透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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今回は本当に、なんだこれ、です。書いてておかしくなりそうでした。

頭を空っぽにしながら、お読みくださいませ


マッシュ・バーンデッドと熊も世知辛い

 

 

 

「もう1時間も歩いているはずなのに全然つかない……本当にこっちであってんの?」

 

「間違いありません……しかし、普段はあまり向かわない場所なので、何処となく足取りが…」

 

「……まあ、雪が積もってる足場だしそれは仕方ないか。でものんびりはしてられない、追ってくる可能性だってあるし、このまま長時間歩き続ければ、最悪低体温症になる可能性もある……先生、ちびっ子の方は私が運ぶから、トモエの方を――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「食らえカムラッド!!我が必殺の投球……オイラボールだぁ!!」

 

「当たらないですよチェリノさん」

 

「くっ……この動き、ニュータイプか!?」

 

「古き良き筋肉タイプですよ」

 

「相手にとって不足はなし!!さあカムラッド……我が好敵手よ……戦だぁぁぁ!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」「やぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「うおおぉぉぉぉじゃないわぁぁぁぁぁ!!」ブンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 開幕早々カオスだが、状況説明をしよう。

 

 マッシュ一行はトモエの案内元、旧校舎へと続く雪山を歩いていた。ミサキとトモエは互いに話し合いを始めたのだが、その途中でマッシュとチェリノの子供心が働き、その場で雪合戦を始めてしまっていた。

 

 それを止めるため、ミサキは雪と氷を固めた大玉を持ち上げ、二人に向かって本気の投擲をぶちかました。雪玉がぶつかった二人は転がりながら飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

「アイドルマスタ⁉︎」

 

「クイビシェフ」

 

「人がここからどう動こうかって考えてる時に、何やんってんのこのバカコンビ‼︎」

 

「な、何をするんだ狸小◯絹‼︎」

 

「それ誰⁉︎」

 

「オイラはレッドウィンターのトップだぞ⁉︎そのトップに向かってこんなことをするだなんて!」

 

「今はトップでもなんでも無いでしょ!?それから、先生、何仕事ほっぽり出して遊んでんの!」

 

「雪を見てるとどうしても駆け回りたくなって」

 

「犬か!!!」

 

「ま、まあまあミサキさん。こんな時でも楽しく、いつも通りに過ごすと言うのは大事なことですし」

 

「状況が状況でしょ……ただでさえ弾薬も食料も無いのに」

 

 

 

 

 

 

 何も準備をしないまま逃げ出してきた為、マッシュらの物資はほとんど無いに等しかった。戦闘面に関してはマッシュで事足りるとしても、食料が無い。

 

 

 

 

 

「先生、いつもの携行燃料(シュークリーム)は?」

 

(燃料……?シュークリームが……?)

 

「今朝方ヒヨリちゃんが全部食べちゃってた」

 

「ヒヨリは後で引っ叩く」

 

「やはり旧校舎に急いで向かうしかないか……と言うわけでカムラッド、おんぶだ」

 

「何いってんの」

 

「御意」

 

「先生もすぐに応じないで!!自分の足で歩きなさいっての!!」

 

「グェェっ!?そこを引っ張るなぁ!!」

 

 

 

 

 

 チェリノの首根っこを引っ張り、マッシュから距離を置かせるミサキ。マッシュは何も気にせず運んでいたのだが、いざという時にマッシュの力は必要不可欠であり、チェリノを守りながらの戦闘は不利になる。故にミサキはチェリノをマッシュの背中から引きずり下ろしていた。

 

 

 

 

 

「フンっ!!もういい、ならオイラ一人で歩いてやる!」

 

「会長、旧校舎への道は知っているのですか?」

 

「知らん!けど、なんとかなるだろ!」

 

「雪山舐めすぎでしょ」

 

「危険です会長!この雪山には山の(ヌシ)とされる熊が出たとの目撃情報があるのですよ⁉︎」

 

「ハッハッハ、トモエは心配性だな!山の主とも言われる熊が都合よく出てくるわけがないだろう?それに出たときても、オイラがこの銃で退治をすれプギャッ!?

