透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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リアルがキツい!!しかも外が寒い!!家の暖房がぶっ壊れた!今年って厄年なのかな……私。

まあそんなことはどうでもいいので、本編へ、レッツゴー!!


なんか正義実現委員会のストーリーというか、ツルギさんとのストーリーみたいになってしまった。


マッシュ・バーンデッドと正義実現委員会【後編】

 

前回のあらすじ

 

 

1.トリニティ総合学園を訪れたマッシュは、謎の白い仮面を着けた集団と交戦、(一方的に)鎮圧した。

 

 

2.応援要請を受けて駆けつけたツルギがマッシュを発見、彼を敵と誤認して両者の衝突が発生した。

 

 

3.マッシュはツルギを制圧して勝利したが、直後に仮面集団が不意打ちを狙って手榴弾を投げたため、マッシュが身を挺してツルギを爆発から守った。しかし羞恥心が昂ったツルギは、マッシュにアッパーカットを叩き込んでしまった。

 

 

……そして、現在。強烈なアッパーカットによる脳への悪影響を心配されたマッシュは、正義実現委員会の部員たちに連れられ、トリニティ最大の医療機関・救護騎士団が運営する聖テレサ病院へと足を運んだ。

 

 

 


 

 

 

 

救護騎士団

 

 

 トリニティ総合学園に数ある部活の一つにして、正義実現委員会やシスターフッドに並ぶ一大組織。学園内で傷病を負った生徒の治療や救護活動を行う、トリニティ最大の医療機関である。

 

 仕事柄、生傷の絶えない正義実現委員会や、トリニティ自警団の部員の治療を行うことが多い他、ある理由(団長の救護)によって伸された不良生徒や問題児が病床に運ばれることも少なくないという。

 

 

 マッシュは救護騎士団が活動拠点とする病院に連れられ、顎の打撲傷の治療を受けることとなった。

 

 

 

 

「これで……よし、もう大丈夫ですよ」

 

「ありがとう……えっと、セリカちゃん?」

 

「セリナです、鷲見(すみ)セリナ」

 

「あ、ごめんね」

 

 

 

 

 マッシュを治したのは、おさげのように垂れた羽根がチャームポイントの団員・鷲見(すみ)セリナ。彼女は処置を施したマッシュに向き直ると、彼の顔から爪先までを眺めてから、彼の来訪からずっと抱いていた疑問を口にした。

 

 

 

 

 

「……本当にツルギさんと戦ったんですか?」

 

「うん。それがどうかしたの?」

 

「ツルギさんと戦って、これで済んでいるなんて…ましてや、ヘイローを持たない外来の方がこの程度の傷なんて、正直信じられないんです……今までツルギさんと戦ってきた方は基本的に例外なく"潰れた空缶"みたいになるまで叩きのめされますし、救助された人の中にはPTSDを発症してしまう方もいらっしゃったので

 

「ひえ」

 

 

 

 

『よく自分は無事だったな』と、改めて自分の体の頑丈さに感謝したマッシュ。そのあとはセリナを含む部員たちに感謝を告げて回り、差し入れとしてシュークリームを渡して病院を後にした。

 

 

 

 

「……あれ、もしかして懐から直で渡してきました⁉ 先生、それは衛生上──ってもういないし‼」

 

 

 

 

 医療職という身の上、彼に注意をしようとしたセリナだったが、それよりも先にマッシュは病院を後にしていた。行き先は、正義実現委員会の部室である。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「え〜と……? …じゃ報告まとめますけど、白仮面集団と戦っていた君らを助けたのがあの先生で……落ちてきた看板を掴んで、それを投擲して敵戦車を破壊した。敵の銃撃を拳で弾いて無力化し、敵が所持していた武器を素手で握り潰した…

 

「……嘘、ではないですよね?」

 

「はい!この目で見ました!」

 

「まあ、あの先生ならその程度、造作もないと思いますが…」

 

「なんで納得してるんすか」

 

「少し前に話しましたよね?素手で戦車を破壊した先生がいたって」

 

「あれまじだったんすね……」

 

 

 

 

 

 正義実現委員会の2年生・仲正(なかまさ)イチカは、後輩への聴取によって判明したマッシュの所業の数々に驚かされ、これからまとめる報告書の内容をどうするか苦心していた。

