透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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マッシュ・バーンデッドと委員長になれない副委員長

 

 

 

 

「いやぁ、お祭りはいついかなる時は楽しい物ですな」

 

「…どうして私の居場所がわかったの?」

 

「優秀な忍者の弟子がおりまして……あっ、たこ焼きかりんご飴、どっち食べます?」

 

「せめて主食と主食で合わせて欲しかった……焼き鳥はある?」

 

「あるよ」

 

「……そっちをもらうわ、ありがとう」

 

「いえいえ……うん、りんご飴美味しい」

 

 

 

 ユカリとマッシュが百花繚乱を立て直そうと奮闘し、幹部や退部した仲間たちを説得している中、ついに祭りの日は来てしまった。

 キキョウとレンゲは『もう少しだけ時間が欲しい』と言ったまま返答は保留、残すは副委員長のナグサによる返答を得るのみとなった。
 マッシュは彼女と一対一で会話をするべく、彼女が一人になった瞬間を狙って話しかけた。

 

 

 

『――先生、私は……あの話をお家に伝えてゆきます。――舞の件、お楽しみに』

 

『わかったよ――頑張ってね、ユカリちゃん。こっちは任せておいて』

 

 

 

 そしてユカリは祭りが開催される少し前に、マッシュと大事な話をしており、その結果を家にいる者に伝えるべく彼の元から離れていた。

 

 マッシュが街を歩き回っていると、店の人々がマッシュに向けて色々と差し出してくれたので、マッシュはそれをありがたく受け取った。

 

 

「……それで、どうして私を探していたの?」

 

「要がありまして」

 

「……百花繚乱の復興の話なら、無駄よ」

 

「そこをなんとかなりませんかね、副委員長さん」

 

「証を返した私はもう副委員長じゃない、ただのナグサ。……廃部は確実、それはもう変わらないの」

 

 

 

 ナグサは焼き鳥を食べながらそう付け、マッシュから目線を逸らす、マッシュはりんご飴を一口で食べ終え話を続ける。

 

 

 

「なんだっけ…採血ってのは考えてませんか」

 

「再建のこと?……考えてない、再建したとしても……私は二度と副委員長にも委員長の座にもつかない」

 

「それは、どうしてですか?」

 

「……私には、無理だったの」

 

 

 上に立ち皆を導くものという者の大半には、代わりが存在しない。何故ならば、その上に立ち皆を率いている者は必ずしも、下の者達から支えられているからだ。

 

 ナグサはかつての委員長『七稜アヤメ』の幼馴染でもあり、長らく共に過ごしてきた間柄だった。しかし、突然それは終わりを告げる。現在のアヤメは行方不明、ナグサが委員長代理を担うこととなったのだが──

 

 

「いなくなったアヤメの代わりに、私が百花繚乱を導くことになった……でも私には無理だった」

 

「でもユカリちゃん達は、ナグサさんがいたからやってこれたって」

 

「そういうふうに見せていただけ、どんなに頑張っても私はアヤメのように動けない。アヤメのように頑張れない……皆が思う程私は立派じゃない」

 

 

 あの人のようになれない、あの人のように頑張れない――あの人のように周りの人を導けない。マッシュにはそんな言葉が、どうも他人事のようには聞こえなかった。

 

 

「私は……アヤメにはなれな──「なれなくていいじゃないですか」──え?」

 

「他人に完全に成り切るなんてこと、出来るわけがないんです。その人はあくまでもアヤメさんはアヤメさん、ナグサさんはナグサさんなんだから当たり前です」

 

「百花繚乱を導けるのは、アヤメだけ。だから」

 

「だからってナグサさんが、そのアヤメって人になる必要はないはずです。やり方を真似ようとするのは個人の勝手ですけど…一番いいのは、自分のやり方で物事を進めていくことです――って、知り合いの超頭のいい人に言われ……いや、説教されまして

 

 

