透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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次回が長くなりそうなので……とりあえず短めです。


そろそろ皆さんがマッシュ君を恋しくなってきた頃合いでしょう……ご安心ください、そろそろ本当に出てきますよ!!


マッドサイエンティストプリン狂信者

 

 

 

 

 時は遡り、マッシュ逮捕事件より昨日前……ファーミンがいる組織の本拠地にて。

 

 

 

「はぁぁぁ…意味わかんねー、何で覚醒の兆しのあるガキを殺すんじゃ無くて連れてかえん……るんですかぁ?火種は燃え盛る前に消しといた方がいいでしょ、絶対」

 

「戦力増強の為だ。覚醒し魔法が使えるようになった生徒は、まさしく神の力を発揮したに等しい……故に今後の行動を考えれば、こちらへ引き込んだほうが選択肢も増える」

 

「“先生だいちゅき〜!”って生徒が敵に回るとは思わないんですが?」

 

「……個人的に好ましくはないが…アレを見せれば、心代わりするかもしれん」

 

「あー………理解したわ――ドゥウム兄様もあくどいですねー」

 

「私ではない……イズナの考えだ」

 

「うし、この話やーめた」

 

 

 

 一つの大きな机に対面し座る者達、イノセント・ゼロの最高戦力にして驚異的存在……イノセント・ゼロの実の息子にして最強の魔法使い達、悪魔の五つ子。

 

 その場にいるのはデリザスタ、ドゥウム、ファーミン、そしてスーツ姿の三男坊───エピデム

 

 

 

「エピデム兄様は、なんでアスナってのを狙うんでーすか?」

 

「彼女は他の生徒とは違った特殊な神秘を持っていましてね……固有魔法への覚醒とまではいかなくとも、その力は大変興味が―――あっ、もうこんな時間…失礼します」

 

「うわ最悪だ」

 

 

 

 

 

 悠長に、丁寧な紳士のような口ぶりで話していたエピデムだったが…次の瞬間、彼の手元に、脚付きの皿とスプーンが現れる。

 

 

 

 

タンタン…!!

 

 

(始まった…)

 

「――Pー」

 

 

 その単語をつぶやいた瞬間、エピデムのテンションと態度が急変。

 

 

「U!R!I!N!」

  

 

 パカっと皿の上に美味しそうなプリンを置き、開く。そしてその皿を、まるで玩具を手にしてはしゃぎ回る子供のように、大胆に天へと掲げて踊る。

 

 

プルプルプリン、プルプルプルプリン!牛乳と卵の秘密の逢瀬、危険な出会いのイッツァフォーリンラブ!」

 

 

 そして暑くもないはずなのにハフハフと口を動かした後、プルプルとしたプリンを銀色のスプーンに乗せそれを味わうようにして食べる。

 

 

「――パァッ!パラダイス♪」

 

(相変わらずイカれてるなぁエピデム兄様)

 

(頭のネジが外れすぎじゃないか?)

 

(コイツと血が繋がっているのか…)

 

 

 

 エピデムは五兄弟の中でもトップクラスの狂人である。その所以こそ、プリンに対するこの執着と観念。マッシュが人生のほとんどをシュークリームに占められているように、エピデムはプリンの狂信者である。しかしその狂気はマッシュの比ではなく、周囲からの視線や評価など意に介さずプリンを愛し続けている。

 

 

「あっ、一つ忠告しておきますが」

 

(急に戻んなよ怖えわ)

 

「彼女は私の大事な存在ですので――勝手に連れて行こうものなら、兄弟であっても容赦しませんよ?」

 

 

 ゾクリ……ほんの一瞬だけ、彼ら──ドゥウム以外であるが──の背中に悪寒が走った。エピデムは何食わぬ顔でプリンを食べ続ける。

 

 

「誰も手を出そうなんて思ってませんよー」

 

「……しかし、その生徒はミレニアムの生徒だろう。そう簡単に騙せるのか?」

 

「普通ではあれば不可能です……けど、ご安心を。私が作り上げた例の変身役……そこに、私自身が作り上げた最新の幻覚薬品、これを少し使えば…簡単なことです」

 

「その幻覚は…あの女の力か?」

 

「ええ、彼女の細胞と血液を少しいただき作ったものです。後でファーミン兄様にもあげますよ」

 

 

 エピデムはプリンを食べ終えると、そのままその薬を飲み干し―その姿を変える。変わった姿を見た瞬間デリザスタはあからさまに嫌な顔をする。

 

 

「けっ…!!相変わらず嫌な顔だ…!」

 

「これがコチラの世界の彼の姿…興味深いですね」

 

 

 エピデムは、マッシュの姿となりその身だしなみを整え態度すらも変えていく。

 

 

「え?アスナさんならすぐに本物かどうかわかるだろって?……ふふん。ほぼ毎日声すらも聞けていないアスナさんのコンディションがまともなわけないじゃないですか」

 

「何だそのふふんって奴…きもいですよ」

 

「彼の口調に合わせてみたのですが…ふふんっ、僕はうまく似せれていますか?」

 

「すげぇな、聞くたびに殺意が溢れてくる」

 

「それはよかった……恋心というものを抱いている女性は、その片思いの相手が自分の手元から遠く遠くへと離れた瞬間…簡単に壊れてしまいます」

 

 

 まるでそれを知っているかのような態度をとったまま、彼は立ち上がる。

 

 

「…ああ、楽しみですね。彼女に早く会いたい……他にもたくさんの…たくさんの――

 

 

 

 

――研究材料が、私を待っている。好奇心が止まりません」

 

 

 

 

 エピデム―彼は、狂気の域に達した好奇心に駆られたマッドサイエンティスト。

 

 さらに言えば、自身の研究や実験は軍事転用するなどの何か深い意図がある為ではない。

 

 彼の本質はまさしく好奇心の塊……例えば───

 
『魔力を失った人間を見たみたい』
 
『力を溜め込みすぎた人間を見てみたい』
 
───などという、知的好奇心を満たす為であり、こういった所業が彼の「1度見てみたいと思うと止まらない」という狂気的な好奇心が彼の全て。

 

 

 

「さて…行きましょう――叡智の学園…ミレニアムへ」

 

 

 五つ子の中で一番イカれている男が今……ミレニアムへと…足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ご主人様を返してよ、今すぐに」

 

「…………これはこれは…流石に予想外ですね」

 

「ご主人様が大好きなのはシュークリーム………プリンじゃない!!騙す気なら……せめて、もっと…にせてよ…!!」

 

 

 

 しかし──彼は理解していなかった。────エピデムがエピデムである限り、化学と数式による調査と予測では決して見出すことの出来ない媒介変数、マッシュと生徒の間に生み出された巨大なファクター……すなわち、愛情という存在が持つ影響力を。

 

 

 

 

「……ああ、成程……コチラの世界のマッシュ・バーンデッドは――()()()()()、シュークリームが大好きなんでしたね」






え?アスナさんならすぐに本物かどうかわかるだろって?……ふふん。

ほぼ毎日声すらも聞けていないアスナさんのコンディションがまともなわけないじゃないですか


byエピデム



……えへ⭐︎

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