もう短編のほとんど前編後編の構成だと思っていただければありがたいです。
フウカちゃんはとりあえず幸せにしたかったんです。ほんとに。
それでは本編へ…どうぞ!
それは、マッシュがシャーレ内にていつものトレーニングを終え、シュークリームを食べている時のこと。
『先生、前々から思っていたのですが』
アロナがマッシュに一つの質問を投げかけた。
「ふぁみ?」
『朝昼晩、ずっとシュークリームを食べていますよね?』
「うん」
『体に異常は起きていたりしませんか?』
「全く」
マッシュからしてみればシュークリームはおやつでもデザートでもなく主食。
なので朝昼晩のほとんどがシュークリーム、この食生活をキヴォトスに来てからずっと行っていた。
『流石に3食シュークリームは不味いのでは?』
「えー…別に体調に変化とかはないし…」
『今起きていないだけで、そのうち起きるかもしれませんよ?』
「うーん……」
『この前当番でやってきたホシノさんにも言われてましたよね?
【うへぇ……先生、好きなものばっかり食べてたら体調崩しちゃうよ? おじさん、それで先生が倒れるのは嫌だな〜泣いちゃうな〜】―――って』
「ウググッ……ホシノさんを悲しませるわけには行かないか……」
『その通りです』
「けどなぁ……僕料理とかシュークリームしか作ったことないし、インスタント?って奴もなんか違ったし……うーん困った」
マッシュはキヴォトスに売ってあるインスタント食品を一通り口に入れていた。しかしどれもマッシュの口には合わず、結局シュークリームを自分で作りそれを食べることにしていた。
『一つご提案なのですが、よろしいですか?』
「なに?」
『先生が他のお料理を作れないのなら、誰かに教わる!というのかいかがでしょうか』
「アロナちゃん………天才だ。流石はスーパーエーアーイ」
『AIですよ先生、すでに教えてくれそうな人は探しておきました!』
「おお……それで誰?」
アロナはフフンッと自信満々にその人の名を言う。
『ゲヘナ学園・給食部所属・2年生の愛清フウカさんです』
「……給食部?しかも…ゲヘナの?」
『はい!』
ゲヘナという単語が出てきて少し怪しむマッシュ、ゲヘナ学園の治安ははっきり言ってバグかと思うくらいに悪い。
そこの給食部と聞いてマッシュは不安になっていた。
「そこ…本当に大丈夫?」
『だ、大丈夫です!―多分』
「多分て」
『あ、ゲヘナの給食に関しての口コミがありますね、ええ〜と…おいしくはない・味はイマイチ・不味くもなくおいしくもない、普通……だそうです』
「ダメじゃん」
『けれど、けれど!交流がある学園に行って、そこで料理のお勉強をするのが一番だと思うんです!』
「確かにゲヘナと僕は結構な関わりがあるけど……まあいいや、ひとまず行ってみよう」
マッシュは身支度を整えゲヘナへと行く準備をする、何かあった時ように鉄の杖・プロテウスを持ちおやつのシュークリームも忘れずに持つ。
『あ、そう言えば』
「どうしたの?」
『ゲヘナ給食部の方々から救援要請が来てました』
「それ早く言ってよ」
マッシュは急いでシャーレを飛び出し、ゲヘナ学園へと向かった。
――――――――――――――――――
ゲヘナ学園・給食部
活動自体は真っ当な部活の一つで、学園生たちの給食を作ることを活動内容としている。部のエンブレムはお茶碗に山盛りのご飯と、手前に揃えられた一膳の箸。
「ここか」
マッシュはその給食部が活動している食堂へと訪れた、マッシュは最初ゲヘナらしく荒れているんじゃないかと思っていたが実際は真逆。
「綺麗な場所……本当にゲヘナ?」
机、椅子、天井の照明の全てが綺麗な装飾であり、あの治安の悪いゲヘナ学園の食堂がこんなに綺麗だとは思ってなかった。
「……あっちからいい匂いがする」
食堂にある調理場から美味しそうな料理の匂いがしており、マッシュは気になってその場所へと向かった。
「味噌汁…ってやつかな、美味しそう…けど多いな」
大鍋には大量の味噌汁が入っており、そこ味噌汁に釣られるように食堂へと入って行く。
すると背後から声が聞こえた
『だ、誰!?また美食研究会なの!?』
マッシュの背後にいたのは赤い瞳に黒髪ツインテールで、額から生えた2本の角に髪の毛を掛けている。給食部らしくエプロンと三角巾を着用しているゲヘナの生徒。
「美食研究会?」
『連れて行こうたって無駄よ! 今日こそは絶対に……ん?よく見たら…違う。ヘイローもない…』
「あ、勝手に入ってごめんなさい」ペコリ
『えっと……誰?』
「シャーレから来ました、マッシュ・バーンデッドです」
「せん……せい?」
「はい、給食部からの要請でここまで来ました……大丈夫ですか?」
その生徒はフラフラと体を揺らしながらマッシュへと近づいて行く。
「危ない」ガシッ
やがて前へと倒れかけていたのでマッシュがすぐにそれを前から支え、ゆっくりとしゃがんで行く。
