透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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すみませんマジで今回はうまくかけませんでした………

次回はトリニティ視点という感じで……ちょっとすごいことになります




ゲヘナ学園と動けない悪魔達

 

 

 

「………今日も、静かだな」

 

「銃声や爆音も聞こえず、ここがゲヘナとは信じられないほどに…静かになりましたね。爆破テロに関しては、ここ数週間で3回しかありませんでしたし」

 

「……委員長は?」

 

「マコト議長のところへ」

 

「アコ行政官…止めなくて良かったのですか?」

 

「止めたのですが…既に行ってしまわれたのです。それに待機命令まで出されてしまいました……なら私はその指示に従うのみです」

 

 

 

 ゲヘナ学園、そこはまさしくキヴォトスで一番治安の悪い学園と言うにはあまりにもおとなしく、不気味なほどの静謐に満ちた世界に変わり果てていた。

 

 理由は間違いなく、ゲヘナ学園の英雄として知られるマッシュ・バーンデッドの逮捕───正しくは、それにより起こったとある一つの事件が原因。空崎ヒナは、その被疑者のもとに向かっていた。

 

 

「…あっ、ヒナ委員長。お待ちしてました」

 

「マコトは?」

 

「今やっと大人しくなりました。ちょうど話しかけても全然返事をしてくれなかったので困ってたところだったんです」

 

「……そう、休んでていいわよ。後は私がする」

 

「…休むも何も、することがないのでいつも通り私はグータラとしてただけですので。では……議長を頼みます」

 

 

 ゲヘナ学園・万魔殿議長室前。色濃い疲労を顔に滲ませたイロハを見たヒナは、彼女からのバトンタッチを受けると、腹を決めて扉に手をかけた。

 

 

 

「ここには誰も入るなと言ったはずだ」

 

「ゲヘナは自由と混沌を校風としている学園、でしょ。そんなルールを今の私が聞くと思った?」

 

「……何のようだ」

 

「そろそろ、冷静になったかと思って見に来たの」

 

「私は頗る冷静だぞ、ああ、冷静だ」

 

「ここは貴女の部屋だし、ここにある物全てが貴女の物なんだから好きに扱ったとしても構わないけど……自分を忘れちゃダメよ」

 

 

 

 整然とした領域だったはずの議長室は────もはや強盗が押し入ったなどという程では済まされず、一見して戦災に呑み込まれた廃墟と見間違えるほどに破壊され、荒れ果てていた。

 どこかの捻れて歪んだ終着点から切り取った光景を貼り付けたような有り様の室内、その中央の椅子で鎮座するマコトに、ヒナが歩み寄る。

 

 マコト自身の姿も散々な有り様であり、擦り切れた制服と振り乱した髪は幽魔の姿を思わせる。どれだけ荒れ狂ったのか、イロハの眼前でどのような怒りを撒き散らしたのか───ヒナにとっては、マコトの底にあるモノがどれほどの深みを持つのかも計り知れない。

 

 

 

 

「……私以上に、貴女がそこまで取り乱すなんて思っても見なかったわ。怒りに身を任せ、万魔殿所属の生徒を引き連れて連邦生徒会へ乗り込もうとするだなんて」

 

「貴様に止められてしまったがな」

 

「当たり前よ、そんなことをすれば先生が悲しむのよ」

 

「………その先生が今、どうなっているか知っているのか」

 

「無実の罪で暗い牢獄の中…ね」

 

「そうだ、我らの先生が……マッシュが、光も届かない牢獄に捩じ込まれて過ごしているんだぞ。我慢などできるものか…!!」

 

 

 マコトは椅子から立ち上がると、手に取ったエデン条約事件の調査資料ファイルを雑に壁へと投げつけた。風を切ったそれがヒナの髪をか掠めて壁にヒビを入れる。体力の限界か、マコトは崩れるように地面へと座り込む。

 先の事件───マコトが万魔殿戦車隊を率いて、挙げ句美食研究会まで従えてD.U.への突撃を図った件で、ヒナが彼女たちを留めてもなおその熱は冷めやらないようだった。

 

 

 止めたのは無論、空崎ヒナたった1人だった。制圧に際しては、これまで自治区で見せたことのなかった威容と戦い方で万魔殿戦車隊を阻止し、マコトとの格闘を経て事態を収束させている。