 

 

 

 

 

 突然、チェリノが何かにぶつかった。鼻を打った痛みに顔を抑え、尻餅をついたチェリノが癇癪のように叫ぶ。

 

 

 

 

 

「ッッッ誰だ!こんなところに壁なんて立てたのは! すぐにでも粛清――し……て……」

 

「…………ガルルルルルッ!!」

 

「ヌワァァァァァァァァッッ!!!!?」

 

「フラグ回収が早すぎます会長!!」

 

「ガルァァ!!」

 

 

 

 

 壁呼ばわりに腹を立てたのか、ぶつかったことへの怒りなのか、現れたクマは前足を振り出してチェリノを掴もうとする。

 

 マッシュは一瞬の躊躇いもなくそのクマに向かって飛び出すと、体重とスピードで威力を高めた横膝蹴りをクマの顔面に叩き込んだ。

 

 

 

 

「グルァッ…!?」

 

「キヴォトス人にも銃にも怯まない熊……おそらくは山の主、それを一撃でダウンさせた……な、なんと言う技!!」

 

「あれ、このクマ何処かで……」

 

「――グゥゥァァァ…‼︎」

 

「先生まだ終わってない……熊だけにタフだね」

 

 

 

 

 

 山の主としての誇り、熊として、肉食獣としてのプライドを守るため熊は立ち上がった。食物連鎖のトップに立つ人間を狩り、山を支配する存在としての地位を示すために。

 

 

 

 

 

「……王としての誇りか、嫌いじゃないよ。そう言うの」

 

「ぬ、ぬぅ…獣のくせにやるではないか…」

 

「尊敬すべきところですね」

 

 

 

 

 

 たとえ何度殴られようと撃たれようと、それだけは守らなければならない──そう強く誓うように立ち上がった熊は、気高く咆哮をあげ

 

 

 

 

 

「ガルァァァァ………ァ?

 

「あっ、やっぱりクマきちだ。君がここの(ヌシ)だったんだね」

 

 

 

 

 

マッシュの姿に気づき、一撃で自分を叩き伏せた相手の姿を見つめ直して─――

 

 

 

 

 

「――キュ~~~~ン…ズサッ!

 

『意外とあっさりプライドを捨てたぁぁぁ!!?』

 

 

 

 

 

 寝そべって服従を示す山の主……それでいいのかお前、と言いたくなるのは当然だ。だが考えても見て欲しい

 

 ありとあらゆる獲物を屠ってきた自分が全く敵わないであろうと言う獣としての感、そして実際に一撃で仕留められた時の経験――そして僅かながらに見える鉄壁の肉体。それを前に、山の主の生命本能が悲鳴をあげ、降伏した。

 

 

 

 

 

「人を襲っちゃダメだって言ったのに」

 

「…!!」

 

「めっちゃ弁明しようとしてる」

 

「山の主を手懐けるとは……さすがはカムラッド」

 

「しかし妙ですね。本来今のような時期には、ここまで降りて来ないと思うのですが」

 

「ガッ……」グゥゥゥ…

 

「…もしかしてお腹空いてる?」

 

「―ガウッ!ガウッ!」

 

「正解のようだな」

 

 

 

 

 

 腹が好き仕方なく山を降りてきた山の主、ちょこんとその場に座り腹を抑えて何処か訴えかけてくる。

 

 

 

 

 

「……いや待て、この時期のここには大量の食料が実っているはずだぞ?それに、この頃の川にはサケの他にも魚が多くいるはずだ……なのに何故?」

 

「……グゥゥゥ…‼︎」

 

「えっいきなり泣き出した。なにか訳あり?」

 

「…グッ」

 

 

 

 

 

 山の主は立ち上がり、近くに咲いていた花をむしり取ると、それをトモエへと差し出す。急な山の主の行動にマッシュ達は困惑していた。

 

 

 

 

「え、えっと……ごめんなさい……?」

 

「‼︎……ゥゥ」

 

「――もしかして、失恋しちゃったの?」

 

「嘘でしょ?熊も失恋とかするの?」

 

