過去一長いのでご注意を……いや本当に長いぞ、なんだこれ。
今これを書いてる時間はいつかって?……ふふっ、安心してください。夜中の2時ですので。
まあそこら辺はどうでもいいので……本編へ、どうぞ!
「アズサちゃんが……裏切り者?」
「うん、知ってるかもしれないけどあの子、実はトリニティに最初からいたわけじゃないんだ……あの子は随分前にトリニティから分かれた、所謂分派……アリウス分校出身の生徒なの」
アリウス――その名前を知る者は、あまり多くはない。キヴォトスのことを色々と知るために調べていたマッシュも、その名を知らなかった。
「……そんなわけないじゃないですか、アズサちゃんが…裏切り者だなんて」
「まぁさっきの発言からして、先生ならそう言うよね……生徒を守るって言ってたし……あ、でもそう考えると、生徒って呼んで良いのか分からないかな?」
「…なぜですか」
「だって、何かを学ぶという事が無い生徒の事を、生徒って呼べるのかなって」
「………ここにいる子供は、みんな、僕の生徒です」
「…あ、そうだったね、ごめんごめん」
マッシュの言葉にテヘペロ☆と言う顔を作り、改めて話を進める。
「白洲アズサ――あの子を先生に、守って欲しいの」
「守るって……始めからそのつもりですけど」
「あー、そっか、ごめんね、ちょっと単刀直入過ぎたかな? ナギちゃんの悪い癖が移っちゃったのかも――まぁ、ちょっと長い話になるし、立ちっぱなしっていうのも何だよね」
そう言ってミカはプールサイドに腰掛け、水の中に素足を浸す。マッシュもそれに釣られるように足をつからせる。
「私はナギちゃんみたいに頭が良くないから、上手く説明出来るか分からないけれど……うん、ちゃんと伝わる様に頑張ってみる」
「お願いします」
「そうだなぁ……まず、このトリニティについて、先生はどんな認識を持ってる?」
「認識って言われても……あっ、前に、トリニティは複数の分派が集まって出来た、キヴォトスでも最大規模の学園って見たことあります」
「うん、大体そんな感じ、それでね、その集まった分派の中でパテル、フィリウス、サンクトゥス――この三つの分派がトリニティの中心になったって話はしたと思うんだけれど……」
「ぱてる、ふぃりうす、さんくとぅす……なんかかっこいいですね」
「ま、まあそうだね……んんっ」
ミカは宙に丸を三つ描く、更にそこから指を伸ばし、下に向かって複数の丸を描く。空中なのでよくわからないが、これはトリニティの紋章である。
「でも、これは正確じゃないんだ、今の救護騎士団の前身にあたる派閥とか、シスターフッドとかも含めた、大小様々な派閥が幾つも学内にはあるの」
「そんなに派閥って、いっぱいあっていいものなんですか?意見の食い違いとかがたくさん起きて……ケンカとか起きそうなんですけど」
「そう! 正にソレ! 昔のトリニティは、ゲヘナとトリニティみたいにお互いを敵視して、対立したりしちゃって、毎日紛争していたんだって!」
「ゲヘナもびっくりな過去……」
ゲヘナが派手に物理的に物事を解決するのであれば、トリニティは外交や裏工作、交渉などで物事を進める……マッシュ流にいえばゲヘナは脳筋、トリニティは知的と言うこと。
「けれど、いつまでもそんな事続けられる筈もないじゃん? いい加減争いはやめようって、協定が結ばれる事になったの――戦いを止め、一つの学園になる、そんな話をしたのが所謂、第一回公会議」
「今のトリニティができた…大事な会議?」
「そう」
第一回公会議、これまで仲良くしようと言う考えすらなかったあらゆる分派が一つの学園に纏まる。教義や信仰を一つにして争いを失くす。
今のエデン条約に近い物かもしれないことを、その時の生徒達はやってのけた。
「今でも分派だった頃の余波が無いと云えば嘘だけれど、大分前の話だからね、今ではもう、そんなの全然に気にしていないって声の方が多いんだ……たった一つの学校を除いてね」
「それがさっき言ってた……アリウス分校」
争いはやめよう、こんなの間違っている、今こそ平和を……そんな言葉を最後まで拒否し、争い続けた者達……それがアリウス分校。
「……アリウスだってさ、元々は私達と変わらない一つの分派だったんだよ?
