次回の投稿は来週の月曜日からなので、どうかご勘弁を……
アニメ勢の方に言っておきますと、デリザスタくんは五兄弟の中でまだまともで強さも平均ぐらいです。これよりも頭がおかしい兄はたーくさんいるので、お楽しみに
「……お前、僕の友達に何してるんだ――潰すぞ」
「ハッハハハハハ!お前そんな顔できたのー!?まじで知らなかったわー……知らなすぎて……ほら、目から鱗が出ちゃった」
「マジで?」
「そんな簡単なことに騙されないで!?」
「まあまあ、初対面なんだし……今日は楽しもうぜ?…なんたって今日は」
謎の人物・デリザスタが腕を上げた瞬間、突如として地面が盛り上がり、白骨の腕が土を割った。現れた無数の骸骨、もといスケルトンの大群が、神輿のように彼を持ち上げる。
「パーリー!パーリーパーリーピーポーイェーイ!!」
「なんでいきなりここで酒?」
デリザスタは不気味なほどの能天気さでシャンパンのボトルを開けると、スケルトンの群れからのコールを受けながらボトルを飲み干した。
「からの水タバコ……超チルだわ」
「私ああ言うタイプの人間って大っ嫌い」
「楽しそうですね、一人で」
「んだよーノリ悪いなぁ!ノリが悪い奴は人生の生きる価値無いってのにさぁ……つぅわけで」
直後、デリザスタは突如として杖を振った。出現した大剣は超音速でマッシュに斬りかかる。
「アスカロン!」
「キキョウちゃん、僕の後ろから離れないで」
一つに留まらず魚群のように襲いかかる大剣に対し、マッシュはその拳で次々と抜き身を破砕していく。しかしマッシュのパンチを受けた大剣は、これまでの敵とは異なり粉砕されなかった。拳がめり込みヒビが入り、中には大きく曲がって拉げる剣も存在したものの、完全に破壊できたものは一握りだけ。
「ハハハハハッ!ヤッバ!激ヤバじゃーん!?50%のアスカロンをこうも簡単に防がれるとか初めてだわ!――けどまぁ、俺もお前も全力は出せてねぇからなぁ……後ろにいる足手纏いの子猫ちゃんが余波で怪我をしないように半分の力で動いてる、ってか?」
「違いますけど」
「なら目ェ合わせろや」
(――瞬きをする一瞬で、あれだけの攻撃を繰り出してくるだなんて…! それを防ぎ続けている先生も先生よ…!)
音速を超える速度の大剣を両の拳で砕き弾いているマッシュ、攻撃を無効化されつつもさもありなんと眺めるデリザスタ。両者共々、この状況に動じないまま応酬を繰り広げている時点で、怪物と呼ぶべき実力の持ち主だった。
「そもそも、貴方は誰ですか」
「あー……そうか、そういやこっちじゃ初対面だったな。――端的に言えば、イノセント・ゼロの息子」
「──って事は」
「俺の名前はデリザスタ……お前の兄貴だよ」
「えっ……普通にショック、血のつながった兄貴がこんなクズだったなんて……うわぁ、寝覚め悪くなる」
「テメェまじで殺す」
デリザスタが再び杖を振ると、超高速の大剣が連続でマッシュへと斬りかかるように飛翔する。加えてデリザスタの背後からだけでなく、地面や上空に出現した魔法陣からも剣が無数に飛び出し、留まったまま防御するのは不可能なほどの数がマッシュとキキョウへ集中した。
「初対面でいきなりクズ呼ばわりってのは失礼だよなぁ!どんな教育受けてんだ?」
「お前がクズだってことが分かるくらいの教育は受けてきたってことだよ──―あと、キキョウちゃんを餌にしようとした時点でクズだろうが、そんなお前に言われたくない」
「アッハハハ、ちげぇねえ!」
「先生──……あいつと先生は、兄弟なの…?」
「そうらしいね、初耳だけど。でも……言ってる事は本当な気がする」
「初めて会った他人なのに、なんでわか──―きゃっ!」
「逃げながらだけど教えるよ……けど街の方には行けないから、とりあえずこの山を走り回るね」
どこまでも追尾してくる大剣をを避けながら、忍者のように森の中を駆け抜けるマッシュ。傍に彼女を抱え避けつつも、スケルトンに担がれて追いかけてくるデリザスタの姿を見失わないように立ち回っていた。
「話の続きだけど、血の繋がりの気配っていうのかな……なんとなく感じるんだ、アレが僕の兄貴なんだって」
「性格は真逆っぽいけど……ひゃっ!」
「それは僕も思ってる─――けどアレは、僕が嫌いな相手と同じ気配も感じたんだ、だから…間違いない。あれは僕の兄弟で、敵」
吐き気を催す程の邪悪……程ではないが、マッシュが嫌悪する敵と同じ気配を発しているデリザスタに、マッシュは確信を固めつつあった。自分の兄であることには驚かされたものの、今のマッシュにとって家族と言えるのは育て親のレグロと、シャーレで共に時間を過ごした仲間たちだけだ。
スパンッッッ!!!
