透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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⚠︎色々ツッコミどころがありますが,いつもの感じで乗り越えてください。



マッシュ・バーンデッドとアビ・エシェフ

 

 

 

「――はぁ!?もうあいつらやり合うのかよ!」

 

「想定以上に会長の踏み切りが早かったようです。先生が使っているシッテムの箱からの連絡で今わかりました」

 

「えーでもそれおかしくない?ご主人様って、わざわざ『ここで戦います!』って連絡するタイプとは思えないんだけど」

 

「確かに……先生はいつも勝手に戦って勝手に終わらせるタイプで、助けを求めるっていうのもあんまりしないし」

 

「それはやめようねって言ってるんだけどなぁ〜」

 

「アスナ先輩、目が、目が笑ってない」

 

 

 

 

 

 場面は変わり、C&Cの4名が集まった場。先ほどアカネの端末には、シッテムの箱を通じてマッシュからの連絡が入った。内容は、トキ及びリオとの本格的な交戦開始を伝えるもの。だが彼女たちはこれまでの経験から、マッシュが戦いの始まりを自分から連絡するものとは思っていなかった。

 

 

 

 

 

「……これが事実だった場合、少し心配ですね……相手の方が」

 

「先生が相手だからな」

 

 

 

 

 彼女らが心配しているのはトキについて、何度か顔を合わせ少しだけ話したこともあるが、任務において共に行動したことはない。しかし後輩である以上、あのマッシュを敵に回すような戦いをするともなれば心配もする。

 

 

 

 

「……アスナ、心配なら様子見に行ったっていいんだぞ」

 

「んーん、大丈夫。ご主人様の邪魔しちゃ悪いでしょ? そう言うリーダーはいいの?」

 

「気になんのは事実だ。トキも、先生の奴も……けど今は、それよりもチビ達の身の安全が一番だ」

 

「そうですね……ではリーダー?」

 

 

 

 

 アカネはネルの両肩を持ち、ゆっくりと彼女をゲーム開発部の部室の方へと押していく。

 

 

 

 

「次はリーダーがテストプレイをする番なので、頑張ってくださいね♪」

 

「アスナ、やっぱ先生んとこ行くぞ」

 

「リーダー逃げちゃダメだ。2回も変わってあげんだから、3回目くらいちゃんとして」

 

「あれはもうテストプレイじゃなくて拷問なんだよ!!何で即死が50もあんだよ!!ゲーム性どうなってんだ!!?」

 

「最後まで付き合うって言ったのリーダーだし」

 

「それに、今の私たちは今ゲーム開発部の体験入部者……つまり彼女らの後輩に当たりますので、言うことは聞かないと」

 

「だぁぁぁちくしょぅぅ!やってやらぁ!」

 

 

 

 

 

 今のC&Cはゲーム開発部の体験入部者扱いであり、モモイ達は皆先輩としての立場になる。入部時、「チビたちの言うことに従ってもいい」とネル本人が言ってしまったので仕方ない。

 

 

 

 

(――でも何だろう、嫌な予感がする………あぁ嫌だなぁ………)    

 

 

 

アスナだけは、内心全く穏やかではなかった。不穏な予感がしたのだ……ただ事ではない予感が。

 

 

 

 

 

―――そしてアスナの予感は、いつも的中する。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「先生は戦闘において裸になると聞いていたのですが、アレは嘘だったんですね」

 

「どこの情報なのそれ」

 

 

 

 

 風が吹き渡るアスファルトの上では、黒いトレーニー姿のマッシュと、レオタード状の青いインナーを纏ったトキが向かい合っていた。そして互いに

 

 

 

 

((寒くないのかな))

 

 

 

 そう思っていた。「人の振り見て我が振り直せ」とはよく言ったもので,自分の格好は寒く思わないのかとツッコミを入れたくなる。

 

 

 

 

「先生はその状態のまま闘うのですね」

 

「……トキちゃんは違うの?」

 

「はい、私は―─こちらを使わせてもらいます。呼出信号、確認」

 