 

 

 同じく正義実現委員会1年生の静山(しずやま)マシロも、キヴォトス屈指の強豪たちと大差ない所業を当たり前のように素手で成し遂げているマッシュに対して、驚愕と疑問を隠せない。

 

 

 

 

「ヘイローも持っていない先生が…なぜ戦えていたんですか?」

 

「まあ、あの方(人間兵器)ですし………ツルギ、先生なら許してくれるでしょうから、そんなに落ち込まなくてもいいはずです」

 

「…何故そう言える? 勘違いで、私はあの人を撃ったんだ…いくら強いとはいえ、ヘイローを持たない人…それも、シャーレの先生を……そっ……

 

「そ?」

 

「……そ……そそそそれに…わた、わたわたわたわたししししししは、あの、あのあの人の手を、握って…体も見て―そ、それで――あ、アッパー‼…カットをして……あぅぅ…///

 

「んー相変わらず乙女っすね先輩……でもどうします?ハスミ先輩はそう言ってますけど、どんなに優しくたって、自分を敵扱いして撃ってきた相手をそう簡単に許すと思えないんすけど」

 

「…………」

 

「いや、おそらくあの先生なら―──おや?」

 

 

 

 

 シャーレに対して菓子折り(シュークリーム詰め合わせ)とともに謝罪に向かうべきか、と彼女たちが考え始めたその時、部室の扉が当然揺れ出す。部員が地震や強風の発生を疑い始める中、その扉は予想外の形で破られた。

 

 

 

 

バギァッ‼‼

 

 

『‼‼⁉??』

 

 

 

 

 入ってきたのは、マッシュだった。顎に絆創膏を貼りつけた彼は、壊した扉を両手に持ちながら部室に踏み込み、当たり前のように話し出す。

 

 

 

 

「やっと開いた」

 

「"壊した"の間違いですよね⁉」

 

「なんで壊してきたんすか‼」

 

「押し戸が引き戸かわからなくって」

 

「だからって壊すことはないじゃないですか!」

 

「……ごめん、すぐに直すよ、ごめんね」

 

「……え…いや、反省してくれてるならいいんすけど……なんかびっくりするくらい素直っすねぇ……」

 

 

 

 

 マッシュは瞬く間に外した扉を修繕すると*1、マッシュは持ってきたバッグを手に提げて部室に入り、ツルギ達の前へと座った。

 

 

 

 

「先生、まずは謝罪を……この度はツルギが」

 

「別に謝らなくてもいいですよ?」

 

「…え」

 

「だって、ツルギさんは後輩の皆を助けようとして行動したんですよね?」

 

「…はい」

 

「ツルギさんは自分の仕事をしただけなんだから、気にしなくてもいいですよ。紛らわしい格好して皆さんの後輩を泣き止ませようとした僕も間違ってましたし」

 

 

 

 

 

 マッシュは真顔できっぱりと言った。マッシュも自身の浅慮を反省し、不審な格好をしていた自分にも非があるものと認識しているため、正義実現委員会に対する不満はない。

 彼の負傷も小さなものであったため、既に終わった件として水に流すことにしていた。

 

 

 

 

「あ、それよりもシュークリーム食べます?」

 

「なんでシューク……今バッグから直で出しました?

 

「味は色々ありますよ」

 

「そこじゃなくてですね!?」

 

「はい君達にも」

 

「わ〜〜い!」「あ、ありがとうございます!」「しゅ、しゅーくりーむだぁ!」

 

「私らの後輩をもう手懐けてる…」

 

「10個ください」

 

「ちょっと先輩‼⁉」

 

「あーダメっすね、副委員長もスイーツに目がないんで……もう目がシュークリームみたいになってるっす」

 

 

 

 

 部員達に続きハスミまでもがシュークリームを食べ始め、イチカとマシロもある意味の社交辞令として、彼女たちに倣ってシュークリームを受け取る。 

 

 

 

 

「え…ぇ…ぇぇ…と…」

 

 

 

