透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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正月明けの仕事ってやる気まっっっっったく起きないんですよね。でもサボるわけにもいかないので、頑張ります……のでいつも通り土日はどうかわかりません。ご了承ください




マッシュ・バーンデットと試練の壁

 

 

 

 

 

 ついに始まったデモーストレーション・ブートキャンプ。ラビット小隊からすればマッシュは敵でり、なんとしてでも追い返すつもりだった。そのためには彼に勝たなければならない……しかし今はもう夕方、ということで──

 

 

 

 

 

「おはようございます。マッスル3分クッキングのお時間です」

 

「今もう夕方だぞ」

 

「今回作るお料理はこちら、カレーです」

 

「本当にやるんだカレー作り」

 

「使う食材は豚肉、にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、そして隠し味にカレーのルーです」

 

「ル、ルーは隠し味じゃないないのでは…」

 

「焚き火を使ってでのカレーですか…」

 

「それでは初めて行きましょう」

 

 

 

 

 

 マッシュは五人分のカレーを作るべく、慣れた手つきで包丁を使いこなして豚肉と野菜三種類を一口大に切り分けていく。もともと用意していた薪にマッチ……で火をつけるところなのだが。

 

 

 

 

「ここで焚き火の準備に入ります、焚き火をつける方法はとっても簡単」

 

「確かに、木を使った火起こしなら不可能ではないですけど」

 

「まずは鉄の棒を用意して」

 

「…………鉄?」

 

「あとはこれを勢いよく地面に擦り付けて」ギュルキュルギュルギュルッッ!!!

 

「待って待って待って待って!!」

 

「あっつ⁉︎」

 

「火をつけます」

 

 

 

 

 

 地面に鉄の棒を垂直に立て、そのまま勢いよく回転させて擦り付けることで着火。火口を使わずして直接薪を燃やした。火が付いた薪の上に鍋をぶら下げたマッシュは、中に材料を入れていく。もうこれだけでRABBIT小隊の思考は宇宙兎となり、ツッコミを放棄するしかない。

 

 

 

 

「……仕上げに……これを、こうして、こうすると…!」

 

『………ゴクッ』

 

 

 

 

 流れるような手でカレーをどんどん仕上げていくマッシュ、火を通し、水をみれ、ルーを入れ、かき混ぜる……その光景に目を奪われ、ごくりと唾の飲む。

 

 

 

 

「あとはしばらく煮込むだけで完成……」

 

 

 

 

 

 

 

「――そしてこちらが出来上がったものになります」

 

 

「今までの行程全無視!?」

 

「作った意味は!?」

 

「なら最初からそれでよかったじゃないですか‼︎」

 

「ちゃんと五人分ある……」

 

 

 

 

 

 

 出来上がる前に、もうすでに仕上がっているカレーを差し出されてしまったラビット小隊。そりゃそうだ、作る行程の全てが無駄になったのだから。

 

 

 

 

 

「あとついでにシュークリームを出来上がったね」

 

「なんでシュークリームが出来上がって………鍋の中に入ってたカレーの材料が全部シュークリームになってるぅぅぅぅっ!!?

 

「なんで⁉︎」

 

「しかもちゃんと美味しそう……」

 

 

 

 

 

 お久しぶりのマッシュの無茶苦茶クッキング。フウカによって様々な料理のテクを身につけているとはいえ、結局こうなってしまうのはもはや一種の呪術の類である。

 

 

 

 

「そろそろいい時間だし、チャチャっと食べちゃおうよ」

 

「……食べ物で釣ろうとしても無駄ですよ、我々は……たかだかシュークリームやカレーぐらいで、自らの誇りを捨てたりなんてしません」

 

「そうだ」

 

「シュークリーム……美味しそうだけど、その手には乗らないよー」

 

「うぅ……我慢、します」

 

「……ほうほう、いただきます」

 

 

 

 

 

 マッシュは先にカレーを食べ始める。作りたて温度を保ったカレーは、具の旨味が溶け込みまさに絶品だった。

 

 

 

 

(すっごい見てくるじゃん)

 

「わ、私……おトイレ行ってきます」

 

「い、行ってらっしゃい…」

 

 

 

 

 

 そして食べながら感じるのは羨ましそうな視線の数々、それなら素直に食べたいといえばいいのにとマッシュは思ったが、それも彼女らのプライドのあり方なのだと理解する。

 

