透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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完全決着、そして次回がこの章の終わりで、その次が体育祭編です……原作とは少し違った体育祭をお楽しみに。ついでにみんなの天使もやってきてくれます。


あと関係ないんですけど、小学生特有の足が速い人がキャーキャー言われてモテるアレってなんなんでしょうね。別に妬んでません(忌々しい過去)


マッシュ・バーンデッドと壁ができた者と出来た者

 

 

 

「主殿が腕輪を…!お二人とも、早くこの城の大将を捕まえて脱出しないと!おそらくここは長く持ちません!!」

 

「あの腕輪を外した先生ってそんなにやばいの!?」

 

「どれくらい凄いの…?」

 

「走るだけで周りの窓ガラスが割れて、地面を抉り取ってデットリフトができるくらいです!!」

 

『何それ!!?』

 

 

 

 

 本気モードのマッシュと規格外パワーを持つアケミの本気バトルを前にして、城が耐え切れるとは到底思えなかったイズナ。ミチルとツクヨを連れ、罠や敵を突破しながらニャン天丸を探す。

 

 

 

 

「――あっちから人の気配がする!」

 

「多分あのドラネコだよ!」

 

「きっとスケバン達が待っているはずだから、気をつけて…!」

 

 

 

 

 扉を蹴破り、イズナ達が中へと侵入した瞬間――弾幕が彼女らを襲う。その威力は床や壁を貫通し、近くにあった家具のバリケードすら一撃で破壊されるほど。

 

 

 

 

 

「ガトリング砲!?」

 

「た、退避を!!」

 

ガトガトガトガトガト!!!―にゃ、ニャハハハハハハッ!!!どうだ!!このカイザーから取り寄せた最新鋭の固定式のガトリング砲!その威力は!」

 

 

 

 

 大広間、城のほぼ中央。ニャテマサムニェは掻き集めた兵器とともに忍術研究部を待っていた。周りにスケバンは一人もおらず、城内のタレットには巨大なガトリング砲が配置されている。まぁ、手下がいたとしても彼は関係なく撃つであろうが。

 

 三人は忍びの身体能力を生かしながら無数の砲弾を避け続け、吹き飛ばされて積み重なった遮蔽物へと身を隠す。

 

 

 

 

「た、ただのガトリング砲じゃないよねこれ!?」

 

「キヴォトス人の貴様らであってもこの威力は痛いはず!!なんせこいつは、現段階で販売が禁止され、裏取引でしか手に入れることができない超がつくほどのレア物!!――それをお前らのような小娘どもに使ってやってるんだ!感謝しろぉ!」

 

「どうしてそんな危険な物を!」

 

「全てはあの小僧をこの手で終わらせるためだぁ!奴のせいで、私の人生は無茶苦茶……ここから挽回のチャンスなんてないんだよ!」

 

 

 

 

 怒りに震えて我を忘れて狂うマサムニェが、赤く充血した目を見開いて毛を逆立てて叫んでいる。吐き出されるのはマッシュに対する明確な殺意であり、タレット上からガトリング砲を掃射しつつ息を切らしてがなり立てる。

 

 

 

 

「ニャテ・マサムニェ!なんのためにこんな事件を!」

 

「"様"をつけんか無礼者めェッ!!」

 

(っ、下手に動けません…!それに何処か、様子がおかしいです…!)

 

「はぁ……はぁ……ま…ぁいい、一服ついでに教えてやる。……私はただ儲けたかったんだ、金、金……そう金だ、金さえあれば全てが手に入る。私の夢はカイザーなどの大手企業ををも超えた商人になる事だ」

 

「お金の為に人を傷つけてもいいの!?」

 

「儲けには多少のリスクは必要なんだ!いいか、この世は金が全て、儲けが全てだ!」

 

 

 

 

 気を静めるように葉巻を一つ吸いながら、マサムニェはガトリング砲を構えたまま言葉を続けていく。その間イズナ達は何かの準備を整える。

 

 

 

 

「金があればなんでも買える、なんでも手に入れる!高い酒、料理、豪邸、土地、名誉!その全てが買えるのだ!」

 

「だから、あのお祭りの利益も奪い去ろうと!」

 

「ああそうさ!儲けには多少のリスクはあるとは言え、楽に儲けるのが一番楽しく、一番気持ちがいい……あの儲けは私を変えてくれるはずだったんだ……あんなちっぽけな商店街の会長なんていう惨めな立場からな――それなのにぃ!」

