透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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マッシュ・バーンデッドとkeyとの決着

 

 

 

 

「守護者達の数が急激に……!」

 

「形勢逆転、かな」

 

「……っ!」

 

「させない!!」

 

 

 

 

 ケイとマッシュによる激闘の最中、ケイの命令によって動き出した守護者がマッシュを包囲し始める。ニーナは即座に守護者たちへと突進、シャーレの装備として青と白に塗り分けた防弾盾を片手に、ショットガンで守護者たちを粉砕していく。

 

 

 

 

「―───邪魔ですね」スッ

 

「っ!しまった、銃が……!?」

 

 

 

 

 だが、ケイの命令によって触手を伸ばした守護者が鞭のようにニーナの盾を乱打して彼女の足を止め、続けて彼女のショットガンを強引に奪い取ると、たちまちバラバラに分解してしまう。

 武器を失ったニーナに対し、飛び上がった蜘蛛型のロボット──無名の守護者Type.Fが、背中から彼女に飛びついて伸し掛かった。

 

 ニーナには今、ショットガンという武器が手元にない。まさに絶体絶命――そう、彼女の持ち武器がショットガンだけならば、の話だが。

 

 

 

「くっ……フンッ!邪魔だ、離れろっ!!」バチバチバチッ!!!

 

(隠し武器、帯電警棒(スタンバトン)ですか……!!)

 

「あっすごい、警棒だ」

 

「伸縮式の帯電警杖、いざとなった時の切り札だ」

 

「……しかしそれだけで、この数の守護者を相手できると?」

 

「余り舐めるなよ────私は先生の生徒、そして姉さん達(スクワッド)の妹分だ……!!」

 

 

 

 ニーナは盾を前方に構えて駆け出すとともにシールドバッシュで守護者を吹き飛ばし、右手に持っている少し長めの警棒、もとい警杖を守護者達に向かって振り下ろしていく。

 視界外や死角からの攻撃も鋭敏さと反応速度で回避し、降りかかる攻撃に対する防御と回避を組み合わせるその姿に、もうエデン条約事件当時の面影はなかった。

 

 

 

 

「であれば…!」

 

「サソリとは…バリエーション豊富だな…!」

 

「ニーナちゃん、手伝おうか?」

 

「どうということはない、先生はケイに集中してくれ!言っただろう、私にだって奥の手はある!」

 

 

 

 

 奮闘するニーナの前に、サソリの尻尾に似た尾節を持つ六脚型ロボット──無名の守護者Type.Bが現れ、頭部から連続でピンク色の光弾を放ち続ける。ニーナはそれを盾で受けながら前進し、守護者の頭部にシールドバッシュを行う。

 

 

 

「――正義、執行!!」

 

「んなっ……!?」

 

「えっなにそれ、かっこよ」

 

 

 

 ニーナが警杖を盾の内側に差し込むと、警杖を噛んだ盾が二つの刃へと分離して展開、巨大な両手剣に似たバトルアックスへと変形を果たす。

 エンジニア部特製の帯電警杖と変形型シールドアックスの組み合わせにより、その変形を予期していなかったマッシュとケイは度肝を抜かれ、呆気にとられたように硬直した守護者達はその一瞬のうちにニーナによって薙ぎ払われた。

 

 

 

 

「悪・即・斬!!!」

 

「ニーナちゃん……いつの間にかかっこいい感じに育っちゃって……先生は嬉しいです」

 

「喜んでくれるのはありがたいけど、今はケイに集中!!」

 

「あっ、そうだそうだ」

 

「Type.Bまでもがやられましたか……―─であれば、もう守護者達に頼るのは非合理的ですね」

 

「やっとちゃんとやりあえるね」

 

 

 

 

 ケイは光の剣を回りながら、マッシュの攻撃を止め回転しながら光弾を放ち続ける。マッシュは飛来する光弾に裏拳を叩き込んで弾きながら、前へ前へと進んでいく。

 対してケイは、これまでアリスが使っていたAP(徹甲弾)ではなくHE(榴弾)を光の剣に装填、VT(近接)信管をセットすることでマッシュが弾く前に炸裂させることを試みた。
 狙い通り、マッシュの拳が触れる前に炸裂した榴弾が弾殻を飛散させ、マッシュの頬や脇腹をかすめていく──が、気にせずマッシュは進む。