 ツルギはわたわたと困惑しながら、どう謝るか思考を巡らせる。許してくれたとはいえ、一度は勘違いで殴りかかった相手。更には助けてくれたにも関わらず、その顎を打ち上げるという非礼を働いてしまった。どのような言葉をかけるべきか、どう振る舞うべきか、ツルギには取るべき行動が見つからない。

 

 

 

 

(ど、どどど…どどどどう…しよう!!私も一緒に食べる…?私が?顎を殴った私が?いやいやでも、気にしないでって言ってくれたし……けど…けどぉ…勘違いで怪我もさせちゃったし……あの中に私が混ざるのも)

 

 

 

 あたふたと手を合わせながら慌てているツルギを見て、マッシュはシュークリームを一つ手に取ると、ツルギの眼前まで歩み寄った。

 

 

 

「ツルギさんも食べませんか?」

 

「え⁉―いや、わ、わた…わたしは…」

 

「別にもう気にして無いですし、どうぞ」

 

「………どうして、そこまで割り切れるんですか?…あそこまで暴れた…怖い人間に…」

 

「『終わったことをいつまでもグチグチ言うのは良くないぞ〜』ってじいちゃんが言ってましたし、それにツルギさんは───」

 

「…私は?」

 

「悪い人でもなければ、怖い人でもないですよ。優しくてしっかりしてる先輩、それがツルギさんだと僕は思います」

 

「―─……―─…………」

 

「それでも割り切れないって言うのなら…このシュークリームが仲直りの証だと思ってください、どうぞ」

 

 

 

 

 ツルギはマッシュからシュークリームを受け取ると、シュー皮を一口かじる。そして食べた瞬間

 

 

 

「〜〜〜〜!」

 

 

 

狂気的に貼り付けた普段の狂笑とは異なる、感動した乙女の顔を見せた。彼女と出会って初めて、ツルギの本当の姿ともいえる表情を見たマッシュは──

 

 

 

 

「いい笑顔、してますね」

 

 

 

世辞を抜きに、ツルギの笑顔を褒めた。

 マッシュの発言を聞かされたハスミ達は、「この人…素で?」とばかりに女誑しの気質を感じ取り、当のツルギは───

 

 

「―き―きひ―キヒヒャャ⁉??////

 

「あ、戻った」

 

 

 

これまでの顔に戻った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 バッグに詰め込まれていたシュークリームを平らげたマッシュ達は、戦闘中に起こったことについて話し合う過程で、白い仮面集団の正体について触れることになった。

 

 

 

 

「エデン条約反対派の……カルト教団?」

 

「そうなんすよ……最近ほんっと増えてきてて、こっちも手一杯で……」

 

「その人達はなんの目的であんなことを?」(シュークリームを食べながら聞く)

 

「……先生、先生はエデン条約を知っていますか?」

 

「初めて聞きました」

 

「まだご存知ありませんでしたか、ではご説明いたします」

 

 

 

 

 

 

 それは、歴史的に根深い対立関係にあったトリニティ総合学園とゲヘナ学園の間に結ばれる、対立と衝突を緩和するための平和条約。発案者は、マッシュをキヴォトスに招いた張本人でもある時の人、連邦生徒会長その人であるという。

 

 条約締結の暁には、両学園から構成員を共出したエデン条約機構を設立する。同機構によって両自治区の紛争解決による治安維持を行うことで、両学園間の全面戦争を未然に回避し、最終的にキヴォトス全体の情勢を安定化させる構想となっていた。

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけでして」

 

「成程、つまりは――『喧嘩はやめよう』ってことですね」

 

「かなり簡単にまとめましたが…その通りですね」

 

「それを反対している者達はここ(トリニティ)にも少なからずいるし、中には生徒会(ティーパーティー)へ抗議する者もいる…が、奴らは過激すぎる。言論で現状を変えられないから武力で訴えて押し通る、という理屈を掲げて街中で暴れ回り、大きな被害を出している……」

 

「しかもそれを率いているのは生徒ではなく、かなり影響力のある大人でして」

 

「機械の割に筋肉質な義体をしたロボットの大人で、まるでどっかの司祭みたいだった」

 

「『ゲヘナは悪魔の巣窟』やら『私たちとは違う』とか言ってますけど……結局そんな馬鹿のせいでトリニティとゲヘナの関係は悪化するし、トリニティの気品や風評ってのが地に墜ちてくんすけどねぇ……」

