透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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ちゅ!投稿遅れてご!め!ん!!

ほんとごめんなさい、書いてる途中に寝落ちしちゃって……くそっ!やはり毎日投稿の代償は高いのか!?

レグロおじいちゃん物語後半!そして最後らへんはシリアスだよ。多分。

それでは本編へ……どうぞ!


レグロ・バーンデッドと息子の友達【後編】

 

 

 レグロ・バーンデッドの包容力に脳を焼かれた生徒達は、一度彼の膝から離れ、借金の返済について再び会議を行う事にした。

 

 

 

「えー、では…大人のレグロさんも加わったことですし、定例会議を開始します。本日も、『学校の負債をどう返済するか』について話し合いましょう」

 

「わしも何か力になれるかもしれないからの、協力させてもらうぞ?」

 

「ありがとうございます!さて、それでは何か案がある方はいますか?」

 

「はい!私にいい案があるわ!」

 

「では黒見さん!」

 

「これはグラフィックボードって言うんだけど…」

 

「却下だね」

 

「ええ!?」

 

「また詐欺に引っ掛かってるよ〜セリカちゃん」

 

「嘘っ…今月のお給料まで使っちゃったのに」

 

「カモにされたんじゃな」

 

 

 

 

 セリカがしゅんと萎み、またレグロに頭を撫でられる。そして次に手を挙げたのはのノノミ。

 

 

 

 

「ここはやっぱり、この前却下されたスクールアイドル一択です!シュークリームカップルにも参加してもらって、あとは可愛い感じにしちゃえば大成功間違いなし!」

 

「シュークリームカップル?」

 

「これだよ」(シュー君の仮面をつける)

 

「こっわ!!?ってかカップル!!?」

 

「うん、もう1人ここにはいないけど、他の生徒にシューちゃんの方をしてもらったんだ」

 

「合意は?」

 

「してない」

 

「コラァ!!!!」

 

「あ、せっかくならレグロさんにもやってもらいましょう♪ うーん…シックエレガント爺やとか?」

 

「何やる気満々なの?やらないよ?わしこの歳でアイドルとか絶対に無理だからね?」

 

「それも却下です!!!」

 

「むぅ…」

 

 

 

 

 スクールアイドル案はホシノが嫌がったために棄却された。そして次に挙げたのはシロコ。アビドスで最初にマッシュに懐いていたらしいことから、レグロは少し安堵したつもりだった。

 

 

 

 

(見るからにクールビューティーじゃからなぁ、きっと真面目で、確実性のある案を出してくれるはずじゃ)

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、やっぱり銀行強盗しかない」

 

「却下ァァァァァァッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 しかしその油断が命取りだった。シロコはレグロが思っている『普通』とは程遠く、迷うことなく銀行強盗という暴挙に打って出た。

 

 

 

 

「ダメ?」

 

「ダメに決まってるよね!!?さっきは事情があったから許したけど、訳ありでもないのに銀行強盗はダメじゃ!!」

 

「これを見て、この経路で建物に侵入すると…こうなる」

 

「うわすっげ、完璧に建物の詳細と逃げのルート確保してる、すごいのぉ〜シロコちゃんじゃなくて!!!!!

 

「念の為におじいちゃんの分の覆面も用意してる」

 

 

 

 

 シロコが手渡したのは、Gの文字がワッペンとして縫い付けられた薄緑色の覆面だった。

 

 

 

 

G()って、そのまんま!!そもそも何で作ってるの!?いつ用意したの!?……とにかく、犯罪はダメじゃ!!よいな?」

 

「…………うん」シュン…

 

「あれ〜なんか見たことのある光景……素直、めっちゃ気持ちに素直」

 

「やっぱりカイザーコーポレーションを潰したほうが早くない?」

 

「お前まで何言っとるんじゃマッシュ!?騙された分はともかく、理由もなく踏み倒すために会社に喧嘩を売るのはダメじゃ!!」

 

「…………ごめんじいちゃん」

 

「既視感の正体分かった〜…あれ、わし兄妹育ててたっけ

 

 

 

 

 

 マッシュと全く同テンションの下げ方をするシロコを見て「マッシュと一緒に拾った娘か?」と思うほど、レグロにとっては2人の姿に共通点が浮かんでやまない。耳を垂らしたシロコと俯いたマッシュが並ぶと、表情筋の動きに比べて情緒豊かな点が瓜二つである。

