透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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今回のパロはわかる人にはわかるものです……ヒントを言うなれば暗殺ですね。はい。

それでは本編へ……どうぞ‼︎


マッシュ・バーンデッドとシュークリームトラップ

 

 

 

 

「ミヤコ、私はお前のことを部分的には認めているし、それは恐らくミユやモエだって同じ気持ちだ。計画性と真っ直ぐなその意志、何がなんでも先生に勝って学園を取り戻すと言う意志……それについては素直に尊敬するし、称賛に値するものだと私は思う。要するに、私は今のお前を信頼している……けどな」(小声)

 

「静かに……先生がきます」(小声)

 

「流石にこの作戦は無理だろ!」(小声)

 

 

 

 

 

 時は、デモンストレーション・ブートキャンプの開始から二週間が経とうとしていた日の早朝。マッシュが日課のトレーニングに向かっている間、ミヤコは公園にトラップを仕掛けていた。るんるん気分で仲間達を叩き起こしたミヤコに先導され、小隊員は全員がパジャマ姿のままトラップ近くの茂みに隠れていた。

 

 

 

 

 

「大丈夫です。何度もシミュレーションを重ね、Sさんとも話し合いましたから」(小声)

 

「あの先生ってこっちのシミュレーションを無理やり突破か、シミュレーションに無いようなことばっかりしてくる人だよ?」(小声)

 

「私とSさんが作り上げたトラップに負けはありません」(小声)

 

「シュークリームの入った袋に大量の武術の本と筋トレの本、そしてスイーツの本を用意し、その下にワイヤーを仕込む……そしてタイミングを見計らってそのトラップを作動させる……いや、まあ、作戦としてはいいとは思うがな…?」(小声)

 

 

 

 

 ミヤコが仕掛けたのは古典的な、対象無力化トラップ。ワイヤーを地面の下に仕込み、仕掛けた側が任意のタイミングで作動させ、そのまま対象を絡め取って宙吊りにする。

 

 今回設置されたトラップは、マッシュの体を丸ごとワイヤーに絡め取り、そのまま逆さ吊りにする形を想定している。トラップの作成に用いる装置などはSがシャーレから運んできた他、制作にあたっては間接的に、トリニティでブービートラップの専門家として活躍している生徒が関わっている。

 

 

 

 

「あんな見え見えの罠にあの先生が引っかかると思うのか?」(小声)

 

「先生はシュークリームと筋トレには目がありません。常日頃からそれらに関係する物を持っているほどに」(小声)

 

「普段懐からシュークリームとかプロテインとか出してるくらいだからねぇ」(小声)

 

「そして……それらに目を通している間、先生の意識は完全にそちらへと集中し続けるんです。なので今回は、限定販売されたボディビル雑誌やアイテム、限定販売されたフレーバーのシュークリームを取り揃えています。雑誌の付録などについては、Sさんの妹さんの一人からお借りしました」(小声)

 

「……な、なるほど」(小声)

 

 

 

 

 人は好きな物が目に入っている間、それに集中し続けてしまい時間や周りのことを忘れてしまうような事がある。特に集中力が凄まじい物などは本当に周りのことに一切目が行かなくなる……それをミヤコは利用した。

 

 

 

「先生との勝負はまだ始まっていません…‥なので、捕らえた瞬間に勝負を仕掛けるんです。一度でも私達が先生に触れれば、私たちの勝ち……と言う物を」(小声)

 

「えげつない作戦考えたね〜ミヤコ……でもこれって正義云々いいの?」(小声)

 

「対象を捕獲するためならば罠を仕掛ける……それこそ我々の戦い方です」(小声)

 

「卑怯云々を気にしてたら、戦場では危ういからな」(小声)

 

「……私は本気です、今日こそ――あの人に、勝ちます」

 

 

 

 

 

 ジッ……とトラップを見つめ、トラップを作動させるためのスイッチを手にするミヤコ。そんな姿にサキ達は自然と心が唸り、もしかしたらという期待が生まれた―――そして、その時は訪れた。

 

 

 

 

「こんなところに迷子のシュークリームが、保護せねば」

 

「迷子のシュークリームってなんだ」(小声)

 

「はっ、こんなところに落とし物の本達が……拾わないと」

 

「とかなんとか言いながらめちゃくちゃ読んでるじゃん……」(小声)

 

「………………」

 

「今までにない程に真剣な顔をしてる……」(小声)

 

「――今です‼︎」ボチッ!

