ステイナイト、セイバールートを見て。
妹『もう付き合っちゃえよ!!!!!!』
弟『じれってぇなこの野郎!!!』
私『普通に見ようよ』
こんな感じでした、終始もっといちゃつけコラ的な感じだったので、こっちの身が持ちませんでした……気持ちはわかるけど。
「…………スゥ――では、行きます」
「どうぞ」
暖かい光に照らされながら、マッシュはトレーニー姿で、レイジョはジャージを脱いだチャイナドレス姿で、互いに見合っていた。
少し開けた広場、そこでマッシュは仁王立ちで腹筋に力を入れながら、レイジョはまっすぐマッシュを見つめながら、ゆらりと体を揺らす―――その瞬間。
「――ハッ‼︎」
(早い…!)
レイジョは滑歩と呼ばれる技を使い、一瞬のうちにマッシュの懐まで入り込む。マッシュは当然腹に力を入れカウンターの準備に入る。
「―フッ!」ガンッ!!
(地面に足を――)
しかしレイジョは足で地面を強く踏み付け、マッシュを驚かせ、体制を少し和らげさせると、彼の腹筋へ向けて強烈な拳を繰り出す。
「セイッ!!」
鉄でも殴ったかのような音が聞こえ、マッシュは足を引き摺りながら後ろへと飛ぶ。レイジョが踏みつけた地面はひび割れ、その拳は赤くなっていた。
「アイテテテ、凄いな今のパンチ。まるで鉄骨で殴られた……いや、内臓そのものにダメージが入った感じがありました」
「猛虎硬爬山、と言う技です。本来は連続した攻撃を仕掛け相手の防御を誘導・或いは崩す事で出来た隙に本命の一撃を打ち込む技なのですが、今回は一撃必殺に変更させてもらいました」
「ミカさん以来だな、ここまで中にダメージが入ったのは………いやミカさんのほうがやばかった気もするな」
「この技は本来、相手の腹にめり込ませるような形になるのですが……先生の腹筋が強すぎて、衝撃がそのまま伝わったようですね」
「猛虎硬爬山、いい技ですね。見せてくれてありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ無理を言って実験をさせてもらって申し訳ない」
少し前、レイジョはマッシュの脅威的な肉体があまりにも気になり、ぜひその体で私の技を受けてほしいと願い出た。勿論マッシュはそれに同意し、今に至る。
「……所で何か冷やすものはありませんか? 手が赤く腫れてしまっていて………すみません結構痛いです」
「本気で力を入れてましたらね、保冷剤ならありますけど」
「ありがとうございます……先生に本気を使わせるとは……私も結構やるようですね―――所でそのミカさんという方はどちらに?」
「戦っちゃだめですよ。周りへの被害とか、怪我云々とかとんでもないことになると思うので」
「大丈夫です、別に殺し合うわけではありませんので」
「いやあの、ミカさん殺し合いじゃなくても結構怖くてですね」
『ハクチュッ!……今先生が私の噂をした気がする‼︎やっぱり運命じゃんね‼︎』
『久しぶりの出番に浮かれるのはいいが、ゴリラも寝言を言うとはね、学会に発表でもしようかな』
『耳引っ張るよセイアちゃん』
「そろそろ戻りましょう」
「もういいんですか?」
「手がこうなってしまいましたし、それに……今ので先生の力量ははっきりしましたので」
「…ちなみにどれくらいですか?」
「宇宙と地球」
「うん、全然よくわかりません」
「本気で戦ってもおそらくは勝てない、と言うことです。……負けなしだと思っていた私が、浅はかでしたね。上には上がいるものです」
「…それは僕もそうですよ」
「先生も壁を?」
「何度か」
マッシュとレイジョは元の衣装に着替えると、広場から離れ、玄武商会へと戻る道を辿りながら話をしていく。
「僕は長い間、山奥で誰とも会わずに暮らしてたんです。あっ、家族はいましたよ、おじいちゃんが一人、じいちゃん以外の人と話したことも、戦ったことも、あったことも無かったので、僕より強い人って見たことが無かったんですよ」
「………成程」
「でもここに来てからは強敵揃いで、結構びっくりしました。傷の治りが早い人だったり、背中を預けられる人が居たり、底が見えない人や、僕と殴り合える人までいた――とんでもない能力を使う悪役とも」
「苦しくは無かったのですか?」
「何回かはありましたけど、それ以上に嬉しくもあったんです。いろんな人と出会えて、話せて、一人じゃないんだなって改めて思わされましたし」
「…敵だった者達とも、仲良くなったり?」
「話をしてみたら、案外いい人ってのがたくさんいて。人生捨てたもんじゃないなーと」
友と出会い仲間と触れ合い、今の関係を築き上げてきたマッシュ。そんな彼の強さの正体はこれだと、レイジョは確信した。
相手のことを一方的に決めつけ、嫌っている自分は違う……と。
「…お見それしました」
「えっ、何がですか?」
「……いえ何でも、先生にとって、今まで戦ってきた相手は全て大事な人なのですね」
「かけがえのない友人達ですよ――あっ、勿論」
少し先を歩いていたマッシュは少し振り返り、レイジョに告げる。
「レイジョさんもその一人ですよ」
「……えっ」
「拳を腹で受け止めて、改めてレイジョさんの力の根源……というか思い?ってのも伝わってきたので……こういうのも戦友…?っていうんですかね」
「私も、その大事な人に?」
「レイジョさんだけじゃなく、ルミさんも、サヤちゃんも、キサキさんもミナさんも、みーんな大事な僕の生徒であり、友人ですよ」
