シリアスがまた来ちまった、うん。仕方ないよね……エデンまで、後もう少しですし。
とにかく……とにかくだ、エデンは絶対にとびきりのハッピーエンドへと持っていきます(断言)
「……後つけられてるな」
某日。マッシュはいつも通りシュークリームを買い、シャーレへと戻っていた。しかしその時、背後から彼を付け狙う何者の気配がしており、マッシュはその気配の主に悩まされていた。
「………」
(………撒いちゃおう…あ、でもなんで追いかけてくるのか聞かないと……)
マッシュは、一定距離を保って追いかけてきている尾行犯を、どこかへ誘い込んで捕らえることにした。
「………よし」
「…?」
「――わーなんだあれ〜(棒)」ダッ!
「!?」
マッシュは少し早歩き*1をして、追いかけてくる尾行犯が自分を見失う寸前まで、目標地点へ移動する。
「エッホエッホエッホエッホエッホ」
「…っ⁉」
「エッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホ」
「……クッ…っ……フゥ…ハァ…ハァ…」
「エッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホエッホ」
「っっ〜〜〜‼‼」
(よし、いい感じに体力減らしてきてるな……後はっと)
マッシュは人気が全く無い路地裏の片隅へ移動、尾行してくる相手はゼェゼェと息を吐きながら、そこに到着した。
「ゼェ……ハァ………?!」
だがそこにマッシュはおらず、あったのは円状に抉れた地面のみ。
ターゲットを見失った……そう思った尾行犯は焦り、周囲を見渡して警戒する。しかしマッシュはそこにいないわけではない。正確には、今この場にいるのだ……そう
ボゴッ!!
地面の下に。 マッシュは地面を素手で掘り進めて地中で待機し、地中に響く足音に耳を澄ませることで、タイミングを見計らって腕を地中から伸ばし──
「―!?」
「捕まえた」ガシッ
尾行犯を地中へと引き摺り込み、首だけを出した状態にする。マッシュは地上へ這い出ると、服についている汚れをパッパッと払う。
(さてと、犯人の顔を………ん?)
「………」
「……なぜガスマスク?」
マッシュが地中に埋めた犯人は、紫がかった特徴的なピンク色の髪をしていて、コートにつけられたフードを被っており、顔にはガスマスクと思しき仮面をつけていた。マッシュは不思議そうに、そのマスクをじっと見る。
「そのガスマスク、つけてて苦しくないの? さっきまで、凄く息切れしてたけど」
「………」
「そもそもなんで尾行してきたの?……何か大事なことが?」
「………」
「えっと……どこからきたの?」
「…………」
「聞こえて…無いのかな、もしかして耳が聞こえないとか……えーと、確か……こう言う時は…」
マッシュは端末を取り出しささっと調べる、調べたのは手話。
手話は、手指動作と非手指動作を同時に使う視覚言語の一種であり、音声言語と並ぶ言語──いわゆるボディランゲージの一形態である。マッシュは片手で可能な範囲でそれを行い、尾行してきた少女と意思疎通を図ろうとした。
「…えーと、まずは……みみ、は、きこえ、る…?、きこえていたら、うなずいて…ほしい?…難しいな」
「……」コクン
「あれ聞こえてたの?……無視されてたんだ、なんかショック……あ、もしかして何かしらの理由で話せない?」
「……」コクン
「もしかして、そのガスマスクも?」
「…」コクン
ガスマスクの少女は無言で頷くが、「信じてもらえないだろうな」と、内心では肩を落としていた。
自分を尾行してきた者、それも覆面の怪しい者。所属する学園も不明。そんな者の言葉なんて、絶対に信じない……が
「そっか……ごめんね、何も知らないのに勝手に色々喋っちゃって」
「……?」
「とりあえずそこから出すね……えいっ」ズンッ!