 

 

 

 

 マッシュがシュークリームや本に気を取られている間にトラップが作動、マッシュは物の見事に捕らえられてしまい、体中にワイヤーがくくりつけられ、宙吊りになってしまった。

 

 

 

 

「本当に引っかかった‼︎」

 

「嘘だろ先生‼︎」

 

「しまった………ついシュークリームや本に気を取られて………チェーンを持ったままヘリコプターに引っ張ってもらう筋トレ……いいなこれ、今度やってみよう」

 

「この状況でも地面に落ちた本を読むのはすごいよ」

 

「先生、勝負です。私達が先生に触れたら勝利……触れさせなければ先生の勝ちです!」

 

「それは困った」

 

「―行きますよ‼︎」

 

 

 

 

 ミヤコ達は捕らえ宙吊りになってるマッシュに向かって飛びかかる。触れれば勝ち、たったそれだけのシンプルな勝負……捕らえる相手がマッシュでなければもっと簡単だったであろう。

 

 

 

「フンッ!」

 

「よいしょ」グッ!

 

「えい‼︎」

 

「フンッ」ブンッ!

 

「とったぁ‼︎」

 

「メリーゴーランドー」

 

「あぁぁぁくそっ‼︎こんな状況でそんなに動けるやつがあるか‼︎」

 

 

 

 

 マッシュは宙吊りになっているのにも関わらず、体全体を動かしミヤコ達の手を届かせないようにしていた。ある時は腹筋を使い上体を起こさせ、ある時は体全体を揺らし、ある時はメリーゴーランドのように高速で右回りに動いたりして、全てを避けていっていた。

 

 

 

 

「僕を罠にかけたのは凄いよ、僕のことをよく見てた証拠。でも甘い、甘いよみんな、抹茶味のアイスくらい甘い

 

「なんだその微妙な例えは!!!!」

 

「僕の体の柔らかさと器用さと素早さは凄いんだ、ほらほらこの通り」

 

「わかりやすく調子に乗ってる‼︎」

 

「ほーらほら、大回転」

 

「わっ⁉︎ ふ、吹き飛びそうになるよ…‼︎」

 

「ちょ、ミユまで飛ばしそうになってどうするんだ‼︎」

 

 

 

 

 

 テンションが上がりきったマッシュは体を全力で動かし扇風機の羽のように大回転。突風が吹き荒れミヤコ達は近づくことすら困難になる――が。

 

 

 

 

ベキッ!

 

 

 

「あっ」

 

 

 

ボトッ!

 

 

 

 

 石車に乗るとはよく言う物で、調子に乗って大回転を行った結果。足の下にある部分のワイヤーが千切れてしまい、マッシュは地面へと落ちてしまった。体には複雑に絡まったワイヤー、両手も右手が前に左手が後ろというなんとも言えないような位置にある……。

 

 

 

 

「――今です好奇!!」

 

「もらったぁぁぁぁ!!」

 

「えっちょ、まっ、まって、本当に待って、何かの間違い―――フンッ」

 

「あっ‼︎頭突きの反動で前に回転した‼︎」

 

 

 

 

 マッシュは地面に転がり周りなんとかミヤコ達の手を避ける、そしてピンチになった瞬間地面に向かって頭突きを行い、その反動で前に回転しながら飛び4人の後ろへと立つ。そしてそのまま素早い動きで後ろへと下がる。

 

 

 

 

「ここまでくるのには時間がかかるはずだよごめんね、みんなとは基本性能が違うんだ」

 

「あーもう後もうちょっとだったのにぃ⁉︎」

 

