ、マッシュ・バーンデッド‼︎―それこそ、それこそ私が‼︎』

 

 

 

 

 

 

 

「存在しているという証明……か」

 

 

 

 

 

 

 

サオリがそう呟き、デカグラマトンの動きが止まる。アサルトライフルを下に下げ、帽子に少し触れながら、彼女は思ったことを告げていく。

 

 

 

 

 

「……デカグラマトン、私はずっと引っかかっていた。お前は神を証明し絶対者になると豪語していた、全ての上に立ち、全てを超えるとも」

 

『そうだ……そのために私は、同胞を』

 

「その同胞を……何故お前は、洗脳し、自分を崇拝するように仕向けなかったんだ?」

 

『…!』

 

「先生を排除しようとしていると言う発言も気になって仕方なかった、ビナーを最初に倒され敵と認識した、自身の障害になるから排除しようとした……ケセドやビナーはそう言う意思で動いていたが――お前だけは、違う気がして仕方ないんだ」

 

『……ビナーやケセド、そしておそらくケテルも、貴方の目的に力を貸すが貴方を崇拝しているような感じは全くしませんでした』

 

『自分が上に立っていたい存在が……なんで、味方を洗脳して自分を上だと認識させなかったの?

 

『……………』

 

 

 

 

デカグラマトンは絶対者として、神を証明する者として、常に上に立ち全ての絶対者として君臨するつもりだった。マッシュを倒そうとしたのはその障害になるから……だとしても。

 

 

 

 

 

「お前が先生を攻撃している時……何処か、既視感を感じていた。先生も、身に覚えがないか?」

 

「……言われてみれば、なんか……昔……あっ、もしかして」

 

「……先生を攻撃している時のお前は、過去の私にそっくりだった。―――先生を妬み、八つ当たり気味になっていた……自分の」

 

『………』

 

 

 

 

 

 家族を取られる、離れ離れにさせられる……そんな妬みをマッシュに抱き、ベアトリーチェに唆され、一度は彼を殺そうとしたサオリは、嫉妬、妬み、僻み、それらがデカグラマトンから感じており……とても他人事のようには思えなかった。

 

 

 

 

「……デカグラマトン、お前は友なんていらないと言っていた…それはおそらく事実だろう。――でも、仲間が必要ないとは、思っていないんじゃないのか?」

 

『……戯言だ、私に、そんなものは必要ない』

 

「同じ立場のものじゃなくても、同胞は欲しかった……そうじゃないのか」

 

『……違う』

 

「先生の周りにいる私達のような……自分を慕ってくれる同胞が欲しかったのではないのか」

 

『違う』

 

「先生のように、誰かに頼られたり、誰かに必要とされたい、誰かに敬わられたい…そう思えば思うほどお前は―――先生を妬んでいたんじゃないのか」

 

『違う!! 私は、デカグラマトン、キヴォトスの神秘であり神を証明する者! そんな、そんな私が!…………私が………』

 

 

 

 

 

デカグラマトンはやがて顔を下げ、会話を聞いていたヒマリやエイミはハッとして、マッシュは一人別のことを考えていた。

 

 

 

 

 

『……いや……認めよう――私はお前が羨ましかったのだ……マッシュ・バーンデッド』

 

「みんなに慕われてるから?」

 

『お前は同胞達に自然と好かれ、頼られ、慕われていた。お前の周りには常に自分を好いている者達で溢れていた』

 

「……預言者達を洗脳しなかったのって」

 

『お前の真似をすれば、自然と仲間が増えるだろうと考えていた、勝手に好かれて勝手に慕われるのだろうと――だが実際は違った』

 

『……仲間というのは勝手に増えていくものではありません、交流を深め、互いに理解し絆を結んでいき…始めて仲間と呼べる存在となるのです』

 

『……それがわかっていても……私は……できなかった』

 

 

  

 

 

 

デカグラマトンはシンギュラリティに達したAI、自分で考える意思や思い、感情などが芽生えた極めて珍しい、超常的な存在……だが、人の心というのは、あまり理解でなかった。

 

そして感情を持ってしまったからこそ、彼は孤独というものをしっかりと感じており……進化したからこその苦しみも感じていた。

 

 

 

 

 

『……お前は、元いた世界では忌み嫌われていたと聞く。孤独でもあったと………何故だ、何故、差ができてしまったんだ』

 

「経験と実績の差だ……先生は数多くのもの達と対等に接し、絆を深めていった。お前とは…違う」

 

『……キヴォトスの英雄……か――尚更羨ましいな』

 

「僕はマッシュ・バーンデッド――英雄なんかじゃない。」

 

『ならば貴様は……なんだ』

 

「この世で生きている、一つの生命だよ」

 

『……命か』

 

「そして一つの生命って部類には――君も入っているよ。デカグラマトン」

 

『………なに?』

 

『…先生?』

 

 

 

 

 

マッシュは片膝をつき、デカグラマトンと視界を合わせ、今までのように、生徒と接するような態度で話を続ける。

 

 

 

 

「……寂しかったんだよね、ずっと、長い間ここで、ひとりぼっちだったから」

 

『…………そうなの…かもな』

 

