透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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これしか思いつかなかったのです……許してください。

パジャマですよパジャマ!!!



無いよ、石無いよ……


マッシュ・バーンデッドと罠だらけの公園

 

 

 

 

 

「のわッ!!痛っ、いたたッ!?」

 

「な、何でこっちの位置が分かるんだ!?」

 

「こっ、後退!後退~!」

 

 

 

 

 背の高い草が密集する公園内、木々の間から飛んでくる銃撃を受けた生徒たちが、散り散りになって逃げ出していく。

 円型の防弾盾を構えながら進行していたヴァルキューレ警察学校の突入部隊は、想像を超える難敵に苦戦していた。

 

 

 

 

 

「――サーマルカメラも知らないのか、ヴァルキューレの連中は」

 

 

 

 

 そしてヴァルキューレ相手に銃弾の雨を浴びせた人影は、素早く移動しながら顔を顰める。

 折り重なるように倒れたヴァルキューレの生徒たちをその場に放置し、その生徒は静かに後退した。

 

 

 

 

「モエ、連中の足が止まった。手早くやってくれ、座標はVK4-0-4-5」

 

『くひひっ、りょーかいっ!待ちくたびれたよ!』

 

 

 

 

 通信機越しに聞こえる仲間の嬉しそうな声とともに、後方から奇妙な羽音が鳴り響くと、音の発生源となる影が頭上を通過していった。影は掌より僅かに大きい程度で……数は三機、しかしただの機械ではない――徘徊型弾薬と呼ばれる、爆弾入りの攻撃ドローンだ。

 

 

 

 

「こ、この音、まさか……」

 

「じっ、自爆ドローンだぁッ!」

 

「た、退避~ッ!」

 

 

 

 

 

 自爆特攻、その名の通り大量の爆薬を乗せたドローンがヴァルキューレ生徒たちに向かって突撃。大爆発を引き起こし敵を一網打尽……まさしく完璧な撃退。

 

 

 

 

「この程度で正義を守るとは……笑わせる」

 

『サキ、そちらは片付きましたか?』

 

「話にもならなかった」

 

『そうですか……ミユ、そちらからはどうですか』

 

『い、以上なし……あっ、狂犬さんが準備運動を始めて……止められて……ジャンケンして………不服そうにその場で待機してる』

 

「何やってるんだそいつらは」

 

『とりあえずヴァルキューレの大半は全滅っと……あとはあの狂犬を倒せれば全部解決――ではないよねぇ』

 

 

 

 

 

 その言葉で息が詰まったような表情と声を漏らす一同、敵は追い払い残るはその司令塔のみ……だが、彼女らの真の敵はヴァルキューレではない。問題は、彼女たちが呼びつけた“助っ人”にある。

 

 

 

 

 

「――最強だろうが、英雄だろうが関係ない。これは私たちなりの正義なんだ……それを邪魔するのなら、誰であろうとも容赦しない」

 

『か、勝てる…のかな』

 

『真正面からは無理だろうけどさ、やってみる価値はあるっしょ?捕まったら洗脳されて人格変えられるって噂もあるけど』

 

『ヒェ…!?』

 

「脅すな」

 

『他にもいろいろあるよー? 戦車を一撃で破壊したとか、コンクリの地面を素手で割ったり掘り進めたりできるとか、常に超重量の(おもり)を手につけて生活をしているとか、水面を走ったとか空を飛んだとか

 

「脅……流石に嘘すぎるだろ」

 

 

 

 

 

 残念ながら全て真実である

 最近の所業に関しては、各学園の戦力を結集した総力戦で迎え撃つべきレベルの強敵を何体か単騎で倒したり、カンフーを真似て新技を繰り出すなど、日に日に成長を続けている。

 

 この噂を信じようが信じまいが、彼の功績は事実……だからこそ、彼女は確かめなければならなかった。

 なぜそんな彼が、七囚人の一人ともあろう者を味方にしているのかを。

 

 

 

 

 

 

「……先輩達の努力が一瞬にして無意味になった、などと……SRTの生徒として、断じて認めるわけにはいきません――だから、確かめさせてください。貴方が本当に、先輩(あのひと)達以上の正義があるのかを」