 その姿が噂を伝手に不良集団の恐怖を煽り、現在の不良生徒は軒並み風紀委員会からのマークを避けるために活動を“自粛”しているのが実情だった。もっとも、ヒナがそこまでの戦いぶりを見せた理由は、言うまでもなくマコトの怒りと同じだったのだが。

 

 

「よりにもよって…何故、あのヤギを上に置いたんだ。それがわからん!奴がマッシュのことを毛嫌いしていたことは周知の事実!上に据えてみろ、シャーレどころか各学園の活動にすら支障をきたすのは目に見えていたはずだ!!それなのに…何故、役員連中は奴を推薦したッッ!!!?!?」

 

「……」

 

「不知火カヤ就任に対する反対意見は少数だった、だと………ふざけるな。一番助けられたのは貴様らのはずだろう、役目を終えたからさっさと捨てると言うのか!!アイツは我々だけでなく、ティーパーティーとセミナーも見込んだ男だぞ…前途を失うにはまだ早すぎる、まだまだこれからだったはずだろうが!!!!」

 

「マコト、落ち着いて」

 

馬鹿か!!マッシュが、とことん善人であるマッシュが凶悪な犯罪者としての汚名を着せられて牢獄行きになったんだ…それを前にして、落ち着けだと……?――お前の友が、投獄されたのだぞ!!?逆に貴様には危機感が足りんのだ!!!一体いつから貴様はそこまで腑抜けた!!?」

 

 

 マコトにとってマッシュは超えるべき存在でもあり、友でもある。その友であるマッシュが汚名を着せられた挙句に捕まった──加えて状況から見て彼が冤罪によって犯人に仕立て上げられたことは明らか、犯人は不知火カヤであることも確か、にも関わらず解決に向けた動きを封じられた状況に、マコトは置かれている。

 

 

「ゲヘナを含めた多くの学園が先生の味方、だからこそ先生の身に何かあれば総力を上げて彼の周りに集う……そうなることはわかっていたはずなのに、不知火カヤは先生を嵌めた。確かに怪しい──逆に言えば、先生を相手にそんな真似をするなら、私達を敵に回しても互角以上に張り合えるだけの”何か”を用意していると考えるべきよ。何か仕組んでいるに違いない……迂闊に手を出せば、何が起こるか分からないでしょう」

 

「ああそうさ!ヴァルキューレがまるで機械の様に従順になっている時点で、奴は何かしらの力を扱える様になっている!そんな相手に軍を引き連れて戦闘に向かえば最悪のケースにもなりかねない」

 

「…だったら」

 

「だがそれはマッシュが不当な扱いを受けるに足る理由にはなり得ない!!……お前に叩き伏せられた結果、更に怒りが沸騰し、我慢の限界を迎えてD.U.へ飛び出していった議員が20名ほどいた……全員、一瞬で制圧されて投獄された!!今や反乱の嫌疑でマッシュ諸共幾重にも拘束され、暗い独房の中だ!!」

 

「……」

 

 

 自分のものを勝手に奪われた挙句閉じ込められ、さらには名誉までも傷つけられていると言う認識のマコト、だが怪しさ満点の場所に兵力を向かわせるわけにもいかず自身の立場的な意味で動けない……歯痒く、腹立たしさでいっぱいであった。

 

 

「だいたい……空崎ヒナ!!貴様は…なんとも思わんのか!!?貴様はマッシュを愛していたはずだろう!!」

 

「……そうよ、だからこそ、動かないの」

 

「……言っておくが、あのヤギの手に踊らされているヴァルキューレが、マッシュをどのように扱っているのか知れたものではないぞ。今もなお、どんな目に遭っているのかわからないと言うのに……よく冷静でいられるな!!糖分で脳まで溶かしたかッ!!?