 

 

 

「フンッヌ」

 

「――本当に厄介ですね……貴方の、その規格外の肉体は……!!」

 

「まあね」

 

 

 

 ケイとマッシュの蹴りがぶつかり一時的に拮抗するが、やはり体が軽いケイが吹き飛ばされ、マッシュはその場にとどまる。いくら相手がオーパーツといえど、マッシュのパワーには不利だ。

 

 

 

 

『先生、聞こえるかしら!?』

 

「リオさん、状況どうなってます?」

 

「守護者達が奇妙な行動を取り始めたの!!今エリドゥ内の全ての守護者達が貴方の方へと向かっている……いえ、貴方じゃない、ケイの元に!!」

 

「――うわほんとだ、虫みたいに集まってきてる」

 

「何だと…!?話が違うぞ、守護者達には頼らないと言っていたはずだろう!?」

 

「頼らない、とは言いましたが……利用しない、とは言っていません。勘違いしているようですが、そもそもこれらは"守護者"達───私を守り、支援する存在であることに変わりはありません」

 

 

 

 

 ニーナがケイの目論見を阻止すべくアックスを右振りし、集結する守護者達を薙ぎ払うのもの、ケイは光の剣でニーナを牽制しながら、発砲反動でロケットのように空へと舞い上がった。

 

 

 

 

『アバンギャルド君がそちらに向かっているけれど、到着まで時間がかかるかもしれないわ!』

 

『ね、ねえ!なんかケイの体光ってない!?』

 

『……アレは――まさか、守護者同士が融合しているのか!?』

 

『そんなこともできんかよ!?』

 

『変形と合体に対応できる形にケイがプログラムを書き換えたんだ…!!アバンギャルド君をあんなふうにしたように、自分の好き勝手にハッキングしできる事を増やす…正しくオーパーツだな』

 

 

 

 アバンギャルド君の肩に乗ってマッシュのもとへ向かうサオリ達、ビルの屋上から観察を続けるミサキ達、ドローンでリアルタイムの映像を見ながらリオ達やヴェリタス──皆、一様に驚愕した。

 

 

 

「想定外です、ここまで、王女が私の力を押さえつけるとは……そこまで、そうまでして自分の目的を全うしたくないのですね。……そして私と離れたいのですね」

 

「――先生と出会ってから、驚くことの連続だな」

 

「僕もここにきてから驚きの連続だよ」

 

『守護者"達"から……守護者(ガーディアン)、単体になるとは』

 

『この場に、各学園のトップ達がいなくてよかったと心から思います。この光景を見た瞬間……自分の学園の存亡を考えて、アリスちゃんをどうにかしようと考えるはずですからね』

 

 

 

 

 守護者達が分解・再構築された末に出来上がったのは──頭頂高数十メートル程の、人型を呈した巨大ロボットだった。まさしく機神、終末に導く兵器と称するに値する絶望的なまでの威圧感を放つ巨体が、ケイの小さな身体を自身の胸に深くしまい込み、大地に君臨した。

 

 

 

 

『――ガーディアン、蹂躙なさい』

 

「ニーナちゃん、退避」

 

「先生!!」

 

 

 

 ガーディアンと呼ばれた巨人が右腕を振りかぶり、マッシュに向けて拳を振るう。マッシュはそれに向かって正拳突きを繰り出し、拳が衝突してエリドゥを震わせる――が、機神は壊れない。

 多少のヒビ割れが生じるが、本体は簡単に壊れてくれない。巻き起こった衝撃波、それに続く空振が、高層ビルの間で共鳴しながら生徒たちに不気味な震えを感じさせる。

 

 

 

 

「――上等」

 

『ガーディアン、王女に仇成すかの存在を…消しなさい』

 

 

 

 ガーディアンは左腕を振り上げ、もう一つの拳をマッシュに向けて放つのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「フンフンフンフンフンフンッ」

 

『無駄ですよ……無駄無駄…!』

 

 

 

 

 マッシュの連打が、振り下ろされた巨人の腕を集中攻撃する。巨体に比例して攻撃の頻度や腕を振り回す角速度は低下しているものの、一撃ごとの威力は無視できないほど重いため、マッシュは一発たりとも攻撃を受けるわけにはいかなかった。

 

