透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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マッシュ・バーンデッドと放課後にスイーツを

 

 

 

 

「おや、そろそろパフェが出来上がりそうですね」

 

「カズサちゃんはイチゴをふんだんに使ったパフェで、レイサちゃんは色とりどりの果物を使ったミックスパフェ、どちらも美味しそうですね」

 

「審査員、早く食べたいです」

 

「趣旨を間違えないようにお願いします」

 

(よだれがすごい)

 

(正実副委員長の威厳は何処に?)

 

(ギャップ萌え……ですね、はい)

 

 

 

 

 

 

 何処ぞの大食いキャラの様な顔をしながら唾を飲み込むハスミ。審査員として働きはするが、本心はスイーツを食べたい。ただそれだけ。

 

 カズサとレイサはドキドキしながらも、精一杯作ったパフェをハスミの元へと持っていく。

 

 

 

 

 

 

「いちごパフェ、お待ち遠さまです」

 

「シンプルだ」

 

「レイサスーパーハイパーウルトラミックスパフェです!」 

 

「小学生が好きな言葉全部乗せみたいな名前のパフェだ…!」

 

「これはこれは――もう食べていいですよね?」

 

「どんなけ食べたいのよ!」

 

「まぁちゃんと審査してくれるのなら……では試食をどう『いただいてます』―いただきますじゃなくて?」

 

 

 

 

 

 

『試食をお願いします』と言う前にもう食べていたハスミ、腹が減ったクマは獲物の様子を伺うことなく食らいつくらしいが、今のハスミは飢えた魚の様にスイーツを食らっていた。

 

 

 

 

 

 

「クリームとスポンジの間にいちごジャム,そしてクリーム自体にもイチゴを少し混ぜている……まさに苺天国」

 

「よ、喜んでいただけた様で何よりです」

 

「そしてこちらは……美味しい。ミックスとなると、さまざまな味が混ざってまとまりを失ってしまう事があるのですが……レイサさんが作ったこのパフェは、味が調和するフルーツを見つけ出し、チグハグにならないように載せている……完璧です」

 

「そこまで言われちゃうと,なんだか照れますね…えへへ」

 

 

 

 

 

 いい感じになっているが、少し冷静になろう。ハスミは今現在パフェを二つ同時に食べている、苺パフェの平均カロリーは425kcal、対してミックスパフェはその倍……それを何食わぬ顔で食べている。

 

 

 

 

「審査の結果は――」

 

『……』ドキドキッ

 

 

 

 

 

 

 

 

「――双方共に90点」

 

『たっか!!!』

 

「正直もうどっちも美味しかったので、どっちが上とかないですね」

 

『審査の意味‼︎』

 

「なんとなく想像はついてた」

 

「なのになぜ彼女を?」

 

「いや、最初はツルギさんとかナギサさんとかミカさんに頼もうかなーって考えてたんだけど。スイーツの匂いを嗅ぎつけたのか押し寄ってきてさ」

 

「スイーツモンスター……」

 

 

 

 

 

 

「これでは一向に勝負がつかないのではないか?」と思い始めた一同――しかしマッシュだけはなぜか平然としていた……その理由を、ナツはすぐさま理解した。

 

 

 

 

 

「……成程、長期戦という事だね」

 

「長期戦?」

 

「審査員は優劣をつけず、同じ点数をつけ続ける――しかし審査員のお腹にも限界はある」

 

「つまり……片方のスイーツを食べられなくなるまで、勝負は続くって事?――それってつまり」

 

「これはどっちが美味しい物を作れるかじゃない……どれだけ審査員の腹を満たせるか、どちらが先にギブアップするか――そう言う事だね?先生」

 

「うん、そうだよ、うん」

 

 

 

 

 

 嘘である。

 

 

 

 

 この男、そこまで深くまで考えておらず、ただただハスミが優劣をつけずに得点しまくるので、勝負が付かず、『お互いに頑張ったね、これからもよろしく!』みたいな感じでおわるということをだけしか考えていなかったのである。

 

 

 

 

 

「……上等、忍耐力なら負けないし」

 

「私だって負けません! 元気なら誰にだって負ける気はありません!」

 

(………フフッ、懐かしいですね)

 

 

 

 

 バチバチと火花を散らしている2人、そんな2人を見て何処か懐かしさを感じていたハスミ――そしてここであることに気づく。

 

 

 

 

 

(――あれ、これってちょっと太るどころじゃなくて、結構太ってしまうのでは?)