 

 

 

 

 その次の瞬間、震え始めたヒナがマコトに近づくと、拳銃並みの発砲音が生じる勢いで平手打ちを叩き込んだ。

 

 

 

 

「冷静でいられるわけないでしょ!!!!」

 

「…!」

 

「今すぐにでも先生を助けに行きたい、身が傷ついても、どんな目に遭っても…助けたい!。……けど、もしもの可能性がある。不知火カヤが魔法に目覚めていた場合、私でもどうなるか分からないのよ!!そうなってもし操られでもしたら……ここは、先生が好きだって言ってくれたゲヘナはどうなるの!?貴女一人で全部どうにかできるの!!?」

 

「空崎ヒナ……貴様…」

 

「先生が今もなお酷い目に遭わされてるんじゃないかって思うと、不安で仕方ないし…震えだって止まらないわ…!!エデン条約で散々甚振られて、それでもアリウスを救おうとしたと思いきや、訳の分からない化け物に逆恨みまでされて───私だって心配に決まってるでしょ!!!でも今、ゲヘナに限らず他校の生徒達も皆、それ以上に不安で…不安で仕方ない。ゲヘコも、ゲヘミも、あの剣先ツルギだって────そんな状況で頼りにされるのは私――だからっ…私がしっかりしないといけないの!!

 

 

 

 ヒナだって今すぐにでもマッシュを助けに行きたい、しかし今回の一件はエデン条約事件におけるアリウス分校の動き方とは状況が違った。

 マッシュを利用して生徒達の怒りとヘイトを焚き付け、まるで連邦生徒会への攻撃を誘うために餌を垂らしているような振る舞いの裏側が、無策なハッタリだけで糊塗されているはずがない。寧ろ、連邦生徒会への『反乱』を始めた学園に対する侵攻と支配の口実を求め、今か今かと『生贄』を待っているかのような───

 

 ともすれば、古巣(情報部)からの情報共有で存在が確認された『魔法』という力を、カヤ含む連邦生徒会内部の誰かが手に入れている可能性もある。もしヒナやマコトのような重要人物が特攻同然にD.U.へと乗り込んで、逆に今のヴァルキューレの如く傀儡にされてしまえば、収拾をつけるまでの道程は絶望的なほど遠のいてしまうだろう。

 何よりも、それを知ってか知らずか、マッシュ本人が未だに不可解なほどの沈黙を保っている……それはつまり、彼と関係のある者たちを守るためだと、ヒナは既に知っていた。だからこそ、動けない。

 

 それにもしものことがあった場合、もしも自分がゲヘナの敵になった場合……まさしくそれは最悪のケース。

 

 

 

「……マコト、今すぐになんて言わない。ゆっくり…考えてから、手を貸して」

 

「何をする気だ…?」

 

「行方不明になった七神行政官の捜索活動よ。他学園と協力し、明日にでも秘密裏に開始する。情報部については話を通したわ、パラダイス機構も作戦指南書を纏めてる…ついでに、今回の件に関わっていそうな連中を洗う…シャーレの生徒達の証言から、カイザーが関わっているのは確実だから」

 

「………そうか」

 

「…この後、私はトリニティに足を運ぶ。あっちの状態も気になるし……百合園セイアにも話がある」

 

「……悪いな、今は1人にしてくれ。ゆっくりと考えたい」

 

「…わかったわ」

 

 

 ヒナは静かに扉を開け外へ出る。

 

 

 

 

 

 

ピッ…!

 

 

 

 

 

そして、一本の電話をかける。

 

 

 

 

『――はい、こちら便利屋68。社長の陸八魔アルです……ご用件をどうぞ』

 

「───風紀委員長、空崎ヒナよ。用件についてはおおよそ察しが付くと思うけど、手伝って欲しいことがあるの。───アウトローである貴女たちにしかできないことよ」

 

『いいのかしら、私と貴女達は敵同士。風紀を乱している私達と協力なんてして』

 

「…最近は先生が面倒を見てくれていたのでしょう?改めて私から言うべきことはないわ。それに、今回は特例。エデン条約やアリウスの一件とは違う、既にキヴォトス全土を巻き込んでいる一大事なの」

 

『……そうね。こんな状況じゃ…互いになりふり構ってはいられないわね』

 

「報酬は何がいいかしら」

 

『欲しい物はただ一つ…先生の安全と』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『裏で協力をしているカイザー幹部の首よ』

 

「交渉成立……頼むわよ。言っておくけど、失敗は許されないわ」

 

『ふふっ、任せておきなさい────私達アウトローを敵に回したらどうなるのか、教えてあげるわ』





先生を助けたい!!でも罠にしか思えない!!多分なんか変な力持ってる!!もしかしたらの可能性がある!!

 うーんこれはどこの学園も動けませんねぇ〜(目逸らし)

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