 

 

 

 マサムニェはタレットのコントロールスティックをしっちゃかめっちゃかに動かしてガトリング砲を乱射し、彼女らを牽制する。ただ腹が立って撃っているだけなのか、トリガーハッピーなのかは知らないが、怒りがひしひしと伝わってくるのは確かだ。

 

 

 

「あの小僧が全てを台無しにした!私は繰り上がるどころか持っていた金も!地位も名誉も全て取り上げられた!全部………全部あの小僧のせいだ…!」

 

「自業自得じゃないですか…!みんなが楽しみにしてたお祭りを台無しにしようとして、犯罪に手を染めて、それで全てを失ったって聞いてもちっともかわいそうだなんて思いません…!」

 

「黙れぇ!!私はここからの仕上がるつもりだったんだ、あの七囚人を上手く引き入れ、兵隊を集めた。カイザーともうまくやっていく予定だっんだ……なのに…あの……筋肉娘が…!呑気に遊びよって…!」

 

「フンっ!最初からそっちを味方って思ってなかったんじゃないの?先生と合法的に本気で戦う為に犯罪を犯し、味方をつけた!スケバンは可哀想だよ、こんなバカな大人がトップでさ!」

 

「黙れェェェ!!!――ひ…ヒヒヒッ…!どうせ私はあの女にも見限られて終わりだ……なら…このまま、このままお前達を制圧し、これであの男を殺す!!そうすればカイザーは私を買い、また乗りあがられるだろうさ…!!」

 

 

 

 

 金、利益、儲け、それこそが彼が生きる意味彼が悪い大人である理由。

 謙虚な積み重ねで儲けを稼ぐ生き方は彼に限らず、横暴が横行するこのキヴォトスを生きる大人達の多くにとっては苦痛を伴う。だからこそ、それぐらいなら人を騙し、陥れ、儲ける方がいいのだ。

 

 

 

「………今、はっきりしました……貴方は悪い大人なんかじゃありません――貴方は獣です!金に取り憑かれた哀れな化け猫です!!」

 

 

 

 そんな彼に対し、イズナは心の底から幻滅した。 

 例え周りの状況が過酷でもめげずに生きている、シュークリーム屋の店長という存在を知ってるがゆえ、そしてレグロという存在がいるからだろう────マサムニェという大人はもはや大人ではなく、汚れた『怪異』にしか見えなかった。

 

 

 

 

「ほざくか!忍なんて物に憧れる、夢見がちな勘違い娘が!」

 

「夢は己で叶える物――─正義の忍者として、貴方を討ちます!」

 

「舐めるなァァァァァ!!!」

 

「――エイッ!!」

 

 

 

 マサムニェが叫んだその刹那、ツクヨがマサムニェに向かって何かを放り投げた。マサムニェは手榴弾だと思い込み、ガトリング砲でそれらを破壊した。……それが、決定打となってしまうとも知らずに。

 

 

 

「ゲホッ!?ゴホッ、ゴホッ…!!煙幕…いや、赤燐発煙弾か…!?―だ、だが…!」

 

「!」

 

「ニャハハハハハハッ!!!やはりそうくるか! そもそも貴様が悪いんだよ、勘違いキツネぇ!!」

 

「もう、あの頃のイズナではありません……今のイズナは、心を鬼にできます」

 

「にゃにを――!?」

 

「忍法!連続クナイの術!」

 

「小癪なっ───どわぁぁッ!!?ボォン!!!

 

 

 

 

 突っ込んできたイズナにマサムニェが意識を向けるが、その瞬間には既にガトリング砲の銃口にミチルがクナイが突き立てていた。マサムニェはミチルの出現でとっさにスティックの引き金を引いてしまい、ガトリング砲の砲身を爆発させてしまう。

 ガトリング砲が消えた今、イズナは風に乗るようなジャンプとともに銃座へと飛びかかり、彼をワイヤーガンで巻き取って拘束する。マサムニェに詰め寄ったイズナの元へ、ツクヨによって梁上から吊り下げられていたミチルも現れる。

 

 

 

 

「お金を手に入れられる簡単な方法を教えてあげます」

 

「この世で一番簡単で、いい方法!」

 

「にゃぁぁやめろぉぉ!!!?」

 

 

 

 

 イズナは鬼のような怒りの目でマサムニェを睨みながら胸ぐらをつかみ上げ、ミチルとともにマサムニェの顔面と腹にめがけて拳をねじ込んだ。

 

 

 

「真面目に、コツコツと!!」「働いてくだ──さいッッッ!!!!