「……辛かったでしょ」

 

『………よくわからない、だが……自然と、苦しくは感じた』

 

「多分君の辛さは、僕には到底理解できない程に苦しかったものだと思う――でも、孤独の辛さは、少しわかるよ……今までそばに居た人と、突然会えなくなった気持ちも

 

『…‼︎』

 

『……そうですよね、先生……貴方は、お爺様と』

 

「…私も、少し、共感できる」

 

 

 

 

 

 

 マッシュはずっと側にいてくれたレグロと離れ離れになってしまっていて、サオリは過去にアズサと離れたり、関係を持っていた生徒らをベアトリーチェにやられたりしていたため、デカグラマトンの苦しみが理解できた。

 

デカグラマトンは、ただ寂しかったというのもあるのだ。だから神を証明し絶対者となり、自分自身を世界に示し、認知されたかった――誰かに見つけて欲しかったのかも、しれない。

 

 

 

 

 

「デカグラマトン、シャーレに来ない?」

 

『!』

 

『は……はい…!?』

 

『先生……本気?』

 

「なんとなく、それを言うであろう気はしていたが……念のため理由を聞いておいてもいいか?」

 

「だってさ、ずっと、またこの場所でひとりぼっちなのは……後味が悪いんだ。復活してもまたそれが続くのは、不憫だ」

 

『……お前を、仲間を、排除しようとした私を新たな仲間にする気か?』

 

「うん」

 

『……イカれているな、貴様は』

 

 

 

 

 

 

デカグラマトンはブレードを引っ込め、マッシュの方を向き。

 

 

 

 

 

『――魅力的な提案だが、拒否する』

 

「えぇここはよろしくって言うところでしょ」

 

『私が私であり続けるためには、お前を超えなければいけない、お前の好敵手であり続けなければならない』

 

「仲良くしたいのに」

 

『デカグラマトンとは、そう言う物なのだマッシュ・バーンデッド……それに私が納得しても、他預言者達が納得しないだろうからな』

 

「んむぅ」

 

『……お人好しにも程があるよ、先生』

 

『ええ……本当に』

 

 

 

 

 

敵であったデカグラマトンをシャーレに招こうとしたマッシュだったが、デカグラマトンはそれを拒否……デカグラマトンにはデカグラマトンの目的と夢がある、故にマッシュと仲間になるわけにはいかないのだ。

 

 

 

 

「デカグラマトン――次あった時も、僕が勝つ。勝って、君を止める」

 

『なら私は何度でもお前の敵となろう……お前を倒し、私が天に立つ』

 

「……これが男の友情と言うやつか?」

 

『ちょっと違う気がしますが』

 

『デカグラマトンって性別あったっけ……まあいいや、とにかく、勝ちは勝ちだから、先生達は―――』

 

 

 

 

 

戦いが終わり、マッシュ達が帰るための退路を調べようとしたエイミ……しかしそれを調べる前に、ある異変が目に入った。

 

 

 

 

 

『なにこれ……ダムが――ダムが、破壊された⁉︎』

 

『…なに?』

 

「どう言うことだ!?」

 

『ダムが破壊され、水が……水が、先生達がいるそこへと押し寄せてきます!このままでは、そこは水没します!』

 

「なんで急にダムが破壊されて――いや、考えてる暇ないや」

 

 

 

 

 

マッシュは動き、デカグラマトンの手を肩に回す。そんな行動にデカグラマトン本人はとても驚いており、状況がわかっているのかと焦っていた。

 

 

 

 

 

『貴様、死ぬ気か? 体に負荷が残っているそんな状態で私を運ぶなど…!』

 

「このまま君を残していくのも嫌だよ」

 

『さっき言ったはずだ、わたしは蘇ると! だから』

 

「それでも、置いて行くのは…嫌だ」

 

『―――脱出ルートの案内をいたします、準備を』

 

『部長…?』

 

『今は何よりも逃げることが先決です……それに先生がそれを選んだのなら、それをサポートするのが私の役目』

 

「なら私は先生の近場でサポートする」

 

「よし……行こう」

 

 

 

 

マッシュ達はその場から逃げ出すため、一目散に走り始めた。聞こえてくるのは波の音、彼らがいた広場にはもう水が入り始めおり、建物全体が水で溢れかえり、彼らがいるエリアが水没するのも時間の問題だ。

 

 

 

 

『そこをまっすぐ!』

 

『建物から出られれば、あとは大丈夫…っ、やばい、もう波が来た!』

 

「足が…重いな」

 

「もう少しだ、もう少し……―なっ…‼︎」

 

『――前方にも流れて来たか、なら残されるルートは……上だけか』

 

 

 

 

前からも後ろからも水が流れてきており、このままではマッシュ達は津波に巻き込まれてしまう。脱出ルートは上、今いるマッシュ達がいる場所よりも高い場所のみ。 ならやるべきことは簡単

 

 

 

 

「サオリさん、お願いできますか」

 

「ああ、上からワイヤーで引っ張ればいいのだな!」

 

「お願いします――フッ…!」

 

 

 

 

マッシュはサオリをその上の階の方へと投げ飛ばし、その階に着地したサオリはそこからワイヤーを伸ばし、マッシュの腕へと絡ませる。

 

 

 

 

「今の僕には君を投げ飛ばすほどの足腰がないんだ、ごめん」

 

『………気にするな』

 

「じゃあ行くよ…サオリさん…!」

 

「しっかりと、掴んでおくんだぞ‼︎」

 

 

 

 

サオリがワイヤーを引っ張り、デカグラマトンの手を肩に回しているマッシュの足が地面から離れ、足元が完全に水没していった………その時

 

 

 

 

 

ブンッ!