 

 

 トキが合図を行うとともに、空から白い角柱状の『何か』が、アスファルトを抉りながら降ってきた。その中に入っていたのは、メカメカしい装備。

 腕部と脚部が折りたたまれ、装着者の受け入れを待つパワードスーツだった。トキは箱状のスーツに設けられた空洞内に体を収め、コクピットインターフェースを起動する。

 

 

 

 

『トキ、一時的に例の都市(エリドゥ)全域の電力と演算機能を集中運用するわ。思う存分戦いなさい』

 

「了解しました」スッ

 

「おお、かっこいい……いいな、僕もそういうの使ってみたい」

 

 

 

 

 トキが、起動したパワードスーツを立ち上げた。両腕には三連ガトリングガンを備え、主砲として大出力レーザー砲を備えた強化外骨格が起動する。鎧のようにパワードスーツを纏った姿は、まさしく戦姫そのものだった。

 

 

 

 

《アビ・エシュフ、移行》

 

「タクティカル・パワードスーツ・システム『アビ・エシュフ』・対AL-1S/対マッシュ・バーンデッド両用戦仕様、Modification.46-beta……先生、構えてください」

 

M I L L E N N I U M S C I E N C E S C H O O L
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TOKI & ABI ESHUH mod.46 beta
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 マッシュはボクシングのようなファイティングポーズを取り、いつでも動けるようにトキを睨む。そして予想通り、トキが右腕のガトリングガンを彼に向け、発砲した──

 
──その瞬間のことだった。

 

 

 

 

 

「───―!?」

 

 

 

 マッシュは弾丸を弾くのではなく、横にスライドするように飛び、弾幕を回避した。弾速が桁違いで、所見では対応しきれなかったのだ。

 異常に速い弾速に加え、発射速度も尋常ではない。いつものように防御していれば、ボロ雑巾のように引き裂かれていたかも知れなかった。

 

 

 

 

(今……弾速が、急に早くなった……そんな力があの装備に)

 

「先生――貴方の勝率は、現在70%」ビュッ!

 

「…!」

 

「しかし……じきに0になるでしょう」

 

 

 

 

 スラスターとブースターが青い光を放ち、機体を急加速させる。速度を得たアビ・エシュフは、マッシュの周りを旋回しながらガトリングガンを掃射した。

 マッシュはそれをバク転しながら回避し、トキの動きに追従するように走り続ける。速度と機動性は恐らく互角、空中戦能力ではミカを超えるようだ。

 

 

 

 

「……(ついてきますか)」

 

「追いつく」

 

「であれば」

 

 

 

 

 トキは機体姿勢を反転させてから再びブースターを起動し、バック飛行を行う形で両腕のガトリングガンを猛射。弾速、発射速度、射数の全てが桁違いの攻撃を、マッシュは全力で弾きながら回避し続ける。

 AL-1S(アリス)をはじめとする外部からの脅威に対抗するべく開発された弾薬は、マッシュがこれまで感覚的に特性を把握してきた一般的な弾薬とは全く異なるものだった。
 威力の面で考えれば、かつてのアリウスがマッシュを倒すために使った特殊弾にも匹敵するかもしれない。

 

 

 

 

「――右、上」

 

「!」

 

「そう動こうとしましたね」

 

「またこのパターン……未来予知って、そうポンポンしていいことじゃないと思うんだけどなぁ」

 

 

 

 

 ここで、アビ・エシュフが持つもう一つの技能がマッシュを阻む。マッシュは攻撃を回避しつつ右へのサイドステップを行ってから、距離を詰めてトキを直接攻撃するつもりだった。

 しかし、アビ・エシュフはその膨大な演算リソースによってマッシュの行動を予期、攻撃への早期警戒を行ったのである。

 

 

 

 

「フンッ────」

 
「望むところです────シャマール、展開します

 

近接攻撃兵器システム CQWS-808 "Šamāl(シャマール)"

 

「待ってそれは聞いてない」

 

