透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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ガルバノグ一章……完結です。

1ヶ月ちょいくらいですかね、皆さん本当にありがとうございました。引き続きこの作品を、よろしくおねがい致します。


マッシュ・バーンデッドと強くて立派なウサギ達

 

 

 

 

「貴女は何故こんなことを‼︎」

 

「貴様に教える必要は無い」

 

 

 

 

 飛び交う弾幕、ミヤコは白ドレスと距離を取りながらも間合いを詰めようと試みる。隙が無いのではないが、見せていないのだ……全くと言って良いほどに。

 

 

 

「来ないのか…いや、これないの間違いか――ならばこちらから行かせてもらう」

 

(後退―は、だめ。直進のみ‼︎)

 

 

 

 狙うのは白ドレスが攻撃をしに突っ込んできた時、それしか近付く方法はない。銃弾を撃ちながら近づき、持ち手を切り替えそのまま殴りかかる、それを白ドレスは横に避けすぐに回転蹴りを繰り出す。

 

 

 

 

「ライフルでガードしたか……しかし!」

 

(踏み込み―早い!)

 

「その態勢ではまともに避けれまい!」

 

 

 

 

後ろへと少し倒れながら後退しているミヤコを狙い、すぐさま弾を発射しながら彼女へと近付く白ドレスは、走った勢いを殺さず蹴りを放つ。

 

 

 

 

「態勢が苦しいようなら―無理やり起こす‼︎」

 

「――ほう」

 

「そして……攻撃を、壊す!」

 

 

 

 

銃を地面につけながらバク転し着地、そのまま踏み込み繰り出された足を狙って肘打ちを放つ。野太い音……白ドレスはヒールを履いた状態で、その攻撃を耐えた。

 

 

 

 

「随分と荒々しい戦い方だな、誰かの影響か?」

 

「貴女に教える必要はありません‼︎」

 

「それもそうだな」

 

 

 

 

 何かが弾かれる音が聞こえ、互いに距離を置く。そして隠し持っていた閃光弾を複数白ドレスに向かって投げつけるが、それを冷静に破壊され、眩い光が辺りを照らす、ミヤコはタイミングよく目を閉じてなんとか事なきを得たが。

 

 

 

 

「爆発のタイミングに合わせて目を瞑る、そう簡単にできることではない……しかし」

 

(相手も…同じ―!)

 

「姿勢だけは、本能的に下に下げてしまったな!」

 

(っ!!)

 

 

 

 

 それは白ドレスも同じ事、白ドレスは強烈なアッパーカットを繰り出し、さらに宙に浮いた彼女の溝へ拳を放つ。ミヤコは地面に引きずられるようにして吹き飛ぶ。

 

 

 

 

『ミヤコ‼︎』

 

「―大丈夫です‼︎ それよりも敵の報告を!」

 

『なお健在……疲れてはいるけど、ダメージを負った感じはないよ』

 

「そう……ですか……」

 

(……そろそろだな、ミヤコ――ここからはお前の時間だ)

 

 

 

 

 白ドレスは銃を下げ、隠していたある物をミヤコに見せる…それは、たった一つの小さなメモリだった。6センチ程度……そんなに小さい物を、彼女はミヤコに見せ付けた。

 

 

 

 

「取引だ、正義の代弁者」

 

「取引……?」

 

「これはお前達が欲している物、しかし私たちもこれが欲しい……だから取引だ。ここで手を引いてくれないか、コレは私たちが直で、クロノススクールへと出そう」

 

『急に何言っちゃってんの、私達になんのメリットも無いけど?』

 

「私はこれを――お前達が手にしたことにして、世間に流す。コレがどう言うことかわかるか」

 

 

 

 

 

 要するに、名声を全てやるから見逃せと言っている。ラビット小隊がカイザーとヴァルキューレの悪事を暴いた! 確かにコレを世間に知らしめれば、ラビット小隊達は少なからず名声を手にして、有名になる。

 

 

 

 

 

「勿論報酬もやろう、いくら欲しい。お前たちが一生遊んで暮らしていける金を用意することもできるが」

 

『あの、さぁ?私たちのこと舐めすぎでしょ…それではい、じゃああげますってなるわけないじゃん』

 

「……取引に応じなければ、どうしますか」

 

『ミヤコ!?』

 

「もちろん、コレをここから投げ捨てる。この高さだ、簡単に破壊はできる」

 

 

 

 

 

 少しの沈黙、ミヤコは銃を下げ、じっと白ドレスを見る。白ドレスは少し笑い話を続ける。

 

 

 

 

