ハッピーバースデー聖園ミカ!!本編での活躍はもうちょっと先なので……お楽しみに!
今回もボリュームは小さめです。
それでは本編へ……どうぞ!
トリニティ本校舎・周辺
合宿宿舎から大分離れた場所にある本校舎までは、それなりに時間が掛かる道のりだった。コハルも勉強で疲れており、それまでの道はかなりきつい…
「ぜぇ―はぁ……ぅぅぅ…」
「着きましたな」
「着きましたな―じゃないわよ!!せめて、せめて一声かけてくれない!?」
「それは……ごめん」
「風圧凄かったし……走ってた車とかモノレールよりも速いってなんなの!?ほんとに、なんなの!?」
「なんなのって言われても」
事はなく。マッシュがコハルをお姫様抱っこの状態で疾走、僅か数分で目的地へと到着。
しかし運ばれている間、コハルはジェットコースターを乗っている様な気分に襲われ、危うく失神するところであった。
「なんの前触れも無しに担がれるだなんて……ほんとにびっくりしたんだから」
「時間ないなーと思って…」
「今度からはちゃんと一声かける事!いい?」
「うす」
「わかればいいのよ…わかれば」
落ち着いたコハルはふぅぅ…と息を吐き、呼吸を整えると、マッシュと共に正義実現委員会・部室へと向かって歩き出す。
「そ、その、先生……」
「うん?」
「い、云っておくけれど、こればっかりは、その、本当に間違いだから!」
「ん? 本の事?」
「そ、そう! いつものはちゃんと隠……じゃなくて、あんまり持ち歩いたりしないし……」
「僕はコハルちゃんが何を持っていようが、それはコハルちゃん自身の勝手だから別にいいんだけど……みるならこっそり、ね?」
「ち、ちが!ほんとにちがくてぇ!」
「あ、別に怒ってるわけじゃないよ?」
コハルは顔を真っ赤にしながら唸る、マッシュからしてみればそれを持つな…とは言っておらず、もったり読んだりするのは個人の勝手、叱るつもりは毛頭なかった。
「僕は、先生としての…立場上?ではそういうものを見つけたら注意しないといけないから、大っぴらに所持されるのは困っちゃうんだ。でも、別にそういったものに興味を持つ事自体は悪い事じゃないと、僕は思う」
「え、で、でも…」
「無理に縛られなくてもいいんじゃないかな、好きなものが好き、それも言えない世界なんて窮屈だしつまらない、勿論、ある程度のマナーとか、道徳とか、倫理観は必要だけれど……結局はTPO…?って奴、それを守っている限り、誰に何を言われる筋合いはない」
「で、でも……」
マッシュの言葉にコハルは何かを言って返そうとする。
コハルは性格にやや癖のある生徒ではあるが、その根っこは生真面目で愚直。駄目なものは駄目、悪いものは悪い、善悪がはっきりと分かっているいい子だ。
しかしそれ故に流されやすく、トリニティ内ではそう言うのはダメ、ありえないと言われていたのであろう。それ故にコハルは不安や疑念を抱いていた。
「僕はコハルちゃんがコハルちゃんらしく居て欲しいんだ」
「自分、らしく……?」
「そうそう、好きな事を好きと云えて、必要以上に我慢したりしないし、そんな自然体の姿が一番だよ。だからコハルちゃんは、コハルちゃんらしく在れば良いんだ。少なくとも僕の前で取り繕う必要はないよ」
「ど、どんな趣味でも……?」
「どんな趣味でも、まあ僕は…ほら、そう言うのあんまり分からないし」
「……分かったような、分からない様な」
そうコハルは呟き視線を下に下す。
「で、でも……先生が私の事をちゃんと考えてくれているって事は、少しだけ……分かった――その……ありがと、せんせ」
「うん、どういたしまして」
照れ隠しのために顔をあげ、声を上げる。
「じゃ、じゃあ、お返しに、その……ひとつ、私の秘密を教えてあげる!」
「うん? コハルの秘密?」
「………」キョロキョロ
コハルは周りを見渡した後、マッシュの袖を引っ張り座らせる。
「か、屈んで」
「OK」
マッシュが方膝を地面につけ、耳をコハルの方に向ける。こっそりと、マッシュ以外に聞こえない声でコハルは言う。
「実は、私……」
「うん」
「――補習授業部が上手く回っているかを監視する為の、スパイなの……!」
「……うん?」
「――つまり秘密のミッションを遂行中の身って事、だから今は私が馬鹿みたいに見えているかもしれないけれど、これも全部フェイクって訳!」
「……因みに、それは誰からの指示で動いてるの?」
「え? あ、えっと……だ、誰って、その……んと、は、ハスミ先輩!」
「ハスミさんが?」
「そう! ハスミ先輩はトリニティの中でもすっごい強くて、正義実現委員会の副委員長だし! あ、あと、そう! つ、ツルギ委員長だっているんだから!」
「ツルギさんも…?」
「つ、ツルギ委員長はその、えっと、委員長だし……そう、何でも出来るの! ぶ、文武両道……? だから、多分! な、何回かしか会った事はないけれど……と、兎に角凄いの!」
「…まあツルギさんがすごいのはその通りだね」
マッシュは一度ツルギと戦ったことがある、なのでツルギがどれくらいすごく強いのは誰よりも分かっているつもりだ。
「だから、そういう事! 私は別に、本当に勉強が出来なくて補習授業部に入った訳じゃないの! その事、憶えていて! ――私はスパイとして大事な任務を任されている、エリートなんだから!」
「それは凄いね」
「ふふん!」
「――でもこれ、僕に教えちゃって良かったの?」
「……えっ」
「スパイなら最後まで自分がスパイだってことを明かさないものじゃ?」
スパイを題材にしたお話で、自分から『スパイなんだ!』と明かす作品は滅多にない。コハルはどこか懇願するような目で先生を見つめ指を刺す。
