透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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次週、ほんとに終わりますね……ガルバノク、長かったような、短かったような……何気に話を作るのが難しかった章でもありました。


マッシュ・バーンデッドと進化ウサギ

 

 

 

「チェック……メイトだぁぁぁっ‼︎」

 

「―――参りました」

 

 

 

 

 後日、お昼時で、人は皆空腹で疲れている時間だと言うのに、サキは元気よくガッツポーズを取り心の底から喜んでいた。なぜなら今日の勝負で……サキが勝利をしたからだ。

 

 

 

 

「先読みの先読み、さらにその先を読む! 脳筋思考……私も同じ思考をすることがあると自分自身で認識しているからこそ、同じタイプの奴の行動パターンは読めた!」

 

 

 

 

 先読みは何度も何度も行って来た彼女であったが、Sやミヤコから『後一歩足りない』と言われ、それを元に思考し、マッシュが次にする行動の次を、さらにその先を予測しコマを動かした。

 

 

 

 

「パターンとか色々変えてみたんだけどなぁ……流石にパターン数が5を超えた時点で限界だった」

 

「どうだ先生‼︎勝てたぞ、私でも勝てたぞ‼︎」

 

「完敗だよサキちゃん……でも次は負けないよ」

 

「何度でも、何百回でも勝ってやる!」

 

 

 

 

 初期の頃とは比べ物にならないほどの笑顔を見せるサキ、ツンが完全に消えたわけでも無いが、少なくともマッシュに対し心を許している様子は見えた。少しして、二人の元に訓練を終えたミヤコ達が現れる。

 

 

 

 

「え、サキ勝ったの⁉︎」

 

「朝に私達が勝てていれば……悔しいですね」

 

「おっ、おめでとうサキちゃん!」

 

「残るは、ミユちゃんだね。いつものかくれんぼでいいのかな」

 

「は、はい!……もう初めてもいいですか?」

 

「OK……あっ、ミユちゃん。その前に―――あれ」

 

「……ミユ、消えた?」

 

「……早すぎて見えなかった、あの体だからかな」

 

 

 

 

 

 勝負を始めてもいいかと言い、了承を得た後。マッシュ達の元からミユはすぐに消えた、気配も音も全くしない……正真正銘、ほんとうにミユは消えた。

 

 

 

「――集中」

 

 

 マッシュはミヤコ達から離れ、茂みが生い茂っている場所へと足を踏み入れた。元気よく、健康的に立っている木を細かくみながら、周囲を見渡しながら、マッシュはミユを探し出す。

 

 

 

 

(……全然気配を感じられない、しかも……いや気配だけじゃ無い、何かを踏む音も、茂みが揺れる感じもしない――ミユちゃん凄いな)

 

 

  

 

 しかし以前とは比べ物にならない程の気配遮断能力、音もしない……感情も読み取れない、本当に、ミユがこの世から消えたようにも思えてしまうほどに。

 

 

 

「………(おかしい、胸が……ドキドキとしている、変な不安が―――)」

 

「動かないでください」カチャッ

 

「!」

 

「動いたら、撃っちゃいます」

 

「心臓が本気で飛び出るかと思ったよ」

 

 

 

 

 いつの間にかミユがハンドガンをマッシュの背中に向けていた。その手に殺意や敵意がなぜか感じない……背にいるのはわかる、しかしなぜか本当な気配がしない。

 

 

 

「……それどうやってるの?」

 

「え、えーと……なんて言ったらいいのかわからないんですけど、意識を一つに集中してそれ以外を遮断する……みたいな、感じです」

 

「ほんとだ、僕と話している時だけ気配を感じられる」

 

「先生には隙が全くない……でも、少しでも動揺した時は、わかりやすく隙が現れるんです。だからそこを狙いました」

 

「観察した結果、かな」

 

「みんなと話し合って浮かび上がった、先生唯一の隙です……負けを認めてください、じゃないと、麻酔針を打ち込みます」

 

 

 

 

 ミユは、誰がどうみても進化していた。臆病で、いつもビクビクしていて、マッシュを前に震えることしかできなかった彼女が……今や、そのマッシュに力強くは向かっていた――まさしく、強きうさぎになっていた。

 

 

 

 

(――うぅぅぅこわいよ〜〜……)

 

 

 

 

 言い直そう、少しだけ強がっているウサギだった。内心では逃げたいと正直に思っている……しかしみんなの足を引っ張りたくないというその思いが、その逃げたいと言う思いを心の奥底に閉ざしていた。

 

 

 

 

「ここから、僕が高速で動いたら勝てるよ」

 

「いいえ……先生、チェックメイト、です」

 

「―――――集中しすぎて無かったかも」

 

「…えへへ」

 

 

 

 ミユはいつの間にか、マッシュの首に訓練ようのゴム製ナイフを当てていた。ナイフでマッシュが死ぬことは無い、だが、首に何かを当てられていた……これがナイフではなく別のものだったとなら、彼を倒せる可能性は大いに存在していた―つまり。