「コレを依頼主に届ければ、私達の仕事は完了する。逆に壊してもいいんだ……お前達と言う存在がコレを手に入れなければな」

 

「……依頼主の要望に応える、それが貴女の正義ですか」

 

「すべては一つの目的のために、致し方のないことだ。それしか道がないんだから……我々は生きるためにこの仕事をクリアする――それこそ私の正義だ」

 

 

 

 

そうですか…と、ミヤコは呟き…ゆっくりと前へと進む。モエが通信越しで何かを話していたが、彼女はそれに応えることはなく、手でクローバーのマークを見せる。

 

 

 

「貴女の正義を、否定はしません。正義とは人それぞれと教わったので」

 

「…ならば」

 

「そして私にも正義があるのです。その正義を貫き通すために……私はここにいます」

 

「何のためだ、それに何のメリットがある」

 

「メリット?……知りませんよ、そんなの――私は、コレが正しいと思ったら……行動するんです」

 

「………そうか――ならば、その幻想を抱き続けながら、後悔するんだな」

 

 

 

 

 

 白ドレスはメモリーを地面へと落とす。それに対しミヤコは、マッシュとの戦闘で見せた本気のダッシュを使い、勢いよくジャンプ。

 

 

 

 

「っバカな…‼︎」

 

「SRTは、SRTの正義とは‼︎理にかなった通り―そして、自分が正義と信じるか否か‼︎」

 

 

 

 そして何とかメモリーをキャッチすることに成功、だがビルから飛び降りてしまったので、このままでは地面へと叩きつけられてしまう。流石のミヤコもこの高さは危ない――だからこそ。

 

 

 

 

「―⁉︎これは……ロープ‼︎」

 

「ごめんなさい、私自身力がすごくあるわけじゃないので……引っ張ってくれませんか?」

 

「さっきのダッシュ、あの一瞬で私の手に…‼︎」

 

 

 

 

相手を利用した、白ドレスの腕にはロープがしっかりと絡まっており、その先をミヤコがしっかりと持ちながらぶら下がっている。

 

 

 

 

「だが……このままロープを切れば良いだけだ」

 

「ええ、そうくると思いました――なので、コレだけは守らせていただきます‼︎――モエ‼︎」

 

『はいはーーい‼︎』

 

「させ『フラッッッシュ‼︎』――ぅ、目が…‼︎」

 

 

 

 

メモリーをドローンの方まで投げ、ドローンがそのメモリを回収。そしてその場から去っていった……コレにより、目的は達成。

 

 

 

 

「正気か……貴様、名誉も、お前の命すらも危うくする気か!」

 

「名誉、そんな物に私は興味ありません‼︎ 私は、私が憧れた先輩が胸を張って自慢できる生徒に、先生が安心して指揮を取れるような生徒になると決めたのです」

 

「そのために命を投げ打つ気か…!」

 

「私の正義とは! 私が正しいと思う、その心‼︎――つまりは、SRTそのもの! 悪に屈しない、見て見ぬ振りをしない、最後の最後まで全うする! その意思を――貫くこと‼︎」

 

 

 

 

 ミヤコは壁に足をつけ、力一杯踏み込み壁を登った。そしてジャンプし、白ドレスを宙に浮かせる。自分だけは地面に着地し、白ドレスを引き寄せ手に力を込める。

 

 

 

 

 

「お前はもう、カイザーからもヴァルキューレからも許されない存在になったぞ…‼︎」

 

 

 

 

「だからどうしたんですか――ヴァルキューレだろうとカイザーだろうとかかってきて来い! 私は……私こそ!誇り高きSRTの生徒、月雪ミヤコだぁぁぁっっ‼︎」

 

 

 

 

「――よく言った」

 

 

 

地面に叩きつけるかのような拳を振い、白ドレスを地面へと倒れさせる。そしてロープを切り、通信機に連絡を入れる

 

 

 

 

「――目標確保、各日、撤退‼︎」

 

『――了解、リーダー‼︎』

 

『脱出ルートはもう確保済み! さあ、全員逃げちゃって〜‼︎』

 

 

 

 

隠してクローバー作戦は、ラビット小隊の勝利で幕を閉じた。彼女らは自分自身の力で……事件を解決したのであった。

 

 

 

 

 

 

「サオリさん、手を貸しますね」

 

「いや、いいさ。痛みが全て吹き飛んでしまった……感動でな」

 

「…ですね」

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

後日。

 

 

 キヴォトス全土で、ヴァルキューレとカイザーとの違法取引が明かされた。この事件により子ウサギタウンの建設は白紙となり、ヴァルキューレは幹部らが直接謝罪。

 