「っ!?」
「あ、暴れちゃダメ。怪我するよ」
マッシュは地面を掘り進め、上半身を掘り出したところでゴボウ抜きのように少女を引き抜き、彼女を地中から解放する。マッシュは服についている汚れを払いながら、話を始める。
「何処か痛いところはない? あったら本当にごめん」
「…」ブンブン
「よかった、無いならいいんだ」
「………」スッ
少女は手話で『自分の話を、信じるの?』と訊く。マッシュはシッテムの箱を取り出すと、アロナに手話の解読を頼みながら、メッセージを読み解いていく。
「話したくないなら、無理に喋れとは言わないよ」
《…どうして?》スッ
「多分そっちにも事情があるんでしょ?ならそこまで強く言えないよ」
《……貴方は、人を疑わないの?》スッ
「……まぁ、怪しいのは確かだよ?……けど、なんでかな…君は、悪い人な気がしないんだ」
「!」
「仮面越しでもなんとなく分かる、君は嘘をついていないって」
《……貴方って、ちょっと変わってるんだね》スッ
「変わってる?…うん、よく言われるよ」
《……これから、私をどうするの》スッ
「君をどうするのか……そんなの、決まってるでしょ」
少女は《だよね……》と手話で伝えると、こっそりと後ろ手に回した右手で、背中に隠した武器を取る。自分はどこかに連れて行かれて、拷問を受けるか、何かしらの形でを尋問を受ける。そう思っていたが───
「一緒に………シュークリームを食べに行こう」
「………………????」
「そこでゆっくりを話をしようよ、いいお店があるんだ」ガシッ
「っ⁉」
「レッツゴー」
マッシュはその少女をシャーレへ連れて行こうとはせず、共にシュークリームを食べに行こうと手を繋ぐ。
その姿は、まるで同じ歳の少女の手を引いて、見せたいものの在り処へと駆け出す無垢な少年そのものだった。マッシュは繋いだ手をしっかりと握り、少女を連れていつものお店へと歩いて行ったのだった。
(………変な…人)
―――――――――――――――――――
いつものシュークリーム屋
マッシュはそこへ訪れると、シュークリームを二つ買い、片方を少女に手渡す。
「はいどうぞ、シュークリーム」
「………」
「あれ、甘いもの苦手だった?」
《しゅー、くりーむ…? って、なに?》スッ
「え、もしかしてシュークリームを知らなかったりした?」
「…」コクン
「それは……それはダメだ、シュークリームを知らないのは……人生の半分を損している…っていう言い方はしないけど、シュークリームを食べれば、人生は二倍楽しくなる」
少女は《そこまで?》と首を傾げる。マッシュは「それぐらいです」と即答した直後、パンパンと手を叩く。
「放課後シュークリームクラブ、集合」
『ハッ!』
「!?」
号令のみで突然、音もなくマッシュの背後に現れたグループに、少女は驚く。放課後シュークリームクラブ──バイト中の彼女らが、先生の一声で集まった。
「話は聞いてたかな?」
『うす!』
「なら話は早いね……さ、シュークリームの素晴らしさを教えていこう」
『了解!』
「っ、っつ!?」
「大丈夫、何も怖くないよ……ただ四六時中シュークリームのことしか考えられなくなるだけだから」
《大問題だよ‼》と少女は手話や体で訴える……しかし、シュークリーム教信者とも言えるマッシュと放課後シュークリームクラブは、止まらない。
「さあ君もこっちへ…」
「大丈夫っすよ〜……何も怖く無い」
「シュークリームパーチー」
「シュークリームパーチー」
「シュークリームパーチー!」
シュークリームを両手にじわじわと近づいてくるマッシュ達に、少女は今までとは違う恐怖を感じ
『っ〜〜〜!!!!!』
声にならない叫び声をあげた。
数十分後
「あのね…? 確かにシュークリームは素晴らしい物だ、それを知らないって聞いたら、私だってシュークリームを勧めたいとは思う。……けどね??」
「〜〜〜〜♪、〜〜〜〜!!!」(両手にシュークリームを持ちながら嬉しそうに走り回っている)
「あんな風になるまで脳をカスタードで汚染するのはダメでしょうが!」
『ごめんなさい店長』
「先生も!」
「ほんとごめんなさい店長」
「!」
「いや、気にしないって感じに詰め寄られても……」
《!……大丈夫、最初は怖かったけど、今は気にしてないよ》スッ
「あ、許してくれるの? ありがとう」
「先生手話できたのか…」
「さっき覚えた」
「あのドアの開け方が分からないことで有名な先生が、開閉よりも繊細な手話を⁉」
「先生からしたら……ドアの開け閉めよりも手話を覚える方が簡単なんですね」
「いや逆だろう」
少女は見事に、シュークリームの魅力が持つ底なし沼にハマってしまった。先程までのミステリアス少女から一変、ずらしたガスマスクの下でシュークリームを食べながら楽しそうに走っているという……ある意味、まともな真人間には見えない、本来の少女とは別の
「気に入ってくれたようでよかった」
《こんなに甘くて美味しいもの、初めて食べた。ありがとう、先生》スッ…スッ
「甘いもの…初めてだったの?」
「………なああんた、普段何食ってるんだ?」
《……任務だから、あまり詳しくは言えないけれど。大抵は食パンの切れ端とか、レーションとか。基本的に味なんてないし、お腹にもたまらない。『とにかく食べられて、飢え死にしなければいい』、みたいなものだけかな》スッ
「……………―――え?????」
沈黙。「目の前の少女は今まで美味しい物を食べたことが無いんじゃないか? いや絶対そうだよな?」 そう思ったマッシュ達の行動は、早かった。
