透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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後半が急展開気味かもです。

次回は月曜日です、お楽しみに。そして今回も超有名ゲストがきてくださっています、最後まで見てね


マッシュ・バーンデッドと太陽

 

 

 

「フンッ」

 

「会ってそうそう顔を殴ってくるやなんて……ほんまに、野蛮やねぇ」

 

(やっぱ効かないよな、自動的に霧になってるんじゃない、そもそも実体がないんだ……妖怪を蹴散らしても、生み出してる本人をどうにかしないと話にもならないか)

 

「ほーれ、みんなで遊んであげや」

 

「結構です、お引き取りください」

 

 

 ツノのある巨腕の妖怪を蹴散らし、一つ目の顔面を拳で押し潰したマッシュは、続けて化け傘を掴んで武器のように振り回すものの、一向にコクリコ本人がダメージを受ける様子はない。

 

 

 

「――マッシュ……バーンデッド……先生、先生――先生!!!!」

 

「うおっと──こっちもいた、けど……えーと……ごめん。何処かで会った?……なんとなく覚えがある感じがするんだけど、本当にごめん、君についてはよく分からない」

 

「わからなくて結構…!こうして相見(あいまみ)えるだけでも十分な僥倖……さあもっと、もっと来てください!!マッシュ・バーンデッド先生ッッ!!」

 

 

 そこへ追い打ちをかけまいとやってくる影が、マッシュに斬りかかる。

 愛の魔法・バーニングラブによって火焔を纏った刀身がマッシュへ向けて振るわれ、マッシュは斬撃を機敏に回避し続ける。それでも刀身から放たれる熱波は当たらずとも肌と服を焦がし、次第にマッシュは体の内側を燃やすような熱を感じ始めていた。

 

 

「真夏の鉄板くらい熱いな……火傷しそう」

 

「火傷じゃ済まないだろそれ!!」

 

「さ……流石はあなた様……なんと強い心の持ち主なのでしょう」

 

「それ関係ある?……とにかく動かないで、尋常ない顔色の悪さしてるから」

 

「この程度で……私は「ワカモちゃん」───」

 

「待て、だよ」

 

「はいっっ!!!!」

 

(災厄の狐……?もうただの犬の間違いじゃないの……?)

 

 

 マッシュと影の格闘を見守るワカモには、影のセコンズが持つ効果により、熱病の感染による影響が色濃く現れ始めていた。セコンズの影響から抜け出しても、意識を朦朧とさせるほどの高熱は未だ収まっていないらしい。

 

 百花繚乱は一時戦いから引くとともに、負傷と感染の影響が濃いワカモと忍術研究部の応急手当を優先、マッシュ達から距離を置く。

 

 

 

「先生…!先生…!!先生!!!」

 

「本当に…僕、君に何かした?──―ぶねっ」

 

「ええ……数え切れないほどの恩が貴方にはあります――しかし、それは別の貴方にです……それでも―存在は…姿は……そのまま――故に……故に!!──胸躍るのです!」

 

 

 影が手を地面に起くとともに、手が地についた点を中心に禍々しい魔法陣が出現、そこから黒い鎖のようなものが飛び出してマッシュの体を拘束する。

 

 

「イザナミ・ボンテージラブ…!!」

 

「これはなかなかの締め付け具合……君、魔法が使えたんだね」

 

「ラブ&カースズ・セコンズ!モービットラブエリア!!」

 

「―っ!皆…離れなさい…!!先生も…!!」

 

「──多分無理だ、抜け出せない」

 

 

 マッシュの言った通り、彼は自分の筋肉を使ってもなかなか破壊されない鎖に捕まえられている。故にセカンズの範囲から逃れることができず、そのまま飲み込まれてしまう。

 

 

「あーあー大変やねぇ、キノコ頭の童君。その中にいる生き物は疫病に侵されてまうんよ、その病は人によって一番効果がある形になるから、病原体の種類はコロコロ変わるみたいやけど……見た感じ、其方さんはインフルエンザやね」

 

「これが病気……初めて味わったな」

 

「逆に今まで、風邪っ引き一つなかったん?」

 

「健康優良児すぎて逆に心配されました」

 

「……まあええわ。とにかくその中にいればいる程病は悪化していく――その病はね、神秘云々関係なしで感染する不治の病や……生きている物ならなんでも食らう――つまりや」

 

 

 セコンズの領域内に妖怪が呼び出され、一斉にマッシュへと襲いかかる。鎖に繋がれている状態が継続しているマッシュは、その攻撃を受け続けるしかない。

 