 

 

 

「さて、いよいよデザートのシュークリームを………あれ」

 

 

 

 

 そしてカレーを食べ終え、いよいよ本命のシュークリームを食べようとしたが……鍋に入っていた大量のシュークリームは一つも残らず食べられていた。

 

 

 

 

「みんな食べちゃった?」 

 

「何言ってるんだ、誰も鍋には近づいてないぞ」

 

「カレーを見ながらご飯食べたらカレーの味するかな」  

 

「モエ、それをし出しては終わりです。……先生、私たちは一度も鍋に近づいていません」

 

「じゃあなんで鍋の中のシュークリームが消えたんだろ……三人とも嘘をついている感じは無いし―――三人?」

 

 

 

 

 

 ここで違和感、ラビット小隊は全員で四人なはず。なのにマッシュの目の前にいるのはミヤコ、サキ、モエの三人……あと一人足りない。

 

 

 

 

「ミユちゃんどこいった?」

 

「さっきトイレに行ったぞ、そろそろ帰ってくると思うが……」

 

 

 

 その直後ガサゴソと音が聞こえ、茂みからミユが現れた――頬をリスのように膨らませて。

 

 

 

 

「………………ミユ……お前、まさか」

 

「…‼︎」ブンブンブンッ!

 

「いや首振っても無理だよそれ、しかもウサギじゃなくてリスじゃん」

 

「さては先ほどトイレに行くと見せかけて…、得意の気配遮断を使い鍋に入っていたシュークリームを全て食べていましたね…‼︎」

 

「ゴクッ……だ、だって、我慢できなくて……」

 

「まだあるけど、食べ『パクッ』はっや」

 

 

 

 

 マッシュの腕に引っ付きながら彼の持っているシュークリームを食べているミユ。齧歯類のように小刻みな咀嚼を繰り返す姿は、どこからどう見ても小動物である。

 

 

 

 

「ミユ…‼︎」

 

「まあいいんじゃない? このまま餓死して、デモどころじゃなくなる方が嫌でしょ」

 

「それはそうだが………」

 

「………モエの言うことも一理あります、それに明日から私たちは本当の敵となる……馴れ合いも、これまでと考えなければなりません。その前の戯れの思えば……良いでしょう」

 

「……………」

 

「そう固くならなくても、ただただ一緒に食べればいいのに」

 

 

 

 

 マッシュの持ってきたカレーを自分の膝の上に乗せ、ゆっくりと慎重にスプーンで掬う。――一口食べれば、その瞬間口の中がカレー特有のスパイシーな味が広がる。

 

 

 

 

「う……上手い」

 

「学校で出たものよりもおいし〜!」

 

「辛さもちょうど良く、火もしっかりと通っていて……まさしく完璧な料理」

 

「先生って、戦闘だけじゃなくて、お料理も得意なんですね」

 

「あっ、持ってきたカレーだけは僕作ってないよ」

 

「ん〜?じゃあ誰が作ったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の姉を名乗る人(錠前サオリ)と、道具を名乗る人と(戒野ミサキ)妻を名乗る人(狐坂ワカモ)

 

『――なんて?』

 

「ちなみにこれは冗談じゃなくて本気でそう言われてるって話だよ。うまし、うましカレー」

 

「……愛情たっぷりカレー」

 

「恋人、弟、利用者でもない私たちが食べていいのかこれは……」

 

「一歩間違えればNTRだね」

 

「災厄の狐が、料理……えっ、破壊じゃなくて創造を……ん?」

 

 

 

 

 

 その後何事もなくカレーとシュークリームを食べ、そのまま布団へと入り寝ることに。

 

 

 

 ちなみにマッシュはキャンプ用に持ってきたシャンプーとボディーソープを持ち川へと向かい、そこで身を清めていた。

 

 

 

 

 

 

「―寒い」

 

「賢いのかポンコツなのかどっちなんだお前は!!」

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「さて朝がやってきました……ので、さっそく勝負の方を開始します。トップバッターの人は手を上げて」

 

「はいはーい!私私〜」

 

「モエ、いきなり行くのか」

 

「勿論♪――ぶっちゃけ、この中で先生に勝てるのは私くらいだし」

 

「……その心は」

 

「この中で一番賢いのは……私だからさ」

 

 

 

 

 