 

 

 トキのガラ空きの体へ向けて拳を放った瞬間、アビ・エシュフの右腕が突如として変形し、五本指のマニピュレーターが出現した。動き出した右手は、機体背面に仕込まれていた『シャマール』の名を持つ武器───5m近い柄の長さを持った超大型ハンマーアックスを掴み取る。

 マッシュの右拳がトキに接触する瞬間、トキを守るように振り下ろされた刃がマッシュの拳と衝突し、激しい火花と稲妻を散らした。刃渡り2m近いそれは、マッシュの拳を打ち込まれてもなお僅かな歪みを生む気配すら見せない。

 

 

 

 

「接近戦苦手な感じだと思ってたんだけど―─ぶねっ……」

 

「この兵器の弱点は、その小回りの効かない取り回しの悪さ。確かに、先生が得意とする近接戦に対応できないことは事実です。なら、それに対応した専用の武器を作れば良いのです……それこそ、リオ会長の見解」

 

「僕の戦い方にそこまで向き合ってくれるなら、正面から叩き壊すのみ」

 

 

 

 

 

 トキは出力に物を言わせてアックスを振り抜き、マッシュを吹き飛ばす。

 パリィされて後方へ飛ばされたマッシュは、放物線を描いて着地した直後、地面を抉るほどの踏み込みを行って急発進。トキに向かって、容赦のないミドルキックを行う。トキはその蹴りに向かって、突き出された脚にシャマールを挟んで防御した。

 

 

 

 

「言ったはずですよ。いわばこれは、先生を倒すために用意された格闘戦専用の武器です。貴方の拳の強度を計算し、その強度とほぼ同じ強度を持つように作り上げたのが―」

 

(――待ってよくみたら、刃の部分がチェーンソーみたいだ)

 

「この『シャマール』です」

 

 

 

 

 切り裂くような金属音が聞こえると同時に、トキとマッシュの体が弾かれたかのように吹き飛ぶ。刃に足が接触する瞬間、マッシュがもう一本の足で喧嘩蹴りを放ったのだ。

 飛び退いたマッシュは土埃を払って、再びアビ・エシュフに向き直った。

 

 

 

 

「よく、そんな強度に仕上げられましたね」

 

「新素材開発部の皆さんが先生に憧れて作った素材を元手にしたそうですよ」

 

「……流石だ」

 

「それよりも、その足は平気なのでしょうか。すぐに止血することをおすすめしますが」

 

「ご心配ありがとう……でも、まだ脛を切っただけだよ。自分で止められる」

 

 

 

 

 マッシュの足が刃に裂かれ、傷から血が溢れ出した。マッシュの肉体に傷をつけるほどの兵器……連邦生徒会が存在を認識し、しかもそれが個人の横領によって製造された兵器だと知れば大事ではすまないであろう。

 マッシュは一度地面を殴るとともに、砕けた地盤の破片を掴み取った。マッシュはその瓦礫を、矢継ぎ早にトキめがけて投げ続けた。

 

 

 

 

「!」

 

「なれば」

 

 

 

 

 しかし、投げた破片や石礫はガトリング砲で粉微塵に破砕されてしまう。マッシュは再び地面を殴りつけて腕を突き入れると、今度は地面そのものをめくり上げてアビ・エシュフを巻き込もうとするが、その前に主砲であるビームでめくり上げた地面が破壊される。

 

 

 

 

 

「―ハムストリング魔法」

 

「ビックバンダッシュ、それはもうデータベースにインプット済みです」

 

 

 

 

 マッシュがビックバンダッシュを構えた瞬間、彼の体を覆うほどの大径のビームが放たれた。マッシュはやむなくクラウチングスタートの構えを取りやめて回避に移り、次の技へと移行する。

 

 

 

 

「トライセップス魔法・バリスタナックル」

 

「それも予想済みです」

 

 

 

 

 走り込み,全体重を乗せたパンチをトキに喰らわせようとするが,トキは右手のアックスで地面を大きく切り裂き、そのまま瓦礫を彼に向けて蹴り飛ばした。

 