 

 

 

 

 

 憧れた人の努力をほぼ無に帰したマッシュ・バーンデッドという人間、彼のことを心の底から見極めるため……彼という人を知るために、彼女らは闘うことを決めていたのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「うわっ、また爆発……!?」

 

「こっちに流れ弾飛んでこないよね……?」

 

 

 

 

 

 

 遠くから再び爆発音が響いた。同時に樹々の一部が吹き飛び、破片が周辺に撒き散らされる。

 

 子ウサギ公園前、405号線を横目に展開したヴァルキューレ警察学校の公安局と警備局は、重苦しい空気と焦燥に支配されていた。

 突入前の彼女らの慢心、戦力差を過信して実力差を見誤った現場の失態により、ほとんど敗北寸前に追い込まれていた。

 

 

 

 

 

「局長!突入部隊からの通信、途絶しました!」

 

「負傷者の回収はどうなっている」

 

「救護班が既に、加えて警備局の一部が援護に回っています」

 

「……負傷者の回収に手が足りなければ、封鎖用の装甲車を使い、裏から回れ」

 

「はっ、了解しました!――局長、一応言っておきますけど絶対に動かないでくださいね!?」

 

「善処する」

 

「絶対ですからね!?」

 

 

 

 

 

 そう口すっぱくカンナに告げ、入り口付近で通路を封鎖していた装甲車がエンジン音を鳴らしながら走行を開始、その場から走り去っていく。

 

 

 

 

 

「負傷者、意識不明多数……笑えない状況になってきたな……救護班とは別に動かせる人員は、後どれくらい残っている?」

 

「えぇと、公安局から出動した部隊は先程の戦闘で殆ど……警備局からの応援で駆け付けた部隊も、その、つい一つ前の突入で」

 

「……そうか、やはり私が行くしか「ダメです!!」

 

「局長は最後の切り札、いわばジョーカーでもあり将軍でもあるんです‼︎そんな人を前線に立たせるわけにはいきません!しかもこんな状況で!」

 

「しかしもう動けるものは少ないのだろう?なら私が行くしか無い……いやもう行かせてくれ、今日私は非番だったんだ、せっかくできた休日だぞ?先生やリン行政官が用意してくれた日だぞ?

 

「バリバリ私怨じゃないですか!!お気持ちはお察ししますけども!!」

 

 

 

 

 

 公安局長の尾刃カンナは、青筋を隆起させて事件の犯人に対するいらだちを滲ませていた。本来、今日の彼女は久方ぶりとなる休暇を得たことで、自宅でくつろぐつもりで準備を進めていた。

 しかし結果は見ての通り、SRTの生徒たちがデモを起こしてしまった為、楽しみにしていた予定は立ち消えになってしまった。

 

 

 

 

「や……やっぱり先生に頼った方が…」

 

「何でもかんでも彼に頼んで解決……それでもヴァルキューレか、せっかくあの人が我々を気にかけて、名誉挽回のチャンスを与えてくださるばかりか、彼の好意もあって手柄を譲っていただいた……ここで恩を返さないでどうする」

 

「そんな、別に気にしなくてもいいのに」

 

「本人がそう言っても、私は…………―先生ッ!?何故あなたがここに…!!」

 

「どうもカンナさん、助けに来ました」

 

「な、なぜここに……連絡は――まさか貴様らァ、勝手に呼んだのかッ!?」

 

「うっ、ご、ごめんなさい…!!」

 

 

 

 

 ひょこりと顔を出したマッシュが、いつの間にかカンナ達の近くにやってきていた。

 そして話を聞いていくうちに、どうやらカンナ本人はマッシュを呼ぶ気はなく、救援も呼ばないようにと言っていたのだが、この状況に耐えきれなくなった生徒が勝手に救援を要請したようだった。

 

 

 

 

 

「申し訳ありません先生、お手を煩わせるつもりは毛頭なかったのですが」

 

「大丈夫です、僕が来たかっただけですから。それに、困った時は助け合い、ですよ。今回は相手が相手だし、完全にシャーレ案件なので……とりあえず状況だけ教えてくださいな」

