毎度のことながら思っているのですが、無表情キャラがボケるとなんであんなに面白いんでしょうね。
「ねえアロナちゃん、天才に勝つ方法ってやっぱ力尽くで押し切るしかないのかな」
『相手にもよると思いますが、
「頭脳戦に持ち込まれたら?」
『十中八九負けますね!!』
「元気よくはっきり言わないでよ、もう勢いがヤケクソじみてるときのノリだよそれ」
マッシュにとって最大の課題、それこそビッグシスター・調月リオとの対立。アロナが提供する調査情報が示すところでは、リオはなんとヒマリと同期だという。それだけで、マッシュはリオがかなりの強敵であることを確信した。
ヒマリについては、チェスで散々負かされた経験を介してその実力を知っている。マッシュが頭脳で勝てるわけないと自信満々に言えるほどなのだから……その同期こそ、例のビックシスター。
『先生、飛鳥馬トキさんについて調べて見たのですが…どうやら、彼女に関連する学籍情報などは独立した別のネットワークに保管されているみたいです。マッチするものが全然見つからず……手元にある情報では、C&Cに所属している16歳ということしか判明していません』
「実感薄いけど、そもそもC&C自体が極秘組織って言ってたしな……仕方ないか、調べてくれてありがとうね」
『いえいえ…ひ、久しぶりの出番ではしゃいだりしたわけじゃないですよ!?本当に!!』
「出番に関しては…ほら、アロナちゃんが有能すぎて使い処に困ってるって皆言ってるし……一応
『先生が強すぎるので、アロナちゃんがいらない子扱いされてないから心配で仕方なかったです…』
「安心して、ベアトリーチェやバルバラさんと戦ったときはすごく助かったから。もしいらない子扱いなんてする奴がいたら僕自身が直接出向いて泣くまで殴るよ」
『先生のそれはもはや死刑宣告では…?』
そんな会話を続けていた時、オフィスの扉が軽く叩かれた。誰だろうかと思いマッシュは扉の方へと向かい、ゆっくりと扉を開けた。
「完璧最強メイドのトキです。少し足が疲れてしまったので、ソファの上で横になってもよろしいでしょうか……あっ、ポテチも食べていいですか」
「がめつくない?」
「私は塩味を貰いますので、先生はこちらを」
「何これ」
「モモ味です。先生は甘いものが好きと聞いていたので」
「甘いのは好きだけどこれは無いでしょ」
「失礼します」
まさかのまさか、敵であるはずのトキが突然シャーレに現れオフィス内へと入ってきた。しかも菓子と漫画を持ちながら……メイド服でそれはいいのだろうか。
「あの、何しにきたのかな」
「自己紹介がまだでしたね。ミレニアムサイエンススクール、C&C所属、コールサイン04。飛鳥馬トキです。ついでに貴方の敵です」
「だよね?敵だよね?なんでここにいるのかな、リア凸ってやつかな」
「そういえば、シャーレでは無料でシュークリームが食べ放題と聞いたのですが。本当ですか?」
「話を適当に逸らさないで?あるけどさ、食べ放題ってほどじゃないけど」
「わーいです」
『先生、あの、この人なんか変です!』
「確かに、見た目と行動がまぁ合ってない……」
ソファに座り、うし塩味*1のポテチを開封し、ボリボリと当たり前のように食べるトキ。本当に見た目と行動が合ってない……そう思いつつも、マッシュはトキの隣に座るとともに、渡されたモモ味のポテチを開封する。
「…………まずい」
「やっぱりでしたか」
「やっぱりって何、わかってて買ってきたの?」
「先生は甘いものに目がない人だと聞いたので。ついでに何にでもカスタードを掛けて食べる狂人とも」
「それ多分別の人だよ」
「そうでしたか……それにしても先生は積極的ですね」
「はい?」
「私にそこまでとは……しかし申し訳ありません、私にはリオ会長が」
「違うからね?あと
マッシュは一度開封してしまったモモ味のポテチを無駄にしないためにも、トキにツッコむ傍らで消費していく。飛び出す発言はびっくり箱のようで、天然なのかギャグで言っているのかわからない。……無表情を保っている以上、これが彼女にとってのスタンダードなのだろうが。
