前話でギアを上げ過ぎて、今回の話がめちゃくちゃ下がってしまった………
コツ……コツ………コツ……
場所は連邦矯正局。逮捕された不良生徒や重犯罪者を隔離する懲罰房に、彼女は重苦しい空気を纏って歩を進める。
犯罪者を懲役に処す拘置所としても、不良生徒を更生させる少年院としても機能している、司法の砦とされている場所────その最奥に位置する独房に、マッシュ・バーンデッドが押し込まれている。電子ロックを解除した尾刃カンナは、マッシュへの尋問を開始する。
「―マッシュ・バーンデッド先生、尋問の時間です。今から口枷と目隠しを外しますが……妙な動きはしないように」
「ふぁふふひふほうふぁふぃふぇふ(やる必要ないです)」
照明は僅か、常日頃は無音に等しい独房に拘禁されたマッシュには無数の枷が装着され、巨大な鎖によって壁・天井・床に繋ぎ止められている。目隠しと轡、マスクによって目と口を塞がれた姿は、明らかに人間を拘束するための措置から逸脱した、非人道的とも思える具合の取扱だった。
加えて彼は、逮捕後にこの場に送致されてから、最低限の食糧と水分しか与えられていない。
「気分はどうでしょう」
「めちゃくちゃお腹空きました、何かくれません?」
「貴方は凶悪犯の疑いのある存在であり、このキヴォトスで一番危険な存在……そしてこの世界で一番、細心の注意と措置を施さなければいけない存在。健康体で暴れられようものなら被害は計り知れません、寧ろ命があるだけ幸運だと思ってください」
「えぇ〜……流石にやりすぎでは?自分で言うのもアレですけど」
「何を甘い事を。犯罪者に情けなど不要です」
「僕、何もやってないのになー」
鎖が一部解き放たれたマッシュは、両手と両足に枷を付けられながらも、カンナに連れられて取調室へ歩いていく。区画を抜けた先、元不良達の寝床となっている懲罰房が並ぶエリアに両者が踏み入った瞬間、叩きつけられたのは激しい怒声と金属音だった。
「ふざけんじゃねえぞ権力の犬!!冤罪に決まってんだろうが!!」
「先生があんなことするわけねえだろ!!アタシらとは違ぇんだぞ!!!」
「もう役人だけでも十分仕事が回るようになったからお役御免ってか!!?今まで散ッ々世話になってきた癖にそれかよぉ!!!」
マッシュがこれまで親身になって話を聞いてきたことで改心した不良達が、憤懣と呪詛を連ねてカンナを口々に罵った。マッシュに対する仕打ちを知った彼女たちは嵐のように荒れ、吐けども吐けども止まらない罵倒でカンナを非難する。
「みんな、ダメだよ。そんな酷い言葉を使っちゃ」
「何言ってんだ!!アンタが何かしたわけでもないのに、こんな真似する奴らなんか────」
「この前も言ったけど、これは仕方ない事なんだ。真相がまだ分かってない以上、職業柄こんな事をしなくちゃダメな立場なんだから───そう責めないであげて」
「─────先生」
「アケミさんも、どうか抑えてくださいね。僕からのお願いです」
格子を隔ててマッシュが目を向けた相手は、伝説のスケバンと呼ばれた七囚人の一人・栗浜アケミ。固く腕を組み、独房の奥からカンナを睨む目には、明らかに殺意に満ちた眼光が宿っている。
「マッシュ様のお願いですので、喜んで請け負っていますが………アレ以上酷くなるのでしたら、分かりますね」
「脅しのつもりなら聞くつもりはない。お前達犯罪者の話も……聞くに値しない」
「――ほう…随分と吠えますね……生徒会の駄犬が」
「アケミさん、ダメです。カンナさんもそんな言い方は」
「早く行きましょう、先生。この場所は……まさしく貴方にとって蠱毒」
冷たい目でマッシュを見るカンナ、その視線に灯るのは裏切られたことへの落胆か、失望か。その目と口ぶりに再び不良達が一斉に撃発し、区画からカンナとマッシュが立ち去った後もなお、噴き出した罵詈雑言は消えることなく渦巻き続けたのだった─────
「カンナさん、何があったんですか……なにか、嫌なことでも?」
「犯罪者と話している今が、一番嫌だな」
「さっきのアレは、流石に看過も肯定もできません。言い過ぎです……僕に対しては好きに言ったり色々な事をしてもらっても構わない―でも、あの子達は対しての侮辱は、許せません」
「許してもらわなくても結構です。貴方に許されたところで、何も得るものはありませんから」
カンナはもはや目も合わせようとしない。罪を犯したマッシュへ対しての哀れみや情状酌量など皆無、純粋にマッシュを敵視し、嫌悪しているような、誰がどう見ても異常な姿だった。そんな彼女に対してマッシュは───
(僕何かカンナさんにしちゃったかな、機嫌も悪そうだし…下手に刺激するのやーめよ)
刺激しないように努め、同時に彼女がこのような状態にある原因を予想すると同時に――ヴァルキューレ、もしくは連邦生徒会が自分に対して過剰に警戒している事についても、考えることにしたのであった。
(………あの狂犬……やはり)
キヴォトスの英雄の真実!!