「―ぶねっ」
「森が……!?」
「手応えのある樹がこんだけ並んでんだ、良かった良かった!――さて、これでようやく逃げ場は潰した……ほら、さっさと本番楽しもうぜ」
だが、いずれにせよ余計なことを考える暇などなかった。デリザスタは大剣を収束、融合させて刃渡り数十メートルの巨剣を生み出すと、大振りで森の木々を刈り取る形で吹き飛ばしながら、マッシュとキキョウの逃げ道や隠れ場を消し飛ばしてしまった。
「所でお前、この世界で魔法とかって見てきたワケ?」
「……それなりには」
「そっかそっか…んなら話が早いわー!――俺の魔法の能力…それはこういう感じの矛を生み出す力…言うなれば矛魔法」
「シンプル」
「剣の名前はアスカロン。どうだ、カッケェだろ?」
「――いいセンスだとは思います」
「素直に答えないの!」
デリザスタはニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべながら無数の剣を召喚し、誇らしげに能力を見せびらかす。しかし、内容は聞くに堪えないほど薄汚く野蛮だった。
「こいつはすげぇんだぜ?昔、暇潰しがてらドラゴンの里を荒らしたときはよぉ……一撃でみィんな死んじまったんだわ。人間に興味もねぇようなボケた奴らだったから、やりやすかったってのもあるけどなぁ」
「……何の罪もない生き物を、遊び感覚で殺したの…?」
「あっそうそう、ここには耳が
マッシュはデリザスタの会話を途中で止め、彼に向かって石を蹴り飛ばした。デリザスタは、アスカロンの刃先を石に向けて切り裂いた。しかし、マッシュの顔を見たデリザスタからは下卑た含み笑いが消える。
「黙れ」
「……はっ、なんでキレてんの? 怖え怖え」
「キキョウちゃん、ここから離れて。どこか物陰に隠れてて」
「っ───待ってよ、私だって…!」
「あいつは、僕がやらなきゃダメなんだ」
キキョウには、マッシュの目が鋭い光を灯しているように視えた。本当に光っているわけではないが――獲物を狙い、虎視眈々と狩りに臨む獣のような目が、冷徹なまでにデリザスタを睨んでいる。
「偉そうに……はぁっ…やっぱお前嫌いだわ」
「奇遇だね、僕もだよ」
「兄には敬語使えよ、常識だろ?」
「僕の家族はじいちゃんだけ───いや、じいちゃんとワカモちゃん、サオリさんたちだけだ。お前なんか、僕の家族だとは思わない」
「アッハハハ!そうかそうか――まあ俺も、お前みたいな魔力のないゴミが弟だなんて思ってねぇけどな」
「…!」
デリザスタの魔力が突然膨れ上がる――この感覚をマッシュは知っていた。トキのソニックスやケイのシールズ、アリスのゲームズなどにおける強化形態・セコンズを遥かに上回る、魔力出力の最上段階。
「サモンズ・
「上等」
「杖の形が変わって、杖が矛に…!」
杖がグレイブへと変わり、背後にあったアスカロンも精密な狙いとともにマッシュへ向けられる。そして少しの間が空いた後、デリザスタは舌を出しながら走り出し、マッシュもそれに釣られて走り出す。
「来いよ!魔力の無いゴミが!」
「臭いセリフは、僕みたいに筋肉をつけてから言いなよ」
「ラピットアスカロン、そぉ〜れぇッ!!」
「フッ」
デリザスタは、先行させた音速のアスカロンの間を潜り抜けるようにして、矛と化した杖を振るう。マッシュはそれらの剣を拳で跳ね除け、デリザスタが振り回す矛の柄を掌で払い、時折鉄の杖で刃を弾きながらデリザスタへと攻撃を打ち込む。
「おっとあぶねぇ!」