経典に関するちょっとした解釈の違いがあったくらいで、結構色んな所が似ていたんだって…
ちゃんとチャペルの授業もあったし、見た目も殆ど一緒で……それでいて、ゲヘナの事を心底嫌っていた」
「……それでもアリウスの人達は、連合を作る事に反対した」
「うん、猛烈に反対したって聞いている、だから結局、最終的には戦争になった」
「―戦争………」
「当時、連合になって強大な力を持ったトリニティ総合学園はアリウスを徹底的に弾圧したんだって、当たり前の話だけれどさ
たった一つの分派が、その他すべての集合体に勝てる筈もないし……余りにも大きな力を持ちすぎると、その力を確認したがる…なんて事は良くあるお話だけれど――つまるところ
当時のアリウスは団結する為の共通の敵としても、そして力を試す相手としても、都合の良い存在だったのかもしれない」
そう語っていくミカはどこか険しく、気配が重い。そりゃそうだ……こういう話を好き好んでする人間なんてそういない。
「それで、結局アリウスは潰された――徹底的に」
「……今は何処に?」
「分からない、トリニティ自治区から追放されたって話は確か、でも今何処に居るかは……ティーパーティーも掴んでいない、キヴォトスのどこかに潜伏しているんだと思う、相当激しい戦いだったんだろうね……その後全然見つからない様な場所に隠れたみたいで、多分、連邦生徒会ですらアリウス自治区がどこにあるのか分かっていないと思う」
「そう…ですか」
「こんな大きな事だったけれどさ、今在学している大半の生徒達にとっては、そんな学園あったんだ、って位の出来事なんだよ、彼女達はきっと、そんな争いがあった事すら知らない、そうやって今となっては影すらなく、皆に忘れられた存在――それがアリウス分校」
「………」
「で、そんな学校出身の生徒が、白洲アズサなんだよ」
忘れられた存在、歴史から消された存在……それこそがアリウス分校、そこの出身生徒こそアズサだった。
「ナギちゃんが推進しているエデン条約、あれはさっき話していた第一回公会議の再現なの、流石に同じ学園になる……っていうのは無理だけれど、大きな二つの学園が、和平を結ぶ条約――そう聞くと何だか、良いお話に聞こえるよね、先生?」
「手を取り合う事はいいことだと思いますよ」
「うん、私もそう思う……でも、本当の所はどうだろう?」
「と言うと?」
「だってさ……和平だ何だって云っても、その核心はゲヘナとトリニティの武力を統合させたエデン条約機構、ETOって呼ばれる全く新しい武力集団を作る事にあるんだから」
「…!」
マッシュはその言葉にハッとする、ゲヘナとトリニティの将来的な衝突を避ける――両陣営の紛争を抑止、鎮圧する為のETO。
しかしそれを悪用するものがいないと…どうして断言できる?
このETO自体の主導権を巡ってゲヘナとトリニティが争いを始めるかもしれない…その可能性は、ゼロでは無い。
「そんな大きな力を使って、ナギちゃんは一体何をしようとしているのかな?
もしかしたら、もしかしたらだけれどさ?……会長が不在の連邦生徒会を襲撃して、自身が連邦生徒会長になろうとしているかもしれないよ?
或いは今、成長著しいミレニアムを襲撃するとか、そんな思惑を持っていないって、誰も証明出来ないじゃん、勿論これは私個人の考え……でも、これだけはハッキリ云えるよ」
マッシュの目を見て、真剣な顔で、ミカは断言する。
「常に他者を疑う人がそんな大きな力を手に入れてしまったら、きっと、自分の恐怖心や猜疑心に負けて――必ず武力で排除するようになる」
「………」
「ETOは大きな力だよ、紛れもなく、そして過去、トリニティはその力をアリウスに振るった――次は誰に振り下ろされるんだろうって、そんな風に思う事は、そんなに変かな?」
トリニティとゲヘナの戦力が一つになった巨大な組織、それが他の学園に危害を加えてもおかしくは無い、そうミカは言っている…。それだけETOは強力なものなのだ。
「或いは、そうなる前に、ナギちゃんもセイアちゃんみたいに――」
呟き、ミカはそっと俯く。しかし、自身の発言を自覚した後彼女は緩く首を大きく振った。
「……ううん、ごめん、今のは失言だったかな」
「……何か、良くない事でも?」
「あはは、えっと、前に話した通りだよ、セイアちゃんは今、入院中なの」
「入院って……何があったんですか?」
「……先生はさ」
「はい」
「……真実を知りたいって、思う?」
「もちろん」
「――本当に?」
「本当に」
ミカはうーんと悩み、一度マッシュに確認を取る。
「この話をしたら、私はもう戻れなくなる」
「戻れなく……?」
「うん、もしこの先の真実を知った先生が、私の事を裏切ったら……私はきっと、もう終わり……それでも、聞きたい?」
「裏切るか裏切らないか……ミカさんならもうわかっているのでは?」
「―――は、ははっ、そうだよね!先生は……生徒のことを…裏切ったりしないよね……うん」
ミカは何か納得したように頷くと、真実を話し出す…その時の彼女の顔はとても辛そうで、とても苦しそうだった……そして、またもや衝撃の事実。
「セイアちゃんはね、入院中なんかじゃない、ヘイローをね、壊されたの」
―――――――――――――――――――ー
「ヘイロー…を……破壊…?」
「冗談なんかじゃなく、これは、本当の事」
「………そんな」
ヘイローの破壊……それは、生徒達の死を意味すること。
生徒が死んだ、自分の知らないところで……一つの命が消えた。まだ会ったことのない生徒とはいえ……その衝撃は、マッシュにとってかなり大きかった。
「去年、何者かの手によって唐突に襲撃されたの、対外的には入院中って事になっているけれど、そっちの方が真実……私達ティーパーティーを除けば、この事はまだトリニティの誰も知らないと思うよ?