「ま、待て待て!!お前はここの主なんだろう!?そんな主が失恋なんて、一体どう言うことだ?野生動物というのは強いやつがモテると絵本で読んだぞ!?」

 

「……グ、グゥゥ、ガウッ」

 

 

 

 

熊は少し悲しそうな顔をしながら、過去のことを思い出していた。

 

 

 

「待ってこのまま回想入る気?」

 

 

 

 

これはマッシュ達がレッドウィンターへ来る前のこと

 

 

 

 

「本当にやる気!?」

 

「ミサキさん?先ほどからどちらに向かって何を仰っているのですか…?」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 クマきち…もとい主がこの山の王となったのは、マッシュがキヴォトスに来た頃から数えて二度前の冬、つまりおよそ二年前。この雪山には多くの熊が棲息しており、山の支配者としての地位を争って熾烈な戦いを繰り広げていた、という。

 

 

 

「グゥゥゥ……」

 

 

 

 この主もまた、その一人。腕っぷしはレッドウィンター自治区に生息する熊の中ではナンバーワンと自負しており、加えて熊の中では知能も高く、隙が全く無い本物の強者───それがかつての主だった。

 

 

 

 

「―がう?」

 

「…‼︎ ガウッ!」

 

「ガウガウ♪」

 

 

 

 

 そんな主にも一頭、片思いの雌熊がいた。人間の目から見ればただの熊の一頭でしかない、何ら特徴のない野生の熊なのだが、少なくとも熊の目からは相当に魅力的な雌熊に映る存在だった。

 

 

 

 

「グゥゥゥ?」

 

「――ガ、ガウ」

 

「……クルル」

 

 

 

 

 雌熊は主のことを心配していた、何故なら彼は頂点を争っている真っ最中。いつ襲われて、いつ殺されるかもわかったものではない。だからこそ、彼の友として、心の底から彼のことを心配していた。

 

 

 

 

「――ガ、ガウ‼︎ガルル!!」

 

 

 

 

 そんな彼女を気遣い、主は大丈夫だと笑って見せた。(人間視点だと無表情)もう二度と心配させない、そのためにも頂点に立つ……と。

 

 そしてその時に、告白しよう……主はそう決めていた。

 

 

 

 

「――ガールル」

 

 

 

 メス熊も、心の底から彼のことを応援し、勝つようにと励ました。

 

 

 

 

 

 

 

 そして長い戦いの末……主は全てのクマに勝利し、正真正銘、この山の主として君臨した。

 

 

 

 

 

 

「ガルルル〜♪ガヴヴ〜♪」

 

 

 

 

 大量の魚を前足で抱え上げ、主は彼女の元へと向かった。

真の勝利を報せるとともに、 「番になってくれ」と申し出るために、二年に渡って温めた想いを告げるために、傷だらけの体で向かった。

 

 

 

 

「…‼︎ ガール…………る?」

 

 

 

 

しかしそこで見た光景は、彼の今までの想いを全て無碍にするほどに残酷な事実……

 

 

 

 

 

「……ガユ、ガルル!」

 

「――グルァ!」

 

 

 

 

 

 片思い中のメス熊と、主よりも凛々しい顔つきで数万倍ハンサムなオス熊が互いに力強く抱きつきあっていた。しかもその熊は、かつて自分が一発でKOした相手……この瞬間、主は理解した。

 

 

 

 

 

 

「―――グルァァァァッッ!!!」

 

 

 

 

 

結局世の中、力よりも顔なんだ、と。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「………ま、待ってくれ……なんか残酷すぎないか?」

 

「野生動物の求愛行動ってここまで生々しい悲劇を生むものなのですか?」

 

「これなんの小説だっけ、とんでもない勢いでジャンルが脱線してる気がするんだけど」

 

「君結構苦労したんだね」

 

 

 

 

 

 ドロドロとした、重苦しい失恋の話を聞かされた一同。熊の言葉が理解できたわけではないが、主は頑張ってその時の様子を演じた……経験したことをそのまま伝えようとした故の悲惨さが、痛々しく際立つ。

 

 

 

 

 

「それで食事もまともに喉を通らず、…空腹に耐えられなくなった、と?」

 

「…え、まさか私達を襲った理由もそれ?」

 

「……」

 

「なんで急にそっぽ向くの」

 

「あの、もしや……マッシュ先生とミサキさんのことをカップルか何かだと勘違いをなさったのでは?お二人の目元や雰囲気が似ていて、恐らくそれで…」

 

「!!」

 

「それで嫉妬して私達を襲ってきた、と……そんなんだから振られるんじゃないの?