(接近戦が得意なのは当たり前か、でもキヴォトスのCQCにはあまり慣れてないっぽい)
「この状態だとこーいうのもできんのよ!」
デリザスタは矛を地面に刺すと、ひび割れた地面から大量のアスカロンを生やしてマッシュへ叩き込む。それをマッシュは足払いで砕き、さらに砕いた刃先をデリザスタに向けて蹴り飛ばした。
「いっでぇぇっ!!」
「フンッ」
蹴り飛ばした破片がデリザスタの体に襲いかかり、中でも大きく原型を残した刀身が肩へと突き刺さる。マッシュはそこを見逃すことなく、彼の顔へ向かって容赦なく蹴りを叩き込む。しかしその威力を半減させるために、デリザスタは真横からアスカロンを飛ばし、彼の顔を後ろへとたじろがせた。
その後、宙を舞い続けるアスカロンを蹴りと拳で次々に迎撃していき、攻撃がやんだと思った瞬間に体制を立て直した。
アスカロンが飛んでくる速度は音速、並の人間が食らえば衝撃で切り裂かれた部位から大きく体が切断され消し飛ばされる程の威力を持っている……そんな剣にマッシュの拳はヒビを入れ、弾き、粉砕するほどの威力を発揮している。イノセント・ゼロの配下であるデリザスタといえど、その事実には驚かされた……が、彼は一向に余裕を崩さない。
「サモンズ状態のアスカロンも処理してきやがんのか……うっぜぇ」
(なんで傷が治ってるんだ……?)
「――が関係ねえ……お前にいいことを教えてやるよ、俺の心臓はただの心臓じゃねえ」
「っ…!?なによ、それ…!」
「こいつは魔心臓、魔力をエネルギーに体を治癒する特殊な心臓だ。つまりは魔力が尽きるまでの間俺は無敵って事」
「だからさっき、私が膝を撃っても…!」
「さぁ────て、どんどんやっちゃうぞー!ラージアスカロン!!」
6mは超えているであろう大剣が、マッシュに向かって振り下ろされる。マッシュはそれの刃先に向かって拳を出しかち割ろうとする。
「からの…えい♪」
「っ…!!」
「キキョウちゃ「よそ見してる時間アルー?」!」
「ねぇんだよんなもん!」
デリザスタはマッシュを攻撃する傍ら、キキョウが隠れる岩場の影に向かってアスカロンを振るった。生徒に迫る危機に注意を引かれてしまったマッシュは、デリザスタの矛による一突き──それも岩を砕き、戦車の正面装甲を貫く威力──を正面から受けてしまった。後退したマッシュは傷を押さえるとともに腹筋と胸筋に力を込め、出血を最小限に抑える。
(久しぶりの感覚、切り裂かれたのは…本当に久々だ)
「……普通はさぁ、そこでバッサリ胴体が真っ二つになる所なのによぉ。ホントにノリが悪ぃな」
「先生ッ!?そんな……!」
「キキョウちゃん、ごめん。やっぱり逃げて」
「私だってやれる…!援護くらいは…!!」
「援護……援護ー? ハハハッ無理無理……お前、完全に足手纏いなんだから…さぁ!」スッ
デリザスタは野球のバットのように杖を持ち変え、マッシュではなくキキョウの方を向きながらそれを振るう。
「ギガントマキア!」
そこから繰り出される無数の斬撃、それらは森を越え、近くの山までも細かく切り刻んだ。砂煙りが晴れ、デリザスタが見たのは───
「はっ…―――お前…マジなんなん、クソ萎えるんだけど」
「なんで……あんた……なんで…!?」
「キキョウちゃん、怪我はない?」
制服が引き裂かれ、胸に深傷を刻まれ、無数の斬撃で全身が擦り切れるほどの切創を纏ったマッシュの姿だった。
(ざっけんなよこのゴミが…! なんで切り傷だけですんでんだよ!それに体中に出来上がった切り傷だって2センチ程度で済んでやがる……めんどくせぇなぁ!)
