今日、というか昨日の弟先生
『兄者、ゲヘナシロモップってなんぞや』
『先生の間で言われてる、空崎ヒナの非公式愛称だね。ヒナの白く長いくせ毛の髪をモップに例え、動物名の様に表現した愛称と思われるよ』
『面白いな……ちなみにホシノはあるか?』
『あるよ』
『ほう!ぜひ聞かせて欲しい!なんと呼ばれているんだ?』
『アビドスユメモドキ』
『おいそれ言い出した奴どこのどいつだ、ぶっ飛ばす。人の心ねえのか』
ってなってて、新鮮な反応をありがとうと心の中で感謝してました。
それでは本編へ…どうぞ!
「さぁ、では洗濯の時間ですよ~♪」
夜、ヒフミ達の宿泊部屋にて
今日も今日とて入浴を済ませ、就寝の準備を整えている皆の前に、ハナコが籠を持って楽しそうにそう言った。
「皆さん制服や下着、靴下など、洗うものは全部この籠に入れて下さいね♡」
「うん、ありがとう、宜しく」
「あ、はい……はいっ!? し、下着もですか……!?」
「な、なんで!? 下着は各自で良いでしょ!?」
合宿期間もそろそろ長引き、洗濯の必要も出て来る頃合い。女の子同士といえど下着を他に渡すのは少し抵抗があるそうで、ヒフミとコハルはオドオドとする。
しかしアズサは効率を考えるタイプなので
「ん……? 洗濯はまとめてした方が洗剤と水、それに時間の短縮になる、ハナコの云っている事は合理的だ、集団行動に於いて役割分担は重要だろう?」
「あ、うぅ……それは、そう、ですが……わ、わかりました、では、お願いします……」
「え、えぇ……いや、まぁ確かに正論かもしれないけれど……私がおかしいの……?」
そう正論じみた言葉を送り、二人は渋々洗濯籠に自身のそれを入れる。するとアズサは次に、とんでもないことを言い出す。
「あ、そう言えば先生のは?」
「へぁッ!? あ、アズサちゃん!?」
「一体どうしたんだ、ヒフミ?」
「え、いや、だって今、先生の分も一緒にって……!? あ、いや、別に一緒に洗うのが嫌とか、そういう訳ではないのですけれど、流石に、その、色々と問題があるような……!」
「問題? 四人分洗うのも五人分洗うのも同じだと思うけれど……何か違うのか」
「そ、そういう話じゃなくて……!」
「あー……先生もご一緒にいかがですか?っと聞いたのですが……私の目の前で」
『あ、お構いなく。自分で乾かせるから』
『……自分で乾かせる?』
『フンッ』ペシンッ!
「と言って、濡れた衣服を勢いよくはたき……乾かしていました。水滴が一つ残らず飛び散りましたよ。」
「はたいただけで、服が乾くって何?」
「水滴が一つ残らず……?」
「さすがは先生だ……私も鍛えればそれぐらいできるかな」
「しなくていいから!」
――――――――――――――――――
「ヒフミちゃん遅いな……まぁシュークリーム食べて気長に待ちますかな」
マッシュの自室にて、いつものようにヒフミを待っていたマッシュ、その手にはいつものシュークリームと、一つの資料。
「アリウス……いくら調べても、出てくるのは結構昔のことだけ…最近のは全然ないな」
それはアリウスについての資料……と言っても、情報が少なすぎるので枚数はかなり少ないが、それをマッシュは見ていた。
「ユスティナ聖徒会…って人達からは、特に苛烈な弾圧を受けていたけれど、同時に何らかの意図を背景として逃亡の手引きもされていた……らしいのか」
連邦生徒会から送られてきたごくわずかな情報、それにじっくりと目を通しながらも、マッシュは内心穏やかではなかった。
「……キヴォトスから完全に孤立していると考えられ、物資も極めて少なく……おそらく内乱も絶えなく起きていた――飢え死にするものも、少なからずいたであろう……か」ググッ
マッシュは無意識にシュークリームを持っている手に力を入れ、シュークリームを少し潰してしまった。それだけマッシュが、アリウスの境遇について色々と思っていると言うこと。
「あ、いけないいけない。食べ物は大事にしないと」
少し冷静になり、マッシュは崩れたシュークリームをなんとかして口の中に放り込む。そしてシュークリームを食べながら
(本当になんとかしないと……けどアリウスの子達には歓迎されないだろうな、何を今更って言われるのも覚悟しておかないと)
何年もの間、キヴォトスから孤立し厳しい環境で育ってきたアリウス、そんなアリウスに今更、恵まれた環境にいた先生が来て助けてあげる…なんて言われて、素直に歓迎するだろうか?