 そしてそこにガトリングガンを発射する。致し方なしにそのまま瓦礫をタックルで破壊し、そのままガトリング砲の弾列を拳で弾き続けながら前へと進む。

 

 

 

 

 

「―――それ伸びるんだ」

 

「シャマールの刃先はチェーンにより伸びます」

 

 

 

 

 トキはシャマールの柄の中に仕込まれたチェーンを引き出し、刃をモーニングスターの勢いで振り回しながらマッシュの足場を粉砕、動きを封じていく。

 ならばとばかりにマッシュはトキの背後に回り、お得意のバックドロップを叩き込もうとするが───

 

 

 

 

「――ビームが凄い邪魔」

 

「計算するまでもなかったことですね」

 

 

 

 

 ビーム砲とガトリング砲がその先行きを薙ぎ払うような掃射と照射で阻んだことで、マッシュはアビ・エシュフの腰部関節を掴み取るには至らず、そのままブースターからの噴射炎を直接噴きつけられた。

 トレーニングウェアが焦げて軽い熱傷を受けたものの、その肉体にほとんどダメージは無かった……いや、正確に言うならば、内面的に相当なショックを受けていた。

 

 

 

 

 

「全部読まれてる……僕の技を、全部」

 

『当然よ、私たちは見ていたのよ。貴方の戦いを』

 

「ドローン……僕のことをずっと追い回してきた黒い奴がありましたけど。あれって、リオさんのだったのか」

 

『貴方の技、動き…それらの全てをシミュレーションし、トキ自身も膨大なトレーニングを行った……もうわかったかしら、先生。貴方の取りうる行動は、トキには絶対に通用しないの』

 

「アンリミデット・フィジカルモードは絶対に使わせません。腕輪に手をかけた瞬間、問答無用で貴方を消します」

 

「それまで?……こ『うなったらとにかく攻めまくるのも、未来予知演算で既に予測済みです。"鉄の杖"の対処手段も把握・確立済みです』――流石にまずいな」

 

「えぇ。とことんまで私達は勝率を引き上げました。貴方に打ち勝つために」

 

 

 

 

 何千手も先を読まれに読まれ、何をしても即座に対処・封止されるとわかってしまったマッシュ。少しピンチ……しかし彼がピンチに陥っている原因は他にもあった。それは彼の優しさ

 

 

 

 

(……やはりね、他脅威との戦闘データと,今回の戦闘データが合致しない。本当の力を出せていないのね……アビドスの頃とは大違い、貴方はここにきてから手加減を、先生としての立場に大きく影響されてしまった――そんな貴方では、トキには勝てないわ)

 

 

 

 

 相手が生徒なのだから手加減をしてしまう点、過去にレグロの肩を壊してしまった経験。生徒との戦いにおいて、その意識がいつも頭によぎり、無意識に彼は力をセーブしてしまう……それをリオは見抜いていた。

 

 

 

「先生、戦闘を続行してください」

 

「……一つだけ聞いてもいいかな」

 

「何でしょうか」

 

「トキちゃんやリオさんはゲームってやったことありますか?特に格ゲーとか」 

 

「……いえ」

 

『ゲームなんてやってる暇は無いわ』

 

「そっか―――なら安心だ」

 

 

 

 

 確かにマッシュは手加減をしてしまっている、そして動きも読まれている……そんな相手の対処――それは一つ、予測できても回避できない動き,もしくはデータにない動きをすれば良いのだ。

 

 

 

 

 

『フルマスクルズ魔法・ゲーミングパワーモード』

 

 

 

「ゲームの動きを真似する、あの戦い方ですか……先生、残念ながらそれも──」

 

 

 

「キャラクター選択――ダルジム」

 

「────ッ!?」『一体、何を──!?』

 

 

 

 マッシュの額に赤いバンダナが巻かれた。その直後、彼の動きと雰囲気が変わり、まるで舞踊のような動きを取り始める。データには全くない動き……だが、予測演算は決して不可能ではない。

