「―――…っ……ここは…」
「あっ!姉御!!」
「よかった、目が覚めたみたいですね」
「みなさん……それに……先生―――そうでした……私は、負けたのですね」
倒壊した瓦礫が地面に広がり、アケミはその奥深くに埋もれていた。マッシュがそれらを蹴りの一撃で全て破壊し、彼女を開けた門前へと寝転がせていた。
目を覚ました彼女の周りには、マッシュ一行と自分の部下達が集い、ついでに気絶しているマサムニェが転がっている。腹にミチルの一撃を思いっきり食らったこともあり、マサムニェはなかなか起きない。
「完全敗北……生まれて初めて、味わった体験です。素晴らしいファイトでした…先生」
「こちらこそ、久しぶりに全力を出せました」
「………悔しいですわね――悔しい……この私が悔しい…?―――フフフッ…フフフフッ…!」
「な,なんで悔しいのに笑ってるの?」
「姉様が、一緒にお出かけをした時に言ってました。強さを持つ者、負けた事がない武人が初めて敗北して悔しさを理解した際、必ず笑っていた……と。人が初めて新鮮な感覚を味わった時に出る物と同じ…だと」
「分かる、初めて人に負けた時めちゃくちゃ悔しかったけどものすごく楽しかった思い出」
「先生が負けることなんてあるのか?」
「勉強」
「それは勝ち負けがあるものなのか?」
レンゲの新鮮なツッコミが来て『久しぶりのツッコミだ』と喜んでいたマッシュ、そして問題はこれからのこと。いくら誤魔化そうとスケバン達とアケミは郊外で犯罪をおこなってしまった、完全にヴァルキューレ案件だ。
「校内なら被害にあった人達がアレコレするんですけど、郊外での犯罪は流石に無理ですし…うーむ」
「フフフッ、ご安心ください先生。我々は確かに罪を犯しましたが……許してもらおうだなんて思っておりません」
「敗者をどうするかは勝者の勝手、私は大人しく矯正局に戻ることとします」
「い、潔いな」
「それこそがファイターとしての誇り、ですわ」
『姉御……着いて行きます!!!!!!』
敗北し逃げるのは違う、相手に敗北したのならその相手の好きに自分をさせるのが彼女のポリシー。まさしく天晴れ……世の悪党は彼女を見習ってほしい物である。
「レンゲさん、ご迷惑をおかけしました……しかし私が言うのはアレですが、もう少し物資流通のルートはちゃんと秘密にしておくべきでは?」
「は?そっちがこっちのルートを盗んだんじゃないのか?」
「いや、普通に漏れまくってたぞ。なんならここらのスケバン以外にも知られてたし……あっそれからさ、百鬼夜行って物資が不足してるのか?品質めちゃくちゃ悪かったぞ?」
「はぁ!?」
「おっときな臭くなってきた」
終わったと思ったら別の問題が発生、アケミ達がどうやって百鬼夜行の物資を運ぶルートを手に入れたかの話になる。そのルートは外部に知られていない秘密のルートであり、それをスケバン達が知っているのは明らかにおかしいのだ。
「ルートを決めているのって誰なの?」
「えっと、確か陰陽部だった気がします!……ということはつまり、陰陽部が裏で糸を引いていた!?――イズナ、直ちに出ます!」
「ストップストップ、カホさん達がそれをするメリットがないでしょ?」
「はっ…!そうでした!」
「じゃあ誰が……てかその情報は誰から聞いたんですか?」
「マサムニェさんです」
「よし起こそう」
マッシュは軽くマサムニェの頬を叩き彼の意識を覚醒させる、そして目が覚めハッとしたマサムニェは大絶叫。
「にゃぁぁぁぁっっ!!!?」
「ども元会長さん。お久しぶりです、マッシュです。とりあえず質問に答えてくださいね」
「ふ、ふざけるなよ貴様!!誰が貴様の命令なんて聞くか!聞くくらいなら死んだほうがマシだ!!何をされても話さんぞ!!」
「キャッチボールする人この指とーまれ、このマサムニェさんがボールね」
「「「「はーい!」」」」
