めちゃくちゃ短めです、久々に言いますね、許してください。
「………………」
「………えっと、カンナさんって何かご趣味は?」
「………特には」
「そんな人もいますよね……あーじゃあ、好きなものとか、食べ物とかは」
「好きなことをしている時間もあまり無いので特には……食事の方も、栄養さえ取れれば特に」
「……そうですか」
「…………」
「…………」
(…………えっ気まず、何この空気)
現在、マッシュとカンナはトラックで移動中だった。二人っきりのこの状況下でマッシュは少しでもカンナと交流を深めようと色々な話題を持ちかけるのだが、どれもこれも暗い回答になってしまい、気まずい空気が流れていた。
(カンナさんは多分ミカさんとかナギサさんとか、ホシノさんみたいな闇深案件の人なんだ……でもここまでわかりやすいのは初めてだし……うーん)
「……………先生は」
「(相手から話を吹きかけてきた、チャンス)はい、なんでしょう」
「正義とはなんだと思いますか」
「………哲学の話?」
「少し違いますが……いえ、あってるんでしょうか」
カンナはトラック内にある椅子に座りながら手を前に組み、真剣な表情で言葉を続けて行った。この時だけマッシュはマッシュから先生へと目の色を変えた。
「……私は貴方が羨ましい」
「僕が?……あっ、筋肉の付け方なら」
「そこじゃありません。貴方の在り方、活躍……それらが、昔憧れた正義ヒーローそのものだったんです」
「照れますね」
「貴方が来てから、このキヴォトスは変わりました。犯罪数がみるみる内に減っていき、内戦が起きかけていたトリニティをまとめ上げ、テロが起き続けているゲヘナを改革した」
「後半は単純に皆が頑張ったおかげでして」
「犯罪を犯したもの達の更生をも行い……あの災厄の狐も味方につけた。……素晴らしい功績です―――だからこそ貴方に嫉妬した」
カンナは両手を膝の上に置き、力強く握った。その時マッシュは、カンナに対して感じていた既視感の正体に気がついた。彼女が、これまでのナギサやリンと同じような「苦労性」であることを理解したのである。
「教えてください先生……正義とは、いったいなんなのでしょうか」
「わかりません」
「そんなはっきりと言います?」
「だって人によって正しいの価値観とか違うと思いますし、そうじゃなきゃゲヘナの皆だってあんなに暴れたりしないと思いますよ」
「それは…そうですが……では、質問を変えます。……仮に先生がもし、連邦生徒会の会長……七神リン行政官に、明らかに間違っていることを命じられたら……貴方はどうしますか?」
カンナはマッシュに問いただした。彼が社会という場でどのように振る舞うか、そしてカンナの選択が正しいのか否か。そしてこれから、カンナとマッシュが対立するかどうかにも直結する、今後のためにも欠かせない質問である。
「え、嫌ですけど―って言います」
そしてマッシュはコンマ1秒で即答した。食い気味に聞こえる速さにカンナは驚かされ、少しの間だけ思考を止めていた。
「…う、上からの、指示であってもですか?」
「上下関係なく、間違っていることは間違っているとはっきり言わないと」
「それで、上の怒りを買ったとしても……ですか?」
「間違っていることを間違っていると言って何が悪いんだこのやろー、って言います」
「そ、そんなことをしても良いのですか? 貴方はシャーレの先生で、七神行政官は貴女の上司で」
「上司の指示=全部正しい……では、なくないですか? 偉い人の言うこと全てが正しいわけじゃないのに」
「―――‼︎」
カンナはハッとした、上の言うことは絶対、それが正しいことなんだから従え……それが当たり前だと長年思っていた彼女。しかし彼の今回の言葉で、その考えは少しづつ変わっていた。
「そりゃまあ偉い人たちってそれなりの力を持ってて、いろいろなことがあってその立場についたわけですが……それはそれ、これはこれですよ。偉い人、頑張った人であっても間違ったことはしちゃダメです」
「しかしそれで反論して、自分が不幸な目にあって仕舞えば元もの子も…」
「あっ僕の場合、自分の心に素直に従って行動するので。そこら辺はあんまり考えてないです」
「危なすぎる思考…‼︎」
「まああとは……自分の正義に従って動いているだけですね」
「っそこです、先生にとって正義とは…⁉︎」
マッシュはキョトン顔で、はっきりと告げた。それは紛れもないマッシュの本心であり、事実。
「じいちゃんが胸を張って自慢できる孫になり続ける、以上」
「――身内に自慢できる様な、人に…」
「上かどうとか関係ないんです、僕にとっては、自分にとって大切な人たちが笑顔で、胸を張れる様な人であり続ける、それだけで十分なんですよね」
「―――――――――」
刹那、カンナの脳に過ったのは、善良な市民達と自分の部下達の顔。常日頃から礼を言ってくれる市民達、恐れられながらも慕ってくれている部下達……今の自分はその人達が自慢できる様な警官であるのか⁇
――否、断じて違う、自慢なんて
「自慢なんてできるかぁぁぁぁっ‼︎」
「びっくりした」
「そうだ、そうだったんだ‼︎なぜ今まで気づかなかった、上の顔? 自分の立場?――知ったことか、悪いことを悪いと言って何が悪い、自分の心に従わなくて何が悪い‼︎」
「カンナさん?」
「私の正義に従って何が悪い⁉︎ 薄っぺらい正義、根拠の無い正義……それをモットーにして何が悪い、幼稚?夢物語?――やかましい‼︎夢を持って何が悪い!!」
「カンナさん声、声が」
「いい歳をした者が正義のヒーローに憧れ続けて何が悪い‼︎―――ふ、ふ、フハハハハッ‼︎」
「やばいカンナさんが壊れた」
何かが吹っ切れたのか、カンナは身だしなみを整え始め、持っていた自分も武器も手入れをし始める。その時の顔はとっても楽しそうであり、とっても怖かった。
「狂犬……狂犬か、いいだろう‼︎なら狂犬らしく飼い犬に噛みついてやる!」
「あのカンナさん、とりあえず一旦落ち着きません?目と鼻息がすごいです」
「先生ありがとうございます、お陰で目が覚めました」
「ど、どういたしまして…?」
「夢をあきらめていたんです、正義の味方であろうと夢を……変わってしまっていたんです」
カンナはかつて、自分がなりたかった正義のヒーローの姿を思い出し、今度こそ――今こそ、変わろうとしていた。
「私はなって見せます、キヴォトスを守る――番犬に‼︎」
「おお、なんと心強い」
「と言うわけで手綱は任せました‼︎」
「待ってそれはよくわからない」
「さあやりますよ先生、悪!即!斬です‼︎」
「切らないでくださいね⁇」
振り切ったのかテンションがバグったのか、カンナは昔の自分、つまりは正義に燃えていた自分の姿へと戻り、今回の事件へと向かうことに決めた。
『カンナ局長、防衛室長からご連絡が』
「今取り込み中なんで連絡して来ないでくださいこの暇人と言っておけ」
『はい⁉︎』
「カンナさんそれはまずいです」
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