 

 

 

 

 

「もう…真面目にやってください!!このセリフ何回目ですか!!」

 

「うーん……今日はもうやめておかない?いい案も無いし…そんな気分じゃ無いでしょ?」

 

「ん、せっかくレグロおじちゃんが来たんだから、街中を案内してあげたい」

 

「それもそうですね〜…ひとまずお昼でも食べましょうか!」

 

「じゃあいつもの場所で〜」

 

「いいね」

 

「いつもの場所?」

 

「うん、僕が好きなラーメン屋さん」

 

「ら、ラーメン?ま、まぁとにかく…みんなの街か、少したのしみだのぉ〜」

 

 

 

 

 

 レグロはシロコ達の街を見て回ることにした。

 

 自分の息子が守った街を回ると思ったレグロは楽しみな反面、常識外れな意見が飛び交う少女たちの言動には泣きそうにもなっていた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

柴関ラーメン

 

 

 

 

「いらっしゃい!空いてる席へ自由に座ってくれ」 

 

「犬が二足歩行で喋りながら料理を作っとる!!?しかも声渋っ!!?」

 

「お久しぶりです、柴大将」

 

「おお先生か!それにみんなも…お?このご老人は見たことねえな」

 

「僕のおじいちゃんです」

 

「先生の家族なのか?そりゃあ挨拶しとかねえと」

 

 

 

 

 

柴大将は手早く準備を済ませると、レグロの前に立ちペコリと頭を下げる。

 

 

 

 

「初めましておじいさん。息子さんには何回も助けてもらって正直礼を言っても足りないぐらいで、本当に感謝してるんだ……あー、よかったらこれ。ここのクーポン券、ぜひ使ってくれ」

 

「こ、これはご丁寧にどうも。レグロ・バーンデッドです」

 

 

 

レグロはクーポン券を受け取り握手をした後、柴大将が奥へと戻っていくのをじっと見ており、テチテチと音を立てて歩いていく柴大将にどことなく可愛げを見出した。

 

 

 

「レグロさ〜ん♪こっちですよ〜」

 

「おぉすまんすまん…ところでどっちに座ればいいかの?」

 

「ん、私の隣に座るべき」

 

「レグロさん♪私の方も空いてますよ?」

 

「じいちゃん、どっちに座る?」

 

「そ、そうじゃの〜うーん……(この歳になっても、女の子の隣に座る!なんてことが無かったんじゃよやな〜わし……いますごい緊張してるよ、血圧上がりそう)」

 

 

 

 

レグロは結構悩んだ結果、まだ幼さがあるシロコにした。

 

 

 

 

「じゃあシロコちゃん、隣座らせてもらうぞ?」

 

「ん、どうぞ」

 

「ありがとう、よっこいしょっと…」

 

「じゃあ僕は空気椅子で」

 

「いや座ろうよ!後そこ道!」

 

「じいちゃんが言うなら」

 

「素直〜」

 

「あ、注文おねがいしま〜す!」

 

「おう、ちょっと待っててな〜」

 

 

 

 

 空気椅子でテーブルについたマッシュがノノミの隣に移動し、生徒たちが順に注文を終える。しばらくすると、それぞれ頼んだものが運ばれてきた。

 初めて見るラーメンにレグロは興味と興奮を沸き立たせており、まるで少年時代に戻ったかのように目を輝かせている。

 

 

 

「これがラーメン……いただきます」

 

 

 

 レグロが麺を掬い、一口食べる……その瞬間、レグロの脳と口の中に電撃が走った。

 

 

 

「う――うまい!!濃厚な豚骨スープに、この細長い麺がよく絡んでおる!喉越しも噛み応えも抜群、飲み込んだあとの後味も豊か、箸が止まらなくなる…!これほど豊かな味わいの料理を口にしたのは初めてじゃ!!

