⚠️良い子はこの回のような遊びをしないようにお願いします。
それでは本編へ……どうぞ!
時は、マッシュがRABBIT小隊と共にキャンプ生活を送ろうと準備を終えた日まで遡る。
その日のシャーレでは元アリウスの生徒らが業務を分担し、彼がいない間に送られてくる情報の処理や書類仕事を片付けていた。
「先生、いつ帰ってくるんだろうな…」
「わからない、でもあの生徒達を助けるとなると……かなりの時間はかかると思う」
「そっか………寂しいな」
「……うん」
恩人の不在。それは彼女らにとって心細い物で、過去に逆戻りしたような虚しさすら感じられた。彼がいなくなってからと言うもの、シャーレ内はアリウス生が行き交う足音を除けばほぼ無音に近く、いつもは暖かい執務室の空気もどこか冷たかった。
「寂しい時にこそ笑え、辛い時こそ寄り添え」
「っ!……ニーナ」
「それこそ、私達がここで学んだ事だろう?」
抱えた書類の束を机の上に置いて、落ち着いた様子で語るニーナ。その言葉に、他の生徒達はシャーレで学んだ経験や過ごした日々を思い出し、自然と顔が柔らかに綻ぶ。
「……それもそうだな……やっぱり、私たちのリーダーはニーナだな」
「よしてくれ、私はサオリ姉さんのようなリーダーの器ではない……ただ、あの人から名を与えられた徒の一人に過ぎない」
「そう言う割にはこの顔ぶれの中で一番個性的だしな」
「私達って髪型と目つき以外大差ないもんね」
「それは言っていいのか…?」
「いいんです。今はあいつもいないし、理不尽に咎められることもないし!」
「生まれてこの方、自分の容姿を変えるだなんて考えたことも事なかったからなぁ……聖園ミカのアクセサリー選びに付き合わされるのも、案外悪くないかもしれない」
全ての元凶であるベアトリーチェからの教育により、『個性』と呼ばれるものについて触れる機会がなかったアリウス分校の生徒達。指定された髪型を変える事も許されず、ファッションなんてもってのほか……
「でも先生やリーダー達はすごいよね、私たちのことすぐ見分けちゃうし」
「気配と雰囲気でだいたいわかるそうだ」
「いよいよ人間辞めてきたな…」
「リーダー達はともかく先生は元からだろ」
「とにかく…!先生がいない今だからこそ、私達がしっかりしないとダメだ。何故なら──」
「負けを認めろワカモォォォォ!!」
「それはこちらのセリフですよサオリィィ!!」
『じゃんけん――ポンッ!!!』
「よしっ!!」
「くっ、小癪な……!!」
「頼りになるはずの年上二人が、周りが引くくらいの熱意でじゃんけんをしているからだ」
「ほんとに何やってるんですかねあの二人……」
額に汗を垂らし、青いオーラと赤いオーラを互いに出し合いながらじゃんけんをしていた二人。そこから少し離れた場所からは、スクワッドの他メンバーとイズナが見守っていた。
「ふっ、ふふふ、なかなかやるではありませんか。流石はあのアリウス、あのお方からシャーレの部長を任されるだけのことはあるようですね」
「そちらこそ、流石は先生の右腕と噂されるだけのことは……ある…!」
「しかし負けるつもりは毛頭ありません……――先生の傍らに立ち、あの人をお守りすることこそ……我が使命!!」
「私にとっては、先生とともに肩を並べて戦うことこそが、生きる意味だ!!」
マッシュが子ウサギ公園でRABBIT小隊と共に過ごすという点について、二人は思うところこそあったもののまだ容認できた。しかし今のマッシュは悪人からのヘイトを集めて常時狙われているに等しく、いつ何があってもおかしくないと言う事実がある。
幼児化に伴う誘拐未遂、山海経での虚偽報道騒ぎ……先のことがあったからか、彼女らは互いに先生を守る存在同士、どちらが子ウサギ公園においてマッシュに付き添う助手として参加するか、互いに譲らないバトルを繰り広げていたのである。
「忠義を尽くすもの同士、仲良く主殿の元で動けばいいのでは?」
「あの二人が揃った時点でSRTの生徒が警戒しないわけないし、そもそも目立ちすぎるから一人しかダメ……って行政官からのお達しだし」
「リアルファイトじゃなくてよかったね」
「そうなったら私たちが止めないとダメなので、変えさせて良かったですね……私達じゃあの二人を止めることなんて無理ですし…」
