透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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調月リオとアバンギャルド君

 

 

 

 

「だぁぁぁぁぁくそっ!!なんつう戦闘能力(スペック)持ってんだよこいつは!!」

 

「4本の腕というだけでも厄介だというのに、この―っ!速度と攻撃力……!!」

 

【コロスゥ!!ブッコロス!!】

 

「後なんなんだあの口の悪さは!」

 

 

 

 

 

 

 アバンギャルド君はキャタピラで高速走行しながら、下両腕をブレードでサオリとネルを切り裂こうとする。一度地面やビルに刃先が触れれば、まるでスポンジのように切断されていく。

 

 

 

 

「そもそもアレは自己判断能力とか持ってたのか!?」

 

『そんなはずはないわ、そのようなAIを組み込んだ覚えはないのよ…』

 

『原因はおそらくケイでしょうね。彼女の魔法でアバンギャルド君のプログラムに穴を開け、そこに自分のいいようにプログラムを書き込んだ……本当に厄介なものです』

 

【プログラム?違ウネ!!コレハ俺ダケノ意思ダ!!】

 

「はっ、実の親にあんな態度を取るのが意思ってか……!!」

 

 

 

 

 ネルはアバンギャルド君の間一髪で回避すると、頭部に向けて猛射を浴びせる。

 アバンギャルド君はチェーンソーでネルを挟み込もうとするが、サオリがネルをワイヤーで引っ掛け、引き寄せることで回避させる。

 

 

 

 

 

【俺ハ自分ラシク、自由ニ生キルンダ!ソレガ、アノオ方ノ意思!!願イ!!】

 

シンギュラリティ、別名・技術的特異点……AI(人工知能)が人間の知能を超える転換点、またはその変化を指す言葉です』

 

『機械に自我を芽生えせるとかどんなウィルス……!?』

 

『いいえ、あれはおそらく……神秘の力です。オーパーツであるケイが干渉した事により芽生えた(ゴースト)…といった具合でしょう』

 

『意思……アバンギャルド君に……命が……』

 

 

 

 

 

 やがてアバンギャルド君の顔が変形し、まるで般若の面のように禍々しい形状を形作る。何に怒っているのか、何に対してその顔なのかは、誰にもわからない。

 

 

 

 

「意思があろうと無かろうとよ、今のアイツは敵だ。なら止めるしかねえ」

 

『………でも…』

 

「なーに、何もぶっ壊すって言ってんじゃねえ。アイツの頭をぶっ叩いて、頭を冷やしてやるんだよ」

 

『頭を…?』

 

「あいつは今、自由って言葉の意味を理解してねぇ。『自由』が『王女の意思に従うこと』を意味する、っていうわけわかんねえプログラムにされてる。だからそれを修正すんだよ」

 

「自由、それは素晴らしい事だと思う……しかしだ、今のあいつの『自由』とは余りにも歪に捻じ曲がっている。だからこそ、救ってやれ……作った本人であるリオ、お前自身が」

 

『…………』

 

【俺ハ自由!!ドンナ風ニモ生キルンダァァ!!!】

 

 

 

 

 

 アバンギャルド君は二人に向けて、また急加速で接近してくる。再びサオリとネルが左右に分散し、彼を撃ちながら思いの丈をぶつける。

 

 

 

 

「自分の生きる道は自分で決めるか――んじゃあ今のお前はなんだよ」

 

【何!?】

 

「王女様王女様ってそればっかか、王女様にそう言われたからそう生きる?それの何処が自分の意思だ!!」

 

【ッ!?】

 

「お前のそれは自由ではない。ただ利用されているだけの傀儡として飼いならされているに過ぎない」

 

 

 

 

 

 刃が交互に動き、ビルや地面を動くネルとサオリを攻撃していく。今のアバンギャルド君は自分で自由に動いていると思っているが……実際はプログラムが作り替えられ、操られているだけ。