 

 ヴァルキューレ公安局の管理体制への懸念が増えていく中、なんとヴァルキューレ上層部のコレまでが何者かによって露呈、幹部らは正式に罪に問われることとなった。

 

 

 しかし公安局尾刃カンナは、それまでの功績や苦労が讃えられ、減額処分だけで済んだ。

 

 

 そしてコレら全ての責任である上官の、不知火カヤはと言うと…やはり、自分は何も知らないの一点張り……なのでリン会長代理からの名により、一時的な謹慎と減給、そして業務停止が命じられた。

 

 

 

 

 

 

「そしてコレを明らかにしたのは、廃校となった学園、SRT特殊学園。廃校となったのにも関わらず、己の正義を貫いた者達を連邦生徒会は認め――廃校を取り消すこととなった………そして、シャーレの傘下として、復活することが決定した………――イヤァ、めでたいなぁ‼︎」

 

「モエ、それもう何回目だ…良い加減こっちを手伝え」

 

「え〜そろそろサボっても良いんじゃない?私達頑張ったんだしさ」

 

「怪我人三人を労えって言ってるんだ!――いつっっ…」

 

「先生にみんなで勝つ前に……連邦生徒会から、SRTが復活するように言われちゃったね……」

 

「私たちは一時的なの謹慎で終わり……か」

 

「それで、FOX小隊は……行方知れず……」

 

 

 

 

 腕や足に包帯を巻き、顔に絆創膏などを貼っているラビット小隊。世間からの支持を得たSRTはまさに数多くいる味方を身につけた存在、なので連邦生徒会は復活させざるをおえなかった。 

 

 しかしデモを起こし迷惑をかけてしまったのは事実だったので、謹慎は食らってしまった――それでも彼女らは勝ったのだ、自らの運命に。

 

 

 

 

 

 

「……SRTのみんな、お礼を言ってくれたね。勝手に色々やった私達をちゃんと叱ってくれた後で」

 

「何だか、変な気分だったけどな」

 

「……………」

 

「ミヤコ、やっぱまだ体が変なの」

 

「………かもしれません」

 

「正確には?」

 

「……目的を果たしたはずなのに、何故でしょうか……スッキリとしないんです。達成感が……あまり」

 

「……え、ミヤコも?」

 

 

 

 

 その異変は、皆が同じだった。SRTを復活させたのに、公演に留まる理由はもう無くなったのに、勝ったのに彼女らは満たされている気分にはなれなかった。何かが欠けている……そう、彼が足りない。

 

 

 

 

「おっは〜」

 

「――先生‼︎」

 

「おい聞いたか先生‼︎私たちの活躍を!」

 

「私達自分の学園救っちゃったんだよ?」

 

「コレって自慢できること……です、よね?」

 

「勿論……お疲れ様、みんな」

 

 

 

 

 

 マッシュという存在が現れた瞬間、皆が彼に寄っていった。最初とは全く比べ物にならない程に、彼を受け入れていた。

 

 

 

 

「教えてくれたこと、全部うまくいったんだ!」

 

「怖がらずに、立ち向かえました‼︎」

 

「おかげ様で全部うまくいったよー」

 

「感謝しても、仕切れまさん」

 

「照れますな、えへへ」

 

「それで先生……残るは、先生を4人で倒すだけだよな?」

 

「……………………」

 

 

 

 

 マッシュは、何も言わず前に進み。自身のテントを片付け始めた…何をしているのか分からず、思わず彼に問いただすサキ。

 

 

 

「先生、なに、やってるんだ?」

 

「片付けだよ、もう、ここに残る理由はないからね」

 

「ま……待って待って、まだ私達、先生に勝ててないんだけど?私達いったじゃん、先生に勝たないとスッキリしないって…!」

 

「そうだね、でも君達はもうここに残る理由も無い。なら僕もここに残る理由はない。ブートキャンプは、コレで本当におしまいだよ」

 

「…………なんだ…それ、何なんだそれ。――何だよそれぇ‼︎」

 

「ちょ、サキ⁉︎」

 

 

 

 

 サキはマッシュの体を力一杯に引き寄せ、胸ぐらを掴んで彼に詰め寄る。その顔は怒りと悲しみが混じっていた。

 

 

 

 

「コレで終わりだって…⁇まだだ、まだ終わってない‼︎私達4人で、まだ勝ってないんだぞ⁉︎ なのになんで全部終わったみたいにいうんだ!」

 

「学園は復活した、そこに君達は通わなければいけない。だからここで暮らすのはダメだ」

 