「や――…シャーレ……先生……―…」
「一体何が…?とりあえず病『やっと来た……』」
その生徒は支えられたマッシュをギュッと自分の方に寄せると
『やっと―きたぁぁぁっ!!!!』(大泣き)
「え」
口を大きく開け叫びながら泣き始めた。
「うぁぁぁぁん!!もう見捨てられたと思ってたぁぁ!!」
「え、え?あの、えっと」
「なんでもっと早く来てくれなかったんですかぁぁ!!メールを出してからもう三週間くらいですよぉぉ!!?」
「それは……ごめん」
「でもいいんです…やっと、やっと……うぅ」
「とりあえず……事情を話してくれる?」
「…はい」
マッシュはその少女『愛清フウカ』は、現在この給食部で起きている事を話し始めた。
この給食部、実は部員が二人だけであり、料理がまずいと言うわけでもなかったらしい。
と言うのも、部長を務めるフウカの料理人としての腕前はかなりのものだが
調理に関わると料理をおかしくしてしまうもう一人の部員が下ごしらえ以外では実質的な戦力外になるという深刻な人手不足に加えて、予算と時間も限られる中で質より量をとらざるを得ない環境もありり、千人単位の生徒を相手にするとどうしても味は落ちてしまうらしい。
そしてゲヘナの学食を食する生徒達も自身の不注意や大雑把さで台無しにした食事についてクレームを入れたりするらしく、給食部自体のストレスがマックス。
そして美食研究会と呼ばれる部活の襲撃にも合っていてまともに部活動ができていない。生徒会にお願いしても『それは風紀委員の仕事だ』と言われ追い返される。
その風紀委員も現在、エデン条約の方で忙しい。
そんな毎日を過ごしていたフウカのメンタルはついに折れ、今回マッシュに救援を要請したようだった。
「成程、大方のことは理解したよ。とりあえず―――」
マッシュは指と首を鳴らし
「理不尽クレーマーと美食研究会?と言う人ら、それから例の生徒会……全員にお説教をすればいいんですね」ゴキッボキッ
力強くそう言った。マッシュは今にも暴れそうなほどに怒っており、話をしていたフウカの血の気が引くほど。
「お説教だけですよね?本当にそれだけですよね?」
「いやむしろお説教で済むだけありがたいと思って欲しいよ、今僕まあまあ怒ってるし」
「そ、そうなん…ですか?」
「うん。給食部の事情も知らないくせに変なクレームを言ってくる人達、給食部が苦しんでいるのに何もしない生徒会……あとここを襲撃してくるその部活の人達……僕そのみんなに怒ってるんで」
「その気持ちだけで十分です……ですので、とりあえず落ち着いてください」
「わかった」スンッ
(すんなり落ち着いた…?)
「とりあえず僕は何をすればいいの?襲撃?」
「いやそんな物騒な事じゃなくて……なんと言うか、私達を手伝ってほしいな〜と…」
「いいよ」
「いいんですか!?」
「むしろさっきの話を聞いて『無理です』なんていえないよ」
マッシュはフウカのお願いを簡単に聞き手伝うことにした、さっきの話をされて無理という方が少ないであろう。
「あ、でも僕お料理とかした事なくて」
「そこは大丈夫、少し手伝ってくれればそれでいいので」
「そっか、所で話にあったもう一人の部員って?」
「彼女ならすぐにこっちへ来ると思います」
そう話している最中、ピチャピチャピチャ!と謎の足音が食堂の外から聞こえてくる。そして扉が勢いよく開き。
『キュィ!!キュイキュイィィィ!!!!』
毒々しい紫色で緑色の液体を垂れ流し、吸盤の付いたタコ足のような触手を生やした神話生物めいた姿をしている化け物が中へと入ってきた。
「わぁぁぁっ!だれかとめてくださぃぃ!!」
「ジュリ……またやっちゃったの?」
「フウカ先輩ごめんなさい!先輩のお手伝いをしようと、ちょっと別の場所で料理をしていたら……またパンちゃんができちゃいましたー!!」
化け物と一緒に入ってきたのは、ゲヘナ学園・給食部一年生の牛牧ジュリ。
「また……またやっちゃったのね」
「ぱんちゃん……?」
『キュキュイ!!!!』
化け物こと通称ぱんちゃんは暴れ回り、食堂の物を破壊して行く。
「キヴォトスってなんでもありだな……けどこれに驚かなくなった僕―『キュイ!』もごぉ」
「ああ先生の顔にぱんちゃんが!」
「先生!?え、先生がきてくださったんですか!?やりましたね先輩!」
「うん本当によかったけど今はそれどころじゃない!」
暴れ回っていたパンちゃんはマッシュの顔へと飛び移りそのまま張り付く。さらに伸びている4本の触手を上手いこと絡ませて取れないようにする。
「ンーゴゴッ、ンーンー」
「このままじゃ先生が窒息しちゃう…!」
「何か、何か引き剥がせる道具は……」
ジュリとフウカが必死になり、マッシュの顔についているパンちゃんをどうにかしようと悩んでいたその時
「ンーンンー……ン"ン"ッ!」ガンッ!!!