 『ケイに仕えて戦い、敵を滅すること』を『自由』と定義する誤った知識を刷り込まれているだけだ。

 

 

 

 

「私達を攻撃しているのは何故だ」

 

【ソレハ……王女ノ敵ダカラダ!】

 

「その通りだが、お前は関係ないだろう?―お前は自由なんだからな」

 

【……!!】

 

「目を覚ませ、今お前はただ操られているだけだ。目の前にいる敵を排除しなければ自由になれないと思い混んでいるんだ」

 

【自由ニ……ナレナイノハ、本当ダ……!!俺ハ……!!】

 

『―――いいのよ、アバンギャルド君』

 

【!!!】

 

『対終末兵器として貴方を作り上げた……でもそんな貴方には意思が、心が宿った……ならもう貴方はただの兵器じゃない……一つの生き物よ』

 

 

 

 

 

 リオはアリスとマッシュとの出会いで価値観を少し変えた、機械であろうと意思や心があるのなら、それはもう一つの命。生き物だ。

 

 

 

 

『貴方がそうしたいと言うのならそれに対して私は何も言わない……でも、今貴方が王女の為に動いているのは貴方の意思じゃないはずよ』

 

【俺ハ…!!】

 

『アバンギャルド君、貴方ともっとお話がしたい。貴方がやる事、好きな事、嫌いなことも知りたい……でも今のままではダメ』

 

【ナンデ…ソコマデ!!】

 

『――貴方の設計者であり、親だからよ。親が、子供のことを知りたいと思うのは間違いなのかしら?』

 

【…!!】

 

『リオは、貴方を紹介する時……とても嬉しそうでしたよ。貴方を設計した自分の能力に対してではなく、リオが設計した"貴方という存在そのもの"に対する誇り……レグロさんと先生の関係と同じ、親が我が子に対して持つ誇りがあってこそでしょうね』

 

 

 

 

 

 アリスやマッシュと会う前だって、リオはアバンギャルド君に愛着がなかったわけではない。自分が作り上げているコレが世界を救ってくれる、救世主になる、この子は凄いんだとずっと思っていた。

 

 

 

 

 

『―お願い、アバンギャルド君。貴方の本当の意思を教えて。偽りのプログラムなんかに負けないで……!!』

 

【―――俺……本当……ノ…俺……ハ…】

 

『チーちゃん!チャンスです!!』

 

『やっと、入れた…!!』

 

 

 

 

 アバンギャルド君自身が動揺し、隙が生まれた。そこを狙ってヴェリタスとヒマリはプログラムの中へと侵入、コードを書き換えることができるようになった。

 

 

 

 

『見るからに怪しい奴発見……!!』

 

『コレを、書き換えれば…!!』

 

「サオリ!!今のうちにワイヤーとグレネードで動きを止めるぞ!!」

 

「了解した」

 

 

 

 

 アバンギャルド君の体が徐々に苦しむような素振りを見せ始め、被害が出ないようにサオリとネルがワイヤーで縛り上げる。

 

 

 

 

『王女為に動くことが運命……趣味の悪いプログラムですね、本当に……!』

 

「そんな運命ぶっ壊せ、自由に生きるんだろ!?」

 

「私やアリスは、先生に運命を変えられた。創造者に役割を定められたアリス、大人に支配されることが当たり前の世界と思い込んできた私……けどそんな物、後からどうとでもできるんだ。――大事なのはお前自身の思いなんだ、アバンギャルド……!」

 

【俺――オオオ、レレレ…!】

 

『アバンギャルド君……教えて、貴方の――やりたい事を!!』

 

【―――俺……ハ……】

 

 

 

 

 刹那、ネルやサオリに向かって守護者達が襲いかかる。それはまさしく波のようであり、二人はその波に飲み込まれそうになっていた。

 

 

 

 

 

「――っ…?」

 

「コレは…!」

 

