これにて百花繚乱・完……長かったですね、いや投稿頻度のせいでした。
「ほんっとうちお主は……妾でなければ確実にしばいておったぞ」
「その場合クズノハさんが怪我しちゃいますけど大丈夫ですか?」
「んぐぅ…このリアル大猿め…!!」
「言葉のチョイスがまた特殊」
疲労困憊のあまり眠りに落ちたマッシュは再び、夢の中でクズノハの元に招かれていた。
しかし対面して早々にクズノハの名前を間違えた挙げ句、あまりにも呑気かつ自由気ままに話を進めてクズノハの気も知ろうとしないなど、良くも悪くも変わらないマッシュの在り方に対してクズノハは振り回されるばかりとなっていた。
「……兎にも角にも、百花繚乱を救ってくれたことには感謝している、ありがとうの」
「僕が何かした訳じゃないですよ、頑張ったのは百鬼夜行の皆なので」
「謙虚じゃの……しかしなお主、妾にはわかるぞ」
「分かるとは?」
「お主……焦っておるな?」
「何故バレた」
「汗と顔色と表情じゃ、お主鏡見たこと無いのか…ほれ」
「あらやだ凄い顔」
突きつけられた鏡に驚いてみせるマッシュだったが、内心では自分の焦りに対して一定の自覚は存在した。
「……狐に気をつけろ、それってああ言う意味だったんですね……教えてくれてもよかったのに」
「教えて其方が弱くなってしまっては困るからの」
「それは……うむ」
「……悪いことをしたとは思っておる、あまりにも苦すぎる事実を告げず、無責任に頼み込んだことは」
「敵がいるって伝えてくれたんで、別に怒ってませんよ……。…それとさっき…焦ってるって言ってましたよね、それはちょっとだけ違います」
「違う?」
マッシュは立ち上がり、クズノハから離れた場所で少し拳を上げ――思いっきり地面に叩きつけた。
「正確には、悔しいんです」
「く……悔しい?」
「祭りを壊されちゃって、その犯人と戦って、勝ったのに……逃した。いきなり現れたあの人に、一撃で負けた………黒いイズナちゃんも、助けられなかった」
「…あの狐に関しては、お主は何も悪くなかろう」
「壊れたあの子に何もしてあげられなかった、ただ見送っただけになった。……そして……向こうの世界の僕は、多分負けて…大変なことになった後―――悪者になった」
マッシュは再度地面に拳を叩きつけ、しゃがみ込む。マッシュの心が折れているわけではない───そう、彼は今。
「――悔しいってこんな気持ちなんだ」
悔しさを噛み締めていた。
「………先生」
「百鬼夜行のみんなを助けられたのはいいです、でも他のいろんな人は泣かせちゃった。……だから僕は決めました、この事件がもし、別の世界の僕が引き起こしているのだとしたら……ぼくは責任をとって」
「待て先生、考えを先走るんじゃ―」
「別世界の僕をグーパンでボッコボコしにして、そのままチョークスリーパーとマッスルバスターとギロチンキックとその為諸々を喰らわせて説教をします」
「混ぜすぎじゃろて!!向こうのお主原型なくなるぞ!?」
「いやもうそれぐらいしてもいいかなって、自分の体の強さは分かってるつもりですし、寧ろそれくらい耐えたうえで説教を受けてくれないと困りますよ」
「もっと自分の体を大事にせい!!」
今のマッシュは、今の自分ともう一人のマッシュ、すなわち二人の自分がどうしようもなく許せなかった。相見えた暁には息の根を止める勢いで殴り倒したうえで説教をかますつもりで、改めて自分の中の決意を固めていた。
「それに、助けるべき子達の元にいるみたいだしね」
「黒いイズナ………ではなさそうじゃな、まさかコクリコとシュロのことか?アレは、助けるべき生徒……いや、そもそも生徒と呼べる存在なのかの?下手に触らぬほうが───」
「難しい話だけど。とりあえずは僕の兄弟から離しておかなきゃな、と。あのレベルの魔法界の人達の元にいるのは本当にまずいよなって、思うんです」
「情か?」
「改心させる気は満々、でもその前に、あの子達をあいつらから引き離す。話はそれからです」
「…つくづく甘いのぉ」
「チョコレートくらい甘い自信はあります」
マッシュは立ち上がり、再度拳を作りそれを見る。守るための拳、巨悪を打ち滅ぼす拳――ここへ来させられた意味、それがその拳にある。
「災厄も、厄災も、不幸も、ぶっ飛ばしてやりますよ。グーパンでね」
「……はぁ、色々と話をしてフォローしようと思っておったが。必要のない物じゃったな」
「クズノハさん。色々とありがとうございました、ユカリちゃんの魔法と力もクズノハさんのおかげですよね?」
「……さあの。ただ、百鬼夜行を好きにされるのは好かんかっただけじゃ」
「クズノハさん――いつかクズノハさんのことも」
「妾のことは気にせんでも良い、お主はお主の周りのことだけを考えておけば良い……お主は本当に面白く、良い物語を作る存在じゃな」
「イヤァそれほどでも―――あっれ…」
