透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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第一作戦・第二段階開始

 

 

 

「お前何してんだ」

 

「―――危ない…危ない。後もう少しで敵の術中に嵌るところでした。狙撃なんてされたら堪ったものじゃありません」

 

「窓から身を乗り出しといてよくいうなお前」

 

「ファーミン兄様が透明化した状態で引き戻したのが正解でしたね」

 

「超人の辞書に二度の失敗という文字はありません……ここは冷静に、冷静に心を整えて」

 

 

 

 

 

『七神会長代理の事を嫌ってたと聞いたが――それってスタイルが自分よりも良いから嫉妬してたのかぁぁっ!!?』

 

「アッチがデカすぎるんですよ!!!!!」

 

「だから行くなって……てか何に怒ってんだ?胸にある脂肪とか気にしても仕方ないだろ」

 

「そういえば、男であるドゥウム兄様の方がカヤさんよりも胸は大きいですね」

 

「うがぁぁっ!!!」

 

 

 

 窓から身を乗り出し怒鳴っているカヤをファーミンが透明状態で両肩を持ち引き戻している。それを見てプリンを食べているエピデムは思考をめぐらせていた。

 

 

(子供が大人の真似をしている……なんて、単純なことではありませんね。おそらく相手は何かしらの方法でカヤさんの魔法の特性を調べようとしているのでしょうが――何か引っかかりますね)

 

 

 エピデムはカーテンの隙間から窓の外を覗くように、外に集った生徒を観察し始める。

 外に立つ生徒はレッドウィンターの工務部が中心ながら、トリニティやゲヘナの生徒もまばらながらも含まれており、後方や外周には動静を見守るように──同時にこちらを伺うように、山海経とミレニアム、そしてシャーレの生徒が立ち続けている。

 

 

(……成程、学籍を問わず生徒を動員して圧力をかけ続けると同時に、処罰の対象者をあらゆる学園に渡って分散させ、カヤさんの手間を増やそうとしているのでしょうか……カヤさんの仕事が増えれば増えるほど―――おや?)

 

 

 考え事をしながら観察していたエピデムが、ある違和感に気づいた。それについて考えた後、エピデムはプリンを平らげ、席を立ち扉の方へと歩く。

 

 

「どこに行くんだ」

 

「少し用事ができまして…ここはお任せいたします」

 

「さっさと帰って来い」

 

「ええ。長く空けるつもりはありません」

 

 

 エピデムが部屋を出て行ったのを確認した後、ファーミンも外を覗く。デモの中にサオリはいないのでそこは残念に思いつつもどうするかを考え、シンプルな答えに辿りついた。

 

 

「ピンク髪、どう考えても罠だろ」

 

「ええわかっていますよ……しかし逆にチャンスでもあります」

 

「この距離届くのか」

 

「届きますよ……しかし今のままでは完璧には効きません。注意を集めるのと同時に…少し戦意を削ぎましょう」

 

「今回だけの特別だぞ」

 

 

 

 ファーミンは窓を開けたまま透明のトランプを出し、狙いをつけて投擲した。

 投げられたトランプは、ミノリが持っていた拡声器にヒット。耳障りなハウリングを建てながら拡声器が分解し、ミノリの頬と手をかすめたトランプが血を飛ばす。

 

 

 

 

「な、なんか飛んできた…!?」

 

「部長!血、血が!」

 

 

 

 あまりも突然すぎる出来事、工務部を含めたデモ隊に動揺が広がった。何よりミノリの傷は、致命傷とは程遠いとは言え、一般的なキヴォトスでの諍いでは決して生じない程の出血を生じている。深く裂けた頬と手から血が溢れ、既にミノリの右頬と右手は真っ赤に染まっていた。

 

 

 

「狼狽えるな……狼狽えるなっ!!

 

『!』

 

「私を攻撃してきた……つまりは宣戦布告!!我々に対する挑発だ!!!――ならば乗ってやろうではないか!!それにむしろ好都合だ……思い出せ、我々は武力や権力に抑圧された程度で足を止める集団ではないはずだ!!この程度の脅しに屈するな!!」

 

 

 

 怯むことなく強気な姿勢を崩さないミノリ。それに鼓舞され他の生徒達も強気になり声を上げていく、それを見ていたカヤは改めて再認識させられたのだ……レッドウィンターの生徒という存在のヤバさを。

 

 ファーミンは内心『面白いなあいつ』と思いつつも次に投擲するトランプの準備をし始める。 

 

 

「っっこれだから騒ぐことしか脳がない奴らは…!―――はっ……ダメです、今は…やめ……やめ…なさい…!!」

 

「…おいどうした、さっきから一人―――待て、よせ。めんどくさいことになる」

 

 

 突然そう言い出し、カヤを止めようと手を掛ける。しかしカヤはその手を掴み自分の方へと引き寄せると、静かに告げた。

 

 

「――邪魔しなーいで?♪目立つチャンスなの♪」

 

「……俺、お前みたいな奴嫌いなんだ」

 

 

 ファーミンはめんどくさそうにしながら彼女を前に出すと、そっと自分の視界を閉じた。その数分後、窓から少し身を乗り出している彼女をデモ隊の生徒たちは目視する。敵意をむき出しにしたまま。

 

 

 

 

「―――はーい!みんなちゅうもーく!♪」

 

『――――は?』

 

「――しっかりと……見てね?」

 

 

 

 

 

ドクンッ……!!!!

