アイン、ソフ、オウルの三人を見た妹先生です。
《かわいい!!かわいい!!かわいい!!しっぽ可愛い!!メカクレかわいい!!!!ちっちゃい!!……いや本当に可愛い……所で実装は?》
《ガッツリ敵勢力だから、諦めた方が良いかも知れない》
《やだ!!!!!!》
可愛いですよねあの三人……弟先生?マルクトに脳焼かれて浮気してますね。
「………ねぇ、何で私たち水上バイクに乗ってんの?」
「乗らないとまともに先生達と戦えないからってさ」
「そんなことある?」
「考えてみろよ、あの四人だぞ。むしろ棄権しないだけでもすごいって言って欲しい」
時は体育祭が始まり、時刻は昼前に差し掛かっていた。
参加選手の人数は、マッシュを含めて7人。
「……聖園ミカ」
「アッハハ、ヒナちゃん?それ以上言ったら怒るからね?」
「ピッチピチね」
「私は二人と違って栄養があるんです〜」
「腹が?」「腹がか?」
「よ〜し、先に此処でバトっちゃおっか⭐︎」
「ミカさんストップ、二人もチクチク言葉禁止」
「ごめんなさい(チクチク言葉って言った……?)」
「悪い…(──チクチク言葉……ほーん)」
「あーもうマッシュ君かわいい⭐︎(ごめんね先生、緊張でおかしくなっちゃってた)」
「ミカさん逆です、本音と建前が逆です」
一見すれば緊張感も何もない、ふざけた会話を交わしているだけの四人だが───ある意味、この大会で最も危険な存在と呼んでも差し支えない。
神秘でビームを連射し翼で滑空するゲヘナ最強の風紀委員長、空崎ヒナ。
『えー…みなさん!そろそろ準備はよろしいでしょうか!?』
『しかしこのトライアスロン、意外と早く終わりそうな気がするのは私だけでしょうか』
『マッシュー!腕輪は取っちゃダメじゃぞー!』
『棄権者がいないのがびっくりです!皆さんあの勇気ある三人に拍手を!!』
開幕の瞬間が近づいた。四人はもちろん水着を着用しており、特にマッシュは浮き立った筋肉でピチピチに張り、ミカはナギサ謹製のロールケーキでパッツパツの状態となっている。対してヒナとネルは余裕があるというべきか、どことなく物足りないように見える……のは、(本人たちの尊厳も考慮して)気の所為であるということにしておこう。
まあそんなことは置いておいて、この四人と対等に戦うため他の生徒達は皆水上バイクに乗って準備を整えている。ミレニアムが開発した新型ジェットスキーということもあり、その速度は一般生徒では制御困難な程にまでチューンアップ済みである。
「――負けないよ」
「こっちこそ⭐︎」
「後で泣いても知らねぇぞ」
「上等よ」
四人は海面に足をつけ、合図に応じて即座に水へ飛び込む準備を整えた。水上バイクに乗っている生徒達もエンジンを吹かし、加速開始の瞬間を待つ――そして、始まりの時はすぐ。
『ではでは行きましょう!!キヴォトス晄輪大祭、トライアスロン――スタートです!!』
その合図ともに、選手らは一斉に行動を開始。水上バイクに乗っている生徒達はマシントラブルもなくスタートし、僅差で並び合う状態となった───しかし。
『――い、いきなり波乱の展開です!先頭がシャーレの先生になると思いきや、なんと争っているのはネルさん、ヒナさんの2名です!モーターバイクの皆さんはそれに追いつきそうで追いつけない感じになっております!』
(は、速ぇぞ!!!?)