 

 

 

 

 

 イチカは苛立ちを滲ませながら早口で不平を語る。普段のイチカは社交性が高く、要領の良さを活かして器用に立ち回り、大抵の仕事や任務は人並みに熟せる才女として名高い。

 

 世話焼きで人助けが趣味というように、後輩たちへの面倒見も良いことから、委員会の内外で大きな支持を得ていると言っていい。

 

 だが一方で、対話による解決を聞き入れずに腕っ節や武力だけで暴れる生徒に事欠かないキヴォトスにおいては、その社交性をもってしても制止に失敗することは常。交渉が破談して戦闘が一度始まれば「終わった」とこぼす事はままあり、不要な苦労を背負い込みやすい立ち位置でもある。

 

 更にその実、「トリニティよりゲヘナ寄り」とも揶揄される生来の狂暴性を秘めており、理性的な立ち振る舞いは努力で後天的に獲得した技能とのこと。

 

 

 この仮面教団が暴れた日には、ツルギにも劣らない勢いで集団を蜂の巣にしたばかりか、一人で本拠地へ乗り込もうとするほど頭に血が上った、という。

 

 

 

 

「……もう本拠地(ヤサ)乗り込んでシバキ倒しゃよくないっすか?」

 

「イチカ」

 

「……分かってるっすよ。あいつら、武器の貯蓄だけはムダに多いんすよねぇ……だから、私ら(正実)だけじゃ結構厳しい、と」

 

「どうしましょうハスミ先輩、このままじゃ学園内の主要なエリアを占拠される危険性が無視できませんし、本格的にまずいんじゃ…」

 

「分かってます…先生、何か手は……先生?」

 

 

 

 

 マッシュは立ち上がって背筋を伸ばすと、何故か準備運動を始める。そして、ハスミに一つ聞く。

 

 

 

 

「ハスミさん、その教団を率いている大人って言うのは……別に殴っても大丈夫なんですよね?」

 

「……先生、まさか」

 

「僕、その拠点に殴り込みに行ってきます」

 

『!?』

 

「話、聞いていましたか!?」

 

「相手は戦車やオートマタ兵士を山程抱え込んでるし、強さだけは折り紙付きの極右派閥までいるんすよ!?流石の先生でも」

 

「でもこのままじゃ埒が開かないし、その大事な条約にもヒビが入る……これはトリニティだけの問題じゃありません。なら、死んでも止めないと。先生として」

 

 

 

 

 

 マッシュは殴り込む気満々で準備運動を続ける。既に彼は臨戦態勢に入り、教団の生徒と教祖をまとめて殴り倒すつもりで話を進めている。マッシュが準備運動を終えると、今度はツルギが立ち上がる。

 

 

 

 

 

「……先生」

 

「?」

 

「私も連れていってください」

 

「ツルギ…」

 

「奴らにはもう我慢ならないんです、好き勝手に暴れて人を泣かせている……それに、そいつらを操っている大人というのも……許せない」

 

「ツルギさんが来てくれるなら鬼に(ツルギ)だ」

 

「それをいうなら鬼に金棒では?」

 

「今回はツルギさんが一緒ですから」

 

「そういう問題ではありませんよ……ですが、確かにこのままでは、事態は悪化の一途をたどるばかりです。その前に、何としても止めないと」

 

「――じゃあ先輩、やっちゃってもいいんですよね?」

 

 

 

 

 待っていたとばかりに、イチカが笑顔で白い歯を見せた。ハスミは一息置いて、部員たちに指令を下す。

 

 

 

 

「貴女達、可能な限り動ける部員を集めてください…明日、あの仮面教団の本拠地を強襲します」

 

「は、はい!」

 

「先生、危なくなったらいつでも退いて下さい。万が一の時は私達にお任せを」

 

「ツルギさんもね?」

 

「…キヒッ、私はちょっとやそっとじゃ死にはしませんよ……だ、だから、その、先生も…無理は、なさらずに…」

 

「もちのろん」

 

 

 

 マッシュと正義実現委員会は、明日、教団本部に突撃して生徒や保有戦力を一掃するため、作戦を立てることとなった。その間もマッシュは、教団を率いて司教を名乗っている大人を殴るため、その手にハンドグリップを固く握り締めていた。