「話す!!話します!!!話させていただきます!!!」
「プライドすぐぶん投げたな」
余罪がありすぎるしちゃんとした悪党だし反省のはの字もないしで遠慮はもういらないやと思っているマッシュはマサムニェでキャッチボールをするそぶりを見せ彼を自白させた。
そしてその結果。
「先生モード起動――ちょっと行ってくるね」
「なんか雰囲気変わった!?」
「大人っぽくなった……」
「愛らしさが減った…!?」
「わ、私もいくぞ!」
「じゃあ捕まっててねレンゲちゃん。イズナちゃん、マサムニェを逃さないようにおねがいね」
「は、はい!(ひぇ……主殿の冷たい目は怖いです…!)」
「――アケミさん」
「はい」
「面会たくさん行きますね、あと、また勝負しましょう」
マッシュは対戦後だと言うのに何事もなかったかのように飛び出し、今回の戦犯、と言うか情報を流した元凶の元へと飛んでいった。そんな様子を見て心の底から『なんなんだあの先生……』と思う生徒達。
「……お狐さん」
「イズナです!」
「イズナさん、先生のお弟子さんと聞きました」
「そうですが……何か?」
「おひとつだけ、どうしても聞きたいことがあるのです」
「なんでしょうか!」
「彼が常日頃強くなっている理由を、知っていますか?」
「うーん……難しい…ですが」
イズナはマサムニェをボンレスハムのように縄でくくりつけながら、彼女がマッシュの側にいながら感じることを素直に伝える。
「いろんな人と関わっていているからだと思います!」
「いろんな人と…」
「はい、強い人、弱い人関係なく関わって、その時の考えと違いを受け入れて吸収……そしてそれを自分の成長に繋げている……と!イズナは思います!」
「……人との繋がり――それ故の強化」
自分を満たしてくれると思ったものだけに本気になった、最後まで戦わず飽きてこもってしまった自分……、強そうな者にしか興味を示さなかった。そんな自分が突然恥ずかしく思えてきた。
「―――視野を広く持て、人との繋がりを大事にする………盲点でしたね」
「姉御…?」
「……さて、みなさん。私のわがままに付き合わせてしまって申し訳ありませんでした……私はしばらくムショの中で暮らすつもりですが…貴女方はどうしますか? 逃すことは可能ですが」
「……いや、せっかくなら姉御についていく!その方が面白そうだしな!」
「姉御!一生ついて行きますよー!」
「……そうですか――フフッ、そうですか」
伝説のスケバン、七囚人の一人……そんなあだ名がある彼女だが――今だけはただの、皆の頼れる姉御となっていた。強さを求めるのは諦めていない……しかし目指すものは決まった。
(―これから人生、楽しくなりそうですね)
マッシュという壁を乗り越えるための人生、自分を慕う者達との暮らしの人生……それらを楽しむために。
(――生きる気力が、今頃になって湧いてきましたね)
彼女は生きることを決めるのだった、
「――いやぁ、感動的ですねぇ……そしてデータもたーくさん……にゃはは♪」
陰陽部部室にして、10を超えるドローンとパソコンを手に、菓子を食べながらくつろいでいた天地ニヤ。パソコンとドローンにはマッシュの映像がびっしりあり、それらを集計しまとめていた。
「しっかし見れば見るほど信じられない力の人ですねぇ……そりゃあ百花繚乱の皆様もドがつくほどに警戒しますよねぇ……あっ、警戒しているのはキキョウさんとナグサさんだけでしたか……利用は……まあできなさそうですかねぇ」
キッと目を開き、マッシュとアケミの戦闘をもう一度見るニヤ。愉悦そうに、楽しそうに見ているの様子は怪しさ満点。
「今後のための先生の実力もしっかりと見れましたし、忍者研究部という戦力の強さもはっきりわかりました…―さらにヴァルキューレの尻拭いをしたという事実もゲット……いやぁ、作戦は大成功…です♪」