「こ、これでもエンジン全開なのに……!?なんかあの人おかしくない!?」
「あと……なんか…」
『――ヒナ委員長だけ飛魚みたいになってるゥゥゥ!?』
「んぷはぁ!待ちやがれぇッ!!」
ヒナは水中に飛び込むと同時に、鍛え上げた脚力で初速をつけるように加速した後、急上昇によって海面から飛び出して翼を広げて滑空していた。原理としてはトビウオの習性と同じであり、ヒナは滑空と着水を組み合わせることで水泳とは思えない高速移動を可能としていたのである。
対してネルは持ち前の持久力と肺活量を生かし、息継ぎを挟むことなくクロールを続けていた。ヒナの高速飛行に対してこちらは単なる力押しに近いが、呼吸のタイムロスを伴わない上、全身に渡ってネルの筋力を活用することで魚雷のように水中を突き進んでいく。驚くべきことに、ネルはこれだけでも十分ヒナに追従できていた。
(あの二人は―――)
ヒナが少し後ろを確認した、その瞬間――激しい暴風と波飛沫がヒナを吹き飛ばし、横方向へとサイドスワイプするように海面へと叩きつけた。
「ぷはぁ…!?な、なに!?」
「なんかすごい勢いで吹き飛ばされたけど…!?」
「――先生か!!」
次の瞬間、マッシュが海面から姿を表す。勢いをつけ此処まで泳いできたのかと思い、即座に選手たちは体制を立て直すが――そこで一つの違和感に気づいた。
『―――せ、先生です!!なんと、先生は泳いでいません!走っています!海面を全力疾走しています!!』
『そしてよく見たらその両肩を聖園ミカさんが掴んで運ばれて……いえ、サーファーのように引っ張られています!!』
「嘘だろ!!?」
『えーと、トライアスロンに水の上を走ってはダメというルールはないので……セーフですね!』
「それはそもそも走る人間がいねぇからだろうが!?あんなもん真似できてたまるかぁぁぁっ!!!」
マッシュは海面を走っていた。
「エホエホエホ……ミカさん、どうかしました?」
「どうしても何も、反射的に掴んじゃったの!いきなりあんなことしてびっくりしたんだからね!?マッシュ君のせいだよー!」
「何とか振り切れないかな」
「私の握力、舐めてもらっちゃ困るかなァ…!!」
「うげっ…ほんとに強いや。ミカさん、もしかしてそれも太っ」
「せえぇぇぇい!!」
「んべっ」
ミカはマッシュが何かを言おうとした瞬間に全体重をかけ彼を海の中へと引き摺り込んだ。マッシュはミカの腕を掴みながら海面へと上がる。
「ぷはっ……──何するんですかミカさん」
「そっちこそ何言いだすのさ!?私は別に太ってないの!筋肉量が増えただけ!」
「あっ、そうだったんですね……でも筋肉量が増えただけならお腹周りとはシュッとしてぴちぴちになったりはしな――」
「ウオリヤァァァァッッ!!!」
ミカは水中から右腕を勢いよく振り上げ、海水の塊をマッシュに叩きつける。強烈な水圧と衝撃だが、それでもマッシュが吹き飛ぶことはない。
「太ってない!!!」
「すみません」
「次言ったらいくらマッシュ君でも本気で蹴るよ!?」
「ほんとすみません」
『ミカ選手とマッシュ選手!何かを言い争っています!なんか楽しそうですね!』
『……これって争っているというかただイチャイチャしているだけでは』
『スト────ップ!!ストップじゃ!会場からすごい圧が感じるからやめておこうね!』
ぷくっと頬を膨らませながらプイッとそっぽを向けるミカ、マッシュは『やってしまった』と落ち込みながらもミカに謝ろうとするが、その瞬間、謎の気配が急接近するとともに水上バイクのモーター音が近づいてくる。
「最後まで私の羽根に掴まってなさい、このままあの天使に向かって突っ込むから」
「なんでですか委員長!!?できればそのまま通り過ぎてくださいよォ!?」
「委員長!顔!顔がすごいです!」
「言っとくが仕方なくだぞ!?海岸近くまで行ったらそのまま投げ飛ばすからな!!!」
「ヒェェッッ!!?」
羽を大きく広げ海面から出しながら泳ぐヒナ、その羽を左右それぞれに選手である生徒が掴んでいた。そして背中に生徒を一人担いだまま泳いでいるネル、追い上げがすごく今にも追いつかれそうな勢いだった。
「何それどんな状況!?」
「私が泳ごうとしたらこの二人が羽根に捕まったの、だから仕方なくそのまま泳いでいるわ」
「背中にピッタリと張り付いて離れねえから仕方なく運んでやってんだよ!」
「頭使って勝ってやりますよぉぉ!!」
「わお、協力プレイってやつだ」
「そうなのかなアレ」
バイクをひっくり返されて溺れる危険に晒された3名は、ネルとヒナに便乗する形で海岸まで到達することを試みていた。規則上は反則扱いになってもおかしくはないものの、今回は状況から「放置すれば溺水の危険も否定できない」として特例的に認められる形となる。
「じゃーあ……えいっ!」
「わっと…?」
「先生、ゴー!」
「ゴーって、これ競い合いじゃ」
「このままじゃ二人とも負けちゃうよ?」
「……仕方ないですね――負けたくはないので、行きましょう。でも…よっと」
「きゃ…⁉︎」
マッシュはミカを背負った――のではなく、サーフボードのように彼女を背に乗せて泳ぎ始めた。圧倒的な加速で海面を泡立てたマッシュが後続の生徒達を引き離し、ドローンカメラが撮影した激しい船首波と長大な航跡がスタジアムのディスプレイに投影される。
「―――ずるい……私だって先生の上に……」
「ひ、ヒナ委員長がシナってる…!?」
「……あっ、あぁぁヒナ委員長!あの天使ものすごくいい顔してますよ!まるで『ドヤ!』って感じで!」
「ぶち抜くわ」
「よしっ!」「ナイスゥ!」
「――いい度胸だな……おい、しっかり捕まってろ――死ぬ気で追い抜く…!!」
「ヒィィイヤァァア!!?」
開始からほんの2分程度で、マッシュらはトライアスロンの海部分を制覇しようとしていた。あんまりにも早すぎるので『トライアスロンってこんな早く終わりそうになったっけ…?』となる観客達であった。
『海が終わり今度は陸上競技に移ります!第二レースは自転車ですが、しかしそこで思わぬ出来事!マッシュ先生とミカさんは自転車を壊さないようにと力を落ち着かせていたためかなりのタイムロスとなってしまい、他の5名が先頭争いをすることとなってしまいました!」
『しかしそれももう終わり!残すはあと僅か、D.U.市街からスタジアム内トラックにかけてのランニング、その終盤のみです!』
「うぉぉぉ此処まできたら負けたくねぇぇぇ!!」
「体力はまだ余っている!チャンスはある!!」
「でも……速いぃぃぃ!!」
スタジアムに戻ってきた七人は、残す試練である徒競走に挑んでいた。だが低身長コンビであるこの2人は強い、これまで二つの激しい戦いがあり体力が消耗しているとはいえ、そのスピードはまだまだ衰えなかった。
(さすがは、ミレニアム最強…!なんて持久力!)
