ごめんなさい意外と湿度が低めになっちゃいました……やっぱ小話でないと高くできませんね……
それと前回から、文と文の空白を少し縮めてみたのですが……いかがでしょうか。よければご意見をくださいませ
「時間通りに、来てくれてありがとう」
「全然大丈夫、ちょうど筋トレも終わった後なので」
「なら何故、汗一つかいてないの?」
「僕なので」
「それで納得する私が嫌」
デリザスタによる襲撃事件から二日後。マッシュとキキョウは、厳重な警戒態勢が敷かれた屋敷で話をつけることとなった。
二人は襖に囲まれた奥の間に案内され、正座して対面している。
「所で…話、って何について?」
「……単刀直入に、はっきりと言わせてもらうわ―――ごめんなさい」
「初手謝罪……とりあえず、そんなことしなくてもいいよ」
「しないと私の気が収まらないの……ユカリの前とはいえ、流石に…あの時は気が立ってて…言いすぎた。それに命を助けてもらった後なのに…何も言わないで」
「あんなことの後だし、気持ちの整理がついてないのは当たり前だよ。とりあえず頭を上げて」
キキョウはゆっくりと表をあげ、マッシュと目を合わせて話し始める。マッシュはその話を黙って聞き続ける。
「………私は、アンタが羨ましかった。一人でなんでもできる……アンタが、私達以上に百鬼夜行に必要とされているから……本当に、心の底から羨ましかった。鬱陶しく思うほどに……羨ましく思ってたの」
「あーだからあんな目をしてたんだね」
「……正直、今でも羨ましいって思えてしまう。あんな闘いを見せられて……自信だってほんの少し無くしちゃった」
自分が経験してきたどの争いよりも過酷で激しい戦闘……それを見せられてキキョウはより一層自信を無くしてしまった―――しかし。
「実は……少しだけ、僕もキキョウちゃんの頭脳が羨ましいなーって思った事はあるよ」
「………えっ?」
「キキョウちゃんみたいな参謀って正直カッコ良すぎるでしょ? 僕もなってみたいなーと思った事は何回もあるんだよね」
「…でも、戦闘中のアンタは…」
「こちら、この前行った単元テストの結果です」
「―――…何をどうしたらこの点数になるの⁉︎」
「とまぁこんな具合に、僕って地頭は良くないんだよね。最近は掛け算が暗算でできるようにはなったけど」
マッシュは自分は頭が悪いと言いながら、キキョウの事を少しづつフォローしてゆく。
「人のことを羨ましいと思うのはさ、人として生きるのなら仕方ないことだと思うな。僕だって自分の友達に対して羨ましいな〜って思うことだってあるもん」
「…ホントに…?」
「うん、例えば知り合いにシュークリーム屋で働いている生徒達がいるだけど…ぶっちゃけると僕もそこで働きたい。好きなものに囲まれてるって幸せでしょ?」
「………」
「それだけでじゃない、僕はある大人の人に憧れてもいるんだ――その人は僕よりも教育者として完璧で、一番大人らしい大人……あの人の大人としてのかっこよさに少しだけ嫉妬したんだ」
「嫉妬……先生も…するんだ」
「誰だってする――僕の知り合いにも、たくさんいたよ」
人の事を羨んだり、嫉妬したりするのは生きているものならば誰しもが思ってしまう仕方のない事。マッシュはそれを言っていた。
「でも私は…」
「キキョウちゃんは、さっきの僕に謝罪した。それでもう僕への非礼は無かった事にしたいんだけど……だめ?」
「私は、先生にあれだけのことを言ったのよ? そんな簡単に…許されるわけない」
「…………過去にも、似たような事を言ってた生徒がいたんだ。自分たちは許されるべきじゃない、許してもらう資格がないって――でもさ」
マッシュは少し強めに、はっきりと、キキョウの目を見ながら告げた。
「それは被害者である僕が決める事だとも思ったんだ。僕はその子達を許したし、引き摺らない事にだってした……だからキキョウちゃんの事も許す」
「なんで…」
「ギスギスとした関係とか、宿罪の関係とか……そう言うの苦手なんだよね。フレンドリーでファンキーな関係が一番だと思うからさ」
「――――どうして、そこまで…優しいの。なんでそこまで…心が広いの……一体…何が、先生をそうさせたの…⁉︎」
「なんで……と言われても…うーん」
マッシュは少し悩んだ後、首を傾げながら言い放った。
「それが当たり前だと思ってるから……かな? 無意識のうちに、そうしてるとしか言えないや」