 

「フフン、そうでしょそうでしょ?柴関のラーメンは世界一美味しいんだから」

 

「ほぉ〜そうか、セリカちゃんはここで働いているのか!こりゃあいい店を選んだの〜」

 

「じいちゃんも大絶賛だね。僕も食べよ、いただきま〜す」

 

 

 

 

マッシュに続くように他の生徒達も食べていく、やはり柴ラーメンはかなり美味しい、みんな幸せそうに食べるので大将も奥でにっこりしている。

 

 

 

 

「ほれほれシロコちゃん、口にスープがくっついておるぞ?」

 

「ん…ありがとうおじいちゃん」

 

「完全に孫娘みたいだね〜」

 

ズズッ……さすがはじいちゃん。もうシロコちゃんを手懐けた」

 

「そんなシロコ先輩を飼い猫みたいに…」

 

「でもマッシュ先生にも懐くのは早かったですよね?」 

 

「会って数日でもうこんな感じだったね〜」

 

「……私はそんなに甘い女じゃないよ。あ、おじいちゃん、今腕が塞がっちゃってるから、袖あげて欲しい

 

「はいはい」

 

「説得力皆無!」

 

「ごめんノノミちゃん、懐からプロテインが落ちそうだから直してくれない?」

 

「はいはい♪」

 

「そっちはなんで!?」

 

 

 

 

 食卓を囲んで賑やかにしているのを見てレグロは思う、マッシュはこんなにも素敵な子達と友達になり、ここで青春を過ごしているのだな。と

 

 

 

するとそんな時、店の扉が開いた。

 

 

 

 

「ん?おお便利屋の嬢ちゃん達じゃねぇか!久しぶりだな」

 

「お久しぶりね大将、ラーメンを食べに来たわ」

 

「やっとちゃんとしたご飯にありつけるね……今回の依頼、大変だったけど、やる価値はあった」

 

「うんうん、そのおかげでここのラーメンも4人分食べれる様になったもんね〜!」

 

「…あ、アル様!あの席に先生がいます!アビドスの皆さんも」

 

 

 

 

 便利屋68の社員4人が、柴関ラーメンへと入店した。アルは久々に見たマッシュの姿に、アウトローを目指す社訓も忘れてテーブルに駆け寄った。

 

 

 

 

「先生!」

 

「アルちゃん、ども」

 

「久しぶりね、対策委員会の皆も!」

 

「久しぶりだね〜…あ、レグロおじいちゃん、この子たちが、前話してた便利屋68の皆だよ〜」

 

「おお、君たちがマッシュが言っていた便利屋の皆!…初めまして、マッシュの祖父、レグロ・バーンデッドと申します」

 

「先生のおじいさん!!?ど、どうもご丁寧に…私は陸八魔アル、あっちにいるのが鬼方カヨコ、浅黄ムツキ、伊草ハルカ。私の大事な仲間よ」

 

「おお〜そうかそうか…みんな、マッシュと仲良くなってくれて、ありがとう」

 

「いえいえ、むしろこっちの方が……あ、ハルカ? 悪いけど名刺を持ってきてくれる?」

 

「なんでハルカに持たせてるのよ」

 

「落としちゃうのよ」

 

「えぇ……」

 

「は、はい!今持ってきますね」

 

 

 

オドオドしながら名刺を取り出したハルカがレグロの元へと歩み寄る。が、タイルが濡れていたのか、足をすべらせたハルカは円を描いて前へと倒れ──

 

 

 

「わ‼?」

 

「ちょっ、ハルカ‼」

 

 

 

 

アルがすぐに支えようと飛び出した、その瞬間──

 

 

 

「──っ!間に合えっ!!

フワッ―

 

 

 

「…あ……あれ…あれれ!?」

 

「浮いて…る…?」

 

「ま、間に合った!いやぁよかったよかった……わしも随分と衰えたのぉ……」

 

 

 

 レグロが持ってきていた杖を軽くハルカに向かって振り、床とほぼ平行となったハルカの体を浮かせた。顎を打ち付けるところだったハルカの姿勢を直立に戻すと、レグロが杖を懐に仕舞い直した。

 

 

 

「お、おじいちゃん!?今何したの!?今、ハルカちゃんが浮かんで……!?」

 

「おや、そんなに物珍しいものじゃったか?これは魔法じゃよ」

 

「「「ま、魔法!!?」」」

 

「じいちゃんは昔から、遠くの食器を取りに行ったりポットを浮かせたり、自分を魔法で強化したりしてるんだ。僕以外の人たちもそうだったね。最近は弱くなっちゃったから力仕事は僕がやってたけど」

 

「お前が強すぎんじゃって」

 

 

 

 

 魔法という言葉に食いつくシロコ達。特にアヤネが「他には何かありますか!?」と目を輝かせて質問してきたため、でいくつか簡単な初級の魔法を見せる。

 