 日が上り、勝負が始まった子うさぎ公園。最初にマッシュと戦うのは、マッシュをドン引かせたドM、風倉モエ。彼女の手にあるのはトランプ、挑む勝負は……ポーカー。

 

 

 

 

「三回先取、文句はない?」

 

「イエス」

 

「じゃあやろうよ……あっ、なんなら野球拳でもやる?」

 

「何それ」

 

「負けた方から順に着ているものを脱いでいくってやつ♪」

 

「却下」

 

「ええ〜つまんないな〜」

 

 

 

 

 そう軽口を叩きながらモエはシャッフルを繰り返す――そしてこの時、彼女は仕掛けていた……この勝負に絶対に勝てるであろう仕掛けを。

 

 

 

 

「順番に行くね〜」

 

「いいよ」

 

「んじゃあ〜……私、先生、私……先生」

 

(私は負けたが……モエなら、どうだろうか。この前のあれはまぐれのはずだ……そう何度も勝ててたまるか)

 

 

 

 

 

 以前ポーカーでボロ負けしてしまったサキ、しかしモエならば勝てると信じ、賭けてみた。モエはその場の判断力や指示などが得意でありチームのサポート役……そんな彼女ならばと、ラビット小隊は信じていた―――だが。

 

 

 

 

 

 

「ストップ」パシッ

 

 

 

 

 突然マッシュが、そんな彼女の手を摘んだ。いきなりのことにミヤコ達は驚いていたが、モエは一番焦っていた。

 

 

 

「………先生、この手なーに? 女の子の手に触れたくなっちゃうお年頃?」

 

「言い忘れてたけど、僕目が良いんだ。山育ちだから余計にね」

 

「!」

 

「だから―――こう言うイカサマは僕には通じないよ」

 

 

 

 

 イカサマと言う言葉を聞き、ミヤコがモエの持っているトランプをよく見る……彼女が持っているトランプの二番目のカードが、少しはみ出ていた。

 

 

 

 

「普通に配っているように見せかけて、上から2枚目を配る技……確か……えーと、セカンドディールだっけ」

 

「せ、せかんど、でぃーる…?なんだそれは」

 

「普通に配っているように見せかけて、実際には色々とごまかした配り方をする技法を、総称してフォールス・ディールと呼びます。トランプは上から順番に配る、そんな心理的盲点をつくと言う高等テクニック……」

 

「熟練者からの滑らかな動きでそれをやられちゃうと、普通の人は騙されちゃうんだよね……って、僕の知り合いが言っててさ」

 

「知り合いって……先生、ギャンブルやってる知り合いとかいるの?」

 

「いるんですよ、それが」

 

 

 

 

 

 モエの作戦、それはただのイカサマ……それも高度で、難解で、常人ならば思いつかない程の物。マッシュは勉学が苦手という情報は出回っているらしく、そこをつき楽して勝とうとしていた。だがここで思い出して欲しい………彼が一体どんな生徒と、会っているのかを。

 

 

 そう。彼はギャンブルに何度も手を出しているずる賢いウサギ『黒崎コユキ』と知り合いなのだ。

 

 

 

 

 

「コユキって生徒がね、長い間ギャンブルが盛んな学園にいたんだけど。そこで色々とカードのテクニックを身につけていたんだ、しかも彼女自身頭もいいから………僕何回も負けたんだ」

 

「じゃあ何……それで、慣れたって…?」

 

「うん、慣れちゃったんだ。僕の目が」

 

「生徒と関わり、己を進化した………」

 

「――――まさか」

 

「トランプ集めるね」

 

 

 

 

 マッシュはトランプを集め、軽快な動きでシャッフルを行いもう一度モエに渡す。ここでなんとなく皆は察しがついた。

 

 

 

 

 

「………数多と生徒と関わり、さまざまな能力を教わりその身に身につけてきた。つまり私たちは今……先生一人と戦ってるんじゃない」

 

「先生の関わってきた、数多くの……何十という生徒と、戦っている」

 

「……ヒェ」

 

「――アハハハッ‼︎――そんなの……さいっっっこうじゃん‼︎」

 

 

 

 

モエはイカサマ無しのシャッフルを行い、ドン…!と地面に置く。

 

 

 

 

 

「やってやろうじゃん」

 

「うんうん、とても良い目ですな」

 

 

 