『チュイッッッーー!!!』
「先生!?」
「ぱ、パンちゃんごと地面に顔を叩きつけた!?」
マッシュは勢いよく自分の頭を地面に叩きつけ、顔に張り付いているパンちゃんを無理やり剥がした。
「ふぅ、粘着がすごかった」
「先生頭、頭大丈夫なんですか!?」
「最近暗算ができるようになったから大丈夫」
「いやそうじゃなくて!」
「あの……地面に、ヒ、ヒビが、入っているんですが」
「大丈夫だよ、僕石頭だし」
(石頭な人でも普通……コンクリの床、壊します?)
フウカとジュリが驚いているなか、潰されたパンちゃんはピクピクと動き
『アリガ―トウ……アリ…ガ…トウ……』
そう言い残し息絶えた。
『・・・・・・・・・・・・・』
パンの最後の言葉を聞きなんともいえない気持ちになった三人は、とりあえず
「……食べてあげよう」
『……うん』
せめてもの手向けとして、パンちゃんをなんとか食べ終えた。
―――――――――――――――――――
調理場
「よし……それではこれより、お昼の準備に取り掛かります」
「うす」
「よろしくお願いします!」
ジュリとフウカに自己紹介をし終えたマッシュはエプロンをつけ、調理場にて立っていた。
「まさか先生が私と同い年だったなんて思いませんでした」
「私の一つ上だったなんて…」
「とりあえず今の僕は、給食部のマッシュ・バーンデッドなんで……敬語とか、別にいいですよ。なんなら普段からいらないです」
「私よりも後に入ってきた人……ということは、私の後輩ですね!」
「私達二人は先輩…か、なんだか変な気分」
「では改めてご教授お願いします。フウカ先輩、ジュリ先輩」
「わかり―わかったわ」
「私も少しながら、お手伝いさせていただきますね」
マッシュは早速、今日の昼飯である卵焼きに挑戦する。今のマッシュはフウカとジュリの後輩なので敬語を使い、フウカもジュリも後輩として扱う。
「卵焼きの手順は簡単。しっかり見ててね?」
「うす」
「卵焼きは……!」
食材を持った瞬間、フウカの目つきが変わる。それはマッシュが戦いになると雰囲気が変わるのと一緒。
「これを」カンッ…パカッ
(卵を割り、中に入れる)
「こうして」クルクルクル
(ボールに入れ、菜箸で素早くかき混ぜる)
「こうすると」ジュージュー
(フライパンに卵を焼き、いい具合に巻きつける)
「こうなる!」バーン!
(綺麗な卵焼きが出来上がり)
『おお〜』
フウカはとても綺麗な卵焼きを作り出した。マッシュとジュリは素直拍手。
「手順はわかった?」
「うん」
「じゃあ次はさっそく先生の出番だけど……大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」
「ほんとに?」
「いやいやほんと、勉強以外なら任せてくださいよ」
マッシュは卵とボールを持ち、真剣な表情で調理に取り掛かる。
「これを…」カンッ…パカッ
(卵を割り、中に入れる)
「こうして…」クルクルクル
(ボールに入れ、菜箸で素早くかき混ぜる)
「次にこうすると…」ジュージュー
(フライパンに卵を焼き、いい具合に巻きつける)
「出来た」バーン!