…否、アリウスはおそらくゲヘナ、トリニティだけではなくキヴォトス全体を恨んでいてもおかしくない、歓迎はされないであろう。
(……けど見て見ぬ振りはできない。石を投げられようが、撃たれようが、最後までやり切らないとな)
マッシュは改めて覚悟を決め、アリウスと向き合うことにした。それがおせっかいだったとしても……必ずやり遂げる……と。
ガチャッ
覚悟を決めている時、マッシュの部屋の扉が開く。
マッシュはヒフミが来たんだなと思い資料を隠すと、扉の方へと顔を向ける。
「いらっしゃいヒフ―」
「こんばんは、先生♡」
「――――」
マッシュは思わず体を硬直させる。ヒフミが来たと思ったら、来たのは水着姿のハナコ。
「ふふっ……扉の鍵を閉めていないだなんて、不用心ですねぇ♡ 襲われてしまいますよ?」
「襲われても撃退出来るから、大丈夫」
(そう言う……そう言う襲うのでは無いのですが……)
「と言うかハナコちゃん、なんで水着?」
「あぁ、これについてはお気になさらず、パジャマなので」
「風邪ひいちゃうよ」
「うふふっ、それより先生、ちょっと相談したい事がありまして……」
「相談」
「ええ……ふふっ」
ハナコはそう云ってマッシュの傍に身を寄せると、マッシュの耳元に顔を近付け囁いた。
「……アズサちゃんの事について、少し」
「………」
その表情は、恰好や雰囲気に反し真剣だった……のだが、ここで予期せぬトラブルが発生。
「あふん」ヘニャッ
「きゃっ、先生!?」
マッシュは膝から力が抜けたように前へと倒れる、ハナコは自分の手をマッシュの背中に回し、抱き抱えるようにして支える。
「ど、どうしたのですか?」
「ご……ごめん……僕耳が弱いんだ…」
「耳に息が、入っただけでこうなるほど……弱いのですか?」
「うん……あ、本当に力はいらない……ごめんハナコちゃん」
「い、いえいえ…(こ……この姿勢は…まずいですね)」
倒れるマッシュ体を、前から抱きつくようにして支えているハナコ。絵面はこんな感じ……なので、見つかったら結構まずい。
「先生、とりあえず一度力を入れ、そのままベットへと『遅れてすみません、実……は……』―あっ」
「ひ、ヒフミちゃん…いいところに……ちょっと手伝って欲しいんだけど」
ヒフミが目にしたのは、上記に書いたような光景……ヒフミは脳内で色々と思考を巡らせ困惑、しかし途端に恥ずかしくなり
「本当に失礼しましたぁ!? ご、ごめんなさい私っ、そ、そんな事をしているとは知らずに……! ぜ、全然知らなかったんです、本当ですっ! え、い、一体いつからお二人は!?」
「あ、ち、違いますよヒフミちゃん?私たちは別にそんな関係では……待ってください、今、昨日より遅い時間って云いませんでしたか? 云いましたよね? つまり昨晩も来たという事ですよね!? そうなんですよね!? こんな時間に? 先生と二人きりで? この密室でいったい何を!?」
「あの二人とも、なんの話?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!? またあとで……は駄目ですよねっ!? ど、どうすれば良いですか、今晩はやめた方が良いですか!? 知らなくてごめんなさい、間に入ってごめんなさい、空気壊してごめんなさい……っ!」
「待って下さいヒフミちゃん!!本当に違いますからね!? ただちょっと事情がありまして!――と言うか、ヒフミちゃんの方も説明してください!」
「……二人とも……とりあえず……一度落ち着こ?」
数分後
「す、すみません、取り乱してしまって……」
「いえ、私の方こそ、早とちりをしてしまいました……先生、お身体の方はいかがですか?」
「なんとか元に戻ったよ……自分でもびっくりした、こんなふうになるんだ」
「意外な弱点発見ですね、この隙をつかれたら……いえ、そもそもそんな隙ありませんね」
耳に息を吹きかけられるだけで力が抜けダウンする、結構な弱点だと思うが、そもそも耳に息を吹きかけるという隙すら生まれないのでモータンタイ。