「時間じゃの……マッシュ・バーンデッド、まだまだ話したいことはあったが…ひとまず、次なる予言でも伝えておこう、今回は二つある」
「待ってクズノハさん、もっと色々と聞きたいんです。好きなものとか趣味な物とか実は内心腹黒かったりするのかだとか」
「最後の方は詮索せんでよい!!!……まぁ、いずれにせよ……先生よ」
クズノハは真剣な表情で、大預言者としての予言を彼に告げる。その予言は、まさしくコレからの彼に迎える事実。
「ヤギに気をつけよ、先生。しかして、そのヤギを助けよ、先生」
「――ヤギ?」
「それと……何があっても、友を信じよ」
「クズノハさ――」
世界が光に照らされ、またもやそれにマッシュは包まれる。手を伸ばすも届かず…光が晴れると。
「――主殿!……良かった…お目覚めになられたのですね!」
「あぁ、あなた様!!良かったです………このワカモ、本当に…心臓が止まるかと…」
「心配して、身共も胸が張り裂けそうでしたわ…!」
再び……目が覚めた。
「……知らないような、知ってるような天井」
「百鬼夜行にある古宿、そこを特別に一部屋貸してもらっているのです!」
「……寝てたんだ僕」
「ええ、とても愛らしい寝顔でした」
「あらやだお恥ずかしい」
起き上がろうとしたマッシュをイズナとユカリが制止し、そのままワカモの膝上に後頭部を乗せる形で布団へと倒される。
「疲れが溜まっているのでしょう、もう少しお休みください。お祭りまでまだ時間がありますので」
「主殿!お祭り委員会の方々から、お先に試食をといろいろなものを渡されていましたので、一緒に食べましょう!」
「りんご飴がたくさんありますよ!」
「…ありがとう皆……それと」
何かを言おうとするマッシュの口を、ワカモは右手で抑え遮る。優しくも悲しそうな、そんな顔だった。
「あの件については……しばらく、何も言わないでください。報告として、シャーレにいる生徒らにはビデオ通話で伝えましたが……なんとも、言えない表情をしていました。特に一年生の者たちは、先生やイズナがそんなことをするなんて絶対に信じられない、とまで申しています」
「話ちゃったんだ」
「勝手ながら申し訳ありません……話さねばと、思っていましたので」
「……結局は話す必要があったんだ、隠すわけにはいかないもんね」
「……イズナと、二人で話し合いました。もう一人のイズナは、あなた様と私の身に何かが起きた後…あなた様を守るために…外道に堕ちた。あるは───私の無力さが、彼女をそうさせたのやもしれません」
「………だからイズナは…決めました。向こうのイズナはおかしくなってしまって、大変なことになって、ワカモ姉様も恐ろしい事になっていました――なので!イズナは正義の忍びとして、二人を…なんとかして、助けたいんです!!」
「強くなったねイズナちゃん、先生嬉しいよ」
心を深く突き刺し、悲しみと恐怖を掻き立てるような現実を前にしたはずのイズナだったが、その顔と眼差しには曇り一つない決意と希望が満ち溢れていた。
彼女だけではない。何かを止めたいのは、ワカモもユカリも、百花繚乱の者たちも同じだった。
「あのイズナは、この久田イズナが必ず止めて見せます。そして、あの姿になったワカモ姉様も……絶対に助けます。向こうの私も、同じ立場なら絶対にそうするはずですから! 」
「あなた様……私は、貴方の妻です。あちら側のあなた様の物ではありませんし、イズナも私の妹ではないのでしょうが……私は、あの子を止めたいのです―狐坂ワカモとして」
「身共は、あのコクリコとシュロを止めたいです。例え外道であっても、悪党であっても彼女らは百鬼夜行の生徒……見捨てるわけには参りません!何がなんでも、止めるのです!」
「……僕も、悪人になったかもしれない僕も止めたい。僕の兄弟って人達を操ってる僕を止めたい。じいちゃんが泣く前に」
百花繚乱を救ったマッシュ、だが戦いは終わっていない。真の戦いはまだまだ続く――しかし今は。
「――でも今だけは、大団円ってことで…お祭り楽しもう」
「―それも、そうですね!」
「姉様、今日はゆっくりと楽しみましょう!」
「……仕方ありませんね、今日だけ…ですよ?…うふふっ」
勝利を祝して、祭りを――楽しいことを、とことん楽しむとしよう。嘘偽りの無い――真の姿で。
「キヴォトスの生徒……面白いな――アイツら…欲しいな。誰でもいいから欲しい……けどどうせ誰も手に入らないだろうなぁ……じゃあ今まで通り」
「無理やり奪って行こう、自由に、気ままに、楽しい人生を過ごすために。……ピエロは、そのためにいる」
───そして、物語は新たなステージへと動き出す
次回はゲヘナの天使が登場します、お楽しみに。
そして百鬼夜行編、ありがとうございました。
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