「焦った……本気で焦った。息もちょっとだけ荒くなっちゃったな………ふぅ――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の数学の問題数を2倍にします」

 

「「「「器小っさぁ!!?」」」」

 

「あっ、まだ勝負はついてなかったね。ではさらば」

 

「おい待てぇ‼︎」

 

「っ追いますよミユ、モエ‼︎」

 

「えぇ〜また走るのー⁉︎」

 

「ってもういないよ⁉︎」

 

「あーもう!!!」

 

 

 

 

 

 拘束状態のまま走るマッシュと、それを追いかけるラビット小隊。獲物は果たしてどっちなのだろうかと思うそんな光景を、影から見ていたのは、Sことサオリ。

 

 

 

 

「……フフフッ、先生、随分と楽しそうだな。まるで友と遊ぶ子供のようだ……いや、合ってるのか」

 

 

 

 いつにも増して楽しそうなマッシュと、何処か楽しんでいるような表情のラビット小隊。そんな彼らを見てサオリは何故が泣きそうになり、グッとそれを堪えた。

 

 

 

 

「サオリンは混ざらないの?」

 

「私はいいさ、歳の近いもの同士仲良くするのが──……っ、聖園ミカ!? 何故ここに!?」

 

「おっは〜サオリン⭐︎ 久しぶりだね、最近トリニティに来てくれないから寂しかったんだよー?」

 

 

 

 

 そんな彼女の前に現れたのは、アリウスと顔馴染となったティーパーティーの元ホスト・聖園ミカ、その手には一つの小さい長方形の箱が提げられていた。かつての因縁が溶けた2人は、ただの友人として話を始める。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「そ、それはすまなかった……が、何故ここに?」

 

「先生が新しい女の子を堕としてる気がしたの」

 

「落ち着けミカ」

 

「てのは冗談で〜、はいどうぞ!これを先生に届けにきたの。みんなひどいんだよ? 私のことをお使いに行かせる子供みたいな扱いでさー」

 

「これは箱か? 中には………データチップ?」

 

「パラダイス機構が集めた、ここ最近のカイザーの動きをまとめたデータだよ」

 

「‼︎」

 

 

 

 

 カイザーのデータ、それを聞きサオリは驚きその箱を大事そうに抱える。ゲヘナとトリニティが緊急時に手を組み動く条約、それがパラダイス機構……そんなものが動いたということは、かなりの一大事であるということ。

 

 

 

 

 

「どういうことだ、何故カイザーを相手にパラダイス機構が?」

 

「カイザーだけなら無視とか、他の学園に調査とか任せてたんだけどさ?……最近のカイザーはおかしいの」

 

「おかしい?」

 

「ねえサオリン、先生がガイザーのありとあらゆる作戦や計画を片っ端からぶっ潰してるのは知ってるよね」

 

「ああ、名のある悪徳業者が軒並み退散したり、怪しげな物資や取引も無くなってきていると聞く。そして何より、先生の手で自ら潰した会社も、私達が壊滅させた組織もある」

 

「そうそう! 普通そうなったら、カイザーが備蓄してる武器や物資はどんどん無くなっていくし、倒産だってあり得るでしょ? 実際、事業のほとんどが赤字らしいし………でもね、その赤字はあくまでも"事業における売り上げ"だけ」

 

「貯蓄された財力は減っていないと?」

 

「それどころか……最近、上がってきてるらしいの」

 

「……何?」

 

 

 

 

 カイザーは確かに赤字を連続で出している……しかしそれは事業における売り上げ上での話に過ぎず、カイザーグループが蓄えている資金量は増加傾向にあるらしい。売り上げがピンチであるにもかかわらず、どこから資金を得ているのか。

 

 

 

 

「今のカイザーと取引しようとする事業者もいるわけないじゃん?」

 

「……先生を狙っている者達と手を組むのは、確かに悪手だからな」

 

「なのにさー? お金がどんどん増えていってるのはおかしくない?」

 

「………聖園ミカ……まさか、まさかとは思うが…」

 