 百花繚乱を導けるのはアヤメだけ、だから自分がアヤメの代わりに、アヤメのようになるしかない──そう結論づけたナグサだったが、マッシュからしてみればその思いは自分自身の首を締めているようにしか見えない。

 

 

「いきなり偉い立場になって頑張ってくださいねって言われて、負担に思ったり両肩が重くなるのはめちゃくちゃ分かりますよ。僕もそうだったので」

 

「…先生のような強い人でも?」

 

「謎の世界に大きすぎる建物、見たことのない道具や武器、変な文字、苦手すぎる勉強と訳のわからない難しい単語の数々。正直言うと、最初の一ヶ月くらいはめっっちゃ地面に埋まっていたかった」

 

「……ならなんで、今の立場でいるの?」

 

「この世界が危機って聞いて、最初はよくわからなかった……でも色んな人と関わっていくウチにやっとわかったんだ。『ここを守るのはじいちゃんを守る時と同じなんだ』って」  

 

 

 生まれて初めて、祖父以外にできた大切な物。初めてできた大切な友達と仲間、それらを守るために彼は戦っていた。しかしそれは他人のやり方を真似て続けている訳ではなく、マッシュ独自のやり方で成し遂げている。

 

 

「昔、別の世界でシャーレの先生をしている、かっこいい大人の人に会ったんです。僕はその人みたいになろうとして、人生最大レベルでとんでもなく失敗しました」

 

「失敗…」

 

「いろんな人に怒られちゃいました、人生で初めて……じいちゃん以外からちゃんと怒られましたし、泣かれもしました。ついでにグーで殴られたり締め上げられたりポコポコ連打を喰らったりもしました

 

「それって大丈夫なの……!?」

 

「あっ話がそれた、えーっと……要するに」

 

 

 マッシュは仕切り直して話を仕切り直し、話をやり直す。

 

 

「僕は大人になろうとしてたんです。別の世界で出会った、尊敬できる先生みたいな人に……でも違った、なれるわけがなかったんだ。他人なんだから」

 

「じゃあ……私はどうすれば……」

 

「その人に成り切ろうとしちゃダメだ、それは自分を殺して自分を苦しめるだけになる……貴女は、貴女であり続けてください」

 

「……私は…私」

 

 

 ナグサは自身の使えなくなっている片腕を抑え、強く握り、心の中で自分とは何かを考える。

 

 

「………私はただ、押し付けられただけで本当は―」

 

 

 

 

 

 

 

 

ウソ

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

「おっ花火だ。相変わらず──『先生!!』…アロナちゃん?」

 

 

 ナグサが何かゾクっとした気配に襲われた瞬間、空に大きな花火が打ち上がった。最初は綺麗だ素敵だと思ったマッシュだったが……シッテムの箱の主『アロナ』がマッシュにしか聞こえない声を上げ告げた。

 

 

お祭り会場に向かって、何かが発射されました!!兵器ではありませんが――未確認の生命反応があります!!

 

「ナグサさん、ちょっと失礼します」ダッ!

 

「先生…!一体何が……?―――!?そんな…!!」

 

 

 マッシュは、祭りの会場に目掛けてダッシュで突き進む。ナグサもマッシュを追いかけて祭りの会場へと飛び込むが、会場に到達した二人の目には───空から降り注ぐ“何か”が、はっきりと見えた。

 

 

『数が出ました!数は………――5000!!?』

 

「すみません、ちょっとコレ借ります」

 

「えっ、ちょっと!?」

 

 

 空から飛んでくる黒い物体を睨んだマッシュは、近くの屋台から抜き取った幟を両手に装備した。そのまま屋台の軒を足場にして飛び上がったマッシュは、空中で体を高速回転させて瞬間的な竜巻を起こす。

 

 

「からーの―エイッ」ズォッッ!!

 

 

 黒い物体の数々はマッシュの竜巻によって舞い上がり、落着までの時間に猶予が生まれる───マッシュはそれを逃すことなく、上空に留まったそれらに対して幟の竿を投げ、次々と謎の物体を刺し貫いた。あとは着地をするだけだが――違和感が残った。

 

 

(――違う。エデン条約で撃墜したミサイルとは、手応えが明らかに違う。生物や兵器のそれじゃなかったんだけど、一体どういう―──……!!!

