夜中が寒すぎて目が覚める作者です、マジで寒い。温度の差が激しすぎる。
ヴァルキューレ警察学校――取調室。
その部屋は四隅が薄暗く、中央に鮮烈な光を放つ電球が一つ、ぶら下がっているだけ。そんな室内でマッシュとサキは、真剣な眼差しで向き合いながら───
「―フルハウス!!」
「ストレートフラッシュ」
「っだぁぁ!!!!負けたァァァ!!!!!」
「まだまだ甘いよサキちゃん」
めちゃくちゃ真剣にポーカーに興じていた。
「くそっ……もう一回、今度こそ―――じゃなぁぁぁぁぁい!!!!!」
「わートランプがバラバラ」
「なんっっっでこんな呑気にトランプやってるんだよ!?」
「ババ抜きの方が良かった?」
「種類の問題じゃない!」
「じゃあクリベッジ」
「だから種類の問題じゃないって言ってるだろ!?それにマイナーすぎるだろその遊び!!」
サキは机の上に散らばっているトランプを机から落とす、それをマッシュは素早い動きで手に取り、自分の手でシャッフルをし始めた。
「尋問はどうした!!質疑はどうした!!職務を放棄するなぁ!!」
「これが僕のやり方なんだよね。ちなみになんだけど、僕こう見えても頭悪いんだよね」
「………………」
「今『見ただけでわかる』って思ったでしょ」
「ち、違う…『
「それもそっか……まあとにかくさ、頭を使う仕事やお話って、僕はとっても苦手なんだ―─―だから僕、これなら君に負けちゃうかもなぁ……なーんて」
「―――」スッ
(よし乗った)
マッシュはシャッフルを行いながら、サキの顔と手札の裏面をじっと見つめる。
「改めて自己紹介しようか。僕の名前はマッシュ・バーンデッド。年齢は16歳、学年は二年生。最近、限界を超えようとして身体中が筋肉痛になった実績がある先生だよ……2枚交換しよ」
「……空井サキ、15歳。所属はSRT特殊学園、RABBIT小隊所属の一年生……だった。今は違うがな……ッ、三枚交換だ」
「連邦生徒会から送られて来たSRT内部資料によれば、サキちゃんって学内でも相当優秀な成績だったらしいね。カンナさんから聞くように言われてたんだけど、「これほどの優等生がヴァルキューレへの編入を拒んでテロみたいな事件を起こしたのかを調べてきてください」、ってね……一枚交換、っと」
「……ヴァルキューレ警察学校と、SRT特殊学園は違う。SRTでは放課後であろうと厳格な規則に従い、規則正しく生活しなければならない……っ、四枚交換だ」
言葉と手繰りを止めたサキが、手札を伏せながら学園生活を振り返る。
「定時に起床し寝具を整理、その後一日の訓練と座学を行う、放課後だろうが寮内で気を緩める事は許されない、常に緊張感をもって訓練や整備に取り組むことが求められる。食事中だろうが、休憩中だろうが、睡眠中だろうが、いつ如何なる状況で危機に直面しようと、私達は対応出来なければならない―─―その常在戦場の心構えが、SRTがSRTたる所以だった」
「なるほど」
「私は、中途半端で温い生き方はしない――のうのうと自由を与えられた
「……熱いね、干からびそうになるくらい」
「心にもないこ……あるな、本心だな。目というか顔が輝いてる、素直すぎるだろお前」
「ありがとう、よく言われるよ」
「褒め言葉じゃないからな?」
「そっか……それはそれとして───大好きだったんだね。SRTっていう、あの学園が」
「――……辛かったこともあったし、苦しい思いだって何度もした……やめたいって思った時もあった……でも、教練を乗り越え、鍛錬と習熟を重ね、自らを律し続けた日々を過ごすうちに、私は掛け替えのない大きなものを手に入れた。重ねてきたその結果が、そこから繋がること全てが、私にとっても生き甲斐でもあった…なのに――なのに……奴らは…連邦生徒会の連中はッ───!!」
手札を持つ右手とは反対、机の上で拳を作る左手が握り込まれた。サキがマッシュを睨み、対してマッシュは静かにサキを見守る。
「すまない……お前は何も悪くないのに、寧ろお前なりに周りを思って行動していただけなのに───当たるような、態度をとって」