 

 

 

「負けだな、僕の」

 

「――――ふえぇぇぇ〜」

 

「危なっ…と、大丈夫?」

 

「腰が……抜けちゃいました………」

 

「あらら、とりあえず運ぶよ」

 

「はい………先生、私、ちゃんとやれてましたか?」

 

「文句の付け所がないほどに、ミユちゃんはしっかりとしていたよ。華丸です」

 

「――嬉しいです、とっても」

 

 

 

 ミユはその小さい体をマッシュに預けながら、自分の勝利を噛み締めるのであった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「先生、Sさんに聞きたいことがあるのですが……彼女はどこに?」

 

「あー…しばらくは戻って来れないんだ。大事な仕事がはいちゃってさ」

 

「…そうですか、後少しで何かを掴めそうなので、アドバイスを貰おうかと思っていたのですが」

 

 

 

 

 昼を終え、それぞれの時間を過ごしている中、一人ポツンとかけているその空間に違和感を感じてしまったミヤコ。Sは例の作戦があるので公園には残れない、それを知らせるわけにもいかない。

 

 

 

 

(……そろそろかな)

 

「ミヤコー?今日の晩ご飯だけどさ〜――――公園・門前付近に敵性反応あり‼︎しかも結構な数!」

 

「ミユ!」

 

「服装は………ヴァルキューレ…⁉︎」

 

「なぜヴァルキューレが……いえ、今は迎える体制を整えなければ。サキ!」

 

「点検は済んである!」

 

 

 

 

 

 見事なチームプレーで、迎撃体制を整えたラビット小隊。そんな彼女らの元へ現れたのが……カンナ率いるヴァルキューレの部隊。先頭にカンナ、その横にフブキとキリノもいた。

 

 

 

 

「……随分と顔つきが変わったな、ラビット小隊」

 

「狂犬、尾刃カンナ……なんのご用ですか」

 

「ほう、自分たちが今やっていることを理解した上での発言か?」

 

「その処分は先生に任せると言ったはずだ」

 

「まさかとは思うけど……先生の意思を全無視してここに来たわけじゃないよね〜?」

 

 

 

 ヴァルキューレの部隊の前に立つカンナと、それに対して敵意を見せながら警戒体制を整えるラビット小隊。そしてキリノが少し頷くのを合図に、マッシュが前に出て、発言。

 

 

 

「ナニヲシニキタンデスカミナサン(棒)」

 

 

 

ズコッ!!!!

 

 

 

カンナとマッシュ以外の生徒達が一斉にずっこけた。

 

 

 

 

「なんだその気の抜けた声は‼︎」

 

「コノオシゴトハボクノシゴトデスヨ(棒)」

 

「しかもなんでカタコト⁉︎」

 

「……せ、先生。長い間ご苦労様です」

 

「ハハハッ、ベツニツカレテマセンヨ」

 

(なんっで貴方の作戦で貴方がそんな感じなんですか‼︎バレますよほんとに‼︎)

 

(ごめんなさい緊張しちゃって)

 

(普段の緊張感ゼロの貴方はどこに行ったんですか!)

 

 

 

 

 目でなんとか言葉を交わしながら、カンナは気持ちを切り替え、演技を行う。

 

 

 

 

「確かにこの案件は先生に一任されました……連邦生徒会から了承を得て」

 

「まさか、連邦生徒会が先生の意思を無視して…?」

 

「正確に言えばヴァルキューレの上層部…だ。まあお前達には関係のない話だ」

 

「関係ないって……」

 

「カヤさんが僕に任せるって言ってたの、聞いてましたよね」

 

「……なんのことでしょうか」

 

「なんだって?」

 

「防衛室長は、『この公園に滞在し続けていい』とは一言も言っていません、あくまでも任せると言っただけ。さらに言えば……ラビット小隊の処分を保留しているだけと、そう聞いています」

 

 

 

 

 悪そうな、ヴァルキューレの犬として演じ切るカンナ。かなり練習したのか演技とはわからないほどに完璧、これに対しマッシュは、頑張って演技をして応える。

 

 

 

「そ、そんなばかな」

 

(わざとらしいです先生‼︎せめて顔の表情筋を動かしましょう‼︎)

 

(局長見てよ、すんごい頑張って顔変えてるよ)

 

「市民が使う公園を占領している生徒達の対処をする、それが我々の仕事だ」

 

「公安局が……随分と変わった仕事をするんだね」

 

「治安局の仕事じゃないんですか…?」

 

「普通はな……そして今回、我々にはとあるスポンサーがついた。それ故に装備も最新型、さらに応援も多く用意している――この前の同じになると思うな」

 

 

 

 

 狂犬らしい恐々の表情を見せながら圧をかけるカンナ、その表情にヴァルキューレ生徒達は皆怯えていたが、ラビット小隊はそれになんの動揺も見せなかった。カンナよりも怖い何かを経験して来た結果である。

 

 

 

 

「ひぇこわ」

 

「貴方がビビってどうするんですか‼︎」

 