 

グラァァッ!!?Weak 100000

 

「ミサキちゃんやめて、本当にやめたげて。主でも心はデリケートだから」

 

 

 

 

 

 

 主は大粒の涙を流しながらうずくまる。熊と恋愛なんて知ったことでは無いが……なんというか、あまりにも人間味が溢れ、他人事のように無視できるものには感じられない。

 けれどここでミサキ達が何かを言っても、心が癒えるとは限らない……ならばここは、同じ男にして魔法界の天然純粋ジゴロ朴念仁代表、マッシュ・バーンデッドの出番だ。

 

 

 

 

 

「――はいこれ」

 

「………?」

 

「シュークリームだよ、お腹空いてるでしょ」

 

「………」

 

「食べる気になれない、それはよくわかってる……でも何か食べて気分転換しないと、前には進めないよ」

 

「…‼︎」

 

「僕は恋愛とかよくわかんないし、失恋の辛さってのも経験したことがない……でも確実に言えるのは――君の努力は凄かったって所」

 

 

 

 

 

 

 山の主になるために、好きなメスに安心してもらうために、心配させないためにその身を鍛え命を張った主。その努力は同じ男して尊敬できるものであり

 

 

 

 

 

「かっこいいと思うな、僕は。片思いの子の一番にはなれなかったけど……重ねた努力は、多分君の方が一番だ」

 

「ガッ……ガヴ…!」

 

「自分をそんなに卑下しないでいい、胸張って。だって君は山の主――君の努力が掴み取った称号なんだから」

 

「――――ガゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

「おわっとととと」

 

 

 

 

 

 主はマッシュを抱きしめ、振り回しすりすりと顔を擦り付ける。そんな様子を見てチェリノとトモエは感動し涙を流す。

 

 

 

 

「うっ、よかったなぁ主…!」

 

「野生生物との友情……観劇、まさにファンタジーです!!」

 

先生の存在そのものがファンタジーって話する?…………てか何なのこの時間」

 

 

 

 

 

 ミサキだけは、しらっとした顔で見ていた。しかし同時に――恋した相手に必死になることは決して無意味ではない、ということを知った。

 

 

 

 

 

「……あれ、僕らそもそもなんでここにきたんだって」

 

「旧校舎に向かうためでしょ?熊の恋愛事情とか聞いてる場合じゃ無いよ」

 

「し、しかしこのまま日が暮れてしまうぞ?」

 

「……ガヴ!がルゥ!」

 

「なになに?……乗せていってくれるの?」

 

「いいのですか⁉︎」

 

「ガヴガヴ!!」グッ!

 

 

 

 

 

 

「友のためならば!」と主は胸を張り、四足歩行へと姿勢を変えた。その背にマッシュら一行を乗せ、指示を待つ。

 

 

 

 

 

「このまままっすぐ言って、あの川を超えた先に旧校舎はあります」

 

「よし、じゃあ早速向かいましょう。よろしくねクマきち」

 

「ガーウ!」

 

 

 

 

 

 

 マッシュは新たに熊という仲間を手に入れた。

 「熊と友情を育むって何」「そもそも動物の恋愛話(恋バナ)って何」「あの回想はなんなんだ……」などなどさまざまなツッコミを脳に浮かべたミサキは

 

 

 

 

 

「………もうなんでもいい」

 

 

 

 

思考を放棄するのであった。






⚠︎作者は別に疲れてません。


熊の恋愛ってどこに需要があるんだって?私みたいな人にです。ちなみにクマきちの恋愛話についてですが



片思い中で仲が良かった異性にはすでに相手がいた。


というのは史実です、私がそれとも弟先生か、それとも知人が、それはが想像におまかせします。

クマきちのことを、みんな励ましてあげてください

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