 

 

 

 


 

 

 

 

そして翌日

 

 

 

白仮面教団本拠地・某宗教施設

 

 

 

 

「大司教様、そろそろ準備が整います」

 

「ご苦労様です……フフッ、準備が整い次第攻撃を開始しなさい――勿論、遠慮はせずに」

 

「ハッ!…ようやく、願いが叶うのですね!」

 

 

 

 筋肉質で大柄な義体を持つ大司教は、満足気に歪んだ笑顔を浮かべる。そして生徒が去った後……その生徒を小馬鹿にするように嘲る。

 

 

 

 

「まさに鳥頭です……貴様らの願い、そんなものどうでもいいに決まっているでしょう。私の目的は最初からトリニティへの反復攻撃で奴らの力を削ぎ落とすこと……そしてあわよくば、治安を維持できなくなった自治区の区域を侵略し、奪い取ること……フフフッ」

 

 

 

 

 大司教と呼ばれた男は、トリニティの中でも"極右"に相当する生徒達に甘言をちらつかせ、「エデン条約への反対」という見かけの理屈で彼女たちを配下につけた。

 

 

 

 

「しかし面倒なのは…正義実現委員会のカラス共。ですからまずは、委員会本部へ攻め込んで軟弱な低学年の生徒達を鎮圧、あとはまあ……人質として剣先ツルギやティーパーティーの前にでも吊し上げて、私がトリニティの主要区を手中に収めるまでは…時間稼ぎの盾か、身代金を搾り取る道具にでも使って、役に立ってもらいましょう」

 

 

 

 

 腐る程の余裕を見せつけるように、既に勝ったつもりでトリニティを嘲笑う大司教の男……しかし次の瞬間、そんな笑みは──

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガァァァァァァァァァン!!!

 

 

 

 

 

 

 

一つの爆発で消え失せた。突然の爆発に一瞬で笑いが消えた大司教は「何事か⁉」とばかりに、焦りの表情を固めたまま音の発生源へと向かう。そこで見たものは──

 

 

 

 

 

 

 

「キェェェェェ!!!死ねぇ!!ぶっ潰れろぉ!!」

 

「それ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
*2

 

「―――は?」

 

 

 

 

 

手駒にしていた軍団が次々に倒され、自らのものとしていた地区一帯が瓦礫の山に埋もれていく光景だった。

 

 

 

 

 

 マッシュと正義実現委員会は、教団が動き出す前にその本拠地へ奇襲攻撃を仕掛けた。マッシュは壁を破壊して最前線へと切り込み、教団内にいるオートマタ兵士達を一掃。その後にツルギが続き、統制もなく応戦する生徒達を次々に蹴散らしていった。

 

 

 

 

「な、なんだこいつらは!?こんなの仕事には『ギヒャヒャヒャヒャ!!!!』ゲギィ!?

 

「あの人ら突っ込みすぎ──って、もう今さらっすね。はいみんな〜〜、二人の援護を始めるっす、寄って来る敵には容赦なく撃ちまくるっすよー!!」

 

「「「「おーーっ!!!!!」」」」

 

「マシロは私と共に、ここから狙撃を」

 

「了解……にしても、これ…相手の生徒達大丈夫ですかね」

 

 

 

 

 

 

 

「悔い…改めろぉぉぉぉぉぉぉっ!!!

 

「ヒィィィィ!?!?ゴメンナサイゴメンナサッ──ギャアアアッ!!?

 

 

 

 

 

「トライセップス魔法、ノックダウンチョップ・ラッシュバージョン

 

「キャッ―」

 

「アグッ」

 

 

 

 

 

 

「………可哀想になってきました」

 

「ま、まぁまだ殴っていないだけ、マシ…でしょう」

 

 

 

 

 理不尽な暴力を生む二人の"戦略兵器"の前には、オートマタ兵士達もトリニティ生も成す術がない。そして何よりも恐ろしいのは、この二人のコンビネーションが生む超攻撃的な制圧力にある

 

 

 

 

「こ、このぉ!」

 

「させん」 

 

「ゴッ!?」

 

 

 

 

「よくも仲間―─」

 