「……私たちはこう考えてるの。カイザーを支援している組織がバックにいるって……その組織が多分――ゲマトリアだって」

 

 

 

 

 その名に、サオリは怒りと不快感を滲ませて顔を歪めた。アリウスを押さえつけた魔女を始め、小鳥遊ホシノを付け狙った男、ユスティナ聖徒会を傀儡に作り変えた男が所属する組織が、カイザーと繋がって何をしようというのか。

 

 

 

 

「流石に赤いオバサンの仲間となったら私達も楽観視できないからさ〜……ヘイロー破壊爆弾、だっけ。それを作ったりもそうだし、先生を倒すためにわざわざあんなに凝ったモノをたくさん作ったくらいだし。あのユスティナの使徒を操り人形みたいにしたのも、確かホシノちゃんっていうアビドスの子に手を出そうとしたのも、ゲマトリア」

 

「………ここ最近の奴らに、目立った動きはあるのか?」

 

「派手に動いているわけではないけど……カイザーインダストリーとカイザーコンストラクションが手を取り合ってるって情報は手に入った」

 

「他には、あるか?」

 

「あと…カイザーインダストリーの社員達が血眼になって働いて、何かを運んでいるっていう報告があったよ」

 

「本当か⁉︎」

 

「うん………カイザーインダストリーはキヴォトスで流通する武器の製造で大きなシェアを持っている企業、なら何か危険な武器を作ってきてもおかしくない。皆がそう思って、『いち早く先生に伝えよう!』ってなって、私がそれを持って来たの」

 

 

 

 

 

 

 どんどん闇が深くなり、どんどん笑えない話になってきた事を感じ取ったサオリ。先生には必ず伝えなければならない……しかしラビット小隊達にはどうだろうか――――いや、今は考えないでおこう。

 

 

 

 

 

「感謝する、お前のおかげで、今回の件が一歩進めそうだ」

 

「それならよかったよかった⭐︎ 所でなんでヘルメット付けてるの?」

 

「教官っぽいだろう?」

 

「アンバランスな気もするけどね」

 

「今先生を呼んでくる、久しぶりに顔を見たいだろう?」

 

「ううん、今は大丈夫かな」

 

「――風邪でも引いたのか?」

 

「ちーがーいーまーすー」

 

 

 

 

 

 ミカは微笑みながら楽しそうに走っているマッシュを見て安堵し、胸に手を当てながら答える。

 

 

 

 

「今先生に会っちゃうとね、思わず抱きしめそう……じゃなくて、離れたくなくなっちゃうから。ダメ」

 

「なるほど…」

 

「今回先生が時間を使っているのは、私じゃなくて他の生徒さんでしょ? なら、部外者である私が先生の時間を奪うわけにはいかない」

 

「………お前も空気を読むようになったんだな」

 

「サオリン私のことなんだと思ってるの?」

 

 

 

 

 

 サオリは静かに笑い、改めて一礼しミカに感謝を告げる。ミカはトリニティらしく挨拶を行い、後ろを向く。

 

 

 

 

「サオリン。先生のこと、今回は任せるね」

 

「ああ、勿論だ」

 

「ついでに……先生が助けようってしてる生徒達も…ね」

 

「――わかっている」

 

「じゃあね、バイバイ⭐︎」

 

 

 

 

 

 コツコツと足音を鳴らしながら、ミカはその場を去り、サオリは最後まで手を振っていた。そしてメモリを箱にしっかりと入れる。

 

 ゲマトリア……先生を付け狙ういわば変態ストーカーとも言える危険な組織、マッシュは誰よりも強い……そして誰よりも危険、誰よりも……甘い。

 

 

 

 

「……今度は私が守る、全てを」




なんで今ゲマトリア?と思う方もいらっしゃるでしょう……実は過去の話に何回か伏線を入れておりました、わかりにくいとぶっちゃけ思ってます。

そしてまだ先生と直接会ってない人がゲマトリアにいますよね?そう言うことで……あっ、そう言うこった!!

励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします。

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