 

 もはやこれはマッシュvsラビット小隊ではない……ラビット小隊vs、マッシュと関わってきた全員との勝負である。そう思いながらモエは―勝負を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――フォーカード‼︎」

 

「ロイヤルストレートフラッシュ」

 

「なぁぁぁぁんんんんでぇぇぇぇぇぇっっ!!」

 

「最後の最後で…またロイヤル……‼︎」

 

「ずるいずるいずるいずるいーーー!!!」

 

「勝ちは勝ち。約束通り今日は授業を受けようね」

 

 

 

 

そして勝負には普通に負けた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「……二番手、ミユ…い、行きます…」

 

「ねえ先生!!何この数学の問題!!ぜんっっぜん難しいんだけど!?」

 

「其方の問題は、ミレニアムの会計早瀬ユウカちゃんが作ってくれました」

 

「たった10問だけなのに1問もわかんないだけどぉ!?」

 

「なんだこれ……いや、ほんとに…なんだこれ」

 

 

 

 

 

 

 二番手は小動物代表こと霞沢ミユ。彼女は彼女なりに何かを考えそれで勝負をしようとしていた、ミヤコはそれをソワソワとしながら見守り、サキはモエの問題を手伝っていた、その問題を作ったのがあのミレニアムの会計士なのだからそう簡単には解けない。

 

 

 

 

 

「私は……自分の、長所を生かして――かくれんぼで勝負します」

 

「ほむほむ、それはなかなか良い案だね」

 

「鬼の人は、隠れている相手を見つけて……タッチをしたら、勝ちです」

 

「頑張ってくださいねミユ‼︎ 応援してますよ‼︎ 後で撫でてあげますからね‼︎」

 

「お前はあいつの保護者か」

 

「制限時間は……10分、です」

 

「オッケー、じゃあ鬼は僕で」

 

「はい………」

 

 

 

 

 

 マッシュはその場でうずくまり、耳も塞ぐ。そして10を数え、ミユが隠れるのを待つ……もう足音も気配も感じなくなり、静寂がその場を支配する。

 

 

 

 

 

「9……10………、本当にいなくなったな」

 

 

 

 

 キョロキョロも周りを見ているミヤコと、数学の難問に頭を悩ませているモエとサポートのサキ。ミユの姿は、痕跡は、全く無かった。

 

 

 

 

(ミユは、私が本気を出してもその姿を見つけられないほどの潜伏能力を持っています。耳と、目で頼っている先生は……絶対に、勝てません)

 

「―――音を、消し、一つに絞る」

 

「……?」

 

 

 

 

 マッシュは突然そんなことを言い出し、キョロキョロと周りを見渡す。その身はまるで風に任せるように、自由気ままに動いており……その行末で。

 

 

 

 

「――あそこだ」

 

(―――なんでこっち向いてるの……!!?)

 

 

 

 

 彼はミユを見つけた、そしてお得意の高速移動で彼女の後ろに立つ。ミユはいきなり現れたマッシュに驚愕し、その場で止まる。

 

 

 

 

「な、なななんで、わかったん…ですか…?」

 

「ミユちゃんの怯える声、それを拾ったんだ」

 

「こ、声…?」

 

「それから震える茂み、自然と漏れている恐怖の感情」

 

「………言われて、みれば………わたし、気配を消そう消そうとして、必死になってて……あ、あれ。おかしいな…」

 

「ある人に、潜伏した敵の見つけ方を教わったんだ。昔からずっと、身を守るために必死だった人からさ……とりまここからどうする?」

 

 

 

 

 

 マッシュはミユにそう問いかける、逃げる、抵抗するという選択肢はある――だが彼は知っていた、ミユが何を選ぶのかを。

 

 

 

 

「…投降します……勝てるわけも…無いので」

 

「…そっか」

 

 

 

 マッシュは彼女に触れ、勝敗を決めた。そしてこの時、ミユは心の中で何かが動き。

 

 

 

 

(―――なんで、逃げなかったの…わたし)

 

 

 

 

そう悲しそうに思うのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――先生、わたしが教えてことをああも簡単に……嬉しいぞ」

 

「サッちゃん、いい加減にしておかないとまたリンさんに怒られるよ」







次回、謎のヘルメットマンS vsラビット小隊、おたのしみに。なんとか頑張って土曜日投稿してみます

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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