透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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ラビット編始動!次章がまぁシリアスなので、この章はまだギャグよりです‼︎

それでは本編へ……ゴー!




カルバノグの兎編・一章
マッシュ・バーンデッドと兎と筋肉の始まり


 

 

 

 

 

 闇と沈黙に閉ざされた室内、凍るように冷え切った空気に満たされた空間。

 

 

 

 

 

コツ……コツ……コツ……

 

 

 

 

そんな暗がりに身を隠し、三人の足音がその空間に響き渡る。

 

 

 

 

『……………』

 

 

 

 一人はヤの付く人の姉御のような姿をしている女子生徒、一人は簪を加え忍びのような姿をしている少し大柄な女子生徒、そして最後に笠を被り、侍のような姿をしている一人の男………

 人は彼らを―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――仕事人と呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パララ〜パラパパパ〜パラパ〜〜♪*1

 

 

 

 

 

 

「…ハッ!!!」

 

 

 

 

 大柄な女生徒が卵を片手で割り、椀に落とした卵黄を簪で溶きほぐす。

 

 

 

 

 

「ツー………ハァァァァッ‼︎」

 

 

 

 

 姉御姿の生徒はボンレスハムの紐を口で外すと、ニンジンとネギとともにまな板に乗せ、華麗な包丁捌きで細かく刻む。

 

 

 

 

「うおぉぉぉぉ」

 

 

 

 そして最後に笠をかぶっていた男が中華鍋を用意し、米と一緒に溶いた卵と刻んだ野菜と共に炒め始め――

 

 

 

 

 

 

「なに勝手に台所使ってるんですかぁぁぁっ!!!!」

 

「アベシッ」

 

 

 

 

 

室内へと飛び込んだ七神リンによってドロップキックを喰らい、調理が中断する。鍋は他2名に確保されたため、無駄になることはなかったが。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「仕事中に何スタイリッシュにチャーハン作ってるんですか!?あと消しなさい!!そのBGMをいますぐに消しなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 仁王立ちをするリンの前に正座をするのは、スタイリッシュクッキングを企んでいた3人の容疑者。一人は反省しているが、一人は不貞腐れており、一人はまるで自分関係ないかのような態度をとっている。

 

 

 

 

 

「なんなんですか、本当になんなんですか?なに勝手に台所の具材や調味料を使ってチャーハン作ってるんですか」

 

「もうお昼頃だし、みんなお腹空いてるよね〜って思って」

 

「だからってなんで勝手に食材を使ってるのかって聞いているんですよ!その食材は全部経費で落としてるんですから勝手に使わないでください!」

 

「許可は取りました」

 

「私に直接聞きに来てください!私がここのトップなんですが!?」

 

「ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 チャーハンを炒めていたのは紛れもないシャーレの先生、マッシュ・バーンデッド。

 昼頃、役員達が空腹を感じているものと思ったマッシュは、気を利かせチャーハンを作っていたのだが、そもそもリンの許可を取っていないし昼休憩の時間もまだ先の話である。

 

 

 

 

 

「それに……なんでチャーハンなんですか、いつものシュークリームはどうしたんですか」

 

「山海経の料理が忘れられなくて」

 

「はぁ……もうそこはいいです――問題は貴女達なんですよ。そしてモモカにハイネ!!!」

 

「だってお腹すいたんだもん…」

 

「私は巻き込まれだけだよー」

 

「その割には随分と楽しそうでしたけど?」

 

「気のせい気のせい」

 

「なら目を合わせなさい‼︎」

 

 

 

 

 

 

 銀髪と高身長が目立つ、連邦生徒会体育室長・ハイネ。そして尖った耳とドラゴンのような小さな角が特徴的な生徒、由良木(ゆらき)モモカ

 どちらともシャーレの上部組織に当たる連邦生徒会の幹部役員であるのだが。

 

 

 

 

 

「今はまだ仕事中ですよ?それなのに、職務を放棄してスタイリッシュチャーハンだなんて……連邦生徒会の幹部として恥ずかしくないのですか」

 

「放棄してないもーん、みんなのサポートをしているだけだもーん」

 

「――貴女という人は」

 

「ねえねえリン行政官、そろそろチャーハン食べていいー?お腹すいたー」

 

「っ、もう少し待ちなさい。もう少しで昼休憩ですし―」

 

「あっ、もちろんリンさんの分もありますよ。勿論紅生姜も……間違えて黄色い漬物持ってきちゃった」

 

 

 

 

 

ブチッ!