 

「その妖怪らは生物と物の怪の間にあるモノ……せやから疫病なんて関係なく、制限もなしに好き放題動ける……このまま兵糧攻めと行こか」

 

「―──邪魔をしないでください、先生の相手は私ですよ」

 

「そう固いこといいなさんなや、今はここで童をなんとかせな……あの子らヤれんやろ?」

 

 

 百花繚乱のメンバー達を、まるで獲物を見る蜘蛛の目で見るコクリコ。影は不服そうではあったが、刀を地面に刺したままセコンズを継続。

 

 

「物理が効かない相手…―また落とし穴に埋めるか?」

 

「あんな怪物相手にそれが通用するとは思えない、それにもう手段がバレてるから意味もない…!」

 

「……コクリコ…!!」

 

「皆様……大丈夫、大丈夫です!!私達ならば倒せます、止められます!───信じましょう、先生を…そして、自分自身を!」

 

 

 そう叫ぶユカリに対し、コクリコは舌打ちをしながら今までにないくらいの嫌な顔を見せる。まるで蛆虫でも見ているかなような目だ。

 

 

「そんな薄っぺらいセリフ……ほんま、嫌やわ。根拠もない確証もない戯言、百物語には不相応で場違い極まる、最悪の迷台詞や」

 

「貴女の物語には不要でも、我々には必要不可欠な物なのです!」

 

「……同じようなセリフ、あの時の巫女も言ってたなぁ」

 

 

 

 あの時の巫女、そのセリフに皆が止まり、そしてユカリはハッとした表情で問い詰める。

 

 

 

「……まさか、かつての巫女が失踪したのは…!!」

 

「勿論ウチが攫ったんやで。百物語にとって一番要らん祭日とかいう光……邪魔なもんを消すためにクロカゲを使って、あの巫女を連れ去った」

 

「その巫女は……勘解由小路の巫女をどうしたの!?」

 

「……さぁ?適当な場所に放ってきたからわからんわ。不憫やな、勘解由小路の家では祭りを前にして怖気付いて逃げた汚点呼ばわりされとるんやろ?ほんで、今の勘解由小路はその汚名を雪ぐために躍起になっとる、と」

 

「つまり───あんたのせいで、ユカリまで…」

 

「せやね……アンタを苦しめる原因の一つになってたわけや―――どないや?憎い?…それとも、ウチを殺したい?ま、力関係考えれば無理やろうけど」

 

 

 

 笑みを浮かべながらそう告げるコクリコ、彼女にとって自分に向けられる負の感情はまさしくご馳走、負の感情こそが百物語を描く一つ一つの文字となるのだから、当たり前だ。

 

 

 

「――いえ、身共は貴女を恨みません」

 

「…ほお?」

 

「恨みは恨みしか呼びません……そんな悲しい連鎖、身共は嫌です」

 

「それが現実や、表だっては明るく見えても、裏では光の届かない真っ暗な闇に覆われるだけ。御天道様の下すらも拝めん」

 

「……確かに人と人との関係には裏があります、みんなそれを隠しているのかもしれません―――それでも、だとしても!」

 

 

 

 ユカリは効かないとわかっていても銃を持ち、コクリコとセコンズ内にいる妖怪達に向かって走りながら発砲をしていく。

 

 

 

「身共は光を諦めません!かつての私を救ってくださった、光であったナグサ先輩のように!今度は身共が、皆様の光になる番なのです!」

 

「ユカリ…」

 

「この世界の闇は、一つの光で大きく照らせるのです。そう証明してくれたのが百花繚乱!百花繚乱は、身共の往くべき道を照らす陽の光でありました!!」

 

「―あいつ……へへっ」

 

「好き勝手言ってくれちゃって……全く」

 

 

 無言で手を動かし、妖怪達をユカリに向けて飛ばすコクリコであったが、そこは邪魔んするべく現れた存在――忍者研究部。

 

 

 

「さっきのお返し!!いくよ…とっておき!!――忍法!」

 

「特ッ…別ッ…!!」

 

「花火玉ぁぁぁっっ!!!!」

 

 

 コクリコもシュロも目は見えており幻覚でもない…であれば強い光や視界が何かで塞がったりするのは、必然。 

 

 

「ユカリ、使って!!!」

 