「失せろぉッッ!!!!!」

 

「ゴエッ!?」

 

 

 

 

 二人は決して距離を離さず、互いを襲う敵の不意打ちを相互に迎撃・援護できる位置取り(フォーメーション)を崩さなかった。二人だけの陣形…されど、その陣形が織りなす鉄壁の如き強固さは、まさしくキヴォトス最強に相応しい支配力を発揮する。

 

 

 

 

「だ、ダメだ! あの二人を止められない‼ まるで嵐のように我々を襲ってきている‼」

 

「片方をやろうにも、もう片方がすぐに邪魔をして何もできない――更に後ろからも攻撃が来ている、クソッ‼」

 

「あ、諦めてはいけません! 我々の正義は」

 

「正義ぃ…?一体、誰の前で正義を騙っているぅ!?少しでも自らの行いを正しいと信じるならァ───―私達二人を、止めてみろぉ!!!」

 

「まぁ無理だけどね、君たち悪党には」

 

 

 

 二人が進む道はその行く先に沿って無造作に打ち砕かれ、ハーフパイプのように抉られた地形と瓦礫だけが残される。

 

 そんな中、ツルギは思っていた……マッシュに、背中を預けて戦っている。これまで出会うことのなかった、自分のすぐ隣で、共闘してくれるほどの存在───彼がいる戦いで、安心し切っているこの瞬間は──────楽しい…と。

 

 

 

 

「ギィィェアァアアアア─────ッ‼‼‼」

 

「ツルギさん上機嫌だ、僕もちょっと嬉しくなるね」

 

ギエェッ⁉…え?―あ、いや、その」

 

「後ろ危ないですよツルギさん」

 

「ギエェッ!!」

 

「戻った」

 

 

 

 

 二人は瞬く間に、波のように押し寄せてきた軍団を壊滅に追いやった。イチカと部員たちによる後方からの支援、ハスミとツルギの狙撃による援護もあり、歩兵はもうほとんど残っていない……残るは、教団にとって虎の子の戦車隊と、狙うべき大司教のみ。

 

 奇襲を受けて発進に手間取った戦車隊は、生徒やオートマタのほとんどが瓦礫に埋もれたタイミングで姿を表した。数にして数十両の戦車がマッシュとツルギに接近し、後続の車両は後方から援護していた正義実現委員会を狙う。勝ちを確信した大司教は、再び余裕の笑みを見せるとともに、高みの見物を決め込むつもりでいた。

 

 マッシュはツルギにアイコンタクトを飛ばすとともに走り出し、ツルギはそれに頷いた。

 

 

 

 

『奴らは何処だ!?いくら奴らでもこれには……あ?』

 

『なんだ、あの男は何処に…』

 

『中隊長!背後に奴が、シャーレの先生が!』

 

『何だと!?馬鹿な、いつ回った!?』

 

 

 

 

 

 アイコンタクトを交わした直後、既にマッシュは戦車隊の後方に回り込んでいた。ツルギは戦車隊の前方に立つと、拾い上げた一本の鉄パイプを持ち上げる。

 

 

 

 

 

『…そんなもので、一体何を! こちらは装甲に守られているんだ、たかが棒切れ一本で』

 

『まさか投げる気…か? ハハハッ、馬鹿なことを‼ 集中砲火を食らって燃え上がれ‼』

 

 

 

 

 最前列の戦車が砲撃の準備を始めるとともに、ツルギは腕に力を込めた。大きくパイプを振りかぶったツルギは、投擲の動作に合わせて横方向へ強烈なモーメントをかけることで、手裏剣やブーメランと同じ要領で水平回転させながらパイプを投げた。

 

 

 

 

 

「先生ぇ……パァァーーース!!!!ビュゥンッ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 巨大な手裏剣やフリスビーのように、残像が重なって円盤に見えるほどの回転速度を伴って投擲されたパイプを見据えたマッシュは、狙いを研ぎ澄まして強烈な蹴りを叩き込む。

 

 

 

 

 

「オーライオ〜ライ……―フンッ!」ガァンッ!!!!