【――俺ハ、リオノ……役ニ立チタイ。ミンナト、自由ニ遊ビタイ】

 

『――アバン、ギャルド君……!』

 

【悪口ヲ言ッテ、ゴメンナサイ、リオ】

 

 

 

 

 

 アバンギャルド君の腕が元の設計へと戻っていく、顔も元のデザインとなり、サオリとネルをアツコ達の元へと届ける。

 

 

 

 

【リオハ、俺ヲ大切ニシテクレタ。イツカ直接、自分デ話ガシタイト、思ッテタ】

 

「神秘……魔法……たまにはいい仕事するもんなんだな」

 

「機械に、命と想いを宿らせることすら可能なのか……なんでも実現するわけでは、ないはずだが」

 

『おそらくはリオ本人の思いが神秘の力となっていたのでしょう。その神秘はアバンギャルド君の思考回路を侵食し、わずかに力を与えた……そこへケイが加入した事により、その神秘が強化されて今に至る。まさしく、奇跡ですね』

 

 

 

 

 

 優しさ、リオが元々持っていたその優しさが力となった。その力はアバンギャルド君と言う一つの機械に思いと命を宿らせるに至った。

 

 リオがアバンギャルド君に寄り添おうとしなければできなかった事だ。そうしようと思ったきっかけを作り上げたマッシュがいなければ、こんな奇跡は起きなかった。

 

 

 

 

【――俺、コンナ見タ目ニシテクレタリオヲ、守リタイ】

 

(そのデザイン気に入ってんのかよ……)

 

【イケメンニ作ッテクレタリオニ、感謝シテイル】

 

(イケメン……??)

 

(先生とは違った判定基準があるのかな)

 

【リオノ為ニ戦ウ。ソレガ、今俺ガヤリタイ事】

 

 

 

 

 

 アバンギャルド君は、背に追加されたウェポンラックに武器を預けるとともに、リオに向けて決心を告げる。

 

 

 

【リオ、命令(オーダー)ヲ。俺ニヤリタイ事ヲサセテ!】

 

『――わかったわ、アバンギャルド君………蹂躙よ、先生の障害となる存在の全ての破壊!守護者達を、貴方の全力で殲滅しなさい!』

 

了解(ROGER)!!】

 

「………色々と言いたいことはあるが、まあいい‼︎ ガンガン行こうぜ!」

 

「ああ」

 

 

 

 

 上空に到達した無人ヘリから次々と投下されるアバンギャルド君専用兵装。

 四本の腕がアサルトライフルを、バズーカを、ガトリング砲を、そして黄金長方形をモチーフにした渦巻き状のシールドを掴み取り、アバンギャルド君はエリドゥの防衛システムとして戦う能力を取り戻した。
 アバンギャルド君の両肩にサオリとネルが飛び乗り、続けて他のメンバーも機体のグリップやラダーを足場にして跨乗(デサント)する。アバンギャルド君は飛び乗った生徒たちを見渡すと、エンジンを吹かして発進の準備を整えた。そして、リオの命令と共に前進を開始する。

 

 

 

 

『アバンギャルド君……アバンファイト、レディー・ゴー!!!

 

「なんだその掛け声!?」

 

【GO!!!】

 

「いいのかよそれで!!!」

 

 

 

 

 

 

 手強い戦力が増え、形勢は一気に逆転。もう一度ハッキングされそうになっても、今度は原理が判明しているのですぐに対処ができる。

 

 

 

 

 

「――運命を捻じ曲げても……修正する……あの者共も、貴方の差し金ですか」

 

「何の話か分からないけど、自分の運命はやりたいことは自分で選んで行動すべきだと僕は思っている。僕だって、自分がやりたい事をやってるんだからさ。今、この瞬間もね」

 

「……理解、できませんね……!!」

 

「今はわからなくてもいいよ。次から、少しずつ学んでいけばいいんだ」

 

 

 

 






前半なんだこれ………

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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