 

 

 

 

『トキ、冷静にモニターを……………は?』

 

「――なん、ですか、この……結果は…」

 

「ヨーガの奇跡をお見せしよう」

 

 

 

 

 しかしその演算結果があまりにも信じられなかった、まず一撃目、両手を合わせたパンチ―されど伸びたパンチ。

 

 

 

「ヨガランス」

 

「っ⁉︎」

 

『腕が……伸び……‼︎』

 

「対処…‼︎」

 

 

 

 両腕が捩れながらゴムのように勢いよく伸び、まるで槍のような鋭さのパンチが繰り出される。トキはそれを演算し横に回避、すると今度はその腕が横に出される。

 

 

 

(腕が伸びる……結果だなんて――どうなってるんですか…これは! 次の動きは……っ⁉︎)

 

「からの合掌キック」

 

「シャマール展開──」

 

 

 

 続いて伸ばされた足を狙ってシャマールで切り付けるも、足が刃を避けるように曲がり、攻撃が虚空を素通りする。さらにマッシュは両手を合わせ、勢いよく回転しながら頭突きを行ってくる。

 

 

 

「ドリル頭突き」

 

(対象速度、時速1154km──馬鹿な、AG(空対地)(ミサイル)と同じ速度……!?)

 

 

 

 先読みによけ,その頭に向かってガトリングガンを発射するも全て弾かれた。その頭突きの速度はまさしくミサイル、空中戦は不利と判断し地面へと降りる。

 

 

 

「それは――一体何の力なのですか、一体どんな細工をすればそんな芸当が…!?」

 

「格ゲーのキャラにいるんですよ,ヨガを駆使して戦うキャラが」

 

『ヨガってそういう物じゃないでしょ!?あくまでもそれは創作上の話よ、現実でやるものじゃないわ!!!』

 

「痛くないのですか…?だいぶ無理のある動き方ですが…」

 

「すごく痛いよ、関節無理やり外してるもんで」

 

『でしょうね!!』

 

「けどまぁ――これでやれるのならモーマンタイ」

 

『トキ!!今までのデータをこっちから送る、脅威評価を再導出してそれを元に対処を!!』

 

「……了解!」

 

 

 

 

 マッシュはとんでもない痛みを我慢しながらも両腕の関節を外し、そのまま鞭のようにしならせながらラッシュを繰り出した。対するトキは、モーニングスターの勢いでシャマールの刃を振り回してラッシュを行う。

 

 

 

 

(っ、駄目…!あのままでは、AI側の演算能力に限界がくる!)

 

「未来を読む能力があるのなら、読む暇を与えない。それと同時に、読んだところでどうしようもない技を出せばいい。どっちもやらなきゃいけないのって、先生の辛いところだよね」

 

(一体何の話を……!?───いや、今はそれどころじゃない!迎撃に主砲を――いや、この射角と距離では使えない…!!)

 

「使えばその瞬間ズームパンチが飛んできますよ」

 

 

 

 

 連打に次ぐ連打にいよいよトキは押され始め、AI側にもその処理速度や演算による予測可能範囲が限界に達しつつあった。同時にマッシュの腕にも関節を強引に外した限界が近づいていたこともあり――ここで、終わらせることを決める。

 

 

 

 

「隙あり」

 

(両腕の装備が――いえ、まだです…まだ―)

 

「キャラクター選択――闘鬼

 

「!?」

 

 

 

 

 マッシュから一味も二味も変わったオーラが見えた瞬間、彼は腰を落として大股で構えた後、片足を上げて拳を前に構えたまま、滑走するように残像を描きながら前後に移動を開始した。

 トキはHMDを介してマッシュの姿を捉え、接触に備えてシャマールを構える。
 しかし、その瞬間にレーダー上とHMDにリンクするセンサーの全てから、マッシュの反応が途絶えた。つまり、彼が消えた────と思った、次の瞬間。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

バギャバギャギャギャァァァッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そんなっ……何…が……」

 

 

 

 

 トキの頭を揺さぶる衝撃とともに、『ERROR』のメッセージウィンドウに埋め尽くされた視界がひっくり返り、アビ・エシュフが破壊された。完全な破壊による擱座には至らなかったものの、主砲とブースター部分のほとんどが使い物にならなくなっていた。その瞬間のマッシュの姿を、リオは見ていた。

 

 

 

 

(……見えた、私は……先生の体が一瞬だけ不鮮明化し、消えたと思った次の瞬間──)

 

 

 

 

 

【一瞬千撃】

 

 

 

 

 

(その技名と同時に……アビ・エシェフの演算能力を超える勢いで動きながら、千を超える打撃を繰り出した――――――どういうこと?)

 

 

 

 

 ミレニアムの生徒会長といえど、マッシュの攻撃方法は理解し難かった。ゲームのキャラの動き、それを強引に再現するという現実離れした所業を前にしては、誰も予測はできないし対処もできない。

 

 

 

 

「流石に背中に天って文字は出ないか,出たら怖いや」

 

「……………認めません」

 

「あれ普通に立ち上がった」

 

「ゲームなんかに……負けるなんて,認めません。」

 

「……?」

 

「――会長のアビ・エシェフが負けるなど……認めません……!!」

 

『……トキ――トキ、待ちなさい!それはまだダメよ!』

 

 

 

 

 トキはボロボロのアビ・エシュフを動かしながら,何かの動作を行う。するとアビ・エシュフ自体が青白く不気味な光を放った。

 

 

 

 

「先生、先ほどのガトリングガンですが……それには、ある細工をしていました」

 

「やっぱりか」

 

「それは――私の魔法です」

 

「……おっと」

 

「そしてこれから行う事……それはネル先輩もできない、私だけの力――私だけの魔法!!」

 

『トキ、聞きなさい!それはまだ成功したことがないでしょう!?それを使うことは私が許さない……聞いているのトキ!?これは命令よ!!』

 

「申し訳ありません会長、もうこれしか方法はないのです。――アビ・エシュフ」

 

『やめなさい‼︎』

 

「!」ダッ!

 

 

 

 

 

 

『フェイズシフト、アーマーパージ!』

 

 

 

 

 その掛け声と共に、弾けたように飛び散るアビ・エシュフ。そして青白い光は空高くまで登り、落雷に似た電撃がトキの元へと落ちた。

 

 

 

 

 

「――アビ・エシュフ、その一部の装備を除く全てをパージし……一部の装甲のみを武装として装備する」

 

「………なんじゃこれ」

 

「そして私自身の神秘……いえ、魔法であるソニックズ、これを利用してできる形態」

 

 

 

 

 

 トキの容姿はインナー部以外の四肢に軽装備を纏い、顔にくっきりと黒い線──魔法のアザを出している状態だった。そして2人を囲うようにして廃墟の建造物が崩れ、地盤に隠されていた設備が変形し、まるでサーキットのような空間が構築されていく。

 

 

 

 

 

「ソニックス・セコンズ────デッドリー・ハイウェイ」

 

「名前かっこよ……というか、周りがいつの間にかレース場になってる。どっかの漫画で読んだ『領域展開』ってやつに似てるけど」

 

「先生……いえ――マッシュ・バーンデッド。貴方はもう――私に追いつけません」

 

 

 

 

 

 

 冷徹に言い放ったトキは、マッシュが構えをとった瞬間に駆け出し──

 

 

 

 

 

「――そしてもう、互いの姿を見ることはないでしょう」

 

「――――ぉっ」

 

 

 

 

彼の顔前に、固く握られた音速の拳を突きつけた。






予告で登場させなかったのは,こういうことです……ばーん‼︎

魔法が使えるキャラをガンガン増やしていくわけではありませんが,とりあえずは1人目です。ぶっちゃけるとこれがやりたかったのでこの作品を作り始めまたした

百花繚乱後に見たい話

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