あー、でもシスターフッドとかには知られているかも、あそこの情報網は半端じゃないから……でも普通じゃ知り得ない事、それくらいの秘匿事項」
「……犯人は?」
「分かっていない、捜査中というか、そもそも何も分かっていないと云うか……元々、秘密の多い子だったから」……一応、犯人の目星が全くない訳じゃないんだけれど、今の段階で憶測を口にするのもね……」
「………そう…ですか」
ミカとマッシュは互いに重たい雰囲気になり、口がなかなか動かなくなっていた。けれどミカはなんとか喋り続ける。
「それで、話を戻すんだけど……。……白洲アズサ。あの子をこの学園に転校させたのは、私なの」
「ミカさんが?」
「うん、ナギちゃんには内緒でね。生徒名簿とかそういう書類を全部捏造して、あの子を入学させた」
「……理由は?」
「……そんな大層な理由があるわけじゃないよ。私はただ……――アリウス分校と、和解したかったの」
「和解…」
「アリウス分校は今もまだ、私達の事を憎んでいると思うんだ、私達はこうして豊かな環境を謳歌しているのに、彼女達は劣悪な環境の中で、学ぶ事すら許されず、それが何かも分からないままでいる――私達から差し伸べた手も、連邦生徒会からの助けも拒絶し続けているの、過去の、憎しみのせいで」
トリニティとアリウスの格差、一方は裕福で一方は劣悪……ミカは、なんとかしてこの格差を無くそうとしていた。
「でも、彼女達の抱く憎しみは簡単に拭えない程大きくて、これまでに積み上がった疑念と猜疑は高くて、重い……私ひとりの手では、負えない位に」
「……いまさらなんのつもりだ…とか、自分をいい人に見せたいだけだろ…って?」
「うん、多分、アリウスからはそう見えるんだろうね、だからきっと私達の手を取らずに居るんだ……でも、それでも私は、諦めたくない」
ミカは拳をグッと握りそう強く言う、その言葉は紛れもなく……ミカの本心。
「私の意見に、ナギちゃんも、セイアちゃんも反対していたんだ……政治的な理由でね?
勿論、それも分からない訳じゃない、私達はティーパーティーだから、個人の思想云々で、学校全体を危険に晒す事は出来ないもん」
上に立つ者の勝手な意見で、下につく者達を好き勝手に動かしていいわけはない。
「私はさ、不器用だし、頭も良くないから……そういう政治とかはちょっと得意じゃないんだけれど、でも、でもさ――また、今からでも手を取り合って仲良くするのって、そんなに難しい事なのかな?
前みたいにお茶会でもしながら、談笑して、一緒に御菓子を頬張って、机を並べて勉強する――そんな当たり前の学校生活を一緒に送るのは、無理なのかな?」
「無理じゃないですよ―絶対に」
マッシュはミカのその意見に、有無を言わさず無理じゃないとはっきり言った。そう強く言えるのは、マッシュが今までそうしてきたから、そうやって、仲良くなったからだ。
「――先生なら、そう云ってくれると思った………だからね、先生、私はあの子……白洲アズサという存在に、象徴になって欲しかったの」
「象徴?」
「うん……どんなに憎み合った仲でも、一緒にこうやって学び、遊び笑い合える――和解の象徴に……あの子についてはそんなに詳しいって訳でもないんだけれど、アリウスでもかなり優秀な生徒みたいだったし、その可能性に賭けたかったんだ……本当ならね?
ナギちゃんを説得してちゃんと正式に進めるって手段もあったんだよ?