 

 

「「「「「「「「「おお〜〜!」」」」」」」」」

 

 

 

魔法という概念が伝承に残る迷信の類として認識されているこの世界からしてみれば、魔法を間近で見られることそのものが驚くべきことであり、レグロの初歩的な魔法でも生徒たちを驚嘆させるには十分だった。

 

 

 

「おじいちゃん凄い!」

 

「ま、魔法なんて…初めて見ました…」

 

「先生もすごかったんだから、そのおじいちゃんも凄いんだ」

 

「じいちゃんよかったね、皆に喜んでもらえて」

 

「……ああ」

 

「…?あんまり嬉しそうじゃないね」

 

「…すこーしな、少し」

 

「とりあえず僕、トイレ行ってくるよ」

 

「おおわかった…―─おぉい、待ていマッシュ!」

 

「?」

 

 

 

 レグロはトイレの方へ行ったマッシュを扉の前で止めると、扉に向かって杖を振り、魔法でドアノブを回して扉を開ける。

 

 

 

「どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 

 

 マッシュがトイレに入ったことを確認したレグロは、杖をしまって一息ついた。

 

 

 

「流石に他所のお店で何枚も扉を破壊させるわけにはいかんからのぉ」

 

「手慣れてますね」

 

「そりゃ昔からああじゃからな、もう10歳の頃からあんな感じで……ふはは…玄関など何回壊されたか」

 

「目が死んでる!」

 

「まあそれでも、あの子はわしの可愛い孫じゃからな。自力で直せるようにもなったし、嫌いにはならんさ」

 

「あの、レグロさん…少し気になったのですが、先程は何故、あんな顔をなさったんですか?何か魔法に思うところが?」

 

「確かに…褒められることって、嫌でした?」

 

「いやいやとんでもない!その……な?生まれて初めてだったんじゃ、魔法を使っただけで、こんなに大勢に褒められたのは」

 

「魔法なんて、みんなから褒められる凄いことなんじゃないの?」

 

「うーんそれがのぉ……わしの世界は魔法界といってな、人間なら誰もが魔法が使えて当たり前の世界なんじゃよ。魔法は神様からの贈り物とまで言われているんじゃ。その世界では……わしは、不出来な人間なんじゃ」

 

「……不出来?」

 

 

 

 今まで喜びと驚きで白黒していたレグロの顔に、ここに来て初めて陰りが生じた。彼は水を飲んだ後、自身の半生を少しばかり語る。

 

 それはレグロの過去であり、マッシュの過去にも関わることだった───

 

 

 

 


 

 

 

 

 少し昔の話になるのぉ……わしが生まれたバーンデッド家は裕福な名門家系で、特にわしの両親は魔力が強く、魔法の技術にも優れていて、なんでもできる…そんな人じゃった―─しかしわしは……息子としては出来損ないだった。

 

 

 

 

 

『なんでこれくらいのこともできないの!?』

 

『ご、ごめんなさい…』

 

『魔力も弱い、要領も悪い…私たちの血筋にアナタみたいな不出来な子はいらないわ!!』

 
『──ごめんなさい…!』

 

 

 

 

 

 母からは毎日のように責められ、耐えきれなくなったわしは一念発起、二十歳になり外へ働きに出た。しかし、そこでも上手くはいかなかった…

 

 

 

 

『おい、こんな簡単なこともできねぇのか!?使えねぇな!』

 
『っ……すみません!!』

 

『また失敗しやがって!!お前はクビだ、代わりなんて幾らでもいるんだ!二度と働こうだなんて思うな!!』

 
『すみません……!』

 

 

 

 

 いつも失敗ばかりで、変わることなんて出来なかった。

 

 

 

 

『よくそんな有り様で生きてられるわね…汚らわしい!』

 
『オレなら恥ずかしくて死んでるね』
 
『っ……』

 

 

 

 

 誰からも必要とされることなく人生を終えるものだと、思っていた。

 

 

 

 

「…そ、そのあとは?」

 

 

 

 ん?ああ……

 耐えるのも難しくなり、いよいよ人生に諦めて飛び降りようと、街が見える高台に登ったんじゃ。ここで死のうか、そう思った時じゃった───

 

 

 

 

 

『ふぇぇぇぇぇ!!ふぇぇぇぇぇっ!!!』

 
(な、何故ここに赤ちゃんが…?──っ!?アザが、ない…!