「――成……程……っはぁ……天然人たらしとは、本当のようでしたね」
「そんな気はさらさらないんですけどね」
マッシュの言葉に嘘偽りは無く、純粋に思ったことを述べただけ、それはもう一発でわかった。人たらし天然ジゴロ……ルミが彼を気に思う理由はまさにそれが原因。
「――ルミ会長への想いなら、誰にも負けません」
「急にどうしたんですか?」
拳で語った者同士仲良くはする、しかしルミへの思いだけは絶対に負けない、彼女はそう決心付いたのであった。
――――――――――――――――――――――――
「――っ……ここは……私は何を…」
知らない天井……否、少し見覚えのある天井を目にしたまま、ミナは目を覚ましその体を上げた。
「……手当てもされている……私は――っそうだ‼︎…私は、奴に…‼︎」
マッシュに負けた、その事実を受け入れたまま体を動かし扉の方を向くのだが
「フンフンフンフンフンフンフンッッ」
「ななな、何をしてるんだお前は⁉︎」
「外腹斜筋を鍛えてます」
「なぜ今ここで?!」
「暇だったので」
マッシュは横に寝転んだ状態で上体だけを上下させる筋トレを行いながらミナが起きるのを待っていた。扉の近くにある机の上にはシュークリームとミルクがあり、ずっと待っていたのだと疑問に思ってしまう。
「……なぜ私をここに、送り返せばよかったものを」
「キサキさんが『勝手に動いた罰じゃ、しばらくここへはこぬように』って」
「………くっ」
「あっ、あと。『先生達の監視はずっと続けておくのじゃぞ』って」
「くっ‼︎」
「くっだけでそんなに嬉しそうな声出るんですね……ずっと気になってたんですけど、ミナさんはどうしてそこまで僕の事を敵視するんですか?やっぱりあのゴシップが原因だったり」
「……敵視はしてない……ただ、警戒はしている。お前だって初対面の相手に警戒心を持たないわけではあるまい」
「僕は誰でもウェルカムなタイプなので」
「危機感をもて危機感を。……話を戻すが、例のゴシップを見て疑ったのは事実だ、あそこまでの力を持っている者がわざわざ人助けを? 誰かを配下に加えたいとは考えていないのか?―何て考えはずっとあり続けていた」
「それはまた……何というか」
「わかっている、馬鹿馬鹿しいと言うこともな――しかし、現状はそんな馬鹿馬鹿しい考えすらも視野に入れないとだめなんだ…‼︎」
ミナは拳を強く握り、歯を食いしばる。マッシュを警戒……いや、力を持つものを警戒する理由、それが彼を疑う理由でもあった。
「……門主、キサキ様はいつも厳格、冷徹、冷静な態度をとっておられて、トップとしての威厳を出し続けていらっしゃる……しかし」
「…しかし?」
「……門主様のお身体は、非常にか弱い。走ることも、動き回ることすらも……進められていないほどに」
「それは……また」
「最近は特に酷い、だから玄龍門は常日頃から警戒心を高め、門主様の身を第一に考えている……何者にも危害を加えさせないように」
「だからあんなに必死に」
「今回の事件の特に警戒している、相手が何であれ問題を起こしたのなら即行動し、罰する。相手が門主様が信頼しきっている相手でも、友人でも客人でも……我々は皆、あの方のために働いているのだ」
「キサキさんを守るため、そのためなら――玄武商会を敵にして嫌われてもいいと」
「……ああ、鬼、外道と罵られようと…私は――我々は、あの方の事を愛している……だから、だから守るんだ!!」
全ては支えている相手のため、そのためなら鬼にでも鬼畜にでもなる……異常な忠誠心、しかしそこに黒い心はなく、ただ純粋にその人のために働きたいと思う人の心ゆえのこと。
「お前が善人なのはわかっている、だが、だがそれでも……私は…!!」
「いいですよ、とことん疑ってください」
「……なに?」
「ミナさんがキサキさんをどれだけ大好きなのかわかりました、どれだけの覚悟を持っているのかも――だから」
マッシュは取り上げたミナの武器を本人に渡し、その銃口を心臓に当てる。
「僕がキサキさんに何か悪い事をした瞬間、撃ってください」
「―――はぁ⁉︎ 貴様、それが、どう言うことかわかっているのか⁉︎」
「覚悟には覚悟で答えます」
キサキに何か危害を加えた瞬間、撃ってくれて構わない。それでキサキを守ってくれ、マッシュはそう言っている……だがそれは『他人に命の主導権を渡している』のと同意。
「だとしても、そんな……なぜそこまで、何でそこまで⁉︎」
「まあ、困った時はオタぎゃい"……噛んじゃった。舌から血が出てきた」
「まだ、1日しか会っていない相手に……何で…」
「先生、ですから」
マッシュはミナから離れドアノブに手をかけると、振り返りミナに告げる。
「僕たちの監視を任されている、なら一緒に行動しませんか? 僕たちがこれからやっていく事全てが、事実ってことになりますし」
「…………」
「また後で来ます、それでは。お大事に」
マッシュは外へ出て、ミナはそれを止めず見送る。
「………そこまで言われて、どう疑えと言うのだ――策士め」
ミナの心が、少しばかり変わった瞬間であった。
次回はいよいよにんじん嫌いのあの子が出ます、あと山海経のイベストって濃くないですか? 山海経だけでアビドス編超えそうなんですよ……何とかしねえと、まだレッドウィンターとうさぎが残っとるんです…‼︎最後までどうぞ、ご閲覧くださいませ。
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