(あっぶね、力入れてなかったら意識が飛んで終わってた)
「――なんで……なんで…なんで、私なんかを守ったの!?そのせいで、あんたが怪我したらっ───」
「生徒のためなら、こんなの怪我した内に入らないよ。ともかく、じっとしててね」
数十を超える切り傷を負いながら、服を脱ぎ捨ててトレーニングウェア姿へと変わったマッシュ。そんな後ろ姿を見たキキョウは、自分の非力さと無能さを激しく憎み、自責の念に苛まれていた。
(意地を張って逃げてればこんなことにはならなかった……あんな…怪物を相手に…私が何かできるわけがないのに……!!)
「あーあ、可哀想になぁ……お前のせいでその猫が悲しんじゃったよ。正義感を振り翳して守ったりするから、下手に罪悪感や同情を煽って無駄なことを感じさせちまうんだろうなぁ……――まぁ雑魚の思考すぎて、ちょっと笑けてくるけど」
「……キキョウちゃん。自分のせいだなんて思わないで。僕はただ、仲間を救っただけなんだから」
「なんで……私は、あんたの事が嫌い……そう言ったはずでしょう!?なのに、なんで…!!」
「嫌われてるとか、好かれてないとか──関係ないよ」
マッシュは顔の血を拭い、リズムを取るように弾んだジャンプを繰り返し、キキョウを諭すように言葉を続けた。
「僕はただ、危険な目に遭っている人を、助けただけだから」
「―――…先生、アンタ…」
「話終わったー?」
「…っっ!!」
キキョウは銃を手にしたまま構え、デリザスタの急所へ向かって発砲した。だが出現したアスカロンがそれを自動的に迎撃し、意味をなさなかった。
「ここのガキどもはみんながみんな硬い、鉄の弾を食らっても、爆破をされてもケロッとしてやがる――だが、俺のアスカロンは……鉄を紙のように簡単に切り裂き、ガキどもの体を切断するほどの力がある」
「その話をなんで僕に」
「わかるかよゴミ、お前がちゃんと守ってやんねーと……そこの猫は簡単に死ぬって事だよ、耐久力が違うんだからな!」
その刹那、マッシュの拳がデリザスタの目の前まで接近し、そのまま勢いよくめり込み彼を後ろへと吹き飛ばした。
「なら攻撃をする前にこっちの攻撃を当てるのみ」
「ば――馬鹿が、聞いてなかったのか?俺の体がいくらでも治……治………っ…!?」
そして体勢を立て直そうとするデリザスタが膝をつき、突如として荒く息を切らし始めた――デリザスタの肉体は確かに不死に近い治癒能力を持っている、しかしそれの回復には魔力を消費する……つまり。
「さっきまではキキョウちゃんを守りながら戦ってた―でも今からは違う」
(なんだぁこれ……息が……くそっ……!!なんで…顔の打撲が治るのが遅えんだ…!?――まさか…こいつ…‼︎)
「これから僕は、キキョウちゃんに意識が向かなくなるくらいの攻撃を繰り返し続ける。今までいろんな人を弄んできてたみたいだけど……残念ながら僕はそうなるつもりはないよ」
マッシュはアスカロンを回避する中でデリザスタの攻撃を見切り、魔心臓の特性から魔力を消耗させて攻撃力と回復速度を減殺する方策を思いついていた。戦術における思考力を武器の一つとするマッシュが導き出した作戦は、デリザスタの回復が追いつかない連撃でキキョウへの意識を強制的に引き剥がし、攻撃を未然に防ぎながら決着を着けることだった。
「なめんるんじゃねえ!!!」
「――えいっ」パシッ!!
「ハァ…!?」
「やっと慣れた、音速を超える近接戦なら前例を知ってるから対処しやすかったんだけど。剣は流石に慣れるのに時間かかったんだよね」
「このっ…!」
「――さあさあ」
マッシュはポーカーフェイスを決め込んだまま、軽く手を振るい告げた。
「楽しもようよ、気が済むまで」
「――もう作戦なんて知るか……殺す」
次回、アスカロン野球。
お楽しみに
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