 

 

 次の瞬間、先ほど爆発した物体が、上空からマッシュの眼前へと落下して来た。

 
 それは――傘だった。爆発により焼け焦げて穴だらけとなった紙張りの和傘が、カタカタと音を鳴らしながらひとりでに動く……直後、足に似た形の柄が下駄の音を鳴らしながら跳ね上がると、傘はマッシュに向かって不気味な動きで突進してきた。

 

 

 

(―――この臭いは……火――)

 

『カタカタカタッ―――カチッ』

 

 

 

 

ドカァァァァァァァァァァンッ!!!

 

 

 

 

 マッシュに近づいた傘を含め、上空から降り注いだ様々なモノが、一斉に爆発を起こして祭りの場を炎に包む。爆風で付近の屋台は薙ぎ倒され、爆炎に染まった空には何も残されていなかった。

 
 そう、彼女の計画通り。

 

 

 

「たーまや〜〜♪ですね〜〜!いやぁいい花火でしたねぇ本当に!」

 

「貴女は……!!」

 

「正義のヒーローは人々を守るために後先考えずに動くのが当たり前……よくあるお話の常識ですが、現実にもあるなんて――手前は面白おかしくて仕方ないですよ!」

 

 

 下駄の足音がはっきりと聞こえ、その小柄な姿がはっきりと現れた。――腕に包帯を巻き、まさしく子供いうのに相応しい図体を持つ者……花鳥風月部が一人、箭吹シュロ

 

 

「でもざーんねん!――あの化け傘には細工をしてましてぇ……柄と傘裏に火薬を仕込んで、自爆機能を付けてるんですよ。一体につき、多目的対戦車榴弾程度の威力……さて、これが千体以上も爆発したら、どうなっちゃうんでしょうねぇ?」

 

「まさか───例の本で……!!」

 

「お久しぶりですねぇ〜ナグサちゃん……その後どうですか?アヤメちゃん見つかりました?」

 

「っ!!」

 

「手前からしてみればそんなことはどうでもよくて……こんなのはまだ序の口ですよ」

 

 

 次の瞬間、会場の各所で爆発が起き、火災が発生した。さらにその場を中心に、妖怪と思しき容姿の怪物が次々と出現、市民らを襲い始めた……まさしく、百鬼夜行。

 

 

「あの目障りな先生はこれでいなくなりましたし、祭りをぶっ壊すことにも成功!!……先生に頼って遊んでるからこんなことになるんですよね〜?」

 

「っ…っ!!」

 

「あとは……あっ、あのお嬢様ですね。まああんなのの心を壊すなんて楽勝ですし、ゆっくりでもいいですね。――貴女達が追い込んだせいで」

 

 

 確実に、陰湿に、心を抉り取るように笑いながら、シュロは両手を広げ、自分の周りを化け傘で囲う。

 

 

「あんな奴らの協力なんて最初から要らなかった……そう証明してやりますよー!!さあさあお立ち会…これから始まるは一つの怪談。魑魅魍魎が全てを壊し、人々を恐怖の渦へ手叩き込む楽しいお話!!」

 

 

 

 

 

 

「さあ!!楽しい楽しい百物語(怪談)のはじまりです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回・百鬼夜行炎上

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

「怪談って楽しいものだったっけ?怖くて嫌なイメージしかないんだけど……この変な傘も怖くない?反射でバキバキに折っちゃったけど」

 

「――――――へ?」

 

「後ね――ユカリちゃんは今、必死に戦ってるんだ。邪魔はさせないよ」

 

 

 

 

 

次回・百鬼夜行炎上――そして、急速鎮火。







Q.あっちこっちで火災が発生しているのにどうやって鎮火するの?



A.みなさんバケツリレーって知ってますか?

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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