透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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だって………なんか、かわいそうじゃないかって思ったんですもん……救いたかったんですもん……!!!!


特別編・レグロ・バーンデッドとバルバラ
レグロ・バーンデッドとまさかの邂逅


 

 

「――だーめじゃ、さっっぱり思い出せん。あの時に見た謎の光景と声……ワシも完全に歳じゃなぁ」

 

 

 レグロ・バーンデッド、75歳。

 自身の息子であるマッシュ・バーンデッドが別の世界へと赴任した日から魔法界で約三週間が経過した頃、親心から寂しさを覚えてきた、シックでエレガントな老人である。
 本日の彼は夕食の食材を買いに山を降り、食材や日用品を詰めた袋を魔法で浮遊させながら家路についていた。

 

 

(イノセント・ゼロの情報は手に入らず、あの世界の情報や噂すらも書物などには書かれていない。めちゃくちゃ古い本も買ったんじゃがなぁ)

 

 

 彼の息子が働く学園都市・キヴォトスを目にして以降、かつて存在したらしい魔法界との繋がりについて探ろうとしていたレグロ。しかしそれは、決して「困難」というありふれた言葉で表せるような難易度ではない。

 別次元を移動するような古代魔法は魔法局によって禁忌として取り締まられており、キヴォトスのような世界についての情報を記した書籍も同様に禁書として扱われているこの世界では、ただの民間人であるレグロに手が届くものは何一つとして存在しない。

 

 何より魔力容量が小さなレグロの能力は魔法界において中の下であり、上級魔法を扱うような魔力量や身体能力は持ち合わせていない。

 禁忌魔法を再現することなど出来るはずもなく、だからといって外部に協力を仰ぐことなどもってのほか、レグロによる調査は早々に行き詰まってしまった。

 

 

(ワシには時間はまだまだ残っておる、それを無駄にせんためにもしっかりせんとな。……時間といえば、この道も随分と長い間歩いておるのぉ)

 

 

 老い先短い命にあって、マッシュに出会ってから初めてやり甲斐を見出して張り切っていたレグロは、いつも通っているその道を見渡しながら歩いてゆく。

 思い出すのはマッシュを連れ、逃げるようにして今ある自宅へと足を運んだあの日のことだった。

 

 

(懐かしいのぉ……マッシュを連れてあの家で暮らそうと張り切っていたあの日を。まさか2日目にして家が半壊しかけるとは思っても見なかったし、野生のクマをマッシュがぶっ飛ばして来た時は流石にびっくりして腰をいわしたこともあったの)

 

 

 見慣れた木々、見慣れた動物達。

 マッシュがいつも筋トレを行っていた場所。
 
 その近くで倒れている人影。
 
 どれもこれも懐かしく感じながら、レグロは家へと足を進めていった。

 

 

 

(――――――ん?…今、変なのいなかった?)

 

 

 

見慣れた木々、見慣れた動物達。

 マッシュがいつも筋トレを行っていた場所。
 
そしてもう一度言おう、その近くで倒れている人影

 

 

 

「ちょっと待って誰か行き倒れてなかった!!?」

 

 

 二度見したレグロの前には、間違いなくとんでもない存在が倒れていた。体にタイトフィットする漆黒の礼装を着た、身長200cmを軽く超えるような体躯の女性が獣道に転がっていたのである。

 レグロはすぐさま駆け寄ると、修道女とおぼしき姿をした彼女に声をかけ、ウィンプルを着けた彼女の顔を確認する。

 

 

「もしもし!聞こえておるか!?…聞こえておらぬか……怪我の方は―――!?」

 

 

 倒れていたその人物の手に触れた瞬間、レグロは背筋が凍りついた。

 その体は、人間のものとは思えないほどに冷たかった。幽霊のように青白い肌には血が通っていない。脈も感じ取れず、加えて体が硬い。まさしく鋼かと言わんばかりの硬さ。
 だが、頭を振って冷静さを取り戻したレグロは、あることに気づく。彼女の体の硬さは死後硬直によるものではなく、自分の息子であるマッシュの筋肉を思わせる硬さだった。加えて口元の動きを見る限り、確かに彼女は呼吸を続けていた。
 
……まだ、助かるかもしれない。

 

 

(……生きて…おるのか?辛うじて呼吸はしておる……ならばまだ助かるはずじゃ!!町の医者に……いいやダメじゃ、きっとろくに扱ってくれんじゃろう。ならばワシの家しか…えぇい、仕方あるまい!)