(綺麗なシュークリームが出来上がり)
『全然できてなぁぁぁぁい!!?』
マッシュは真剣に卵焼きを作ったはずなのに、何故か綺麗なシュークリームが出来上がってしまった。
「なんで、なんで卵を使ってシュークリームが!?」
「どうしてフライパンを使った料理でなんでシュークリームが出来上がったの!?あの焼いたり巻いたりした奴は何!?」
「おかしいな……なんでだろ」
「……とにかく、これは失敗…失敗?…ね、もう一度、私が見てあげるから」
「うす…」
フウカはマッシュの隣に立ち、一からちゃんとしっかり教えていく。
「これを…」
「はい」(卵を割りかき混ぜ)
「こうしたら、次にそれを…」
「はい」(フライパンに乗せて焼く)
「そして最後にこうする」
「はい」(上手い具合に巻きつけると――)
(シュークリームの出来上がり)
「なんでよぉぉぉ!?」
「先生も私と同じ分類だったんですね!先輩として…嬉しいです!」
「何がどう嬉しいの!?どうして? なんでまたシュークリームが?今度は私がちゃんと教えたはず! なのになんでまたシュークリームが!?」
「モキュモキュ……うん、シュークリームだ。食べますか?」
「うん食べる〜じゃないの!……くっ、こうなったらちゃんとした料理ができるまで何度でも作るからね!」
「―うす」
その後、三人はなんとかしてちゃんとした料理を作ろうと努力していた。
「目玉焼き………よね、これ」
「シュークリームの形をした目玉焼きですね」
「目玉焼きから何かの足が生えてしまいましたぁ!」
「お味噌……なのに、なんで…」
「なんで汁物から固形物に変わるんだろう」
「味噌汁を入れていた器が溶けちゃいましたー!」
「よ、よし!なんとかちゃんとした物を作れたわね!」
「まずは一歩」
「パンちゃん二号!三号!喧嘩しちゃいけません!」
「ジュリはそっちで何やってるの!?」
結果的なちゃんとした卵焼きが出来上がるまで軽く500個は超えてしまった、フウカはもう今回の料理はシュークリームをそのまま出してやろうと決めた。
「料理って奥深いんですな」
「先生の場合は…全部…全部がおかしいのよ…」
「パンちゃん一号!それは食べちゃダメですよ!」
「あの子はもう諦めて変なことし出してるし………まあ、結果的に全員分の料理は作れたからいいんだけど」
「じゃあ休憩ですね、どうぞ、ちゃんとしたシュークリームです」
「もう散々見たからお腹は………いや、貰っておくわ」
「どうぞどうぞ」
マッシュとフウカは仲良くシュークリームを頬張っていた、フウカは疲れがドッと抜けたのか気の抜けた声で『美味しい』と言う。
「いろいろあったけど、先生のおかげでスムーズに行きました……本当にありがとう」
「いえいえ……けどこれで終わりじゃないですよ」
「…と言うと?」
「だってこのままじゃフウカ先輩はいつか倒れちゃいます、だから風紀委員にでも生徒会にでも直談判して、この給食部を助けてもらえるようにします……いや、もう僕がここで働こうかな」
「気持ちはありがたいけど……私は…ほら、料理すること、それを誰かに食べてもらって喜んでもらうことが大好きなの…だから…大丈夫」
「…………」
「――けど、せっかく先生が来てくれたんだし…うん」
フウカはマッシュのシュークリームを持っていない手を握り。
「先生……その…私を……私達を…っ、助け――」
助けて、そう言おうと思った瞬間。
ドォォォォォォン!
食堂の壁に少し穴が空き爆発音が響く。
「っ!?」
「わっ……あっ」
その衝撃でフウカは地面へと尻餅をつく、いったい誰がこんなことを?―決まっている
「こんにちわフウカさん、お邪魔しますね?」
「帰ってくれない!?」
「それは無理!」
「うわぁ〜いいにおーい」
「シュークリームの臭いもしますね〜……しかしなぜ卵とシュークリーム?」
ゲヘナの中でも悪名高い部活。
実力と専門知識、そして暴力性をも備えた、文武兼備の悪党。
名を美食研究会
彼女らが食堂へ襲撃を仕掛けてきたのだ。
「なんで壁壊してくんのよ!」
「それは申し訳ありません……しかしことは一刻を争うのです!」
「今が旬のお魚があってね?それを調理して欲しいの!」
「早めに!」
「だから大人しく誘拐されてー?」
「普通に『料理して?』ぐらいでいいのよ!…あーもう!」
美食研究会のメンバー、
そのメンバー達がフウカを連れ去ろうと準備をしている最中、ジュリはマッシュを探していた。
「先生!ご無事です………か……―…っ!?」
そしてマッシュを見つけたジュリは驚愕した。
マッシュの地面には潰れたシュークリームがあり……それを見ていたマッシュの顔が
『お"?』
般若のようになっていた。
みなさん、どうか彼女達(美食研究会)の無事を祈ってあげてください。
これだけをやりたかった、次回は美食研究会メンバー達をお説教です。ちょっとは痛い目に会わなきゃダメな気がしたんです。
励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします。
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