透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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マッシュ・バーンデッドと開会式

 

 

 

「――さあさあ、いよいよやってまいりました、キヴォトス晄輪大祭!!今年は例年に比べ、なんと参加する学園が大幅増加!しかも、シャーレの先生までもが参加しているというビッグイベントなのです!」

 

「そんな一大イベントの実況・解説・報道を任されたのは、我々クロノススクール報道部、川流シノン並びにこの風巻マイです―――が!!今回は特別中の特別なお祭り!というわけで、私達に加えて特別ゲストをお呼びしております!!」

 

「ど、どうも。マッシュの祖父、レグロ・バーンデッドです。キヴォトスの皆さん、息子がいつもお世話になっております」

 

「レグロさん、あまり畏まらなくても大丈夫ですよ!」

 

「いやぁ、こういうのは初めてでのぉ……」

 

 

 

 

 

 

 晄輪大祭当日。実況席には、クロノススクールより派遣された解説役の2名・川流シノンと風巻マイ、そしてレグロが待機していた。レグロが呼ばれた理由は、マッシュの祖父という特別な存在として各学園と連邦生徒会から推薦を受けたことによる。

 

 実況席には大型モニターが設置されており、ドローンカメラやライブカメラの映像が大きく映し出される仕組みとなっている。ディスプレイ表示を分割すれば、一人の生徒や特定のアングルに注目することも、スタジアム全体を映すことも可能という仕様であり、老人の目にとってありがたい限りの機能だった。

 

 

 

 

 

「それにしても、まさかシャーレの先生からのご依頼で、そのご家族の方とともにここに立てるとは……報道関係者として光栄の至りです!」

 

「報道って聞いて一番先に思い浮かんだのが君達の学校だったらしくての。今日はよろしくの、お二人さん」

 

「お任せください!それでは早速レグロさん、今回の大祭の見所などはどのようなものと思われますか?是非、レグロさんの意見をお聞かせください!」

 

「見所……うぅむ、皆が全力で挑んであるわけじゃし、一分一秒たりとも目が離せない…そう考えれば、この晄輪大祭の最初から最後まで全てが見所だと思うのぉ」

 

「流石は先生のお爺様…!!」

 

「おっと、まもなく開会式が開始されるようです!ではでは早速、各学園の選手入場と行きましょう!!」

 

 

 

 

 

 画面がぱっと切り替わり、ファンファーレと共に体操服姿の生徒達が入場してくる。しかしまぁ流石はキヴォトス、学園ことに個性あふれる入場をしてきている。実況席にいる三人は一学園ずつマイクで発表してゆく。

 

 

 

 

 

『エントリーNo.1!キヴォトス一治安の悪い学園と言われている超危険校!しかしここ体育祭においては全くの別、ただ純粋に勝利を求め正々堂々、そして凛々しく挑むと本番前に誓っていた!ゲヘナ学園!!』

 

『トップである羽沼マコトさんが神輿のように担がれてやってきてますね、下にいる生徒さん達も楽しそうです!』

 

『何人か体操服着崩してる…っていうかもうはだけてる子いない?』

 

『ゲヘナですから』

 

『それで解決するのどうなんじゃろ…』

 

 

 

 

 最初に現れたのは、万魔殿議員たちによって担がれた赤い神輿や山車のような乗り物の上に仁王立ちし、ジャージに袖を通さず羽織っただけという特攻番長のような姿のマコトが率いるゲヘナ学園の生徒達。

 他学園の生徒達を牽制するようにメンチを切る生徒達だったが、監視役のヒナがとてつもないオーラを放って威圧すると、マコトやゲヘコなど一部生徒を除き、一瞬で全員が大人しくなった。

 

 

 

 

『エントリーNo.2!おおっと!入場早々分かる気品の高さ!入場の列がまるで大隊の列のように綺麗に足並みを揃え、気高く、お嬢様らしい行進を続けております。トリニティ総合学園!!』

 

『先頭に立っているのがトリニティのトップ、ティーパーティーの御三方ですね!』

 
『あっ、見て見て皆、先生のおじいちゃんがいるよ!!おーい!!!』

 

『あっ、ミカちゃんじゃ!すっごい元気に手を振っとる、他がめちゃくちゃ気品の溢れる感じなのにあの子だけめっちゃ元気!』

 