 

 

 レグロは魔法でその人物を浮かせ、急いで自身の家へと運び出した。

 その人物が何者で、どんな存在で、なぜそこで倒れていたかはわからない。しかしそれは関係なかった。

 

 

「もう少し頑張るんじゃぞ!生きるのを諦めちゃいかん!」

 

 

 彼が、マッシュ・バーンデッドの祖父である以上……誰かを見捨てることは、絶対にしない。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

―――暗い

 

 

 

 

「……フフッ……フフフフフッ…!!これが聖女バルバラ……なんと美しく、なんと素晴らしい神秘なのでしょう。まさしく……この私に相応しい兵器です」

 

 

 

 

―――誰なのでしょう……この方は………口が動かせない、呼吸も…している感覚がない……暑さも寒さも、感じない。空腹も、眠気も、感情すらも……湧かない。

 

 

 

 

「痛みをさほど感じず、体力もほぼ無限と言っていい容量であり、耐久性も最高潮。こんなにも素晴らしい兵器が手に入るとは…マエストロには感謝をしないといけませんね」

 

 

 

 

――兵器……私が兵器………私は……バルバラ……その名しかわからない。覚えているのは……私について来てくれた…みんな………アレ…いっぱい…いる。みんな…いなくなったはずなのに

 

 

 

 

「…なるほど、バルバラ以外の耐久力はそこまでありませんが。並の兵器では太刀打ちはできない強さですね…フフフッ、素晴らしい……聞きなさい、バルバラ。貴女には重要な役割を果たしてもらいましょう。崇高なる大人として世界を救うこの私を守り──シャーレの先生、マッシュ・バーンデッドがここに至ったときには、奴を消しなさい。それまでは、貴女の配下の者たちが任務に当たります。その時まで待機するように」

 

 

 

――消えて…また増えた。

──マスクに覆われていても分かってしまう。知っている顔が無数にある。………仲間達が、いいように使われている。なのに…なんの感情も起きない……命令無しでは、何もできない。

 

 

 

――辛いはずなのに……その実感も感じられない――わからない……もう…私が誰なのか……わからない。

 

 

 

 

 

『バルバラ……今の貴女は…ただ、操られてるだけのお人形……そんなの、かわいそうだよね……だから私達は、貴女のために祈って』

 

『貴女のために――貴女を倒します』

 

 

 

――本当に…?本当に私を……この枷から解き放ってくれるのですか?

 

 

 

―――痛い……痛みを感じる――あの二人の攻撃は……しっかりと感じられる……あぁ…今…やっと、行きている実感が湧きました……もっと…もっと…もっと!私に、もう一度、「生」を感じさせてください…!!

 

―――操られて、何も感じられず、何もわからない…何の感情も湧かない……そのはずなのに、ひたすらに苦しい。

 
――私を、ここから解放してくれませんか…?

 

 

 

『………AMEN.(アーメン)

 

 

 

――そんなに、悲しそうな顔をしないで。…誰かはわからない…名も知らぬ殿方……あそこにいる、羽の生えたあの子……傷だらけの少女たち……

 
―――そうでしたか……あの子も……トリニティの生徒なのですね。そして彼が、彼女達を導いた存在───

 

――私はバルバラ……ユスティナの聖女、バルバラ……トリニティの生徒、ユスティナ聖徒会を率いる役を拝命した生徒……やっと、思い出せた……ありがとう、未来の人たち。

 

 

 

 

『―ぁ……り―――が……と……ぅ』

 

 

 

 

 私を…私に戻してくれて……ありがとう。

 

 

 生まれ変わった日には、たとえ叶わぬ夢だったとしても―――いつか私も、人並みの女の子のような………恋を―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「回復魔法…………んー、難しすぎるのぉこれ……やはり無難にポーションを買って来た方が良かったか?いやでも、あの子に効くかどうか……」

 

「…………?」

 

「―お…?…おお!起きたのか!よかっ──っって、ヘイローが付いとる!!?まさか君、キヴォトスの生徒さんだったのか!?

 

「……………?????」

 

 

 

 

――どなた………??

───私は消えたはずなのに……どうして、目が覚めて……?





マッシュ君とミカさんに倒されたバルバラさん、その行き着く先は魔法界。

今回のお話は、悪い大人に言いようされたバルバラさんがいい大人の手本であるレグロおじいちゃんに拾われ、人としての色々と取り戻していくお話。恋愛とかではなく、祖父と孫娘みたいな関係

全2話(予定)、お楽しみに。 


その次がラビット……おたのしみに

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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