 

 

 

 

 

 判断が亀ほどに遅い。焦るハスミを尻目に、マッシュは次のお題を出してゆく。

 

 

 

 

 

 

「つづいてのお題はこちら――みたらし団子です」

 

「いきなり和!?」

 

「さっきパフェ作ったばかりなのに!?」

 

「しかもみたらし団子って,結構高カロリーなんじゃ…?」

 

「すぐにお腹が膨れることで有名な奴ですね」

 

(先生……さては、わざと高カロリーのものを選んで私のを腹をいち早く膨らませようと…⁉︎)

 

 

 

 

 

 ただただ難しそうなものを選んだだけなので、そこまで深く考えてはいない。だがこれでかなりの負担がカズサ・レイサ・ハスミにかかることとなった。

 

 

 

 

(『――絶対に…勝つ!』)

 

(耐えてください、私の胃ッ…!!)

 

 

 

ある意味三つ巴の戦いが……今、始まった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 それからというもの、カズサとレイサのコンビは出されるお題を次々とクリアしていき、いつのまにか時刻も夕方前くらいになっていた。

 

 

 

 

 

「ここは、こうして…………あいつは――そっか、焼き過ぎはダメなんだ」

 

「杏山カズサ……は、アレを使ってるんですね……なら私は……」

 

 

 

 

 

 集中、2人は相手の動きを見ながらも手を動かし,現在出されているお題の『シュークリーム』を作っている。流石に腹が空いたのか、マッシュ達はマッシュが買ってきた別のシュークリームを食べていた。

 

 

 

 

「あの2人、ホントにずっとやってるわよね……そんなに負けたくないの?」

 

「なんだかんだ言って、カズサも,彼女も負けず嫌いということなのだろう」

 

「確かに……この前参加した大会でも、あの人達に負けまいとばかりに頑張ってたもんね」

 

「ねえ三人とも、2人のこと、今どう思ってる?」

 

「ちょっと……意外だったっていうのが本音」

 

 

 

 

 ヨシミがシュークリームを食べながら、2人を見つめる。ただただ良く喧嘩をしている仲の悪いという認識だったが,今回の対決を見て改めて考えん変えた。

 

 

 

 

 

「カズサ、無愛想だし、良く喧嘩っ早い口調になったりするけど……その分何かに取り組むことへの真面目さとか、優しさとか……そういうので溢れてるんだなって」

 

「レイサの方も、熱血猪突猛進エネルギッシュお嬢さんかと思っていたけど……ちゃんと考えて行動し、相手のことを見ていた。思いやりというのかな」

 

「2人とも今を、この現状を変えようとしているのはしっかりと伝わってきています」

 

「…そうですね」

 

「相手のことを知ろうとしたとき、周りから聞いた情報とか、調べたこととか、過去のこととか、それだけで全部判断するのは違うと思うんだ。実際に会って、話して、いろいろ試して……そこでやっと相手を理解できる。だから僕は、コレを開いたんだ」

 

 

 

 

 

 

 調べただけではわからない情報,憶測だけでは理解できない相手の気持ち……カズサはレイサのことを知ってはいたが、過去のことだかと切り捨てようとしていた。対してレイサは今のカズサのことを知ろうともせず、ただただ決めつけてしまっていた。

 

 

 どっちもどっち、今回の事件はそれが相応しいのである。

 

 

 

 

 

「―はい‼︎ デラックスシュークリームの完成!」

 

「ハイパーシュークリームできました‼︎……さあハスミさん、試食を!」

 

 

 

 

 

 そうこうしている間に、カズサとレイサは出来上がった大量のシュークリームをハスミに渡した。時間的にも体力的にもコレがラスト……2人は緊張の気持ちを募らせていたの――だが。

 

 

 

 

 

「―――ギブです」

 

『うそぉぉぉぉ!!?』

 

「ごめんなさい,本当にもう、入りません」

 

「……てことは、この勝負」

 

「引き分けだね」

 

 

 

 

 

 終了のゴングが脳内で流れ、カズサとレイサは疲れからかその場に座り込む。ハスミの方は腹を抑えながら座っていて、本当に限界なんだなと一目でわかる。

 

 

 