(ゲヘナ最強って言われるのもわかるぜ…!こいつは……すげぇ――だから、なおさら勝ちてえ!!)
距離をどんどん開けていき、ゴールに近づいてきたという――その時。
「――負けないじゃん…ね!!!」
(――マジか…!あんだけ差があったのに……先生は…いねえのか…!!)
(こんな短時間に……!)
背後からミカがやってきた。早さは互角――しかしその速度は異次元、一瞬のうちにネルとヒナの元へと追いついてしまった。
「舐めんじゃ…ねえぇぇ!!」
(嘘でしょこっから加速!?)
(まずい、距離が…!!)
そこからネルが距離をかなりかけ離し、後もう少しという所にまで着く、これまでかと、ヒナとミカが諦めていた………――その時。
『ミカさぁぁぁぁん!頑張れぇぇぇぇぇっ!!!』
『委員長ファイトぉぉぉぉぉ!!!』
聞こえたのだ、仲間達の声が……その声が、一つの声が――2人に力を与えた。地面が割れるほどの踏み込みを行い、2人はネルに近づく。
「負け…!!」
「ないぃぃぃぃいっ!!!」
「…だぁぁぁぁぁぁっ!!!」
3人が、ほぼ同時にゴールテープを超えそうになった――刹那、一つの光が三人の横を横切った。
「――お先に失礼」
(―――マジでか……!!?)
(此処から、ライディングの終了地点まで……10kmは距離があったのに!)
(此処まで一瞬で――)
後続三人を一瞬のうちに掴み、ゴール手前まで持ってきたマッシュだった。マッシュが先程までいた場所の地面は大きく抉れ、走った時の突風で会場内にいた生徒らが吹き飛びそうになる程だった。
『――ご……ゴ───ルッ!今、ゴールしました!!マッシュ・バーンデッド先生が1位でゴールインです!!』
『そのまま続いて他の生徒達も続々とゴールイン!一位がマッシュ・バーンデッド選手、二位が聖園ミカ選手、3位が空崎ヒナ選手、僅差で4位が美甘ネル選手という結果になりました!』
『そして此処まで諦めずに勝負を挑んできた他生徒3名の皆さんもゴールイン!勝者はマッシュ・バーンデッド先生だぁぁぁ!!』
ゴールテープを勢いよく振り切り、一位となったマッシュ。しかしそこで終わりではなく、マッシュは他の六人の生徒元へと向かった。
「や……やっぱ…先生って……すごいですね…」
「負けちまったかぁ……やっぱ…最強には、程遠いか」
「恥ずかしいなー、なんてね…」
「んな事ねぇ、お前らは私らに最後まで食いついたんだ……それだけで十分すぎるくらいには、誇れるだろ」
「その通り、恥ずかしいだなんて思わなくてもいいわ」
「一瞬だけでも、私よりも前を走ってたし……それって自慢できる事だよ?」
結果は残念な順位だったといえど、最強4人以外の3名は最後まで棄権せず食らいつき走り切った。これは十分すぎるくらいにはよいことだ。
「この勝負の一位は僕だけど、気持ち、頑張りってことを踏まえると……みんな一位って事で」
「……そうね――いいバトルだったわ」
「次は負けねえ……絶対にだ」
「あーあ、あの自転車が無ければ勝ってたんだけどなー……なーんて、嘘嘘――次はちゃんと勝つから」
「負けたけど…」
「なんか…」
「……スッキリする…‼︎」
マッシュ達は手を繋ぎ合い、上に上げる、そのまま姿勢良く礼をした。湧き上がる歓声と『あなた様ぁぁぁ!!』や『委員長ぉぉぉぉ!!!』や『ネルせんぱぃぁぁぁい!!』やら『ミカ様ァァァ!!』などの涙が混じった叫び声を肌で受け止めながら、トライアスロンは終了するのであった。
『えー…では、続いて────大食い競争です!!』
「待って嘘でしょ?」
直後、大食い競争の開始が宣言された。
このイベントもあともう少しとなりました、早い。次回に大食い、かくれんぼ、ムカデ、二人三脚、応援合戦を終わらせ、最後にリレーをやる感じにいたします。
流石に……ね、全部がっつりやると……尺が……
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