『ふふふ…見ているかいレグロさん、私もいるよ』パタパタ

 
『あっ、隣にいたセイアさんも同じようなことを始めましたね。かわいいですね』

 

 

 

 

 

 温室育ちの甘ちゃんお嬢様なんて言わせない、とばかりの凛々しい行進でトラック上を進むトリニティ総合学園。エデン条約事件を経てその慣習や各派閥の方針は大きな方向転換を強いられ、大幅な革新と改革を遂げたものの、未だ権益政治力を重視する方向性が生む政争なかなか消えていないらしい。

 ほとんどの生徒達は、この体育祭で高い成績を残してティーパーティーや各派閥の上層に食い入ろうと画策し、そうはいかずとも何かしらの恩恵を受けて伸し上がろうともしているようだ。

 

 ティーパーティーの三名始め、各委員会や分派の委員長や首長には完全に見透かされているようだが。

 

 

 

 

 

『エントリーNo.3!今回の光輪大祭の運営主体はこの学園!その知能と科学力はキヴォトス一ィィィィーーーーッ!運動が苦手?問題無し! その知識ならば他には絶対に負けないという自信が!誇りが!自分たちにはある!!ミレニアムサイエンススクール!』

 

『心なしか皆さんとっても楽しそうな顔をしていますね!てっきり嫌々来ているものかと…』

 

『彼女らの中で何かが変わったのじゃあろうのー、自分らしく自信満々で何かをする。失敗を恐れない……それこそが彼女らじゃ』

 

 

 

 

 

 

 ここで自分が手助けをした点について触れないのが、レグロという大人の器を如実に示している。

 『転んで足を引っ張ったら周りから冷たい目を向けられる』『無様な姿を晒して、野次が飛んでくるのが怖い』…
 そんな生徒達の声をレグロは正面から受け止めた。中にはその言葉が、自分の生涯に返ってきているようにも思えたこともある───だからこそ、レグロははっきりとミレニアムの生徒達に言ったのだ。

 

 

『足を引っ張るなと言われた時の冷たい目……それは永遠に忘れられないじゃろう――しかし今はどうじゃ?このミレニアムに、それを向ける者がおるのかの』

 

 

『胸を張って自信満々にすればいいのじゃ、それで笑ってくる者達の声は聞かなくても良い……大事なのは身内じゃ、身内の声だけを、聞いておればいいんじゃ』

 

 

『もしも変な野次とか飛んできた時は任せなさい、ワシが喉をぶっ壊すほどの勢いで叱ってやるわい!』

 

 

 

 

 

 はっきりと、そのように言ったのだ。同じ気持ちの仲間がいる、フォローし合える仲間がいる。それに運動では負けてようと他の要素では勝っているのだから卑屈になる必要はないと、ミレニアムの悩んでいる生徒達は思いそうしたのだ。

 

 

 

 

 

 

『エントリーNo.4!廃校の危機から一変、絶望的な状況から天下の特殊作戦部隊へと返り咲いた強豪校!戦闘能力、統治力、どれもこれもエリートそのもの!!SRT特殊学園!こちらも軍隊のような綺麗な行進です!』

 

『先生が救った一つの学園ですね!』

 

『ワシの孫ほんとすごい……そしてあの子達も、エリートに上り詰めるまでかなり頑張ったんじゃろうな──皆、立派じゃなぁ』

 

『あっ!SRTの生徒達が、一斉に見事な笑顔を見せています!』

 

 

 

 

 

 まさしく軍隊そのもの、表情も行動も全てがエリートの集い、といった整然さを放つSRT特殊学園。しかしレグロは彼女らに対し、「エリートであること」ではなく「エリートに上り詰めるまでに重ねた努力」を高く評価した。マッシュに助けられた経験に加え、彼の父親から掛けられたその言葉に胸打たれた生徒達は、軒並み誇らしげな満面の笑みに変わった。

 
「先生のお祖父様…言葉に不思議な暖かみがありますね」
 
「私達がここにいられるのは先生のおかげ…更に言えば、あの人のおかげなんだ。あの人のためにも、RABBIT小隊として全力を尽くそう」

 

 

 

 

 

『エントリーNo.5………おおっと!?入場早々、華やかな花びらが空高く舞い上がりました!!花吹雪の中を進むのは、百鬼夜行連合学院!何かの忍術か手品でしょうか!?文字通り今次大会に華を添えてくれました!!』

 