「いいのいいの、そういうの慣れてるから……とりあえず、サキちゃんはヴァルキューレに行きたくないんだね」
「……ああ……ヴァルキューレに行けと命令されても、絶対に行かないからな」
「OK〜……やっぱ二枚変えよう」
「―――待て!?OKってなんだ!?そんな個人の独断で了承して良い話じゃないんだぞ!?さっきから薄々感じてたが、対応の全てが軽すぎるだろ!!!」
「もともと僕は、君たちにヴァルキューレに入って欲しい訳じゃなかったんだよ」
「は、はぁ……!?」
てっきり、RABBIT小隊のヴァルキューレ編入を確実なものとするために、連邦生徒会がシャーレを回し者としてきたと思っていたサキ。彼女はマッシュや連邦生徒会・ヴァルキューレの意図を汲み取れず、ただ手札を握って困惑するばかりだった。
「僕の目的は───SRT特殊学園を、皆と一緒に復活させることなんだ」
「な…は…はぁ…!?そ、そんなことができるのか!!?いくらお前がシャーレの先生だったとしても──」
「連邦生徒会が一番不安に感じてたことは、SRTの権力や能力が生徒会や他の学園を攻撃してしまうことにあったんだよね。なら、SRTはそんなことをしない学園だってことを証明して、君達なりの在り方を貫けるようにすればいい。それに、もうここにはシャーレっていう似たような組織だってある。これからSRTには、シャーレの下についてもらう──言い換えれば、一定の市民権が手に入ったシャーレがSRTの顧問みたいな立場になれば、SRTが解体されるような理由だって自然になくなるよ」
「それで……解決、するのか……?」
「……まぁ、それで全部が全部解決するってわけじゃないし、成功する可能性は限りなく低いかもしれないけど」
二人が、互いの手札を突き合わせる。
「どんな確率だろうが、力づくで引き当てて勝つよ」
「――ロ、ロイヤルストレートフラッシュ…!?」
「そっちはストレートフラッシュ……僕の勝ちだね。聞きたいことも聞けたし、サキちゃんのことも少しだけ分かった。じゃ、僕はここでお暇するよ」
「ま、待て…!どうやってこの手札を出した!?イカサマしてないのは分かる、だからこそあり得ない!!確率は、ほとんど、不可能で───」
「サキちゃん、これだけ覚えておいてね。君の先生……違うな」
マッシュは懐から、ワックスペーパーに挟んだシュークリームを机の上に置いて立ち去る。
「君の先輩は、不可能を可能にしちゃう強い人なんだ」
「……!」
「またね」
次の取調室へと向かっていった。部屋に一人となったサキはガクン……と、崩れ落ちるように椅子に座り───
(……確かに彼は─――間違いなく、キヴォトス最強だ)
心の中で、確信とともに呟くのであった。
「ではでは、風倉モエちゃん」
「んー?」
椅子の背凭れに身を預け、軽く軋ませながら背を逸らすモエは気のない返事を返した。目線はマッシュの目……ではなくマッシュの腕。
「服の下だと、先生がどれくらいの筋肉の持ち主なのかわかんないね」
「脱ぐとすごいタイプとは言われてるよ、だからといって無闇に脱ぐのは嫌だけど……それで、質問するんだけどさ」
「あー待って待って先生、先に聞いていい?」
「はいはい」
「これって何時間くらいやる訳?さっきも何か色々聞かれたし、早めに終わらせてくんないかなぁ、予備の飴も少なくなってきちゃったからさ〜」
「ちゃんと話を聞いてくれたら、すぐに済ませてあげるよ」
「ちゃんとしなかったら?」
「24時間ぶっ続けで続ける」
「またまた〜w………え、ガチ???」
「僕ってあんまり上手く嘘つけないんだよね」
その言葉を聞き、スッと姿勢を正しくマッシュにしっかりと顔を向けるモエ。少し不貞腐れているが、聞いてくれるだけでも良し。
「はい、じゃあ質問します。どうしてあの時、子ウサギ公園を占拠してデモを始めたのかな?ヴァルキューレの呼びかけに応じる機会は、何度もあったのに」
「……SRTから、出て行きたくなかったから」
「サキちゃんと同じように、ヴァルキューレに行きたくなかったんだね。母校を簡単に捨てる事は出来ないと……なるほど、よくわかっ」