この段階では、「マッシュの元に誰かが助手として働く」という事実はマッシュ本人にも伝えられていない。そもそもこんなことを決めているの段階でダメなのだが……カヤの企みが不明な今、彼女の差し金に狙われる危険を案じて心配になったリンが、シャーレの実力者のうち誰か一人が彼の援護つくようにと命じたのだ。
「ここまで同点……勝負は3本先取――次の勝負で全てが決まります」
「私は負けるつもりはないぞ……この命は、先生と仲間のために使うと決めている」
「重いよサッちゃん」
「私も負けるつもりなど毛頭ありません、我が身我が魂は先生の物………あと……仲間…の、物です」
「ミサキ殿、姉様のデレです!!!!」
「明日は槍でも降るのかな」
互いに譲れぬ絶対の戦い(じゃんけん)。2人は右手に力を込め、ゆっくりと距離を取り――2人揃ってその場から高くジャンプした。
「なんでジャンケンをするためだけにジャンプを⁉︎」
「さあ、最後の戦いですよ。錠前サオリ‼︎」
「来るがいい――愛妻の獣‼︎」
「赤いオーラと青いオーラが……こう、ぶつかり合ってる」
「ただのジャンケンだよね?」
『ジャンケン―――――ポンッ!!!!』
2人は宙に飛んだまま、互いに右手を出す――そしてこの一瞬で、この話のこれからの運命が決まった。
「――そんな、バカな…‼︎」
「幸運の女神は、この錠前サオリに味方してくれているようだな」
勝負はサオリの大勝利。空中を飛んでいたワカモは物理法則を無視した挙動とともに吹き飛んで壁に激突し、地面へと着地したサオリはガッツポーズを決めながら、アツコ達の元へと戻った。
「……長く険しい戦いだった」
「5分で終わったくせに何言ってんの、あとジャンケンに険しいも虚しいもないから」
「さて、急いで準備をしなければいけないな……しかしその前に……監視をしないとな。ヒヨリ、スコープを貸してくれ」
「それ監視じゃなくてただの覗きになりますよ」
「この前ミレニアムの生徒が先生を盗聴していたのだから、セーフだ」
「あの数ばら撒かれてるのに何がセーフなの? 何も関係ないからね?」
そしてイズナが拗ねているワカモの相手している間、サオリはマッシュの元へと向かうのであった。なおその夜のSNSにおいては、赤と青のオーラを噴き出しながら発光と振動を繰り返すシャーレの部室を撮影した映像が拡散されたという。
「おはようみんな、昨日は白熱したね」
「一度も勝てなかった……」
「ジェンガうますぎるでしょその人…」
「相手に何を取らせるのかを、たった1人で4人分行うだなんて」
「レベルが違いすぎますよ〜…!」
「ちゃんと仲間と話し合えば、私1人簡単に倒せたぞ」
時と場面が変わり、謎のシャーレ所属生徒・錠前サオリことSによる講義のもと、昨晩RABBIT小隊はSと共にジェンガに熱中したが、あえなく負けてしまった。
ジェンガとは相手に何を取らせるかと言う相談を仲間と共にすれば案外簡単に勝てるのだが、ラビット小隊の意見はバラッバラであり、互いが互いの足を引っ張る形となり、負けてしまった。
「今日の勝負は、誰から?」
「……先生、一つ提案があります」
「どうぞ」
「あの勝負の後、皆で少し話し合ったのです。そこで案を一つ決めました。一度に4人と勝負をする……それは可能でしょうか」
「…どういうことだ?」
「同じく競技で、先生に挑みます。それで勝てば……私たちの勝ちと言うのはどうでしょうか」
「チームプレイ――良きです、採用しましょう」
その言葉を聞いた4人は顔を少し笑顔にし、すぐに準備を整える。ミヤコが地面に小さい円を描き、そこにマッシュを立たせる。
「これから私と、あっち向いてホイをやってもらいます」
「ほほう、楽勝ですね」グルグルグルッ
「腕の関節どうなってるんですかそれ――いや、そこは置いておいて。ルールですが、私が最初に指を指します……貴方には三つ数えるまでに指先の方向を向いていなければ勝ちです」
「…………ガッテン」ドスコーイ!
あまりにも簡単な条件なので、マッシュは余裕の気持ちを抱きながら、無表情でそう答えた。他のメンバー達は円から少し離れ、その場所でそれぞれの銃を構えていた。
(先生にとって有利すぎる物……何を考えている?)