けれどナギちゃん、連邦生徒会長が失踪してから、ずっとピリピリして気を張っていたから――そういうの、聞いてくれないだろうなって思って」
「……だから、エデン条約が完全に決定する前に?」
「うん、そう……もしエデン条約が締結されてしまったら、その時はもう、今度こそ本当に、アリウスとの和解は不可能なものになっちゃうから、トリニティが、トリニティである内に、何とかしたかったんだ」
「アリウスの生徒がトリニティでもちゃんと暮らしていけて、幸せになれるんだって、みんなに証明したかった――でも、そんな中で突然、ナギちゃんがトリニティに裏切者がいるって云い始めて……」
「………」
「何でそんな事を考え始めたのは分からない、私がそうやって動いている時に、何かやらかしちゃったのかもしれないし……それで結局、ナギちゃんは条約の邪魔をさせまいとして、容疑者を一つに集める――補習授業部を作ったの」
そして、今のこの現状になったと言う……マッシュは情報量の多さに、死にそうになっていたが、なんとか持ち堪えていた。
「最初は、裏切り者とか何の事かと思ったけれど……あぁ、そういえば先生、何であの子達が集められたのかって理由は聞いた事ある? 勿論成績って意味じゃないよ? ナギちゃんが彼女達を疑った理由って意味で」
「いえ」
「そっか、なら一人ひとり、なんで選出されちゃったのか全部教えちゃうね」
―――――――――――――――――
「ハナコちゃんは凄く変わったところがあるけれど、本当に、本当に優秀な生徒、勿論成績って意味でも、何なら生徒会長、つまりティーパーティーの候補として挙がっていた事もあったくらいなの、シスターフッドも、あの子を引き入れようと頑張っていたって聞いたなぁ……上手くはいかなかったみたいだけれど」
「…ふむふむ」
「あんなに優秀で将来を見込まれていたのに、あの子は急に変わっちゃった、落第直前の状態になるくらいに……どうしてだろうね?」
「………俗に言う、学生デビュー…とか」
「多分それは違うよね」
―――――――――――――――――――
「コハルちゃんは……あの子はどろどろした政治とか、そんな事とは何の関係もない、純粋で良い子なんだけれど――そういう意味だと、あの子個人の話じゃなくなるかな、選出された直接的な原因は本人じゃなくて、所属している場所――ハスミちゃん達、正義実現委員会だね」
「あの子達が…そんな?」
「巨大な武力を持った存在、それも特にハスミちゃんみたいなゲヘナに対して強い憎悪を持っている存在が自分の統制下にない不安感……何かが起こるのではないかという疑念、ナギちゃんはそこに対して、何らかの備えが欲しかったんだと思う……言い方は悪いけど、人質…みたいな感じかな、今のコハルちゃんは」
「ハスミさんってそこまでゲヘナが嫌いだったんですね……通りでこの前」
『ゲヘナにある給食部、そこで作ったシュークリームです。食べませんか?……あっ、ごめんなさい、ダイエット中でしたよね』
「って言ったとき……すごい顔をされたわけだ」
「ゲヘナ嫌いは多分関係ないよ…うん」
―――――――――――――――――
「あとは、そう、ヒフミちゃんか」
「一番裏切るなんてことはないと思うんです、だってあんなにいい子なのに…」
「そうそう。ヒフミちゃん、優しくて、可愛くて、良い子だよね、ナギちゃんもすっごく気に入っているんだ……でも、それでも尚、ナギちゃんの疑いの目が向いちゃったの」
「疑い深い…と言うか…なんと言うか…」
「どうやらこっそり学園の外に出て、怪しい所に行っていたみたい、トリニティの生徒は出入り禁止になっているブラックマーケットとか、あちこちにね……」
「………そ、そうなんですね」
「それに、どこかの犯罪集団と関りがあるって情報も流れて来た、あんな善良そうで、純粋な子に見えるのに、変な話」
「―――」(心当たりがありすぎて結構焦っている)
「ナギちゃんだってヒフミちゃんの事は大好きなのに、それでも疑いの目は向けられた……まぁそれも、ナギちゃんらしいと云えば、らしいんだけれど―――
それで結局、ナギちゃんの中にあったトリニティに裏切者がいるかもしれないという疑いは、色々と情報が集められていく内に、あの中の誰かが、トリニティの裏切者って疑念に変わったんじゃないかな」
「……難しい…ですね」
「ねぇ〜…本当に」
――――――――――――――――――
「さっきも云ったかもしれないけれど、この中でナギちゃんの云う裏切り者に該当するのは、白洲アズサ……本当は敵対しているアリウスの生徒な訳だからね、でも、あの子は何も知らないまま、私のせいで複雑な政治的な争いの渦中に立つ事になってしまったから……こんな形で、退学なんてさせたくないの」
