レッドウィンター……完!!
あの騒動から少し経て、いよいよイワン・クバーラが開催された。
彼らは花輪を頭に乗せ*1、伝統的な音楽とともにダンスを踊ったり*2、炎を飛び越えたり*3した。
「いやぁ楽しいですなお祭り」
「川泳ぎ以外ね」
「まあ確かに冷たかったよね、心臓が縮みそうだった。ミサキちゃんなんて開始数秒で溺れてたし」
「あんな川泳げるわけないでしょ」
ミサキも楽しんではいたが、この雪原に流れる極寒の川を泳ぐといった拷問とも呼べる行事だけは楽しくなかった様子。余りにも体を冷やしたこともあって、少しだけ不機嫌だった。
「……変なの」
「ふぁふみふぁ?」
「食べながら喋らないの……祭りが始まってから、ずっと変なの。祭りが終われば私達の仕事も終わり、やっと帰れるって心の中じゃウキウキだった――でも、今は」
「終わってほしくないとも思ってる?」
「……うん」
「ミサキちゃんのツンデレって他の人と比べてだいぶ可愛『子供扱いしないで!!!』モゴゴゴッッ」
いつもの様にマッシュの口にシュークリームを突っ込み、ミサキは赤面したままそっぽを向く。まだ帰りたくない……遊園地に行った子供が最後の最後まで駄々をこねる様なわがまま、今のミサキにはほんの少しだけ、それに近いものが心の中にあった。
「先生〜!クマきちが大食い勝負しようって〜!」
「お呼ばれしちゃった……僕は行くけど、ミサキちゃんはどうする?」
「…もう少しだけここにいる、後で合流しよう」
「OK、じゃあまた」
「あっ……っ、いってらっしゃい」
マッシュは呼ばれた方に向かって歩み始め、ミサキは祭壇の近くに座り、プリンを口に運ぶ。甘くとろみのあるスイーツ――今思えば、昔はこんなものを食べられるなんて思っていなかった。
(……お祭り、小さい頃はよく行きたいって思ってたっけ。いつのまにか、そんな気持ちは消えてたけど)
プリンを食していく中で昔の苦い記憶が蘇ってきてしまうが、それら全てがプリンの甘さによって緩和され、心が穏やかになってゆく。
「…んっ……寒い……寒さ………か、久しぶりに感じたな…これ」
アリウス時代…環境が全くと言っていいほど整わず、雪が直で手や足に触れ、赤く腫れ、死にそうになったことが何度もあった時代。
『大丈夫だ、みんな、こうしていれば。寒くない……寒くないったら、ない…!』
皆で集まり、ひどい匂いのする一つの布を仲良く使っていたあの時代。今はあの時とは違い、多くの仲間が、多くの友がそばにいてくれる……それだけでかなり気持ちは変わる。しかし今は、その友がいない――
「……寒くない、寒くないったらない」
バサッ!
「…‼︎」
「こんなところにいたのか付き人よ‼︎ 祭りなのに一人で寂しそうにしているなどと……いかん、いかんぞ‼︎」
「……おチビ」
「む?それか?気にするな、ただのコートだ。レッドウィンターの寒さに耐えるには、これが一番だからな‼︎」
「……なんでこれを?」
「お前が寒そうにしていたからな、どうだ!暖かいだろう?」
「………まあ」
人の気も知らないで。そう思いつつも、ミサキは被せられたコートを着込む・頭に花の冠を乗せ、相も変わらず小さな白い髭をつけているチェリノ。
「どうだ、楽しいから我が校のお祭りは」
「……まあまあ」
「それはよかった‼︎ 外部からの訪問者なんてそうそういなかったから、喜んでもらえた様で満足だ」
「…一つだけ聞きたい、なんで私たちを呼んだの?」
「む? 最初の頃におおよそ予想をつけていたではないか」
「それとは別に何かあるんじゃないか……って聞いてるの」
「……そうだなぁ」
チェリノは少し考えた後、はっきりと。口に出してマッシュらを呼んだ理由を告げた。
「楽しそうだったからな!」
「……は、それだけ?」
「よくあるだろう? 元々仲のいい友と家で遊んだ時よりも、さらにそこへ誰かを呼び遊んだ方が楽しいというアレだ!」
「……なる……ほど…?」
「それにな、付き人よ。私はカムラッドのことを尊敬しているのだ」
「…尊敬」
「そう、尊敬だ!」
チェリノは胸ポケットからある一枚の記事を出す、それはマッシュという存在が活躍をしていっているという事が書かれている物。
「純粋なる心で人々を救うヒーロー……ふふふっ!かっこいいではないか! さらにそこへ悪党達を改心させるということまでやってのけている、まさに英雄‼︎」
「……まあ確かに」
「そんな英雄に一眼会ってみたかった、それが本音でもある――それから。シャーレの中にいる生徒達にも、会ってみたかったんだ…もちろんお前にもだぞ?――元アリウスの生徒よ」
「!」
「こう見えてもレッドウィンターは情報収集能力には自信があってな、勝手に調べさせてもらった」
「……知っててもなお、あの態度を…招き入れての?……な、なんで……」
「過去は過去今は今は……まあぶっちゃけるとな」
チェリノは胸を張り、偉そうに腕を腕を組んで宣言。
「ほぼ毎日テロまがいのことが起きているこの学園で、今更元テロリストの一人や二人招き入れてもそこまで怖く無いし、怪しくも無いんだ、あははははっ‼︎」
「説得力が違う」
「それに祭りは大勢で楽しまなければいけないからな、罪云々とか考えるだけ無駄だ」
「無駄って…」
「――まあ色々あったが、付き人……いや、ミサキよ」
チェリノはその小さな手を出し、明るい笑顔を見せながら告げる。
「ここへきてくれてありがとう、良ければこれからも……よろしく頼むぞ‼︎」
「……………‼︎」
真っ白だった、グレーな自分とは程遠い――真っ白な笑顔。あの時以来…彼と出会った時以来の笑顔、その笑顔が向けられている――つまりは友として認められたということ。
「……チビで、偉そうで、がめつくて、倫理観とか価値観はどこへやら」
「うおい!!?」
「でも………――悪くは無い」
ミサキも少しの笑顔を見せ、その小さな手を握る。そしてチェリノはそんな彼女をみて上機嫌になり、焚き火のもとへとミサキを連れて駆け出した。
「よし‼︎ 今度はあの20メートルを超える焚き火を飛び越えれるか、やってみよう!」
「いや無理、流石に無理」
「なら50m」
「増やすなっての!」
ミサキは手を引っ張られながら祭りへと向かう、そしてそこにある出し物をとことんにまで楽しむ。その様子は今までとは全くの逆―――とっても笑顔で、とっても楽しそうであった。
「青春ですな」*4
「ガウガウ♪」
革命のイワン・クパーラ〜髭とプリンとカオスとレッドウィンター
完
次回はいよいよラビット…‥の前に、一話だけ短編を挟みます。
出てくるキャラのヒントは……狂犬
次回もお楽しみに。
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