「へぇ……そういうことだったのか。私らの活動を再開させたのも、先生の力が必要だということを先生本人に実感させるためと」
「まあそうなりますねぇ――――え?」
「ニヤ様………そういうことだったのですか」
「部長……やりすぎー」
「ひえっ!?み、みなさんなんでここに!?というか,なぜこんな時間帯に!?」
その様子を後ろからこそっと覗いていたレンゲ・チセ・カホの3人。レンゲとカホは怒っている表情を見せ、チセは顔は変わらずだが無言で武器を持っているので怒っている。
「眠っている間に、凄いことがたくさんあってびっくりした」
「えっ、えっとーですね…?」
「物資のルートを教えたのもお前だったのか…!後から調べてみたら、奪われた物資全部元々撤去する予定の奴だったらしいじゃねえか!!弾薬も使えないものが多かったって聞いたし!食料はほとんど賞味期限ギッリギリのものばっか! 」
「それをうまいこと誤魔化し運ばせてスケバン達に回収させ好きに使わせる……それでスケバン達の行動をどんどん活性化させ先生を誘き寄せる。貴女が考えそうなことではありますが…」
「アケミさんとマサムニェが手を組んだのを確認した後の行動、全ては先生のお力を確認にそのデータを盗むための計画……襲われた人たちもグルだったらしいな!!」
「ニヤ様、ご説明していただけますか?」
「…だ、だって……あの先生ですよ?興味が湧かない訳ないじゃないですか。彼の本気はいまだ未知数でしたし、この目で見たいなぁって…ついでにそのデータを元に色々としちゃったりとか……てへ⭐︎」
愉悦の権化、愉快犯気質な所があるのが彼女ニヤ。マッシュを呼び込んでの混沌、マッシュの本気と七囚人のバトルというとんでもなく面白いものを見るためだけの計画。
「あっ、で、でもですよ?町の被害までは流石に計画に入っていません……いやまさか、中にまできて暴れるだなんて思っておらず…」
「…大体でわかるだろ!?キキョウとユカリも軽傷とはいえ怪我は怪我だからな!なんかすんなり被害額を払うなと思ってたんだ…!」
「ニヤ様、お覚悟を」
「町の人たちに、怪我がなくてよかったね」
「……いやまぁ、バレてしまったのなら素直に罰はちゃんと受けますよ。謹慎でもビンタでもどうぞお好きに」
「――という訳ですので先生」
「――――――へ?」
ズイッ!とニヤの後ろに立つマッシュ、しっかりと目をニヤに向け指を鳴らしながら彼女の側に居続ける。
「ニヤさん――正座しましょうか」
「ピエッッ!!?」
その後、ニヤはしこたま怒られ、後日正式に関係者に謝罪をした。町の被害も一部分程度で済んでおり襲われた人達もグルだったので事態は丸く治った。
はずがなく
「先生を危険な目に合わせたと聞いたのですが?」
「私を利用するとは……フフフッ、面白いですね」
後日しっかりといろんな人に詰め寄られまた泣くのでした。
「さあ先生!今日は腕相撲で決着をつけましょう」
「ナチュラルに脱獄してくるのやめません?カンナさんとリンさんから鬼電掛かってくるんですけど」
「あの程度の檻しか用意できない連邦生徒会とヴァルキューレが悪いのです、私の腕ならいつでも破壊できますので」
「……やっぱ一緒に働いたほうが絶対いいですよ、シャーレの中なら僕も自由に相手できますから」
「却下します、私は貴方の敵として戦いたいのです」
そして今となっては面会すら必要ないとばかりに、時々こうしてアケミが脱獄してくるのだった。
ニヤ様って原作でもイブキちゃんを魑魅一座に誘拐させて楽しんでたんですよね…………もしかしなくともこの人もやばいタイプなのだろうか。と思い今回の展開にいたしました。
次回、いよいよ体育祭です……お楽しみに
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