 

「ウベェァァッ!!??!?」

 

「キャ、キャッチ!!」

 

 

 

 マッシュ直伝、小指から握ったマジ殴りを二発同時に受けたマサムニェは、銃座から転げ落ちるとともにツクヨに捕獲された。

 

 

 

「――獲ったどー!」

 

「あ、後はアケミさんだけ…!」

 

「急ぎましょう!この猫を連れて、退避です!」

 

 

 

 

 金に取り憑かれし怪猫:ニャテ・マサムニェ、撃破。

 

 

 

 


 

 

 

 

(なんという早さ…!なんという、パワー…!これが…あの……マッシュ・バーンデッド様の本気!)

 

「フンッ!」

 

 

 

 その頃マッシュとアケミは、周りの被害を度外視した全力接戦を続けていた。レンゲとスケバン達はその場から離れざるを得ず、巻き込まれないことを祈りながら見守ることしか出来なかった。

 

 

 

「セイッ!」ドゴッ!

 

「よっと」

 

「フンッ!」ゴシャッ!

 

「危ね」

 

「デリャア!!」ズオォッ!!

 

「効かぬ」

 

 

 

 

 マッシュは音速を超える速度でアケミの拳や蹴りを避ける。残像がはっきりと見えるほどの速度、そして音が遅れて聞こえてくるほどの速度。アケミは笑みをこぼさずにはいられなかった。

 

 

 

 

「フンフンフンフンフンフンフンッ!」

 

(百……いえ、千の足! それらが私を、追い詰めてゆく…!私の肉体へと深々と刺さる!私のこの肉体に……ここまでの、ここまでのダメージを!――ああ、なんと素晴らしい!)

 

「!」

 

「素晴らしいですわ、やはり貴方は天下の逸材…まさしく筋肉と戦の申し子です、先生!」

 

(マジか、僕の胸筋と腹筋を掴み取った。それも…僕の体に指がはっきりと突き刺さっている)

 

「もっと見せてください、味合わせてください!!」

 

 

 

 

 アケミはマッシュの腹筋と胸筋に指を突き立てると、肋間筋に指を突き入れるように握り込みながら跳躍した。雲を超えるような高さを目指したジャンプの頂点で、アケミはマッシュを頭から地面へ叩きつける姿勢で急降下に転じる。

 

 

 

 

「回転――全力…!」

 

(空中でここまでの遠心力を…!しまっ…手を!)

 

「落とす」

 

 

 

 その動作を予測していたマッシュは、体を強引に捻ってアケミを振りほどくと、その背を蹴って地面へと叩き落とす。しかし相手はあの栗浜アケミ、地面に打ち付けられる瞬間に大勢を立て直して両足で着地を果たし、小規模な地震に匹敵する衝撃と地鳴りを起こして降り立った。

 

 

 

「!」

 

 

 続いてマッシュが降下し、着地の勢いで地面に手を深々と突っ込む。マッシュはそのまま10m四方を超える範囲の地面をめくり上げると、津波を起こすようにアケミへ押し崩そうとする。

 

 

 

「フッ……フンッ――フンッッ!!!」

 

 

 

 アケミはサイドチェストからマッスルポーズを取った後、拳におそらくは神秘であろう力を溜め、それを倒れてきた地面に向かって叩きつける。拳がめり込んだ地面の津波は跡形もなく四散し、礫にまで砕かれる。

 

 

 

「……やはり好きませんね、このよくわからない力は――やはり生身こそ正義!」

 

「それはちょっと同意です……ねっ」

 

 

 

 アケミはマッシュを捕らえ殴りつけようと手を伸ばし続け、マッシュはそれを蹴りなどで防ぎ続ける。そしてアンリミテッドフィジカルモードが使える時間も残りわずか、早急に勝負を決めなければ体力が尽きてしまう。

 

 

 

 

「――っぐ…!!?(急に……全身から……ダメージが………!?)」

 

「音速パンチ、このモードだと使える技です」

 

(まさか……肉体がダメージを受けていることすらに気づかないほどの速度でパンチを…いつまに――違う……初めから、されていた!)