「それで、ヒフミちゃんは先生と……」
「あ、はい、これからの補習授業部について、色々と」
「そうでしたか……夜な夜な抜け出していたのは、そういった事だったんですね」
「はい……一応今は順調に事が進んでいますが、備えあれば憂いなしとも云いますし、油断は出来ませんから――それで、ハナコちゃんも先生に相談したい事が?」
「えぇ……アズサちゃんの件で」
「アズサちゃんの……?」
「…そういえば話があるって言ってたね」
「よろしければ、ヒフミちゃんも一緒に聞いて頂ければと思います」
「い、良いのでしょうか、その、元々は先生に相談したかった事では……?」
「構いません、ヒフミちゃんは私達補習授業部の部長ですし、それに遅かれ早かれ、耳に届く事かと」
「わ、分かりました、そういう事でしたら――」
背筋を正し、緊張気味な面持ちのヒフミ。ハナコはそんな彼女とマッシュに視線を向けると、心配げな表情で告げた。
「実はアズサちゃん、毎晩のように何処かへ出かけては、夜明けまで戻って来ない事が続いているんです」
「えっ、夜明けまで、ですか……?」
「はい」
「……」
深刻そうな顔を浮かべ、アズサを心配するマッシュ。そこに疑いの目はなかった。
「それは……確かに心配だね」
「そうなんです、最初は慣れない場所で眠れないのかと思ったのですが、そうではない様子で……私は、アズサちゃんが夜にちゃんと眠っているところを殆ど見た事がありません」
「そういえば私も……アズサちゃんはいつも先に起床していますし、私より早く寝ている事もなかった様な…」
「……アズサちゃんが一体何をしているのかは分かりません、ですがそろそろ多少無理矢理にでも寝かせて休息をとらせてあげないといけないのでは、と」
「……そっか」
「それに何だかアズサちゃん、どこか……凄く不安そうで」
ハナコはそう言って、アズサを本気で心配し、暗い顔を浮かべる。
「どんな事情なのかは分かりませんが、補習授業部の仲間として、友人として、どうにかその不安を少しでも軽減してあげたいんです、きっと、このままだと倒れてしまいます」
「それは、確かにその通りですね……」
「それと、先生とヒフミちゃんも、ちゃんと寝ないと駄目ですよ? 毎日こうやって夜に集会をして、明日に備えるのは立派だと思いますが、疲労は蓄積しますから」
「あ、あはは……その、仰る通りで」
「確かに試験も大切ですが、ただ落第というだけです、身体の健康と比べられるようなものではないと思いませんか?」
「それは――」
「普通ならそうだったのかもしれないけど……今回は、違うんだ、今回だけは」
「――先生……?」
「……あと2回、これから来る二つの試練…どっちも不合格だった場合は――」
マッシュは真剣な顔で、ヒフミはギリッと歯を喰い縛り、ハナコに告げた。
「退学なんだ……補習授業部、全員」
「え……退学? 先生、それはどういう……いえ、まさか、その様な事、校則上成り立ちません、退学には様々な手続きと理由が必要で、そんな簡単に――」
「ごめんね黙ってて……今から、こうなっちゃった訳を話すよ」
「……お願いします」
マッシュはハナコに、補習授業部の真実を嘘偽りなく話した。
本編がシリアスなんで、前書きと後書きぐらいはふざけさせてください……お願いします。主のメンタルはクッキーなので。
弟先生の反応がいちいち面白いんですよね、アコさんのメモロビを見た時は
『…………透き通る世界で、ペットプレイ?』
という反応をしたり、ミドモモ姉妹のメモロビを見た時は
『兄者、我々にも妹はいるが……ここまで可愛かったか?あ、容姿の話では無いぞ?、ほら、態度とか……今からでも苗字を変更しないか』
とか言い出したりしてます。この反応が楽しみという方がいれば、今後もちょいちょい書いていこうと思っております。
励みになるのでコメントと評価、アンケートのほども!どうぞよろしくお願いします。
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