「マッシュ先生、私は貴方と接触するようにとリオ会長から命じられ、ここに参りました。ちなみに極秘です」
「今目の前で本人に言っちゃったけどね」
「先生はとてもフレンドリーで、堅苦しいのが嫌いだと聞いていたので。ここではあえてフレンドリーに接してみました」
「それが素なんだね」
「私はどっちかと言うと白だしですね」
「君が言っているのは酢、僕が言っているのは素だよ」
「あっ、素数とかのやつですね」
「素朴とか率直のほうだよ」
立場が逆転し、生徒達の気持ちがわかったマッシュ。相手の行動が本当に読めないのは割と初めてだ、正確には予想と違いすぎるので色々と難しいようだった。
「ふぅ、そろそろ本題に入りますね。シュークリームありがとうございます」
「念のため聞いておくけど、僕を倒しにきたの?」
「いえ、今回はあくまでもお話をしにきただけです」
「……仲間になれっていうのなら、無理だよ。僕はアリスちゃんを守る方についたからね」
「そうでしょうね。先生は友達を殺害する、なんてことを許すわけがありません」
「……宣戦布告をしにきたのかな」
「――その通りです」
ほんの一瞬、トキの目が光ったかのように見えた。そして雰囲気も変わり、彼女から威圧を感じるようになった……しかもこの感覚は――ベアトリーチェ、つまりは魔法保有者の感覚。
「私はリオ会長の指示通り貴方を倒し、状況によっては半永久的に拘束します」
「今は違うんだね」
「まだ会長から戦闘と拘束の許可を得ていないので」
「リオさんのこと大好きなんだね」
「好き……なのでしょうか、そこはあまりわかりませんが――彼女の味方は、私だけなのです。彼女の理解者は私だけ、だから守るんです」
「……成程」
覚悟が決まっている目、それは何度も見てきたがトキもそれと同じだった。本気でお前を倒してやる……そんな思いが直で伝わってきていた。
「私は別に貴方のことが嫌いなわけではありませんし、アリスを破壊すること自体もいいこととは思っていません。……でも、リオ会長はそう望んでいる、なら私はそれに従うだけです」
「……手加減はできないよ」
「嘘ですね。貴方は生徒相手だと弱くなる、デカグラマトンや崇高な魔女との決戦の時とははるかに違いますので」
「勝てるっていう自信があるのかな」
「あります、私には……これがありますので」
トキは持ってきていた一冊の漫画を手に取り、それをマッシュに向かって投げる。それを彼は受け止めようとするが――次の瞬間、その本は突然勢いよく彼の胸に向かって飛んできた。
「!」パシッ!
「それは差し上げます。ちょっとした祝い品です」
「……今、何が?」
「私は負ける気はありません。私の命尽きるまで、会長からの指示があるまで」
「……」
「―お話は以上です。最後にこれを」
そう言ってトキは一枚の紙を彼に渡す。内容はリオが直接書いた時間表……明後日の昼、12:00にミレニアムに来るように書かれていた。
「……最後に一つだけよろしいでしょうか」
「何かな」
「先生はリオ会長とアリス、どちらを助ける気なのですか」
「どっちもだよ。そこは絶対だ」
「世界の命運がかかっていてもですか」
「ならついでに世界も救うよ」
「……傲慢ですね」
「傲慢上等」
マッシュはトキの目をしっかりと見て、力強く宣言した。先生としてでは無い――マッシュ・バーンデッドという人間として
「全部救ってハッピーエンドに持っていく。できなかった時、それは僕が死んじゃった時だ」
「………その決断は、いつか必ず自分を死に追いやりますよ」
「僕、死なないので」
「……それでは」
トキはそう言ってその場から消えた、しかもほんの一瞬でオフィスからシャーレの外まで歩いていた……異常だ。
「…まさか、◯タンド?」
『絶対に魔法ですよ』
「だよね……早速現れちゃったか」
魔法を使う強敵、ここにきてから二度目だが――関係ない。
「どんな魔法でも、筋肉で倒してやりますよ」
『先生、その意気です!』
彼はいつも通り――その肉体で勝利を掴み取るのだ。
次回、いよいよご対面です。
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