「それは、僕も同じです」
「だから、守って欲しい、それは今、先生にしか出来ない事だから――これが今の状況、ちょっと長かったけれど、今私が……話せる事の全部だよ」
「成程…………情報過多で…脳が…」
「そ、そんなに難しかった?」
頭を抑えながらもマッシュは情報を整理、補習授業部達が疑われている理由はかなり真っ当なもの……けれど
「やっぱり退学はやりすぎなんじゃ……」
「私もそう思うんだけどね〜………それと私は、こうも思うの、本当の意味でトリニティの裏切者を考えるのであれば……」
彼女の瞳がそっと、遥か先にある白雲を追う。
「――それは、ナギちゃんだって云う事も出来るって」
「疑っている人が一番怪しい………ってこと…で…す」
「あれ、先生?どうしたの?」
「……ごめんなさい…ちょっと…ちょっとだけ…横になります」
「え、あ、うん…?(話を聞くだけでそんなに、そんなふうになるの!?それでどうやって今まで生きてきたの…?)」
マッシュは横になり少し休憩、次々にわかっていった真実やトリニティの過去、もうとにかく情報量が多く、マッシュの脳はもう限界だった。
「…………とりあえず、わかったことがいくつかあります」
「わかったこと?」
「はい―一つ目に、ミカさんが優しい人だっていうことです」
「………優しい…?わ、私が?」
「ええ」
「な、なんで、いきなり?」
「だってミカさんは、アリウスの子達を助けようと、トリニティの差別を無くそうとしたんですよね?それってすごく……いいことじゃないですか」
「そ、そう……かも」
「きっとアリウスとの問題が解決したら、ミカさんは正義のヒーローって言われると思います」
「……………………正義」
「はい、なんだか憧れちゃうな、正義のヒーロー」
マッシュのそんな言葉に、ミカはまた悲しそう表情を作り、自然と体に力を入れていた。
「二つ目に……僕がすべきことです」
「裏切り者がいないって証明すること?」
「それもあるんですが……僕がやるべきことの一つ、それは―生徒を信じることです」
「生徒を信じる………え、それって…まさか」
「トリニティ内にいる生徒達全員、信じちゃおうって思いまして」
「全員!?ほ、ほんきで?」
「本気です」
マッシュは、補習授業部やティーパーティー、そして正義実現委員会などの、トリニティすべての生徒を信じることにした。
「なんかこう……苦しくないですか?みんなを疑って過ごすって」
「そりゃ苦しいだろうけど……」
「アズサちゃんが裏切り者なんて事はきっとありませんし、ナギサさんもそうだ、なんて思いません……あ、もちろんミカさんもですよ?」
「……先生…ってさ」
「?」
「まるで聖人みたいだね……えへへ」
「聖人ってほどじゃないですよ、ただの……お人好しってやつです」
マッシュはプールから足をあげ背伸びをすると、色々と話してくれたミカに礼を言う。
「色々、詳しいことを教えてくれてありがとうございます。アズサちゃんのことは任せてください、絶対に退学にだなんてさせません」
「そう言ってくれると嬉しいな〜……私も、二人とこうしてお話しできて、楽しかったよ!」
「僕もです……それじゃあ、この辺で」
マッシュは軽くまた一礼し、ミカに背を向け教室へと戻っていく
「―先生!」
それをミカが止める、追いかけるようなことはしないが、その場で自分の服をギュッと握り叫ぶ。
「先生は……もし……もしも!裏切り者が出て、その子が先生を裏切ったら……どうするの!?」
「仮にそうなっちゃったとしても――僕はその子を見捨てません。なんなら、一緒に頭だって下げますよ」
「………っ!!」
「この一件が終わったら、一緒にシュークリームパーティーでもしましょう。では」
マッシュは軽く手を振ってその場を去っていった、一人、プールサイドにいるミカは
「―――は……ははは……あはははっ―全ての生徒を信じて……裏切った子も見捨てない……なんなら一緒に頭も下げる…そんなこと、簡単に言っちゃうんだ」
しゃがみ込み、顔を手で抑える、綺麗なその瞳からは数滴、小さな涙が溢れており。
「ごめんね……マッシュ君……私―正義のヒーローなんかじゃ…無いよ」
そう、ぼやくのであった。
はーい重っ苦しい展開が通りますよ〜と……ごめんなさい、書いてて泣きそうになってるので、後書きは短めです。
励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします!
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