 エリドゥが要塞都市とはいえ、これほどの打撃を何度も耐えるだけの耐久力はない。守護者の破壊が先か、防衛線破綻が先か、マッシュは一か八かの短期決戦へとなだれ込む。

 

 

 

 

「おっしゃ乗れた」

 

『弱点はケイのいる胴体(コア)、胸部中央です!』

 

「ラジャー」

 

 

 

 

 マッシュは巨人の拳を止めると、その手の甲に飛び乗り、一気に腕を駆け上がっていく。

 その中途、巨人の腕の表面がハッチのように次々と開かれ、無数の触手が槍のように突き出すとともに鞭のように撓り飛んでくるが、マッシュはその合間を縫って走っていく。
 腕を駆け登るマッシュを見つめる頭部からは光の弾幕が横薙ぎに撃ち込まれ、更には巨人の肩部や背部から発射されたクラスター弾頭ミサイルがマッシュを切り刻もうとするが、裏拳での防御やスライディングを駆使するマッシュは、いとも簡単に壁のような火網の合間をすり抜けていく。

 

 

 

 

「フンッ」

 

『っ!!流石です……しかし、よく近づいてくれましたね』

 

「…?」

 

『私の能力…貴方たちが言うところの魔法は、機械相手ならばスタンドオフでの干渉が可能です。電子的にプログラムに介入すればいい以上、物理的な接触は不要なのですから…しかし対人利用の場合は勝手が違います。物理的に接触して働きかけないといけないのです……故に』

 
『っ、これは…!?先生、今すぐそこから離れてください!!これは罠です、ケイの本当の狙いは―─先生の傷口です!! 』

 

『もう、手遅れです』

 

 

 

 

 マッシュが取り付いた胴体前面、胸部中央。その中央からハッチが開かれ、ケイの体が身を乗り出した──直後、その手がマッシュの体に触れた瞬間に、彼の脇腹と右頬が破裂したように弾け、大量の血が吹き出した

 マッシュはすぐにケイの手を払いのけるとともに両足で巨人の胴体を蹴り、地上へと舞い戻ってくる。

 

 

 

 

「なして───……どうなってんの、これ」

 

「せ、先生……!?」

 

『ユウカ、ノア!直ちに救急ドローンを向かわせて!ニーナ聞こえる?今は彼の応急手当が先決よ!』

 

『わ、わかってます!』

『了解、大至急向かわせます!』
『これより、処置に移る…!』

 

『ど、どとどどうして、先生のほっぺたと脇腹からあんなに血が!?』

 

『援護射撃を開始する、アツコも今いる場所から狙えるなら撃って!ニーナ、先生は任せるよ!!』

 

『オーケー、射撃開始…ニーナ、先生をお願い…!』

 
「姫、ミサキさん…任せてください」

 

 

 

 

 ヒヨリが動揺し、ミサキとアツコがアグネスヤトラを巨人に向かって放つ。胸部を閉じた巨人に無数の爆炎が吹き上がり、巨大な破孔が機体全体に生じる──

 が、突如として破損箇所の縁や末端が発光を始めるとともに、時間を巻き戻すように装甲が再生を開始する。ほんの数秒後には、無傷の機神の姿がそこに取り戻されていた。

 

 

 

「……リオさん、ケイちゃんの魔法ってどんな感じですか?」

 

『シールズ──様々な開け閉めの概念を操る能力よ』

 

「尚更理由が分からないんですけど」

 

『――概念……ってことは……傷口でも反応するんじゃないか?』

 

『成程……──つまり傷口は、体組織を外界から隔絶する皮膚が開放された状態……―――そうか、創傷によって開き、治癒によって閉じる、つまり物理的な開閉の概念が適用できるのか!!