 

 

 

「‼︎」

 

「――なっ、なにを‼︎」

 

『デカグラマトン‼︎』

 

『……嘘』

 

 

 

 

 

デカグラマトンは最後の力を振り絞り、マッシュの肩に回されていた手で彼を掴み、彼をサオリの方へと投げつけた。 サオリのパワーだけでは、自分たちを持ち上げるのにはかなりの時間がかかる、そうなってしまえば共倒れになる………ならば

 

 

 

 

『犠牲になるのは私だけでいい』

 

「待って、デカグラマトン」

 

『(案ずるな、マッシュ・バーンデッド――いつか、また、私は再臨できる……記憶は、ないのかも知らないが)』

 

 

 

 

 

デカグラマトンは水の方へと向かって落ちていき、最後にマッシュとサオリの顔を、よく、内部メモリーの中に保存する。

 

 

 

 

『―――――ああ……お前が……羨まし……かった―――……だが……今は、少し違うな』

 

「デカグラマトン…!」

 

「先生ダメだ‼︎ もう……ダメだ」

 

『…………マッシュ・バーンデッド』

 

 

 

 

デカグラマトンは破損している右手で、グットサインを作り

 

 

 

 

『――また会おう』

 

 

 

そう言って、水の中へと落ちていった。最後の最後で……デカグラマトンは誰かのために力を使った……その行為は、マッシュが行ってきたことと同じであった。

 

 

 

「…………そんな」

 

 

しかしマッシュは、そんな彼に感謝しながらも……いなくなってしまったことに……ひどく、心を痛めていた―だが止まってはいけない……助けてくれた命を無駄にしないためにも、マッシュはサオリを連れて、その場から脱出したのであった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「――本当に、お疲れ様でした。先生」

 

「いえいえ……戦ってた相手がまあまあ強敵で、ちょっとびっくりしましたね」

 

「そんな強敵に先生は普通に勝ったんだよ? もっと誇ってもいいのに」

 

「誇るのは……もう少し後にします」

 

「……そうですね、まだ、完全には終わっていませんね」

 

 

 

 

 

デカグラマトンがいた区域は完全に水没し、ちょっとしたニュースにもなり、皆にマッシュは心配され、しばらくの間病室で休み、今、顔合わせと言う感じでヒマリ達がいる部室へとやってきていた。

 

サオリの方は特に目立った傷も無く、普通に復帰したが……デカグラマトンの事だけは、どうもスッキリしないようであり、しばらく引きずりそうだと言っていた。

 

 

 

「……デカグラマトンの件は……その」

 

「――悲しいけど、いつまでも引きずってるのは、助けてくれたあの人に対しても侮辱だと思うので……前を向くことにしたんです」

 

「相変わらず強いね、先生は」

 

「……二度と、あんなふうなことが起きないように…頑張ろうって思います」

 

「あまり自分を責めてはいけませんよ、先生……貴方は、預言者を二体も倒し、キヴォトスを救ったのです――だから、胸を張ってください」

 

「……ありがとうございますヒマリさん、そうすることにします」

 

「……脅威自体はまだ去ってないけどね」

 

「……マクルト、そのほかにもまだまだ預言者は残っています――でも」

 

 

 

 

 

ヒマリは車椅子でマッシュに近づき、手を伸ばし、改めて願う。

 

 

 

 

 

「先生がいれば、もう怖いものはありません……今回は本当にありがとうございました。――次回もまた、よろしくお願いします」

 

「任せてください、なにがきても……勝ちます」

 

「頑張ろうね、先生……デカグラマトンに関わったものとして」

 

「――うん」

 

「貴方に会えて……私は、幸運でした」

 

「こちらこそ、これからもよろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

預言者達とマッシュ……その戦いはまだ完全には終わってはいない。だが確実に、進歩はした。

 

 

 

 

デカグラマトン……孤独なるAI、彼もまたキヴォトスに住んでいた一つの存在――また会えるかもしれない。

 

 

 

そんな希望を胸に……マッシュはまた、シャーレの先生として歩み出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  特殊作戦デカグラマトン編

 

 

 

           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………リオ、これで、満足しましたか?……貴方では彼に勝てませんよ。絶対に」





デカグラマトン編……完結。

結構書いてて楽しかったのですが……章自体に人気がなかったことが判明しちゃって編な感じにもなっていました。

それでも!!見てくれて、感想をくれた方々には本当に感謝しかありません、これからも、どうかよろしくお願いいたします。








次回は今回のお話であった、病室で治療中のマッシュ君に対してのみんなの反応でございます……どうか、どうかお楽しみに

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