「―――やっぱり……私は……先生に遠く及ばないわ。そんなに優しく……私はできない」
マッシュの当たり前、無意識の優しさ……それこそがマッシュの強さでありマッシュがマッシュたらしめる理由だった。それを聞いて、ますます自分では勝てないと悟ったキキョウ。
「誰かになろうとしなくてもいいんじゃいかな? 自分らしさって結構大事だよ、冷静な判断と適切な態度と対応……それでこそキキョウちゃんだと僕は思う」
「……参謀は時に冷たい判断を下す時もある、冷たい態度で接する事もある……要は…嫌われ役、そんな私を」
「僕はそんなキキョウちゃんを嫌いにならないよ?」
「――――――」
どんな態度を取られても、キキョウは生徒であり同い年の仲間。そんな彼女を嫌いになる事はないよとマッシュは素直に告げた………ド直球に好きと言ったようのも聞こえるマッシュの言葉に、キキョウはわかりやすく動揺を見せた。
「…なっ、…ば、………なに、いってん…の…」
「友達を嫌いになることなんて絶対にないしね」
「先生と……生徒じゃなくて……友達…」
「先生と生徒ではあるけど――ほら、僕は生徒と同じ目線で頑張る先生だから」
「……私たちと同じ目線」
「上とか下とかじゃなくて、平等で対等な――僕はみんなとそんな関係であり続けたい」
上下関係に縛られない対等な関係性、彼が目指す友達や仲間の関係はそこにあった……キキョウは詰まっていた物が取れたような気がした。
(私は、先生が私を下に見ているんだと勝手に思い込んでいた。自分よりも弱いから、相手よりも強いから、偉そうにしているのが嫌だった―――でもそんなことは全然無かった)
「ユカリちゃんやレンゲちゃんも、僕は同じ立場でいたいんだ。じゃないと…ほら、楽しくないし」
(――先生は私と同じ立場で、目線で……話しかけてきてくれていた。―――ほんっとに……自分に…反吐が出る……!)
「だから……えっと、こんな状況で言うのもアレなんだけどさ。影についての対策とか、これからのこととか、ぶっちゃけると曖昧で行き当たりばったりなことが多いんだ――だから」
マッシュはキキョウに右手を出し、彼女目をまっすぐに見ながらお願いをした。
「僕達に協力してくれないかな…? 今の僕たちには、この先のことを考え策を練る参謀が必要なんだ」
「それって」
「僕には君が必要なんだ――君しか、いないんだ」
「っっっっ〜〜…!!!!」
まっすぐな目で見つめられ、キキョウは慣れない感覚に顔を僅かに赤らめた。初めての経験に当惑するしかないキキョウは、頬を抑えて声を絞り出すように答える。
「……ご、後日改めて……返事をする。今回は……謝罪と…聞きたいことがあったから……呼んだだけだから………また…今度…」
「わかった。いつでも待ってるよ」
(……あぁもう…!あのワカモが、ベタ惚れしてる理由がわかったよ……もう…!!)
キキョウは二つある尻尾を大きく動かしながら顔を赤くし、変な汗をかきながらもマッシュを見続ける。
「……聞きたいことって?」
「……あっ……その、簡単なこと……なんだけど…」
「なんでしょうか」
「魔力の無い……ゴミって、どう言うこと?」
「あー……そうだな、そこの話をするとまた暗くなるから簡単に言うよ。僕の世界では皆魔力をもってて、魔法を使うのが当たり前なんだ。魔力がない人はおかしいって言われて殺されちゃうレベル……って感じ?だからゴミって言われたんだと思う」
「………そう、なんだ」
(あれなんか空気が冷たく)
キキョウはゆっくりと、マッシュに近づき、自分の手で彼の優しく触れた。
「少なくとも……今この日から、先生は私にとって宝物になった……だからあんな奴の言葉なんて気にしないで」
「最初から気にしてないから大丈夫大丈夫、寧ろ心配してくれてありがとう」
「………改めて……色々と、ごめんなさい」
「僕もグイグイ行きすぎててごめんね……はい、これで」
マッシュはキキョウの手を両手で握り
「仲直り」
「……暖かい、手ね」
「よく言われる」
完全修復とまではいかないかもしれないが、マッシュとキキョウの間に生じた摩擦は、次第に円滑なものになりつつあった。
まだ2回しか投稿していないのですが……次回は金曜日か月曜日になってしまうかもしれません、ごめんなさい。
4月ってほんとに……忙しいですよね……
百花繚乱後に見たい話
-
まだ交流がない生徒との話
-
アイデェア箱から選んだお話
-
ラビット2章
-
愛が重い生徒との話