 

「じゃあ、今のケイは……先生の傷口を強制的に開いて、擦り傷を大怪我に変えたってこと!?」

 

「寒気してきた」

 

 

 

 

 流石はオーパーツ、さも当然かのように恐ろしい事をやってのけてくる。

 ここで改めて情報を整理しよう。ケイの固有魔法・シールズは、要するに『開閉の概念』を操る力である。

 

 

 

 

 これはプログラムのセキュリティに限らず、人間の体に生じる僅かな傷の創傷や治癒に対しても適用できる概念だった。それこそ、指先を紙の縁で切ったような、切れ幅たった数ミリの傷でも例外ではない。

 ケイの魔法であれば、切れ幅を数センチから数十センチ、ひいてはメートル単位へと拡大し、更には傷を深くすることも出来る。体の末端であれば指や手が削ぎ落とされ、頭部・胸部・腹部といった致命的な部位であれば───結果を想像する余地もないだろう。

 

 

 

 

『貴方の傷を15cmほど広げさせていただきました、かなりの激痛が走っているはずです』

 

「痛いけど、別に耐えられないほどじゃないかな」

 

『……でしょうね――ならばもっと傷口を増やしましょう。そして貴方が私を攻撃するたびに、その傷を広げましょう』

 

「先生、救急キットが到着した。じっとしていてくれ、これで処置を施せば少しは回復できるはずだ」

 

「ありがとうニーナちゃん」

 

『――随分と余裕そうですね、人の話を全く聞かず無視する……私との初対面でもそうでしたね』

 

 

 

 

 

 ケイがマッシュと初めて会った時……正確にはゲーム開発部と出会った時、ケイは雰囲気についていけず置いてけぼりを食らっていた。

 拗ねたような不貞腐れたような口ぶりを聞く限り、それをいまだに気にして根に持っているらしい。これに関しては……マッシュ達にも非があるだろう。

 

 

 

 

『……いや、今何が───っ、王女!?王女、今は取り込み中です…!少し、口を閉じていてください――嫌です!――王女―――先生、大丈夫ですか!!?――王女、やめなさいっ…!』

 

「アリスの声が……これは…!」

 

「かなり消耗してるね、だからアリスちゃんがケイちゃんを抑えて出てきてる。そりゃそうだ、こんな大掛かりなものを体が不安定な状態で使えばこうなるに決まってるもんね」

 

『……早急に……終わらせて……っ、王女、邪魔をしないでください!!コレは……貴女の…!!―――先生、みんな!

 

「!」

 

 

 

 

 突如として機神の胴体、その中央が青く光った。

 アリスの目やヘイローに似た色の光から、彼女のものに違いない声がエリドゥ全体に響き、通信システムにも無線を介して彼女の声が伝わってくる。
 その声は、決然としていた。

 

 

 

 

『ケイはずっと苦しんでいます!アリスには全然、弱いところを見せようとしてませんけど………ずっと──創造主、創造主って、ボソボソと!』

 

『創造主……つまり、ケイを作り出した者達──無名の、司祭……!』

 

『ケイには、その創造主の思想や企みが、呪いのようにこびりついてしまってるんです!コレを解くには、アリスの心の中で何かをするしかないんです!でも今のケイにはそんなチャンスがありません……だから、先生!!』

 

 

 

 ピカピカと、青とピンクの光が交互に点滅した後、アリスがはっきりとした声で告げた。

 

 

 

 

ケイを、止めてください!!先生の、MAXパワーで!みんなの力で―――っああああっ!!……はぁ……不必要です……助け……など……私、には!!

 

「聞き届けたぜ─――その願いをよォ!」

 

「例え相手に何を言われても、そこに苦しむ者がいる限り、構わず確実に助ける。誰かの幸せを、ハッピーエンドを願うお人好し。それが我々、連邦捜査部"S.C.H.A.L.E.(シャーレ)"だ

 

「アリス、待っててね……!!必ず、助けるからっ…!!」

 

「──あなた様。全員、既に配置についています」

 

『いつのまに………――っ!?その、姿は────』

 

「ありがとう、みんな」

 

 

 

 

 マッシュはすでに、腕輪を外していた。アンリミテッドフィジカルモードによって機神すら圧倒する気迫を纏ったマッシュの周りには、アバンギャルド君に乗っていたネル達とアリウス生、ゲーム開発部とその護衛を任された面々が集まっていた。

 

 

 

 

『なん……なんですか……貴女達は……先生、貴方は――一体、何者だというのですか!!??』

 

「答えはただ一つ、僕達は」

 

 

 

 ゲーム開発部が、ヴェリタスが、セミナーが、トレーニング部が、C&Cが、シャーレの部員たちが、一斉にその言葉を叫んだ。

 

 

 

 

「「「『勇者パーティーだ!!』」」」

 

 

 

 そしてマッシュが動き出すとともに、集った戦士たちが、ともに歩を進めた。

 

 