地位に目が眩んだ極悪人の実態!!!!
クロノススクールの報道を皮切りに、各報道機関や新聞社は衝撃的な一大ニュースで紙面を飾った号外をキヴォトス全土へとばら撒いた。
各学園首脳陣は即座に動乱を収める為に動いたため、現在は一時の沈静化を見せた………ように、思われている。しかし知っての通り、マッシュの個人的な交友関係はキヴォトス全域に及ぶ。
なお現在の連邦生徒会において、生徒会長ならびに首席行政官の代理を務めているのは、前防衛室長の不知火カヤとなっている。曰く、内部の役員たちから推薦を受けてその座に収まったというが─────
「――納得できるか!!こんなもん!!」ビリビリビリッ!!バシッ!!
「ちょ、落ち着きなってサキ」
「お前が呑気なだけだろうがッ!!!先生が……あの先生が、捕まったんだぞ!!!しかも…有り得ない罪で、極悪人のレッテルまで貼られて!!!……どう考えてもおかしい所なんていくつもあるし、辻褄が合わないところだらけなのに────なんで連邦生徒会は無視してるんだよ!!」
「気持ちは大いにわかるけど、ここで騒いでたって意味ないでしょ。この先のことを考えないと」
「犯人は不知火カヤ、アイツ以外あり得ない!!……あの糸目、今すぐにでもどす黒い腹を掻っ捌いてやる!!!」
「やめなって!!」
空井サキはSRT特殊学園の生徒達の例に漏れず、烈火の如く怒り狂い、真っ二つに引き裂いた新聞を焚き火の中へと叩き込んだ。
「サキ、落ち着いてください」
「けどミヤコ!―――ッ!!」
「一度冷静になり、今後の動きについて話し合いましょう。どんな場面でも冷静さを忘れない……それこそが我々です」
「…ミヤコ…お前」
「ミヤコちゃん…!手から、血が…!」
中でも、小隊長・月雪ミヤコがマッシュに対して感じている恩義、そして同時に現状に対する怒りは、学園の中でも突き抜けた域にあるものと言って差し支えなかった。本心では連邦生徒会本庁へと奇襲を仕掛けてでも乗り込みたいが、仲間のため、何よりマッシュのためを思えば、堪えることが最善策だった。
そんなRABBIT小隊はマッシュとの出会いとブートキャンプの場でもある子ウサギ公園に集い、今後の方針についての話し合いを始めていた。マッシュを助け出す方策を、いち早く考えなければならない。
「……不審な点が多く、どう考えても異常事態としか言いようがないと私は考えています。そしてそれを引き起こしたのが……不知火カヤ」
「いくら連邦生徒会所属の幹部だからって……1人でこれほどまでのことができるわけないよね。確実に誰かと手を組んでるじゃん」
「カイザー……かな」
「一番有り得る……けど、今はシャーレが心配だ。先生がいなくなってから…あそこはちゃんと動けてるんだろうか」
「先生が、シャーレの大黒柱だったしねえ」
尽きない不審点、そしてカヤへの不信感が話し合いの過程で並ぶ中、草叢が揺れる音がした。研ぎ澄ました神経と鍛えた感覚が何者かの接近を捉え、即座にミヤコとサキが動き出す。愛銃を構えたミヤコとサキ、即座に飛び退いて狙撃位置へ移ったミユ、その隣で端末を手に攻撃準備を整えたモエ。
「SRT学園所属の、RABBIT小隊……で、間違いないか?」
「───そうだ。お前は何者だ」
「私は、ニーナ・シャーレ。シャーレ所属の生徒だ。少し、話があってやってきたんだ」
「シャーレ…!!ちょうどいいところに来てくれたじゃん!ねっ、そっちは大丈夫?」
「………っ…!!」
「ちょっ…!?」