「3回勝負、貴方が全て避けられたら……貴方の勝ちです―――では」
「ばっちこい」
「あっち向いて………」
ミヤコが指を上に向けマッシュが下を向こうとしたその瞬間、目の前にミヤコの足が繰り出されていた。
(!強制的に上を向かせるために下から攻撃……考えたな。しかしあのままいけばお前の足は………いや、違うな)
「――アブネ」グイッ!
マッシュはそれを顔で弾くのではなく、あえて体ごと右に向け避けた。ミヤコはわかっていた、彼が自分を傷つけようとせず、避けることを……そしてここらが本番。
「あっち向いて――ホイ」
(二方向…!上か下を向かなければいけないが……)
「―3」パンッ!!
(――そう言うことか)
ミヤコが両指を左右に向ける、これでマッシュは上か下かを見なければいけないのだが、なんと左右からはミユやサキが放った麻酔針が迫っていた。これによりマッシュは右か左かを見て避けなければいけないようになったが……それは普通の人間ならの話。
「2、1――」
「――フンッ」
「両拳で麻酔針を破壊したか…!」
「0…流石ですね、先生……であれば」スッ
ミヤコは近接の構えを取り、他メンバー達は本気でマッシュを射抜くつもりで銃を構える。ミヤコの近接攻撃に加え麻酔針の射撃……そしてどこかしらの方向を絶対に向かなければならないと言う縛り。しかもミヤコはいつにも増して本気であり、確実に仕留める気満々である。
「こえ〜」
(そんなふうには全く見えないが……これは、かなりきついな)
「では行きます……あっち向いて――ホイッ‼︎」
(しかも三方向…‼︎下を向かなければ……勝てない)
「射線から外れるように動きます!援護を‼︎」
『了解…!』
「――いいね」
四方八方から飛んでくる針と、防ぐ暇がない打撃。さらに3秒と言う制限……マッシュはこの絶望的な状況の中、普段は使わない頭をフル回転させた。
「3」
(行ける!)
「2…!」
(か、勝てる…‼︎)
「1!!」
(勝った…‼︎)
マッシュが下を向き、ミヤコのアッパーカットが繰り出されていた為、何がなんでも下を向かないそんな状況、それにより勝利を確信する4人――だがマッシュは、思いもよらない方法でいつも危機を打開する。
ゴッ!!――ヒョイ!
「―――‼︎」
「地面を円ごと足でくり抜いて……」
「真上に飛ぶことで」
「下を向いたまま攻撃を避けた………!」
「先生以外では絶対に出来ない方法……あまりにも、相手が悪かったな」
足元の円を地面ごと足の筋力だけで抉り取り、そのままジャンプし避けると言う高等技術を行った直後。カウントがゼロとなり、勝負はマッシュの勝利に終わった。また負けた……と落胆する4人であったが。
「久しぶりに冷や汗掻いちゃった……めちゃくちゃ避けづらかったし、いいコンビネーションだったね」
「ミヤコの動きを予測して支援射撃を行う、ある意味これも……戦術と同じ」
「ぶっつけ本番で行ったが……ここまで、とは」
「え、Sさん……これって、100点満点中、何点ですか⁉︎」
「……そうだな―――70だ」
「び、微妙……!」
Sはミヤコの近くにより、その表情をしっかりと見る。悔しさ半分、不甲斐なさ半分といったような表情。
「今、何を思っている」
「……………」
「私には、お前のその気持ちがわかる……だからこそ、その気持ちを仲間に言うべきだ。仲間の気持ちを全て理解するなんてことは不可能、知ってもらいたいのなら、その口で言うべきだぞ」
「ミヤコちゃん……?」
「―――――悔しいです、みんなに、あそこまで頑張ってもらったのに……決めきれなかった…自分が…!」
拳を強く握り、そう告げるミヤコ。最後の最後、アッパーカットではなく上からの殴りつけなら勝てたかもしれない、みんなに無理を言って通してもらったこの勝負……最後の最後で自分は間違えたと、彼女は懺悔していた。
「驕るなよ、ミヤコ」
「えっ……?」
「お前が、お前1人が全て悪いとでも言いたいのか………違う。私はあの時射撃する場所を見誤った、お前の行動を読みきれず、信じきれず、ただただ違う方向を攻撃した」
「わ、私も……最後油断して、撃てなくて…」
「同じく同じく……これはチームの負け、ミヤコだけの負けじゃないよ。何でもかんでも自分のせいって言われるのはさ……なんか後味悪いんだよね〜」