 


 

 

 

『排除……不必要――外敵!!』

 

「デケェのくるぞッ!!」

 

『皆、先生があの拳を止めてくれる!その隙に、腕に向かって射撃を集中!!』

 

『ゲーム開発部の皆さん、準備を!』

 

 

 

 

 本気の巨人パンチ、それに向かってマッシュは力を握り一発殴りつける。

 そして拳が止まった瞬間、飛ばされそうになる風圧をアバンギャルド君の背で防ぎ、そのままアバンギャルド君と共に各陣営がその巨人の腕に昇る。

 

 

 

「オラオラオラオラオラオラァ!!!!」

 

「フッ!」

 

「クナイ爆弾、連打ァァっ!!」

 

「悪・直・斬ッ!!」

 

【全弾発射!!敵ヲ…倒ス!!】

 

『こ、こちらからも発射します!!』

 
『出し惜しみはナシ、AGM-114(ヘルファイア)ロケット弾(ハイドラ70)も全部ばら撒いて!』

 

「うふふふふっ……さあ、さあっ!!我が良人に仇成す傀儡よ、せめて派手に爆ぜなさい!!」

 

 

 

 そしてその腕をみんなで全力攻撃、そこに追撃でマッシュは連打に次ぐ連打を巨人の拳に向かって放ち続ける。加速、また加速、さらに加速、もはや見えないほどのパンチの連打が、ケイの魔法による再生を無効化する程の打撃を加え続ける。

 

 

 

「―───フンッ…!」

 

 

 

 やがてそれは大きな亀裂を作り、巨人の右腕を完全に破壊した。それだけにはとどまらず、マッシュは思い切りジャンプをして、ビルの壁面を疾走し、加速のまま飛びかかって左腕を掴む。

 

 

 

『⁉︎』

 

「背負い――投げ!」

 

 

 

 そして背負い投げを行い、巨人の背を地面に付かせた後。空を蹴り、心臓部分へと到達する。勿論ケイは、装甲表面に何重ものバリアの層を巡らせ、守りを固める。

 

 

 

「もう遅い、脱出不可能よ……なんちゃって」スッ

 

 

 

 マッシュはそこに向かって遠慮なく拳を振い続ける、傷口を開かれようが関係ない、本当にただガムシャラに殴り続ける。

 

 

 

 

『―っ…ぁぁ…ぁぁ!!』

 

「よし、開けた……けど駄目だ、ケイちゃんが奥に引っ込んじゃった」

 

『十分よ先生!――ゲーム開発部、行ってきなさい!!』

 

「アイアイサー!先生、行こうっ!」

 

「アリスちゃーーん!!」

 

「今、行くから……!!」

 

 

 

 巨人の胴体内、その胸腔へと、ワカモやスミレに放り投げられたモモイ達が侵入する。マッシュに受け止められて着地したゲーム開発部は、拳で穿った穴の中へと一斉に飛び込んだ。内部を滑り降りた彼女達は、何十本ものケーブルやコードに囲まれたケイを発見する。

 

 

 

「貴女…達は…!!」

 

「ちょ、このコード硬いんだけど!?」

 

「でも、頑張るしかない!」

 

「うん…!!」

 

「離れなさい…!!離れなさいと言っているでしょう!?」

 

 

 

 

 そのケーブルの一部が触手を伸ばし、モモイ達を拘束するように突き伸びる。触手が彼女たちの腕や足に絡みつき、その動きを封じようと締め上げていく……だが、モモイ達は止まらない。どれだけケーブルやコードが絡もうと関係はない。

 

 

 

 

「アー…リー…スーー!!!」

 

「んんんにににににぃぃーーーー!!」

 

「アリス、ちゃん……!!」

 

「離れ…なさい…!離しなさい…!!貴女達は死にたいのですか…!?本当に、排除してしまいますよ!?」

 

「嫌だ!ここで逃げたら、絶対に後悔するもん!そんなの嫌だもん!みんながアリスのために、私たちの友達を助けてくれようと頑張ってくれたのに……私達が頑張らないわけには、行かないもーーん!」

 

 

 

 

 火事場の馬鹿力か、モモイはその体からはあり得ないほどの力で触手やケーブルを振り払い、引きちぎりながらケイへと歩み寄る。伸ばした手がケイに届き、その手を握りしめる。ケイがいくら強く振り払おうとも、モモイの手は決して彼女を離さない。