「せ、先生は生徒の秘密をやたらに云い触らしたりしないでしょ!? しないよね!?」
「……そうだね、うん」
「じゃ、じゃあ大丈夫! 先生の事は、一応、いちおう! 信じているからっ!」
「それはそれは」
「ほ、ほら、もうちょっとで部室だし、早く行こ、先生!」
「……うん」
信じてもらっている。正直自分はコハルに避けられて嫌われている…なんて事を少なからず思っていたので、それを知りマッシュは少し嬉しく思った。
――――――――――――――――――――
正義実現委員会・押収品管理室。
部室の出入り口、そのすぐ横合いにある押収品管理室は、同時にトリニティ内の落とし物などを管理する部屋としても機能している。
「えっと、押収品管理棚の、書物分類だから、Dの二十四、Dの二十四――……」
コハルは押収品目録を片手に、本来この押収品が収められていた棚を探す。こっそり、バレないように丁寧に置けば誰が見てもバレない……コハルは今まで以上に慎重に行動する。
「……コハルちゃん、終わった?」
「い、今目録で収納場所を探しているから、もうちょっと待って……」
「手伝おっか?」
「大丈夫、これぐらい………あっ、あった!ここだわ!」
コハルは禁書が入っていたであろう容器を発見し、その中に禁書を入れる。少し名残惜しそうではあったが、これにて任務は終了。
「あとは見つからない様に帰らないと」
「じゃあまたお姫様抱っこで運ぶ?」
「それは……え、遠慮…する」
「そっか」
「取り敢えず、これでひと安心――」
そう漏らすと同時、正義実現委員会の部室、その出入り口の扉が開き、向こう側から顔を覗かせたのは――正義実現委員会、副委員長のハスミ。
(や、やば!)バッ!
「え、ちょ」
「…あら?先生?」
「ど、どうもハスミ…サン」
「お久しぶりです、お元気そうで何よりです」
「は、ハスミさんも、変わってなくて安心しました………それでは『お待ちください』うぐ」
「先生……どうして壁に背を向けているのですか?」
「い、いや、こ、これぐらい…普通…では?」
「不自然です、誰がどう見ても」
マッシュの背にはコハルがピッタリと張り付いており、マッシュはコハルを隠すために壁へ背中を向けていた。しかし背中を明らかに庇っている様子を見せているのでハスミに怪しまれてしまう。
「何か隠しているようですね」
「そそそそそそんなこととととととないいですよ?」
「わかりやすく動揺していらっしゃいますね」
「と、とにかく僕はこれで…」
「お待ちください、ここに一体なんの目的でいらしたのですか?その説明がまだです」
「えーーと……」
「……先生、観念して答えてください」
(――先生、か、観念して……姿を…表すわ)
「……分かった」
マッシュは膝をつきコハルを下ろす、現れたコハルの姿にハスミは驚き唖然。
「たしか合宿で別館に居ると……成績が良くなるまで、ここへは出入り禁止になっている筈ですが?」
「あ、えっと、そ、その、違うんです……!」
「……ぼ、僕がちょっと、落とし物をしちゃってね、此処へはそれの受け取りに来たんだ」
「ならば何故隠れたりなど?」
「合わせる顔が……その…無くて……」
「……コハルが此処に来てくれたのはある意味、丁度良かったです、コハルに改めて伝えておきたい事がありましたので」
「…え?」
「先生、申し訳ないのですが少し席を外して頂けますか? 正義実現委員会としてお話したい事、と云いますか――」
「………わかりました、終わったら、また呼んでください」
マッシュはコハルにグットサインを送り、その部屋から出た。
――――――――――――――――
正義実現委員会・部室前廊下。
「……気になって仕方ないな」
マッシュは外でウロウロしながら、話が終わるのを待っていた。コハルのことが心配な部分もあるが、ハスミのテンションがいつにも増して低いことがマッシュは気になっていた様で、そわそわとしている。
「――コハル――でください」
「―も―」
「本来の――を――ないで―――」
「……よく聞こえない」
二人は出入り口の扉からそう遠くない場所で話し込んでいるらしく、隙間から、微妙に声が漏れていた。マッシュは耳を扉に当てて聞こうとすると、はっきりとは聞こえない。
「でも――には、無理――……! ――なんて、私―――あまりにも――事で―……!」
「――それでは駄目なんですッ!」
(……ハスミさんのこんな声初めて聞いたな)
普段の口調からは考えられないほどの声、それは思わずマッシュの肩まで震える程。
「――なさい――ずっと―為に―――先生――を―です――」
「………はい――――ます」
それから少し後、そっと扉を押し開けコハルが顔を覗かせる。彼女は中に居るハスミに向けて小さく頭を下げると、そのままマッシュの元へと駆け寄って来た。
「お、お待たせ……先生」
「………」
「先生?」
「…あ、ごめん。帰ろっか」
「……うん」
「帰ったら、シュークリームをつくってあげる……気分転換ぐらいには、きっとなる」
「ありがとう……先生」
二人はそのまま部室を後にする、中でなんの話をしていたのか、一体何が起きたのかマッシュ分からない。しかし分かったことが一つだけある
(裏で、いろいろなことが起きている)
と言うことだ。
次回!シリアス多め……えぇ〜まじかー。
エデン編って……シリアス多くて、マッシュルのギャグがなかなか書けない、故に難しいです。
けどまぁやらないとダメなので、しっかりやりまーす!!
励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします!
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