「終わりだって言うのか⁉︎私達とお前との関係は! か、勝ち逃げもする気か‼︎ そんなこと許さないぞ‼︎ コレで、コレで………‼︎」

 

 

 

 

 サキ、彼女の瞳からは……一粒の、涙が流れていた。ラビット小隊のデモはもう何の意味もなくなり、やり続けることなんてしなくて良くなった……それはつまりデモーストレーションキャンプの閉鎖――マッシュとの生活が終わりを迎え、離れ離れになると言うことになる。

 

 

 

「コレで終わりだなんて……嫌だ……‼︎」

 

「……サキ」

 

「もっと教えてよ……もっと、もっとたくさん、学ばせてくれよ…‼︎ 私は…お前の、おかげで…‼︎――先生‼︎」

 

「……サキちゃん、あのね」

 

「SRTに戻ったら、もう先生とはしばらく会えなくなる……そっちの生活が忙しくなるから………先生も、元の生活に戻る――なら、今度は……いつ、会えるんだ」

 

「……永遠に会えないわけじゃ無いよ、いつか、絶対に会いに行く」

 

「いつかっていつだよ…! 私達と、先生の時間がコレで終わりだなんて…‼︎」

 

「サキ、それは違います」

 

 

 

 

 泣きじゃくるサキに、ミヤコは近づき、彼女の手を握る。これで終わりでは無い……その通りだ。

 

 

 

「このキャンプ生活は終わりを迎えますが、先生と私達の関係が終わるわけではありません。だって…先生は、このキヴォトスにいるんですよ? いつだって、会えるはずです……Sさんとも」

 

「ミヤコ……お前」

 

「それに、先生は色々な生徒を助けるって言う仕事を休んでまで私達のために時間を使ってくれたんです。もういい加減、皆さんに返して差し上げないと」

 

「………泣いてるのか、ミヤコ」

 

「………わがままをいつまでも、言っているわけにはいきませんから」

 

 

 

 

 

 サキに釣られるように、ミユやモエ、ミヤコも泣き始めていた。この時間が、みんなと過ごしたこの時間が消える……先生が側から離れる――仲間が、マッシュ・バーンデッドと言う仲間が遠くへと行ってしまう。それがたまらなく……悲しかった。

 

 

 

 

「だから今だけ……わがままを、言わせてください。SRTの生徒というのを忘れて…数分間だけ」

 

「――どうぞ」

 

「では、さっそく………――行っちゃやです、先生。離れないでください………側にいて‼︎」

 

 

 

 

 自分に正義を示してくれた、学園も救ってくれた、自分たちを精神的にも肉体的にも成長させてくれた……身も守ってくれた。そんな人をミヤコは尊敬していた、その尊敬している者とまた離れるのは、とても辛かった。

 

 

 

 

「離れたく無い、寂しい、不安……なのです。だから……行っちゃダメ……ウサギは寂しいと死んじゃうんです―――だから…行かないで…‼︎」

 

「………僕だって、離れたく無いよ。ここまで一緒に過ごしてきた友達と離れるのは、嫌だ……でも僕にはまだやるべきことが沢山あるんだ…だから、ごめん」

 

「――ぅぅゔうっっっ…!」

 

「でもこの時間だけは、君達の先生だ。だから――今だけ、どんなわがままでも聞くよ」

 

 

 

 

 マッシュの体へ、仲間達と共に抱きしめるラビット小隊。短い間、半強制的だったこの時間は彼女らにとってとても楽しく、とても辛く、とても悔しく、とても最高な…そんな時間だった。マッシュ・バーンデッド、彼も同じくだ。

 

 

 

 

 

「―勝負ならいつでも受けるよ、どんな物でも」

 

「グスッ…いっ、たな…‼︎約束は、守れよ!」

 

「勝手にいなくなったら、駄目だからね…‼︎ ヒグッ」

 

「うっ、うぅぅ…エグッ、グスンッ……うわぁぁぁぁぁ…‼︎」

 

「先生、私は……私、たちは‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方のような友達が、一番大好きです‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

正義とは己の意志、思いとは人をつなぐ鎖

 

 

 

 

運命とは自ら変えられる物、困難なものは、力づくで乗り越えられる

 

 

 

それら全てを教えた、教えられた一同の未来に暗闇はない。

 

 

 

 

小さな小さな子ウサギ達は、強くて立派なウサギになったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

カルバノグの兎編・一章・完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、新たな物語が始まるんです。しかし今はその時ではありませんね……幕を引きますよ――引いちゃうよ………先生」






次回、いよいよパヴァーヌ二章です……どうか、お楽しみに

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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