 

「見ての通りと云いますか、此方の動員できる生徒は殆ど残っておらず、士気も最低です。当初は数的有利で制圧するつもりでしたが、向こうの保有する火力が出鱈目で……」

 

「SRTの装備は色々な意味で特別ってリンさんも言ってましたね。公園を占拠してる生徒は四人って話でしたけど、詳細ってわかります?」

 

「こちらを。今回の主犯格、RABBIT小隊のメンバーたちです」

 

 

 

 

 

 カンナは、取り出した端末の画面に四名の生徒――その顔写真と詳細を表示させる。正面から彼女達を捉えた写真はハッキリしており、細かな情報まで記載されていた。

 

 

 

 

 

月雪(つきゆき)ミヤコちゃん、空井(そらい)サキちゃん、風倉(かぜぐら)モエちゃん、霞沢(かすみざわ)ミユちゃん……この四人で、ヴァルキューレをここまで追い詰めたんだ……いやぁ、キヴォトスは広いですな」

 

「本来であればSRTの閉鎖に合わせ、彼女達もヴァルキューレ警察学校に転校する予定だったのですが――何を思ったのか、突如この公園を占拠し、デモを開始しました」

 

「そこら辺も聞いてます。そして聞いたからこそ僕が動くんです」

 

「これで戦況が一気に此方へと傾きましたね!それに相手も、先生を相手に戦おうだなんて思わないはずです!」

 

 

 

 

 

 マッシュという相手を前にして戦ってやろうと、今のキヴォトスに住むもの達が思うだろうか。

 生き残る手段は降参一択であり、もはや状況が覆るどころか結果は決まった…ヴァルキューレの生徒らは確信していた。

 

 

 

 

 

「………んー、そうもいかないかな」

 

「な、なぜ?」

 

「だってさ――」

 

 

 

 

 

 しかし、相手方がそれを最善の選択であると考えているとも、おいそれとプライドを捨てるとも限らないのが現実だ。

 マッシュが警備局の生徒達に顔を向けた瞬間、突如として空気を裂く音が公園内を駆け抜け、彼の元へと飛んできた。

 

 

 

 

パシッ!!

 

 

 

 

「相手はやる気満々みたいだし」

 

 

 

 

 しかしマッシュは飛来したその物体を、手品のように取り出したハンカチで包むように掴んだ。しかも、警備局の生徒たちに向けた視線はそのまま、聞こえた音と勘でおおよその当たりをつけたノールックキャッチで、だ。あまりにも早すぎる出来事に生徒らは驚愕し、少しだけ後ろへと下がる。

 

 

 

 

 

「飛んできた何かを、ハンカチで止めたぁ!?」

 

「弾、だよね…?銃撃って、ハンカチで止められるものなんだ……」

 

「狙撃─――しかも先生を狙って……奴ら正気か、いくら先生が強いとはいえ、先生はキヴォトス外の方なのだぞ……!!くっ、もう我慢ならん!先生、ここは私が───」

 

 

 

 

 マッシュに向かって狙撃を行ったRABBIT小隊に対し、カンナが遂に撃発した。

 ホルスターから拳銃を取り出したカンナが、まとわりつく生徒たちを振り払って公園へずかずかと歩を進める……が、撃たれた本人であるマッシュがカンナを制止し、慣れたこととばかりにカンナを落ち着かせた。

 

 

 

 

「まあまあカンナさん、相手も本気で殺そうとしたわけじゃなさそうですよ」

 

「何を言いますか先生、狙撃されたのですよ…!?」

 

「ほら、飛んできた奴もただの弾丸じゃなくて……これ、麻酔針ですよ」

 

「通常火器に装填できる麻酔弾…!?SRTはそんなものまで持ってるのか!?」

 

「僕を眠らせようとしたんでしょうけど、そもそもこれぐらいの針じゃ僕の体には刺さらないんですよね、ほら。あと殺気とか敵意とか、気配とかそんなのを一切感じれなかった……ミユちゃんって子かな、すごいや」