「きょ、局長‼︎」

 

「………は!―生徒を支える立場の貴方が、生徒に怯えていてはいけないでしょう」

 

「それもそうですね」

 

(切り替えはっや⁉︎)

 

「先生、下がっていてください……立場的に彼女らと普通に戦えるのは私達なので」

 

 

 

 

 ラビット小隊は武器と体制を整え、いつでも攻撃できる準備をする。ヴァルキューレ達は『このまま待機でいいんですよね…?』とカンナに目で訴え、カンナはマッシュの行動を待つ。

 

 

 

 

「待ってみんな」

 

「先生…しかし」

 

「カンナさん、カヤさんとお話がしたいんですけど。いいですか」

 

「申し訳ありません、現在防衛室長は多用でして」

 

「……なら、もう少しだけ待ってくれませんか。もう少しで、ミヤコちゃん達が僕に勝てるんです、その時まで、どうか待ってくれませんか」

 

「子ウサギタウンがここに建設されるのは知っていますね? そのために、その場から人を追いやるのと、今回のことは任されている仕事が違うはずです」

 

「お願いします、カンナさん」

 

「………一度決めたことを、貴方は全く変えない…そんな人でしたね」

 

 

 

 カンナはマッシュ達に背を向け、『撤収だ』と言い、その場から離れていく。

 

 

 

 

「5日、これがタイムリミットです。それまで要件を終わらせてくださいね」

 

「……わかりました」

 

「…それでは失礼します――各自、支給された武器に問題はないな、念のため確認はしておけよ。―もう一度言うぞ、支給された武器に問題はないな」

 

(………あれ、あの武器どっかで……)

 

「無いならいい、撤収だ!」

 

 

 

 

 

 カンナとヴァルキューレ達は早歩きでその場から退散、公園に残されたマッシュ達は集まり、話し合いを始める。

 

 

 

 

「……明らかに様子がおかしかった」

 

(ギクッ)

 

「ええ、まるで何かを……伝えようとしているかのような」

 

(ギック…)

 

「――あのさ、ヴァルキューレ達が持ってた武器あったじゃん?……あれカイザーインダストリーって言う会社の新武器だよ」

 

「カイザー…⁉︎」

 

「カイザーって確か……Sさんから聞いた、先生を憎んでいると言う?」

 

(あっぶね)

 

 

 

 バレそうにバレなかったことに安堵したマッシュは、次の段階へと移行。

 

 

 

 

「そんな武器をなんでヴァルキューレを持ってるんだろう」

 

「……まさか取引をしていたのか? カイザーと?」

 

「しかもヴァルキューレが……あと、ここに子ウサギタウンを建設するって――あっ!カイザーって確か、建築関係の企業もあったよ!」

 

「子ウサギタウンを建設するためには私たちや、あのデカルト達の存在が邪魔……だから力づくでその場から追い出す事にした。それに…ヴァルキューレを使っている?」

 

「……つまりこれは」

 

「カイザーとヴァルキューレが、つながっている……ってこと……? そしてあの狂犬はわざとそれを私たちに教えるために…‼︎」

 

 

 

 

 マッシュは心の中でガッツポーズを取った、ミヤコ達が自分たちでカイザーとヴァルキューレの事を知ってくれたからだ。これで次やることは決まった。

 

 

 

「もしそれが事実なら……やばいね」

 

「でも証拠がないから、下手に動けないぞ」

 

「……であれば、その証拠を取ればいいのでは」

 

「ヴァルキューレに潜入する気? 後5日の間で?」

 

「5日だから、行けるんです。時間が経ち、油断しきっているその日に……仕掛けるんです」

 

「その間に僕に勝つことも、きっと出来る」

 

「…………ヴァルキューレは、正義の心を持っていると言っていました」

 

 

 

 

 

 ミヤコは銃を強く握り、その目に熱いものを宿していた。

 

 

 

 

 

「なのに、カイザーと結託し悪巧みをしている……これは許されることではありません。それにヴァルキューレは……先生のことも裏切ったのです――許せません、SRTの生徒として、そんな事を許せるはずがありません」

 

「…言えてるな」

 

「潜入作戦か〜、初めての実戦だね」

 

「でも今の私たちなら……‼︎」

 

「―失敗した後、その責任は僕が取るよ」

 

 

 

 

 

 マッシュの言葉を聞き、より一層失敗できないなと誓う。もらったその力を、鍛えてもらったその力を……今度は誰かのために使う。

 

 

 

 

 

「結構日は4日後の夜、その間に我々は先生に勝ち……カイザーとヴァルキューレの悪事を暴きます。名付けて『クローバー作戦』――否定意見は、ありますか」

 

『―なし‼︎』

 

「……先生、最後まで。お付き合いをお願いします」

 

「勿論」

 

 

 

 

 隠してラビット小隊は、マッシュが考えた作戦にうまいこと乗ってくれた。あとは裏で色々と動き……今度こそ。

 

 

 

(みんなをハッピーエンドに導くんだ)








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