「―はい!……コクリコさん、確かに貴女は我々を苦しめてきた張本人であり、身共が苦しみに堕ちかけた原因でもありしょう――しかし!貴女の始めた物語によって、身共は百花繚乱に出会うことができました……改めて、感謝をお伝えいたします!!」

 

「――――感謝…?」

 

「しかしそれ以上に身共は――身共は!!」

 

 

 ユカリはナグサから武器を借り、セコンズ内にいるマッシュ、彼を捕らえている鎖に向かって銃弾を放つ。たった一撃の弾丸……しかしそれは、隙を生むのに十分すぎるほどの威力。

 

 

「身共は先生に、感謝しているのです!!―─先生は百花繚乱と同じく、身共含めた全ての生徒の光なのです!!だから必ず……この百物語から、助け出します!!」

 

「……助け出せたとしてなんやの、ええか、あの童は今病気しとんのんや……そんな状態でどうやってこの状況を打開するって言うんやろうねぇ」

 

 

 

 次の瞬間、地面に衝撃が入りセコンズがその時の威力により崩壊。ユカリの弾丸により鎖が傷つき、それをマッシュが利用して右足で踏み込みセコンズを破壊。

 

 

「あーしんどかった、二度と罹りたくないなぁ〜」 

 

「――――なんで……動けとるんや」

 

「多分あれですね、僕の中の白血球が強すぎてウィルスが一瞬で消えちゃったのかも

 

「アホか。出鱈目にも程があるわ」

 

「あとは…アレかな、ユカリちゃんの熱い思いに反応して、抜け出してきちゃった。ほら、百鬼夜行では昔から言われてるじゃないですか。『病は気から』って」

 

 

 カースズの疫病がいくら魔法の効力とはいえど、所詮ウィルスも病原体。マッシュの肉体が誇る強い免疫の前には、その効果を発揮する前に白血球に喰らいつくされ死滅、暴れまわる免疫細胞によって完全分解されてしまった。

 加えてエデン条約事件で高度な毒物耐性を得た今のマッシュは、この小手先程度の策を講じた程度で止めることなどできない。

 

 

「だからなんやの……!!ウチにお前十八番の物理攻撃はきかん、影の術も健在、頼れるのは先生だけ……そんなもんでどうやって光を見出すって言うんやろか」

 

 

 

 

 ユカリに向かって化け傘などの妖怪達が一斉に放たれ彼女が潰されそうになった。

 

 

 

「であれば!!!――であれば!身共が…身共達がその光になれば良いのです……まさしく、太陽のような輝を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、彼女が叫んだ瞬間――彼女の元へと何かが集まり、一つの光を作り出す。それがユカリの体内に入った瞬間、周りの妖怪を吹き飛ばす勢いの閃光が広がる。

 

 

「……これは………?」

 

「―――――最悪や……遅かった――遅すぎた!!」

 

 

 やがて、ユカリが目元を抑え出し少ししたあと、彼女の目の下に……アザが浮かび上がった。

 

 

「……魔法だ」

 

「なんだかよくわかりませんが………―自然と心が熱くなり、力がみなぎってきます…!!!」

 

「なっ、なんだ!?急になんだ!?」

 

「……――成程、コクリコが彼女を狙っていた理由はアレですか………百花繚乱の由緒正しきお家のご令嬢、いわば長い歴史を持つ家――であれば、神秘が高くなっているのも頷けましょう」

 

 

 

 神秘を持つ生徒の中でも、ごくわずかながら覚醒する生徒。現段階で魔法を行使した生徒は、アリスやケイのように精神世界で発動した特例を除けばトキしかいないが……他学園でも出る可能性はあるというのは、イノセント・ゼロの言葉で明言されている。

 

 百花繚乱の光とは、戦力とは――ユカリのことであった。

 

 自身の闇を受け入れ前に進み出した覚悟、仲間を想う優しさ……そして困難に打ち勝とうとする勇気、それらが合わさり、彼女身に奇跡と希望の力が覚醒する。

 

 

 

「――サンズ、でしたっけ……いや、えっと……あっ、サモンズ!

 

 

 

 ユカリの目元に太陽のようなアザが浮かび上がり、彼女の持っていた小銃が変容し、神々しい円鏡へと変わる……ユカリは、その身に宿す力の主───百鬼夜行に古来より伝わる太陽神の名を高らかに叫んだ。

 

 

 

 

 

アマテラス(太陽の女神)!!!」

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、辺りが暗く星空が目立つその場所が

 

 

 

 

「―――朝…?」

 

 

 

日の出の刻に変わった。






百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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