 

「お疲れ様、2人とも」

 

「先生………もしかして、こうなること予感してた?」

 

「さあ、なんのことやら」

 

「決着は付きませんでしたけど―――なんだか、スッキリというか、いい気分です!」

 

「………まあ確かに、前よりかは…遥かにいい雰囲気だね」

 

 

 

 

 勝ち負けではなく引き分け……勝敗が決することによって2人の関係が崩れるわけでは無い、引き分けにより勝負を終わらせることによって2人の関係性はもっともっと深く、もっと長く続く――こうなることをマッシュはなんとなく予想していた……のかもしれない。 

 

 

 

 

 

「……杏山カズサ」

 

「レイサ」

 

 

 

 

『――ごめん(ごめんなさい)……!』

 

 

 

 

 2人は互いに謝罪を行うが、ものの見事に被ってしまった。あたふたとしながらも2人はお互いにいろいろと言い合う。

 

 

 

 

 

「ごめん、あんたのことを忘れようとか、関係性とか……全部切り捨てようとしてた。私を関わろうとしてくれたあんたを…ホント…ごめん」

 

「わ、私の方だって! 今の貴女を勝手に決めつけて、襲って……その、空気も読まずにいろいろとしてしまって――ごめんなさい!」

 

「………あのさ、カズサ」

 

「何、ヨシミ」

 

「あんたの過去とか、何をしてきたのかとか……私達関係ないから。キャスパリーグとか、そんな仇名も気にしない……私達は、今のカズサがいて初めてスイーツ部なんだから……あーもう、だから!」

 

 

 

 

 

 ヨシミはカズサの元に駆け寄り、手を取り、叫ぶ。

 

 

 

 

 

「私達は今のカズサとか過去のカズサとかじゃなくて、杏山カズサっていう存在の仲間なの……だから、これから先も、何があっても一緒!」

 

「切り捨てさせたりしないよ、勿論レイサもね」

 

「わ、私もですか?」

 

「うん。一度何かで関わっちゃったら、もう部外者じゃない……レイサちゃん」

 

 

 

 

 アイリもレイサの手を掴み、胸へと引き寄せ、温かい笑顔を向ける。

 

 

 

 

「私達、今度こそお友達になろう?それで暇があったらスイーツ部に寄って欲しいな。私達、いつでも歓迎してるから」

 

「こんな……私でもいいんでしょうか」

 

「そんな君だからいいのさ、そうだろう?キャスパリーグ」

 

「その名前はやめてって!…………ねえ、レイサ」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 カズサは座ったまま、レイサに手を伸ばす。その顔はこの前までの様な憎悪や嫌悪の表情では無く。

 

 

 

 

 

 

「また、いつでも勝負を挑んできてよ……相手、するから」

 

「―――勿論です‼︎ 次は負けませんよ、杏山カズサ!」

 

 

 

 

 受け入れる様な、迎え入れる様な……そんな温かい表情であった。

 

 

 

 

 

「青春ですな―――よしみんな、このまま余ったシュークリームでシュークリームパーチーといきましょう。スズミさんもぜひ」

 

「喜劇……良い青春の物語を、ありがとうございます」

 

「あれなんか浸ってる」

 

「ではでは……改めて、友情に――かんぱーい」

 

『カンパーイ!!!』

 

 

 

 

 

 

 スイーツは、様々な種類の食材を組み合わてできる食べ物。一つ一つ違った甘さが、一つ一つ違った美味しさが……混ざり合わなくてもいい、変に一緒になろうとしなくてもいい。

 

 

 己らしく、自分も甘さを貫き、他のことも気にかけ理解する――それだけで十分なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……先生、色々とありがとう」

 

「生徒のためならなんのその」

 

「……私、先生のこと気に入っちゃった――コレからも、遊びに行っていい?」

 

「どうぞどうぞ」

 

「コレからも頑張ってね――マッシュ」

 

「うす」

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後スイーツ物語
~甘い秘密と銃撃戦とシュークリーム・パーチー〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、ハスミさんもシュークリームどうですか?」

 

「今は良いです……それよりも――ツルギに弁明、お願いします」

 

「うす」






やっぱ青春って甘くてなんぼですよね……。


次回はイベント「龍武同舟」です、ご期待ください



マッシュ君がカンフーを覚えたり、無茶苦茶したりします

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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