公園に現れたのはニーナだった……が、モエが喜色を露わに迎えようとした瞬間、ニーナはその場にへたり込んでしまった。ミヤコ達はただならぬものを感じてニーナに駆け寄り、腕を回してその肩を支える。
「……連邦生徒会からの命令で、私達は活動を停止させられた」
「はぁ!!?正気!!?」
「武器も取り上げられ、残ったのは食糧とその他…戦闘に使えない道具ばかり。実質…私達は何もできなくなった……勝手に動けば、先生の共犯とみなされ捕らえとも…言われたんだ。何を言っても、おかしい点を挙げても……無視をされてしまった」
「……やり過ぎだろ…!!」
「シャーレ所属の生徒達はみんな、先生を助けようと動いている……だが、武器も何もない私たちに出来ることなどないに等しい……皆、苦しそうだ。一週間前まで、笑い合っていたのが嘘のように思える」
連邦生徒会長によって設立されたシャーレの活動権限は、上位機関である連邦生徒会、ひいては現在その全てを手に収めているカヤが握っている状態にある。
下手に歯向かえば余計な逮捕者を出すばかりか、シャーレという組織の外聞を悪化させてマッシュの釈放すら危ぶまれる。何より正面切って争えば流血は避けられず、先生であるマッシュがそれを良しとするはずがない。
『――返せ……先生を返せ!!!』
『よせミサキ!やめるんだ!』
『アンタら、散々先生の世話になってきたんじゃないの!?それとも仕事を奪われて妬んでんの!?そうなんでしょ…ねえ!!』
『ミサキさん!ダメです…!』
『――なんで…なんで先生ばっかりこんな目に遭うの…?……ねぇ……どうして先生が酷い目にばっか遭うの…!?それなら私が全部引き受ける!!痛みも苦しみも全部!!』
『ミサキ!!…ダメ…!』
『だから返せ!!役人の縄張り意識で先生を縛るなっ!!―――返してよ……かえしてよ…!!お願いだから……うぅ…ぅぅ…!!!ウゥァァァァァァッッ!!!!』
マッシュ逮捕後、ヴァルキューレによって押収された装備や設備が搬出された際、ミサキはヴァルキューレ生徒に食って掛かったものの、サオリ達によって抑えられた。思うことは皆一致していたが、出来ることは何一つない無力感と虚しさを前に、生徒達はただ苛立ちと悲しみの中で自分を責めることしかできなかった。
「……狐坂ワカモは、今何を?この状況を一番よしとしない存在のはずですが」
「…周りに被害が出てはいけないと言って、どこか遠くへと行ってしまった。先生を助けようと動いているんだろうが……私達も、長く持つか分からない――だから……頼む……お願いだ…」
ニーナは、ゆっくりと口を開け、RABBIT小隊のメンバー達に告げた。
「――連邦生徒会を敵に回すことになるかもしれない、最悪矯正局から出られなくなるかもしれない……だが、このまま終わりたくない…先生を助けたいんだ……だからどうか──私達に、力を貸してくれ」
その答えは
「わかりました、ではさっそく連邦生徒会がいる施設への襲撃作戦を考えましょう……モエ、確保できるだけの武装と装備品をかき集め、展開に準備してください」
「オッケー!」
「よーしミユ、あのヤギを撃ち抜ける絶好の狙撃スポットを見つけるぞ」
「額と
「待てそう言えことじゃないぞ?そう言う意味じゃ無いからな!!?」
『今晩はヤギのご馳走』
「待て待て待て待て待てぇぇぇぇぇっっ!!!!?」
私昔から鬼って言われるんですよね。なんでだろ
次回・おかしいFOX &うさぎ達
怒り狂う悪魔とトップと天使のトップ、お楽しみに
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