「いや別に、そういうのはどーでも良いんだけれど」
「嘘だろ」
「寧ろ今の小隊とはさっさとお別れしたいかも。サキは毎日小言ばっかりだし、ミユはすぐ泣くしさぁ」
「サキちゃんは熱かったけど、こっちはドライだ」
サキと同じようなものが来るのかと思っていたマッシュだったが、返って来たのは実にドライで、思いもよらない言葉だった。モエは飴を舐めながらくぐもった声で続ける。
「ならどうしてSRTを離れたくないって?」
「そりゃあ勿論、あの大量の武器の為でしょ!」
「武器……」
「区画丸ごと一つ焼き尽くせるようなミサイルとか、戦車の装甲をものともしない弾薬とか……!あんな強力な火力を好きなだけ振り回せるのは、SRT特殊学園だけでしょ!?ヴァルキューレには絶対にない!!」
「当たり前だよ、犯人が粉々になっちゃうでしょ……参ったな、武器マニアとは書いてたけどここまでとは思ってなかった」
警察学校であるヴァルキューレとは異なり、SRTの装備は特殊性の強いものが少なくない。
「僕は一応、SRTをシャーレに組み込もうって思ってるんだけど……それについては、どう思ってる?」
「んー、シャーレにそれ相応の武器があれば考えるけど……ないならなぁ」
「――フフフッ、シャーレを甘く見ない方がいいよ、モエちゃん」
「……ほう?」
「こちらをご覧ください」
マッシュがシッテムの箱を操作すると、アロナが慌ただしく映像フォルダを探り出し、マッシュの指元にデータファイルを持ち出してくる。それをタップしたマッシュは画面をモエに向け、とある映像を見せた──
「な――な――何このトンデモ武器ぃぃ〜〜ッッ!!?✨✨」
「アグネスヤトラ……シャーレの選ばれし戦士のみが使えるトンデモ武器だよ」
「あっ、先生もなんか変な武器持ってる……うっひょぉっ!!!超威力じゃん!!!」
「そっちは僕専用の武器、ゴッドキラー。僕以外が使うと腕が潰れて使い物にならなくなっちゃうけど…使うところを間近で見てもらうことはできるよ」
「いいねいいねそのロマン!最ッ高じゃん…!!!……で、シャーレに入るとこういう武器を貰えたり、使えたりするってこと?」
「一応は」
「そして先生とパワーを間近で見られる」
「……てか気になったんだけどさ、この映像の中の武器って、誰が作ってるの?」
「マジで!?キヴォトスの最先端技術の超大御所じゃん!!そこまで言われちゃったら……下についてもいいかなぁ〜!!くひひひひひひ……」
(よっしゃ)
こうして一人、味方をつけることに成功したマッシュ。マニアや癖のある生徒を味方につけるのはもう慣れてしまったので、これぐらいは朝飯前。聞きたいことと聞けたので、その場からマッシュは去ろうとする。
「――ねぇ先生」
「ん?」
「先生も変わりもんだよね、私みたいな問題児を味方に引き入れるなんて……いつか、信頼してた生徒から裏切られちゃっても、私にはどーにもできないよ?」
「一度経験済みなので、ご心配なく」
「…………え?……え、は?どゆこと?」
「ではでは」
何事もなかったかのようにその場から去るマッシュ、しばらくの放心……そして掠れた笑い。
「――裏切られた経験あるんなら、なんで私らみたいなやつを味方にしようとするのかな」
「はい、名前は――」
「か、霞沢ミユ…です」
マッシュが椅子に腰かけ、タブレットの画面を点灯させると同時、対面に座るミユは身を縮こまらせながら口走った。
「SRT特殊学園の一年生で、RABBIT小隊では、その、狙撃手を担当しています……年齢は15歳、誕生日は7月12日…しゅ、趣味は小石探し、です」
「これはご丁寧に。僕の趣味は筋トレだよ」
「み、見ればわかります……わ、私、これからどうなるんでしょうか?も、もしかして、恐ろしい拷問に掛けられたりとか……!?」
「なんか既視感を感じるなぁ……誰だっけ」
ミユのちぢこまった、頭を抱えながら椅子の上で身を丸め、目を力一杯閉じ、ガタガタと震える姿はとても演技には見えないそんな態度な彼女見て、なぜか『守らねば』という感情が芽生え始めたマッシュ。