 

「フンッ!」ゴシャァッ!!!

 

「いぎッ……!?──(私の、拳が……砕け…て…!?)」

 

 

 

 マッシュはアケミの右拳を破壊、五本の指を等しく折った。それにすらもアケミは歓喜し、次の攻撃の準備に取り掛かる。

 

 

 

 

「アンリミテッドバイセップス魔法・スクアッドパンチ…!」

 

「―――今、私のテンションは……ハイッ――天元突破ですわぁぁぁぁっっ!!!」

 

 

 

 

 あのベアトリーチェを消し飛ばした、パンチの数が2乗ずつ増えていくラッシュが始まる。しかしアケミは、なんとそれを同じくラッシュで防いでいく。徐々に増していくパンチを満面の笑みで自分の拳で受け続ける様は、まさしく狂気そのものだった。

 

 

 

 

――――だがしかし

 

 

 

 

「ガハッ!グフッ!(早すぎる……時間でも、止められて殴られているかのような……早さ…!!)」

 

「フンフンフンフンフンフンフンッ!」

 

(顔は変わらずともわかる、全力を出している感覚……!)

 

「フンフンフンフンフンフンフンフンッ‼︎」

 

(――――痛い……痛い、全身に激しい痛みが伝わってくる――力ではいい勝負…しかし早さで圧倒的に負けた………彼は情けや、私が女性だからと言って手を抜く愚か者ではなく……心の底から私のことを思っての本気……)

 

 

 

 

 アケミの体が宙に浮き、彼女の全身の神経が強烈な衝撃を知覚し、万を超える拳が連続で体に入ってくる痛みを感じ取る。痛みだけが鋭く明確で……回復する気力ももはやない―――

 

 

 

 

「ならば…!」

 

(――…マジで?)

 

「フンッ!!」

 

「いっっっ…て……」

 

「一矢……報わせて……貰いました……―─しかしこれで、最後です!!」

 

 

 

 

 だが彼女は最後まで諦めずに、マッシュのスクワッドパンチを中断させ、そのまま鬼神の如き蹴りをマッシュに向かって放った。マッシュはその足に向かって、本気の、手加減なしのパンチを繰り出す。

 

 

 

「ハァァァッッ!!」

 

「――必殺」

 

 

 

 力を蓄えた前腕が手首をひねり、全身の筋力を一点集中したような打突と回転がその一撃に加わる。飛翔中に回転する砲弾のような、強烈かつ重厚な一撃が、マッシュの右腕から繰り出された。

 

 

 

「バイオメカニクス砲」

 

 

 

 その拳に蹴りが押し切られたアケミの腹部に、打撃が深々と刺さる。ひねりを加えて放たれた拳は、人間の関節の可動域という限られた範囲でありながらも強烈な回転を生み出し、アケミの腹を突き抜けた衝撃波が辻風を生み出した。

 今まで受けたことのない力に撃ち抜かれたアケミは体をくの字に二つ折りしたまま、激しく回転しながら城門と小口を突き抜け、石垣や漆喰壁を吹き飛ばすほどの衝撃とともに城へ叩きつけられた。

 

 

 

(―――天晴れ……ですわ……―せん……せ―)

 

 

 

 城は天守から大小の櫓を含めた全てが吹き飛ばされて崩壊し、完全に陥落した。マッシュは腕輪を拾うと、祖父のいいつけ通り律儀にそれを嵌め直す。

 

 

 

 

「――ナイスファイトでした、アケミさん」

 
「し、勝者───マッシュ・バーンデッドぉッ!!!

 

 

 

 マッシュは拳を天に掲げ、勝利をその場に証明した。切り傷はあるものの、骨は折れておらず、右腕以外に打撲もない。我に返ったレンゲが思い出したように軍配を掲げ、相撲の行司のようにマッシュの勝利を宣言した。

 呆気にとられたスケバン達はその戦いから勝利に至るまでの経過、そして勝利したマッシュの姿を前に感動すら覚え、無意識に武器を手放して物言いなくマッシュに投降していた。

 

 

 

「そしてありがとうございます、これでまた…僕は、強くなれました」

 

 

 

 彼はまた一歩、成長するのだった。





いろんなネタを使っちゃいました…‥てへぺろ。

戦闘BGMのイメージはご自由にお願いします、聞きながらでも楽しめるかもしれません。

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