 

 

 

 

 

 布に包まれた一人の赤ん坊に出会った……その子は捨て子。

 その上、魔法が使える証拠である黒い線状のアザ──君たちにとってのヘイローのようなもの──がなかった。

 

 

 

『―アザがないから、捨てられたのか……そうか…お前も、オレと同じか…っ』

 

『…?だー!キャイ、キャイ!』

 

 

 

 そうしてわしが出会った子こそ、マッシュじゃった。

 

 

 


 

 

 

 

「……先生は魔法が使えないから、親に捨てられた…ってこと…?」

 

「……何それ……ちょっと魔法が苦手でも、そもそも使えなくたって、自分の息子を普通捨てたりしないでしょ!?私達だって、ヘイローがない相手にそんなひどいことなんてしないのに…!」

 

「そうです……理不尽ですよ、そんなの!」

 

「…………」

 

「人の親を悪く言うつもりは無いけれど…レグロさんの両親は最低よ。家柄の良さに舞い上がって、レグロさんに出来栄えの良さを要求して……挙げ句、よりにもよって『要らない』だなんて、自分の息子に言うだなんて……」

 

「……生憎、わしの世界では魔法が全て。魔力の弱いものは、生きる価値も育つ意味もない…そう思われているんじゃ。魔法が使えない者は神から見放された存在であることを意味し、生きる権利はない……と言われている

 

「そんな、こと……そんなことあるわけないっ!先生は、あの先生に、生きる価値が…ない、なんて……

 

 

 

 

 耐えられなくなったホシノが机を叩きながら叫んだ。頷く対策委員会や、唇を噛む便利屋を見回したレグロも、静かに頷いてみせた。

 

 

 

 

 

 

「わしもそう思っとる。どんな国に、どんな時代に生まれた子供にも、生きる権利はある。それを奪うことなど、誰にもできないに決まっている。そう思っている……しかし、世間はそれを許してはいなかった。マッシュと同じように魔法が使えない者、あるいは後天的に魔力を失った者は、世間では『魔法不全者』と呼ばれている。そのまま放置すれば、何の罪も犯していないのに処刑されてしまうんじゃ―─だから、わしは決めたんじゃ」

 

 

 

 

 レグロは顔を上げ、陰りを吹き飛ばした笑顔を作って見せる。

 

 

 

 

「例え血は繋がっていなくとも、どんなにこの世から否定された存在であったとしても……わしはあの子を守る父親、マッシュの家族であり続ける、と────」

 

 

 

 

 

 レグロは改めて、マッシュの友達を見回した。続いて彼が語ったのは、自分の後悔とマッシュに対する申し訳無さだった。

 
「じゃがそれでも、マッシュが人前で生きられないことは事実じゃった。街から外れた森の奥で、わしらはひっそりと二人暮らしをしとった。君たちを助けたマッシュの筋力は、最初はわしが自衛のためを思ってトレーニングをさせていた結果だった──じゃが、この世界の不良は当然、魔法局の警備隊のような強い魔法使いに対して通用するとは思っていなかった。いつ殺されるか分からない危険な人生を歩ませ、限られた財産と本でしか教育できず、友達と遊ばせてやることもできない……わしは親として失格だと思い、自分が許せなくなった」

 

 

 

 だが、レグロの言葉がそこで終わることはなかった。

「そんなマッシュを、皆は受け入れてくれた。この広い世界に連れ出して、語り合える友達になってくれた。わしにとってこれは、魔法を超えた奇跡のようにも思えるぐらいに、最高の救いだったと言っていい──……皆、マッシュは素直で優しく、とってもいい子じゃ。わしの自慢の息子と、友達になってくれて……マッシュを受け入れて、認めてくれて──本当に、ありがとう

 

「こ、こちらこそ…マッシュ先生がいたから、今の私たちがあるわけだし…」

 

「マッシュを、優しく育ててくれて…ありがとう、おじいちゃん」

 

 

 

 

 互いに笑い合い、伝えきれない感謝を言葉に紡ぐ。

 レグロが、皆を手を合わせようとした瞬間──

 

 

 

 

 

パギャァ!!