『よくみたらものすごい勢いで走っている生徒が見えますね……あっ!?あれは忍者です、くノ一の格好をしております!!』

 

『あの動きどこかで………あっ思い出した、マッシュの動きじゃ

 

『その様子はまさしく妖の跳梁跋扈、夜道を我が物顔で闊歩する百鬼夜行だぁ!』

 

 

 

 

 道や空に桜の花を散らせ、そこを楽しそうに歩いていく百鬼夜行。ナレーションにもあった通りまさしく百鬼夜行、しかし花吹雪を発生させているのは忍術研究部によるものだ。

 
「まつりに、はなを〜さっかせましょ〜♪」
 
「咲っかせましょ〜!」
 
「さ、咲かせましょ〜…!」

 

 

 

 

『エントリーNo.6!もはや隊列とはなんだと言わんばかりの護衛体制!トップであるキサキさんは今回の体育祭にて無茶ができないという事で、ある一つの競技に出るそうですが、それにしたって個性的!山海経高級中学校!』

 

『今回の晄輪大祭には、主に食材提供と言う点でとっても活躍してくれて、売店にある玄武商会の料理はまさしく絶品でした!』

 

『生徒達同士で睨み合ってる気がするけどいいの…?』

 

 

 

 

 次に入場したのは、玄龍門の生徒達がキサキを取り巻いて護衛する形で進む山海経高級中学校。キサキの体を考慮してか、彼女は他の生徒の肩の上に乗せられている。取り巻きの玄龍門が後方から続く玄武商会と睨み合っていたり、更に後ろから続く梅花園の園児たちとの温度差が開いているように見えるのは気の所為である。たぶん。

 

 

 

 

 

『エントリーNo.「グォォォォォォォッッ!!」わぁぁぁぁっっ!!?』

 

『く、クマ!クマです!!レッドウィンターの腕章を腕を巻きつけたまま四足歩行で現れたクマの上に、事務局員たちが乗っています!!クマは走ってこそいませんが、こう、派手です!!流石はレッドウィンター!!』

 

『あのクマ何!?』

 

『えーと……先生の友達であるクマきちが率いる、レッドウィンターの構成員…らしいです』

 

『それアリなの!?』

 

 

 

 

 高笑いをしながらやってきたのはクマきちやその他クマ達の背に乗りながら行進してきたレッドウィンター。走ってはいないが目立つ目立つ、流石はレッドウィンター、やることなす事めちゃくちゃだ。

 

 

 

 

 

『き、気を取り直して。エントリーNo.7!絶望的な借金の返済に成功し、地域の人たちの協力のもと復旧作業も進みつつある起死回生の代名詞にして、まさしく学生の本分である青春を全力で楽しむ王道高校!数は少なくとも熱意は一番!アビドス高等学校!』

 

『人数が他と比べてかなり少ないようですが、観客達の数は一番のようですね!観客席を御覧ください、生徒達行きつけのラーメン店の店主さんと常連の方々が、"対策委員会がんばれ!"と書かれた横断幕を掲げています!!』

 

『数は少なかろうと、アビドスの子らは廃校となる学園を、その土地を救おうと今もなお頑張っている強い子達じゃ。しかも生徒達一人一人が、あのマッシュも認めるほどの実力者……他に遅れをとることは、決してないじゃろう』

 

 

 

 

 

 数は少なかろうと強さは別格、各々の意思は大隊にも劣らず強力。委員長であるホシノもポニテでやる気満々、なぜかはわからないが、他学園達はアビドスに対してかなり警戒心をその場で抱いた。

 

 

 

 

 

『エントリーNo.8!まさかのたった二人!どれだけ忙しいんだ!というかどれだけ運動したくないんだ!普通は部下が出てるのになんで一番上が出てきたんだ!連邦生徒会!』

 

『日々の激務に比べたら光輪大祭なんて赤子を捻るよりも楽な作業です、とのことです!』

 

『仕事休めて嬉しいのかめちゃくちゃいい笑顔しとる……と言うか二人で大丈夫じゃろうか』

 

『楽しむことが目的らしいので』

 

『わあ楽観的』

 

 

 

 

 

 満面の笑みを浮かべながら軽く手を振るい、堂々と行進してくるたった二人の生徒……連邦生徒会の行政官が晄輪大祭に出るのはキヴォトス史上初であり、あの連邦生徒会長ですら出場記録はない。ハイネの意気揚々とした笑顔、それすらも上回るリンの輝く満面の笑みもあって、盛り上がりと困惑が同時に起こっている。