 

 

 

 

 

「人の話をぉ…聞きな〜さ〜いぃぃ!!!」

 

「アイダダダダダダッ痛い!!行政官っ、やめて!こめかみが痛いィ!!」

 

「ままままって!聞く!ちゃんと聞くから!話聞くからぁ!」

 

「二人の頭がこめかみに当たって、イテテテテ」 

 

「ちょっと待って先生の頭のせいでデデデっ!!」

 

 

 

 

 

 怒ったリンに拳で挟まれ、こめかみを抉るように圧迫される三人。まるで三兄妹を叱っている母親のようだが、そこは気にしないでもらいたい。

 

 

 

 

 

「……そもそも先生はなぜここへ?ご用件は?」

 

「リ、リンさんに……会いたくて」

 

「まぁそれは嬉しい――とでもいうと思いましたか、その顔は何かを隠している顔でしょう

 

「お仕事終わらなくて助けを貰いにきました」

 

「今日が締め切りの……どうしてちょっとずつやって行かなかったのですか!」

 

「……べ、別のお仕事で」

 

「本当は」

 

「アビドスのみんなと一緒に遊んでたら遅れちゃいました」

 

「………全く、今からなら間に合います。私も手伝いますので、さっさと終わらせますよ」

 

「ウィッス…」

 

 

 

 

 

 リンと共にその場を去ってゆくマッシュ、残されたハイネとモモカはその様子をじっと見ていた。ちなみに二人はマッシュがチャーハンを作ろうとしているのを聞いて、面白そうだからと付き合った二人である。

 

 

 

 

 

 

「ねえモモカ、リン行政官のあんなに柔らかい表情見たことある?」

 

「んー……何回かね」

 

「えー本当!?いついつ!?」

 

「そうだねぇ………」

 

 

 

 

 

 

 

「全く……世話の焼ける人ですね」

 

 

「ごめんなさいリンさん」『ごめんね〜リンちゃん‼︎』

 

 

「……フフッ」

 

 

 

 

 

あの人と一緒に居た時かなぁ」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「そういえば、ヴァルキューレの件ってどうなりました?」

 

「一言で言い表すのなら……遺憾です」

 

「まあ、ですよね」

 

「まさかあそこまで腐っているとは…視野が狭いとは、この事でしょう。調べれば調べるほど出てくる怠慢、悪行、不正と数々……まともに働いていたのがほんの数十名だけとは、呆れてモノも言えませんでした」

 

 

 

 

 

 カンナとの接触を交え、リンは改めてヴァルキューレに乗り込み、緊急での学園内部調査を実施。ヴァルキューレの中に存在すると思われる病巣の徹底的な洗い出しを行った。

 そして内部を調べたところ、予想はやはり彼女の見立て通り。掘り進めるほど不正と腐敗が明るみになり、とても警察組織としての機能を全うできるものではなかったという。

 

 

 

 

「既に関係した者たちは処分を下しましたが……たった一人、どうにも尻尾が掴めずにいる相手がいるのです」

 

「一人」

 

「カンナ局長直属の上司でもあり、おそらくはカイザーの幹部とも繋がっていたであろう生徒にして、連邦生徒会の防衛室長……不知火(しらぬい)カヤさんです」

 

「名前がかっこいいですね」

 

「彼女に関する情報、それがどこを探しても見つからず。カイザーとの接点があったという証拠も見つからなかったのです」

 

「……つまりは、えーと、隠蔽?」

 

「おそらくは」

 

 

 

 

 

 マッシュは仕事を進める傍ら、頭の隅でカヤについて考え始めた。未だ会った経験はなく顔を見たこともない生徒のカヤだが、カイザーと繋がっている可能性があるならば、非常に怪しい存在であることに疑いはない。しかしマッシュにとっては、それでも生徒を疑うのは気が引けたらしい。

 

 

 

 

 

「僕としては、あんまりカイザーと繋がっているって疑いたくないなぁ」

 

「……先生なら、そうおっしゃると思っていました」

 

「確かにヴァルキューレの上層部が…腐敗って言うんですかね、そーゆー間違いだらけだったのは確かでしょうし、カンナさんを苦しめてたのも、カンナさん自身の雰囲気からは伝わってきましたし……けど、なんだろうな。それをするには……何か、理由があるって思うんです」