そう気さくにいい、『はぁ〜今日もあの問題か〜』と愚痴りながら下がっていくモエとそれに付き合うようにして歩くミユ、立ち止まっているミヤコに対し、サキは去り際に小さく呟く。
「……いい作戦だった」
「‼︎」
「だ、だからと言って、お前をリーダーと認めたわけではないからな…‼︎」
「……ふ…ふふっ、ありがとうございます。サキ」
「……フンッ」
モエの方へと向かうサキとミヤコ、少しは仲が深まったのかと思い安堵したマッシュとSは
「――青春ですな」
「青春だな」
そう互いに呟くのであった。
――――――――――――――――――――――――
「うぉぉぉぉぉ返せ私達の焼き魚ぁぁぁ!!!」
「さかなぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「か、返してくださぁぁぁい‼︎」
「っ、ミユとモエは左右から!サキはそのまま後を追いかけて、うまく誘導してください‼︎」
『了解!!』
「さあ、今日の訓練は私からこの焼き魚を取り返すことだ。取り返せなかったらこれらは全て私の胃袋の中だ」
Sから今晩のご飯である焼き魚を取り返そうとチェイスを行う4人。頭の使いすぎにより体力と胆力を奪われていた4人にとって、焼き魚はまさしく絶品。
「それを食べたいのならみんなで協力してこれを取り返せ‼︎」という鬼畜めいた訓練が、今回のSが課した協力トレーニング。
「Sが違う
そんな中マッシュは、門前で1人ミヤコ達が行っている教材を読みながら、焼き魚を食べていた。焼き魚は買ってきたものを塩でただ焼いたものなのだが、それもそれでちゃんと美味しい。
「今日の成長具合は凄かったな……まあ昨日も昨日ですごかったけど」
Sが現れ、始まったジェンガ戦において。RABBIT小隊は少しギスギスしながらも、なんとか協力してSと戦っていた。しかし相手は先読みにおいては4人よりもはるかに経験のある相手、あえなく敗北してしまうのも無理はない。
(モエちゃんは援護をする時の限度、ミユちゃんは恐れずに何かを発言し行動する力、サキちゃんはプライドが勝って暴走気味なところを治す力、そしてそんな3人をまとめ上げ、勝てるように皆を導く力……それぞれを鍛えるためのこのキャンプ)
はっきり言おう――考えることとやる事がそこそこあり、補習授業部の時とは違ったしんどさがマッシュを襲っていた。
しかしめげないしょげない、ないちゃダメなマッシュは自分を鼓舞し、教材の方へと目を入れた……エデンの時のように、少しでも頭を良くするために――
「………………今の数学ってすごいな、古代文字を使ってるなんて」
ダメかもしれない。
「あ、あのー…! シャーレの先生はいらっしゃいます、か……?」
「なんか騒がしいと思ったけど……なーにこの状況」
そんな時、子ウサギ公園の門前に2人の生徒が現れる。1人はドーナッツを持ち、1人は何枚かの書類が入ったファイルを手にしていた。
「君達は…?」
「ヴァルキューレ警察学校一年生、生活安全局の
「同じく生活安全局の一年、
「僕がシャーレの先生だよ」
「「えっ若い」」
「第一声それなんだね」
門前まで一瞬で走ってきたマッシュは、キリノとフブキという生徒の前に立ち、話を聞く。
「どう言った要件かな」
「はいっ! カンナ局長からの伝達と、連絡です。これを先生に渡して欲しいと。中は見ないようにと言われました」
「……続けて」
「とりあえずコレと、これね……あと伝言も扱ってるよ」
フブキはなんのことか知らないとばかりに、カンナから伝えられた情報を告げる。
「『ヤギの腹は黒かった』、だって。なんのことだろうね」
「ヤギ……糸目―――それってつまり」
マッシュは深刻そうな顔をしながらファイルを受け取り、シリアスな雰囲気のまま。
「…………どういうこと?」
「いや私たちに言われても」
「と、とりあえずこのファイルの君を見れば良いのではないでしょうか!!」
「あっなるほど」
秘密のメッセージを送るときは、送る相手のことを考えましょう。
秘密のメッセージって実際頭のいい人しか理解されないし伝わらないよな〜と。
めちゃくちゃどうでも良いのですが、妹先生と私は正月太りをしてしまいました。そして今日からお仕事です………フハハハハッ!
あと一週間休みをくれぇぇえ!!!!
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