「店長、シュークリーム50個追加」
「あーそう言えば作りすぎたシュークリームを消費しないといけないんだったな〜――みんな持ってきて!!」
『おう!!』
「お嬢さん!いっぱいたべな!!」
「…、…」(戸惑いながら頷く)
「僕ジュース買ってくる、ありったけ美味しいものを」
マッシュ達はありったけの美味しい物を少女の前に置く。ガスマスクを外した素顔を見られたくない、と事前に伝えていたので、マッシュたちには非常に惜しいことに、彼女が実際にこれらを食べている姿は見られない。
「──―」(無言だが楽しそうにシュークリームを食べている)
だがその少女は、生まれて初めて、心から食事を楽しんでいた。なんとなく、なんとなくだがマッシュは、その少女が幸せそうなのを背中で感じ取り…
(美味しい物を知らない人……絶対何かある)
同時に、彼女の裏にちらついた何かの影を感じ取った。
――――――――――――――――――
シュークリームをたらふく食べ終えた後、少女とマッシュは店を出た。店長やバイト達は『またきてね〜〜』と笑顔で送り終える。
「………♪」
「ちょうど四人分、誰かに渡すの?」
「」コクン
「そっか……お友達?」
「…」コクン
「…そっか」
片手にシュークリームの袋を持っている少女。しかし嬉しそうだがどことなく悲しそうな素振り、マッシュはそんな少女の姿を見て、いてもたってもいられなくなる。
「ねえ、僕なら……君が抱えている問題を解決できるかもしれない…だから」
ピタッ
「うむっ…?」
「……」ブンブン
「頼れない……事情が?」
「…」コクン
「……けどこのままじゃ」
「………」ブンブン
少女は手でマッシュの口を抑えて、頑なに首を横に振り続けた。マッシュを自分と関わらせてはいけない、抱えている問題を相談するわけには行かない。少女は言葉なくしても、強く訴えていた。
「……そこまで……言うなら」
《ありがとう先生、すっごく今日は楽しかった》スッ
「そっか、こちらこそありがとう……それなら、よかった」
《じゃあ、またいつか、どこかで》スッ
「うん、また………あ、待って。せめて名前を―─」
そうマッシュが言い終える前に、少女はその場を去ってしまった。尾行され、一緒にシュークリームを食べた……たったそれだけの、短い時間だったが
「…………名前、聞き忘れちゃったな」
マッシュは別れたことに対し、確かな悲しみと心配を募らせていた。
「―――――しまった、なんで追いかけてきていたのか聞くのも忘れてた」
――――――――――――――――――
キヴォトス僻地・某所 場所不明
「………」
『戻ったか、姫』
「!」
「…どうした?」
「…」ブンブン
ガスマスクの少女は自分の元いた場所へと戻ってきた、そこで会ったのは自分の大事な友達…いや、家族である女性。
「なんでもない……か、ならいい。任務の方はどうだった」
《尾行中、接触には成功した。だけど、肝心な情報は手に入らなかった。あの人の詳細は、不明のまま》スッ
「……そうか、やはり…シャーレの先生の情報は仕入れられなかったか……やはり、私が行った方が……その方が、姫の安全は…」
「………」
通称"姫"と称された少女に命令された任務──それは連邦捜査部シャーレの先生、マッシュ・バーンデッドの情報を探る諜報と偵察だった。その任務のため、本来この自治区外に足を踏み出すことがなかった彼女は、特別にこの自治区を統べる"彼女"の支配域外で行動を行っていたのである。
「とにかく無事でよかった……?姫、その手に持っている物はなんだ?」
《シュークリームっていう食べ物だよ。シャーレの先生が買ってくれたの》スッ
「シュー…クリ…ーム、だと? しかも先生に…?……よく分からないが、それは捨てておいた方がいい……敵である先生に何かを買ってもらったとバレれば、"彼女"から処罰が―」
ズボッ
「むぐっ!?」
「………」(無言でシュークリームを押し込む)
「ま―…て…まっ、て!おし、こむ、な!」
《 い い か ら た べ て 》グググッ
「わかった、食べる、食べ―むごぉっ!」
「…♪」
少女は、目の前の女性の口に無理やりシュークリームを押し込んだ。女性はシュークリームを飲み込み
「………なんだ…これは……妙な、食感と…味だな」
《先生が教えてくれた。これは、『美味しい』って感覚》スッ
「……これが…美味しい………っ、だめだ。これはダメだ…姫」
「……」
「彼女が言っていただろう、Vanitas vanitatum et omnia vanitas…全ては虚しい、私達が……こんな気持ちは……意味がない」
「……っ」
「……彼女にバレる前に…処分だ……いいな?」
「……」コクン
「……すまない、姫」
姫と呼ばれた少女の袋を取り上げ、窓から投げ捨てる。──「家族にこれを食べさせてあげたかった。幸せを感じて欲しかった。」姫、と呼ばれた少女は、そうずっと思っていた。
「……―──行こう、そろそろ例の計画が始まる…
「…」コクン
女性は姫の手を引き移動する、姫は手を引っ張られながら
(―――ごめんね…先生)
心の中で、マッシュに謝っていた。
ごめんなさい、アツコちゃんはまだ喋れないって事で……お願いします。
ラストは書いてて……辛え、ベアオバさぁ……ってなりましたね。
この小説は、アリウスのみんなを幸せにする&ベアオバをボコるまで止まる予定はありません。
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