 

 

 

 

 

 マッシュが広げたハンカチには、注射筒のような矢針型の麻酔弾が包まれていた。

 筒針を指で摘みとったマッシュは前腕に針を押し当てるが、力を入れて血管を浮き出した筋肉に押し当て続けたところ、シャープペンシルの替え芯よろしくポキリと折れた。
 敢えて掴み取った理由がわからなくなるカンナと公安・警備両局の生徒達だったが、いくらマッシュといえど、超高速で針が飛んできては危機感を覚える……ということらしい。

 

 

 

 

 

「さて……とりあえず行ってきますね」

 

「お待ちください先生、道中には地雷やブービートラップなどが多数設置されているようです。直進して向かうのは危険かと」  

 

「…うーん、それはそうですね」

 

 

 

 

 

 

 

 マッシュの肉体といえど、爆発物の炸裂をそのまま受けては無傷のままではいられない。特に対人地雷や爆弾によるトラップは、キヴォトスの外では多くの被害を出している常套手段として知られている。

 カンナの忠告に立ち止まったマッシュは、しばしの思考の後、あることを思いついて子ウサギ公園の正門前に立った。

 

 一方、その様子を双眼鏡やカメラを通して見ていた小隊員は、そんなマッシュに少し呆れてしまう。

 

 

 

 

 

 

『――せ、先生が向かってきた…!?さっきの麻酔も効かなかったし……どうしよう…!!』

 

『へぇー、真正面から来る気なんだ……面白いじゃん⭐︎』

 

『何を考えているんだ……なんの戦略もなしに、真正面から突っ込んでくるなんて。いくら身体能力が高くとも、トラップに引っ掛かればなんの意味もない』

 

「……待ってください、様子が変です。各員警戒を怠らないように」

 

『大丈夫だって〜ミヤコ〜、公園内部の地雷に関してはまだまだ残ってるし、さっき先生たちが話している間にサキとミヤコが新しい罠を設置してくれたじゃーん。あれを突破できるのはもう戦車ぐらいしかないって』

 

 

 

 

 

 

 足の踏み場がないほどの地雷、ほとんど見えないブービートラップ、事細かく避けることすら困難なほどの罠……これを乗り越えりるのは至難の業、それはそう――だが。

 

 

 

 

 

 

「せ〜〜〜〜の」

 

 

 

 

 

 今回ばかりは相手が悪すぎた。マッシュは力を込めた拳を地面に向かって放ち、パンチによって大地を揺らした。そして次の瞬間に起きるのは、地響きに連鎖した複数の爆発だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォォォォォォン!!!

 

ドガァァァァァァァァァァァァン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ―な、なんだ…!?何が起きた…!?」

 

『…………えぇ……まじ……?』

 

『モエ、状況は!?』

 

『……ねぇーみんな、これほんとにまずいかも……』

 

『だから何があったんだ!?』

 

『さっきの衝撃、あれ先生が地面に向かってパンチをした時に起きた奴なんだけどさ………その衝撃のせいで───

 

 

 

 

 

 

 

――仕掛けた地雷とトラップ、全部作動しちゃったっぽい……今のところ、防御陣地に配置したユニットの9割が丸ごとパー

 

『………は………?』

 

 

 

 

 

 

 道がないなら作ればいい、道を塞いでいる罠があるのならば壊せばいい、これこそマッシュの戦略であり戦法。

 

 

 

 

 

(これでよし……じゃないや、トラップの爆発も合わさって道から公園までボロボロだ、あとで整備しないと。リンさんとアオイさんには申し訳ないことしちゃったな……――――とりあえず、行きますか)

 
「先生、どうかご武運を」

 

 

 

 

 

 カンナ達がマッシュを敬礼で見送る姿を、小隊員達は見つめた。そしてこの段階で、ウサギ達は気づいてしまった……

 マッシュ・バーンデッドに対し……自分達の学んできたことは、全てが無駄になるのだと。





これが本当の地雷撤去。

次回はいよいよラビットvs筋肉になります、ツッコミどころが多いとは思いますが、どうか温かい目でお守りくださいませ。

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