 

 

 

 

 

 回転を殺すことなく、飛翔する方向を的確に変化させる一撃。それを叩き込まれたパイプは、ツルギが投げたことによる飛翔速度と回転数がマッシュの蹴りによりさらに強化され、まるでブーメランのような軌道を描いて戦車隊の背後から襲いかかった。

 エンジンルームや砲塔後部(バッスル)を襲ったパイプが脆弱な背面装甲を引き裂きながら車体を真っ二つに分断し、切り裂かれた戦車は栓を抜いたシャンパンのように火柱を上げて四散していく。草刈りのように薙ぎ払われた砲塔が宙を舞う光景を前に、戦車隊の指揮官はぽかんと口を開けて硬直した。

 

 

 

 

『―――へ?』

 

「ナイスパスゥゥ―2投目ェェッ!!!!!

 

「フッ!」

 

 

 

 

 ツルギは丸鋸と化したパイプを掴むとともに、それを再び投げ飛ばす。そして回りながら飛ぶパイプをマッシュが再び蹴り返し、それをまたツルギが掴んで投げる。そう、二人は鉄パイプでキャッチボールならぬキャッチパイプをしていた。

 高速回転するパイプが即席の回転ノコギリとなって戦車を横薙ぎに切り裂き、一帯を埋め尽くすように居並んでいた戦車が芝刈りのように切り裂かれて数を減らしていく。

 

 

 

 

 

「いや…蹴っただけでそのスピードを出せる先生もすごいですけど、それを掴めるツルギ先輩もすごすぎます!!!!!」

 

「鉄パイプが円盤に見えるっす…」

 

「トリニティが総力を上げても、先生にはきっと勝てないかもしれませんね」

 

 

 

 

 力技でブーメランを再現したようなキャッチパイプ(意味不明)を20回前後行った所で、その場に展開していた戦車は砲塔を削ぎ落とされた『風呂桶』に仕立てられ、戦車隊は完全に壊滅した。残るは、大司教のみ。

 

 

 

「――馬鹿な…私の…教団が、こんな簡単に――に、逃げなければ…逃げな―」

 

 

 

ガシッ!!

 

 

 

「………―」チラッ

 

 

「こんにちは〜〜」」(マッシュの真顔とツルギの笑顔)

 

 

 

「イヤァァァァァァァッッ!!?」

 

「一瞬であいつの両隣に回り込んだっすよ」

 

「もう慣れないとダメですね、そうでもしないと胃に穴が空きます」

 

 

 

 見物を決め込んでいた割に、不利に傾けば及び腰で逃亡を図った大司教。その右肩をツルギが掴み上げると、瓦礫に混じって戦車"だったもの"が転がる中央広場へ、投げ落とす形で容赦なく叩きつける。

 

 

 

「グェッ!!?」

 

「貴様、大司教などと御大層な肩書を名乗っているらしいなぁ……貴様を…潰す」

 

「ま、待て、待てっ!話し合わないか?君たちだってゲヘナは嫌いだろう!?」

 

「……確かに、ゲヘナには少々思うところがあるというのも事実です」

 

「な、なら分かるはずだ、我が教団が何を目指すのか──」

 

「しかし、このような行いは我々の正義に反します。何よりも、一方的かつ無秩序な破壊行為で多くの市民を巻き込んでおきながら、自らの正義を訴えるなどという蛮行は、決して許されるものではありません

 

「ぐ、ぐっ…‼―─ひぃ⁉」

 

 

 

 

 

マッシュとツルギは大司教に近づくと、その頭を押し潰すように拳と銃を突きつける。

 

 

 

 

「連邦捜査部シャーレ顧問・マッシュ・バーンデッド、正義実現委員会委員長・剣先ツルギの名の下に……貴方に判決を言い渡します

 

「判決―――有罪だぁッッ!!!!!

 

「待て、話を、話をぉぉぉぅッ!!!?!?!!?

 

 

 

 

マッシュは大司教の両足を持ち上げると、真っ直ぐに振り上げる。

 

 

 

 

 

 

 

『合体魔法・フルスイングニーキック』

 

 

 

 

 

 

そして地面へ向けて叩きつけるように振り下ろすと同時に、ツルギが動く。

 

 

 

 

おわりだぁぁぁぁッ!!!!!