 

 

 

 

『エントリーNo.9!連邦生徒会が誇るキヴォトスで最も頼りになる団体であり、今大祭に出場する理由は青春を楽しむこと、ただそれだけ!しかしそれでいい!連邦捜査部S.C.H.A.L.E.(シャーレ)ぇ!!』

 

『目つきが本気ですが、どこか楽しそうでなによりですね…あれっ、レグロさん!?どうしましたか!?』

 

『ううん、なんでもない…なんでもないんじゃ…!』(大泣)

 

 

 

 

 

 アリウス分校の生徒達が体操服を着込み、陽の下に行進して晄輪大祭に出場している───これだけでも、世の先生方(ブルアカユーザー)は涙して歓喜するであろう……事実、レグロは彼女たちの努力が報われた瞬間を前に、まるで親のように泣いて喜んでいた。

 

 凛然と並んだ隊列が規則正しく歩を進める中でも、生徒達は笑顔を忘れない。意識せずとも自然と笑顔が溢れる"普通"を全身全霊で楽しむアリウス生徒達の姿に、レグロは涙して手を両手を振った。サオリの号令に従い所定位置で行進を止めたアリウス生徒達は、実況席のレグロに対して敬礼を返した。

 ちなみにここまででレグロは滝のように涙を流し、ティッシュ箱一つを使い切るほど泣いた。

 

 

 

 

『以上が今回出場する学園達でした!数も多く大盛況ですね』

 

『ここアスレチックスタジアムのステージにて、各学園が無事勢揃いでき、これで心置きなく開催できます…………しかしみなさま、誰かを忘れてはいないでしょうか』

 

『ええそうです、一人、まだ一人ここへ登場していません!さあ皆様、皆様が待っていたのはこの方でしょう!この場いる学園の生徒のほぼ全員が彼によって救われた、彼と手を取り、同じ時と喜びを分かち合った!その知名度、人気、好感度共に、キヴォトスの生徒で随一を誇る者!!』

 

 

 

 

 

 すると、スタジアム上空から跳躍してきた影が現れ、それがスーパーヒーローのようにスタジアム中央へと着地した。その手に持つは一つのシュークリーム、姿はトレーニングウェア。彼の登場に会場は大盛り上がり、歓声が響き渡る。

 

 

 

 

『マッシュ・バーンデッド先生!!』

 

『所属は勿論シャーレ! 出る競技は当初少ない予定でしたが、それではあんまりなので多くの競技を増やすことによって補いました!パワーバランスがおかしい? 先生の居場所はシャーレ、シャーレが我が家なのです!!』

 

『マッシュゥゥゥ!!ファイトじゃぞぉぉぉ!!』

 

「いえーい、がんばりまーす」

 

 

 

 

 

 手を振るい湧き上がる歓声をしっかりと耳にするマッシュ、少し照れ臭くなりながらも自分の場所へ行き黙って立つ。

 

 

 

 

『それでは、開会式と参りましょう!選手宣誓はやはり、この方、マッシュ先生からです!』

 

『いやぁワクワクするの〜』

 

 

 

 

 マッシュが表台の上に立ち、マイクの元、右手を大きくあげ正しい姿勢と言葉を告げようと口を開けた。

 

 

 

 

 

『センセー、えっと……あれ……(……やば、内容忘れちゃった……確か、この大祭の意気込みを話すんだっけ……?)』

 

 

 

 

 その途中で内容をド忘れしてしまったマッシュだったが、それでも心の奥底から湧き上がる気持ちを言葉に変えるように、今大会への意気込みをはっきりと宣言した。

 

 

 

 

『みんなで最高の思い出を作ることを、ここに誓います』

 

『――先生らしい!とても、とても良い宣言をありがとうございました!!』

 

『それでは皆々様、大変お待たせいたしました!!競争はしえど、勝ち負けは重要だが一番は楽しむこと!!――今宵、キヴォトス最大のお祭りが開催されます!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キヴォトス晄輪大祭、スタートです!!』

 





さ、流石にあのハナコちゃんのアレはやめておきました、面白いけど……けども、ね?流石に今のトリニティのアレコレを下げようとするのは……ね?

 次回からどんどん競技を行なっていきますのでお楽しみに。

シュークリームクラブのみんなの活躍もお楽しみに

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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