 

 

 

 

 その直後、カヤに視線を向けていた生徒の多く、その身体に異変が生じる。唐突な目眩とともに見える景色が歪み、視界の端が黒ずみ、見えるもの全てが白けていく。

 方向感覚を失ってへたり込む者、吐き気に腹を抑えてえづきながら崩れる者など、デモ隊の全体に渡って生徒が不調をきたし、中には意識を失う者や泡を吹いて呼吸障害を起こす者まで現れ始めた。

 

 

 

 

「あぁ〜……いい気持ち。みーんなが私を見てくれている……もっと、もっと見て…もっと!「オラァぁぁ!!!食らえピンクアホ毛ぇぇぇ!!!」…え?」

 

 

だが生徒の中には、頬の内側や舌を噛んでまで意識を保とうと足掻く者、倒れることなくカヤを睨み続ける者、何事もなかったように不変の姿を保った者もいる。

 その筆頭たるミノリは、これぞ好機とばかりに背負っていた対戦車擲弾発射機・RPG-22の発射筒を引き出すと、照準を合わせてトリガーを引いた。

 

 

「ミレニアム特性!!高速生クリームミサイルだぁぁっっ!!!」

 

「おい下がれ」

 

 

 甘味の塊を充填したプラスチックカプセルが、カヤ目掛けて高速飛翔する。ファーミンをカヤの後ろ首を掴んで後方に引き下げると、トランプを並べた盾でクリームの塊を阻止した。

 突如として緻密に並んだカードが窓外に現れ、白いクリームがぶちまけられるという超常現象を眼前にした生徒たちは───確かに、勝機を掴んでいた。

 

 

「今のちゃんと撮れてたか!!?」

 

『完璧に撮れていたわ。魔法の行使の瞬間、効果、どちらも映像に抑えられた……デモ作戦の第一段階は大成功よ』

 

「よしっ!──―動ける者は昏倒した者や行動不能の者を連れてこの場から退避しろ!!急げ!!これは負けを認めた逃走ではない!!勝利を得た帰還であり、革命への凱旋だぁぁっ!!」

 
「おおぉ────っ!!!!」

 

 

 

 

 その声に雄叫びをあげ答えた生徒たちが一斉に動き出し、その場から退散していく。ミノリの問いに対して答えたのは調月リオ。今回、作戦参謀の一人を担う彼女は、状況の全てを映像に記録したドローンに帰還命令を送信する。

 

 計画の第一作戦、それは『カヤの力を把握すること』だ。カヤの魔法の力、現象、条件、それによる効果などを録画しそれを解析する…そのためのデータ取りが今回の作戦の一つ。

 

 普段のカヤならそう簡単に引っかかるわけもないのだが、黒服からの情報で手に入れたカヤのもう一つの人格『他人に評価されたい、見られたい』という欲の方に注目し、会えて大人数でデモを起こし、わざと彼女に力を使わせた。

 

 あとはなんとかして視界を遮り全力逃走……脳筋すぎるとは思うが、これもマッシュによる影響だろう。

 

 

 

 

「こっちの作戦は成功したが……問題は次…!頼むから失敗してくれるなよ…!!」

 

『心配する必要無いわ。あの子達は強い……特に、リーダーである彼女は先生の一番弟子よ、必ずや…成功して帰ってくるわ』

 

「ならいいが…!」

 

 

 頭を押さえながら仲間を担ぎそのまま退散していくミノリ、ミノリ達デモ隊の作戦は成功――次は第二段階かつ最重要にして本命の作戦。その作戦の成功を祈りながら走っていた。

 

 

 

『―――こ……こちら…チームくノ一…!』

 

『!イズナ、そっちの状況はどうかしら』

 

『えーと……その』

 

『もしや…バレてしまったの?やっぱりあの男が…』

 

『いや、そうではなくて……嫌でも関係はしてて……ええっと………!』

 

「な、なんだ。何が起こってるんだ!?」

 

 

 

 通信機から聞こえてくるのは打撃音、リオやミノリは何かがあったと思い焦る。しかし帰ってきたのは……誰も予想していなかった物。

 

 

『その…―…』

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――流石に驚きました……まさか貴方が、生徒の為に命を張るだなんて。貴方と私は同族だと思っていたのですがねぇ…」

 

「クククッ…コチラにも少々事情がありましてね。彼女らを傷つけさせるわけにはいかないのですよ。話は変わりますが…魔法界の人間は、近接戦の訓練などはしているのでしょうか」

 

「普通はしませんよ――例外はいますが」

 

 

 

 ゲマトリアの一員、マッシュに背筋を折られかけた挙句、シュークリームと筋肉に魅了されてしまった被害者───黒服

 

 

 

 

「貴方………正義の心にでも目覚めたのですか?」

 

「私はただ、彼との契約を守っているだけに過ぎませんよ」

 

 

 

 

「―――いやどういう事!!?」

 

「えっ……えっ…え?」

 

「…け……契約?」

 

 

 

 彼が、悪い大人なの一人である彼が、別行動隊である忍術研究部をプリン狂信者のエピデムから守っていたのだ。

 

 

「クククッ……杖が無い魔法使いの実力、拝啓いたしましょう」

 

「――はぁ、服が汚れるから嫌いなんですよね」

 






くノ一組の作戦の詳細は次回をお楽しみに


百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
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