 

「まってェェェェェ!!!??」

 

 

 

 地面に振り下ろされた大司教の顔面に向け、強烈な膝蹴りを放った。

 大司教の顔にはツルギの膝が減り込み、金属的な衝突音が耳を劈くように反響する。顔面を砕かれた大司教は激しく痙攣していたが、程なくしてピクリとも動かなくなった。

 

 

 

 

「………えっぐ」

 

「ヒェ」

 

「あそこまでやる必要、ありました?」

 

「魔法……と言うか、単なる物理攻撃…では?」

 

 

 

 正義実現委員会の面々は、あまりの過激さに全員が顔を顰め、大司教や教団員に一種の同情すら感じていた。なお、当の筋肉魔法で教団の壊滅を果たした二人は───

 

 

 

「「いえ〜〜い!」」

 

 

 

手を合わせて勝利を喜んでいた。

 

 

 


 

 

 

 

 その後、動かなくなった大司教は連行された。教団に入っていた生徒達も同時に連行されるはずだったが、そこでマッシュは待ったをかけた。

 

 

 

「この子達なりにトリニティのためを思って行動を起こそうとして、その途中で悪い大人に騙されて、こうなってしまったんだ。この子達は悪くない、なんて言えないけど…すぐに連れて行って退学処分、みたいなことはしないでほしいんだ。先生として、この子達の復帰に協力したい」

 

 

 

 事態の収集にあたったティーパーティーの生徒たちは、トリニティの治安維持に貢献したシャーレの顧問からの要望ということもあってか、その要望に可能な限り沿った処遇を行うことを約束した。元教団の生徒たちは結果的に拘禁されてしまったが、マッシュの提案によって最終的に退学を免れた。

 

 

 

 

 

 教団の壊滅に伴って破壊された戦車や武器が押収されたことで事態は終息し、傾きつつあったエデン条約に絡むトリニティ内部の治安問題は解決された。

 これに伴って正義実現委員会の活動が安定化したある日、事態の解決を見届けたマッシュに対し、ツルギがふと抱いた疑問を投げかける。

 

 

 

 

 

「……先生、あの時の戦闘……私が戦いやすいように、ペースを落としていたんですか?」

 

「あれ? ツルギさんが僕に合わせてくれたんじゃないんですか?…おかしいな」

 

「…は、初めてでした……前線で、私とあそこまで戦える相手と、一緒にいたのは」

 

「そうなんですね」

 

「せ…先生に…お怪我は?」

 

「全然、むしろピンピンしてますよ……けど、ツルギさんはちょっと擦りむいちゃいましたね」

 

「これですか…?これぐらい」

 

 

 

 

 

 マッシュは懐からシュークリーム…ではなく、シュークリームの柄が入っている絆創膏を取り出し*3、それをツルギの指へ丁寧に貼る。

 

 

 

 

ピタッ

 

 

 

「これで安心」

 

「……わ…わた……私は、傷、すぐに…治りますよ?」

 

「けど放置はできないですよ、あと…放っておけなくて」

 

ミッ!?

 

「一緒に戦えてよかったです、今度は戦いじゃなくて……そうだな、一緒にシュークリームでも作りませんか?」

 

「――み―み―ミャ―」

 

「ミャ?」

 

 

 

 

 

ミィヤァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!

 

 

 

 

 

 ツルギは顔を真っ赤にしながら、翼をばたつかせてその場を走り去っていった。マッシュは予想外の反応で呆気にとられ、その場に取り残されていたが───

 

 

 

「…エデン条約、大丈夫かな」

 

 

 

同時に、今後のエデン条約について心配せざるを得なかった。

 

 

*1
この間わずか1分

*2
オートマタ兵士を掴んでジャイアントスイングしている

*3
シュークリーム店の店長が制作した





長かったな〜。

あ、今さらながら大司教のビジュアルは無名の司祭を思い浮かべてくだされば幸いです。次回はアンケートで多かったユウカちゃんとの関わり……の前に、エンジニア部との関わりを書きます

そして本編にガッツリ影響を与えますので、どうかお楽しみに。

次回もお楽しみに。励みになりますので評価とコメント!あと活動報告!どうかよろしくお願いします!眠すぎて目がぼやけながら書いたので、誤字があったら申し訳ないです。

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