 

 

 

「っ!」

 

「それに、貴女も…!アリスが言ってたの、自分の中にいる存在と仲良くなりたいって、一緒に遊びたい、ゲームをしたいって!!」

 

「ゲームなんて……この、私に……滅亡の(key)に、遊戯など必要ないのです!!」

 

「keyだろうと、なんだろうと!あなたたちには、絶対にゲームが必要なの!!ゲームは人を笑顔にする物…それを私たちは作ってる!」

 

「たかがゲーム、されど、ゲーム…! 私達ゲーム開発部は、ゲーム制作に命を燃やして作ってる。でもそれだけじゃない――アリスちゃんが私たちのゲームを好きって言ってくれたから、ここまで頑張ることが出来たの!」

 

「ケイちゃんの入部だって大歓迎……!仲直りだってするつもり!!――だって」

 

「だって!」

 

「だって‼︎」

 

 

 

 

 

 3人のヘイローが、一段と強い光を帯びる。とはいえ彼女たちの目元にアザはないし、彼女たちには魔法もない。しかしそれでも神秘が沸騰することで、3人にはこれまでにない力が湧き上がっていた。

 

 

 

 

「「「光堕ちイベントは、私達の中では基本だから‼︎」」」

 

「―――ケイと、遊びたいから‼︎――――王……女………私は………わたし…は……!!!!

 

「うぉぉぉぉぉぉっっ‼︎ 」

 

 

 

 

 

 まるで勇者の剣を引き抜くように、ゲーム開発部達はケイの体をコードから引き抜いて抱きしめた。すると、巨人の体を作り上げていた守護者達が活動を停止、巨体がバラバラと崩れていく……

 だが、一部の守護者は"創造者"によって与えられたプログラムに従ってか、ケイを取り戻そうと彼女たちを取り囲む──その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『にはははははっ!させませんよーだ!!!』

 

 

 

 

 

 

 そんな不躾な真似は、白兎が許さない。

 

 

 

 

 

「―――止まった…?」

 

『守護者達の管理プログラム、そこに侵入することに成功したのです!』

 

『そこを、ヴェリタスがハッキングし、活動を停止させた……ギリギリだったけどね』

 

『ついでに別のプログラムも入れておきました――自壊しなさい、というものを』

 

 

 

 

 守護者達は軋み声を上げながら崩れていき、やがて完全に活動を停止。マッシュは瓦礫と化した守護者達を蹴散らし、サオリとニーナが残党を刈り払ってモモイ達を救出した。

 

 

 

 

「――――本当に死ぬかと思ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「お姉ちゃん、最後の最後で台無し……」

 

「うぅ、頭が…痛い…」

 

「あっ、そうだアリス!アリスは!?」

 

 

 

 

 モモイ達はアリスの体をマッシュに預け、反応を確認。少しの間の沈黙……そして、ヘイローに灯りがついた――青色だ。

 

 

 

 

 

「───―ただいま、帰りました……勇者の帰還です!!」

 

「―――アリス〜〜!!!!」「「あ、アリスちゃんっ……!!!」」

 

 

 

 

 

 ゲーム開発部がアリスに抱きつき、自然と涙を流していた。マッシュはそれを見てそそくさとその場から退避、集合したアリウス生たちと合流し、遠目から彼女らを見守る。

 

 

 

 

「――良かったね、みんな」

 

『ケイの反応はありますが……活動は停止しています、作戦は……大成功です‼︎』

 

『………』

 

『会長!』

 

『あら……ごめんなさい……力が、抜けてしまって』

 

『ひとまずは解決ですね……後は、ケイ自身の事です』

 

 

 

 

 マッシュやネル達は遠目からゲーム開発部を見守りながら、次のことを考える。しかし実際は考える必要はない。

 

 

 

「アリスちゃんの心の中に入って、ケイちゃんを助ける」

 

『その算段は、もうつけてあるわ……けど今は――勝利を喜びましょう』

 

「だな………――やったなぁお前ら!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ゲーム開発部をみんなで胴上げし、その作戦自体は終了。

 

 

 

 残すステップはただ一つ、ケイの呪いを祓うだけである。





次回・アリスダンジョン。

お楽しみに

百花繚乱後に見たい話

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