「一日中同じ曲を聴かされるとか、一晩中くすぐられるとか、そ、それ以上の事も……! お、お願いです許して下さい!し、知っている事は全部話しますので……………あの、なんでそんなに暖かい、小動物を見るような目で見るんですか…?」
「……ミユちゃん」
「ひ、ひゃい…!」
「はっきりいうね」
「ぅ……」
マッシュは両手を組み、両肘を机につけゲンドウスタイルを組むと、はっきりと丁寧に正直に言った。
「僕は君のことを子ウサギさんだと思ってる」
「………はい!?」
「それぐらいの愛おしさ、守らねばって感情が芽生え始めてる」
「な、なんですかそれ…!?」
「妹属性って奴だね」
「私に…?というか、それって妹属性って言えるんですか…?」
「シャーレに来たら結構危ないタイプの属性だね」
「な、なんで……!?」
マッシュ視点ではミユのことが子ウサギ、もしくはハムスターにしか見えなくなっていた。今まで会ってきたどの生徒よりも小さく、幼く見え、守らねばという感情が芽生えていたからだ。
そしてそういうタイプこそ、愛が重い相手の保護対象となってしまう、割とおふざけなし案件でもある。
「わ、私はそんなんじゃありません…!! 確かに人と仲良くなるのが怖くて、全部初めからになんてなったら、こんな影の薄い私に何て誰も話しかけてくれない、人に忘れられるのが怖いって思って…ますけど!」
「ごめんその話を聞いてより一層確信しちゃった」
「私だって、SRTのメンバーなんです。あ、あんまり失礼なこと言うと……えと……い、威嚇しますよ…!?」
「……どんな感じの?」
「うぇ…!?──えっと……つ!」
ミユは机の上に膝立ちで上ると、両腕と両足を広げ「威嚇」を見せる。
「が、がおー…!!」
「………………」
完全にレッサーパンダの威嚇である――それを見たマッシュは思わず両手で目を覆ってしまった。これはまずいと、このまま誰もどこにも引き取られないと、彼女は確実に無事では済まされない。
「とりあえずヴァルキューレには行きたくないんだね」
「は、はい。誰にも認識されなくなって、自分なんか存在しないように扱われて、まるで透明になったみたいに……そう考えると、もう………この性格を直したくてSRTに入ったのに、学校が閉鎖になる何て……私、どうすれば良いのでしょうか?」
「シャーレなら衣食住、そして暖かいファミリーが待ってるよ」
「は、話聞いてました…!?」
「誰も君のことを忘れない、それに色々と自分に見合った仕事もあると思う」
「ほ、ほんとですか!?」
「うん」
「……そ、それなら……まぁ……」
「ワカモちゃんもきっと、可愛がってくれると思うよ」
「あっ……やっぱり、無理かも…です」
「えぇ…………」
斯して、ラビット小隊のうち2名は仲間(?)二匹入れることが成功したマッシュ、残るはミユとミヤコのみ。ミユとの会談を終えたマッシュは、そのままミヤコの元へと向かうのであった。
「――っ、せん……!?」
「あら、いきなりそんな顔をされるだなんて………ウフフ、かわいいですね」
「あなた……は…!!」
「確かに……よく似ていますね。あの者達に、しっかりと……おそらくは、彼女らに憧れたのでしょうね」
「っ…!!」
その頃、月雪ミヤコが送り込まれた取調室には、マッシュ───ではなく、ワカモが訪れていた。
「そう怖がらないでください、私があなたに聞きたいことはたった一つだけですので」
「なん…………ですか」
「うふふっ……FOX小隊……彼女らはどこに?」
その部隊名を耳にしたミヤコは、音を立てて立ち上がるとともに顔を強張らせ、ワカモを睨めつける。
「何故……探っているのですか」
「簡単なことです、彼女らが……―──」
「先生の敵となり得るからですよ」
ヴァルキューレが終わった後はパヴァーヌ二章、その後光輪イベントと予定しております……結果が見えてるって?
なんとかします
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