 

「理由ですか」

 

「悪事を働くに当たっては、何か一つの理由があるとは思ってます。誰かのためにしろ、自分のためにしろ、まぁ今までがそうだったので……あとはまあ」

 

 

 

 

マッシュは天井を見ながら、もしもの可能性を告げた。

 

 

 

 

「カイザーに脅されてたりするのかなって」

 

「……もしそうだったときは、どうしますか?」

 

「勿論、カイザーに乗り込んで、カヤさんでも誰でも、脅された生徒を悪い奴らから救い出します。犯罪に加担してたとしても、見捨てはしません。寧ろ、やり直せるように見守ってあげなきゃ」

 

「……例えその生徒が、悪党だったとしてもですか」

 

「誰一人だって見捨てませんよ。だって僕、子供の先生なので」

 

「子供ゆえに、大人ではできないことをやる……ですか…――先生、貴方は、本当に「あの、失礼します…行政官、少しよろしいでしょうか」っ──アユムですか?入ってください」

 
「はい、失礼します…」ガチャッ

 

 

 

 

 

 

 リンが何かを言おうとした瞬間、ノックとともに籠もった声が響いた。

 入ってきたのは、ブロンドのロングヘアーと額のクリスタルが特徴的な、黒い翼を腰から広げた生徒。連邦生徒会の調停室長、岩櫃アユムだった。

 

 

 

 

「あ、あの。行政官」

 

「アユム、何か問題が?」

 

「その……こちらにシャーレの先生は?」

 

「僕ですが、何か?」

 

「実は……救援要請が来ていまして」

 

「ほうほう……――じゃあ早速」

 

「先生はお仕事に集中してください、騒ぎならヴァルキューレで動ける部署に任せておけば良いのです。仕事が嫌だからって逃しませんよ」

 

「ウス……ごめんなさい」

 

「そ、……それが……その―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァルキューレから救援を求められていまして……

 

「―――はい?」

 

「あれ……もしかしてマジヤバ案件ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから始まるのはある意味一つの青春物語。

 

 

 

正義とはなんなのか、何故それに縋るのか、自分たちはなんなのかを考える一つの物語。

 

 

 

そしてマッシュが先生としても、友達としても動くわけでは無く

 

 

 

様々なことを経験してきた先輩として、後輩に色々と教える物語である。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

SRT特殊学園……既に、廃校が決まってしまった学園です。

 

………まじか

 

 

 

 

 

必死に争っている生徒の気持ち、それに寄り添うのが僕の仕事なので。

 

 

 

 

 

 

私は、貴方のことを正義の味方だと思ってます……思っているからこそ、理解できません。何故、そこまで彼女を……『災厄の狐』を気にかけているのか、仲間に引き入れているのかを

 

 

あの子は僕の大事な生徒で友達なんだ、それと細かいようだけど―――『災厄の狐』じゃなくて、狐坂ワカモちゃんだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちは私たちの正義を胸に、貴方と戦います

 

いいよ、いくらでも相手になってあげる。気が済むまでね

 

 

 

 

 

 

 

 

私は貴方のことは嫌いではありません……でも、信用も、信頼も、できません。

 

よかった、大嫌いとか言われたら僕立ち直れないかもしれなかった

 

 

 

 

 

 

 

問題児たちを切り捨てず、助ける……実にいい人ですね

 

思ってもないことを口にするのは良くないですよ……カヤさん

 

 

 

 

 

 

 

……私にはわかりません、あの人が……あの先生が、なぜ部外者である我々にあそこまで本気になっているのかを

 

その気持ちはよくわかる……私も、そう思っていた時期があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでそこまでするんですか、なんでそんな、泥まみれになってまで私達を助けようとするんですか!?貴方は私と同じ子供です、たった一つ上の先輩です!なのになんで………なんで!!

 

 

理由なんてないよ、僕はただ困っている人がいるなら助ける――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが僕の正義だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

カルバノグの兎編・第一章
RABBIT小隊と正義の在り方
 
MISSION START

*1
仕事人BGM





やってきましたラビット編……ついにか。いやぁきちゃちましたね。


ここまで来られたのも、皆様からのコメントとお気に入り、そして評価のおかげです……これからもどうぞ、よろしくお願い致します‼︎挿絵も本当にありがとうございます‼︎

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
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