 

 

 

 

 

 

「あ、やっちゃった」

 

「コラァァァァァ!!?!!?!?!?」

 

「ごめんなさい大将、後で直します」

 

「おうおう…!そうして…くれぇ…!!あぁ、こんなに泣かされたのは何時ぶりだか分かんねぇな…!」

 

「あれ、そんなに大事な扉でした?その……ごめんなさい」

 

「ねえマッシュ!とりあえず一回ドアの開け閉め本気で覚えよう!?ねえ!!」

 

「大丈夫、直し方は完全に覚えてるし」

 

「ドアの開け閉めを覚えようよ!!!!」

 

 

 

 

いつも通りのマッシュに対して笑いが溢れ、まるでアビドスの苦難もバーンデッド親子の苦悩もなかったかのように、鬱屈とした空気は吹き飛んでいた。

 改めてここは素敵な場所だと、レグロは確かめることができたのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 柴関ラーメンから出た直後のこと。突如として、レグロの体が淡い光を纏い始める。

 

 

──……──……─………─…………

 

 

 

「なんかわし、光っとる…!?」

 

「それに…消えかかってない!?」

 

「もしかして、元の世界に帰るの?」

 

「……恐らく、そうじゃろうな。まぁ当然か、何時までもここにいられる、なんて都合の良い話はない」

 

「そんな…せっかく、会えたのに……」

 

「ん………」

 

 

 

 

 レグロの体は、光りながら幽霊のように透き通り始めた。レグロがキヴォトスに突然現れたことを考えれば、これが魔法界へと戻る合図であることは簡単に察しがつく。

 再び家族と離れ離れになるマッシュや、せっかく出会ったレグロに会えなくなるシロコの表情に、悲しみの影が差す。

 

 

 泣き出しそうな淋しさに耐え、唇を噛む二人。勿論、それは先の話を聞かされた便利屋や対策委員会も同じだった。

 

 

 

 

 

「―─ハハっ、そんな顔をするなマッシュ。皆も…もう会えないと決まったわけじゃないじゃろ?もしかしたら、すぐ会えるかもしれんぞ?」

 

「……けど」

 

「マッシュ、ここにはまだお前の助けを必要としている子達が大勢おることじゃろう……だからその子達を、死んでも助けるんじゃぞ?

 

 

────あ、やっぱり体は大事にしてね!!

 

 

 

 

 

「―――うん、僕…死ぬ気で頑張るよ

 

「…おじいちゃん、これ」

 

「ん?これは、シロコちゃんが作った覆面か…」 

 

「あげる……あっちでも、思い出して」

 

「勿論じゃ、シロコちゃんや……犯罪は、ダメじゃぞ?」(頭を撫でる)

 

「……ん」

 

「――それじゃあみんな!またいつか、何処かでの…!」

 

『さようなら――またね、レグロおじいちゃん!!』

 

「ああ―またの」(ニコッ)

 

 

 

 

 レグロはギヴォトスから消え、魔法界へと戻る道についた。残された生徒たちは、僅かな時間の間に聞かされた恩人(マッシュ)祖父(レグロ)の半生を思い返し、唐突な別れを噛み締めていた……息子であるマッシュも、またその1人。

 

 

 

「……泣かないよ、じいちゃん。もう会えないわけじゃないからね――もうしばらく、ここで頑張るよ」

 

「……さよなら──いや…またね、おじいちゃん」

 

 

 

 

 レグロ・バーンデッド、キヴォトスとしばしの別れ。いつかまた会う、その日まで。

 

 

 

 


 

 

 

 

魔法界 街外れの山中 バーンデッド家

 

 

 

 

 

「……夢、じゃったのか?――いや、ハハっ…そんなことはなかったの」

 

 

 

 元の世界に戻ったレグロの手には、魔法界の共通公用語とは異なるキヴォトスの標準語で『柴関ラーメン』と印字された無料クーポンの束と───『G』のワッペンが付けられた薄緑色の覆面があった。レグロは、改めてそれを被ってみる。

 

 

 

「……意外と暖かいのコレ」

 

 

 

 レグロは、自身の息子を受け入れた『人の温もり』を、その覆面に感じていた。

 






勢いヤッベェなと思いました。次回はアンケートで投票が多かったヒナちゃんとの関わりです。その次はゲヘナモブと正実モブのお話ですので、どうか気長にお待ちください。

励みなりますのでコメントと評価!よろしくお願いします!

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