透き通る世界に拳を一つ   作:六科

90 / 363

メイドミドリちゃんのメモロビを拝見したので、感想を一つ……


卑しい……卑しい〜〜!!


けどくぅぅぅぅっそかわええ!!!!!! 本当に可愛い…


それでは本編へ……どうぞ!


マッシュ・バーンデッドと風紀委員長の考え

 

 

 

「お疲れ様でした、先生、それに補習授業部の皆さん、お陰様で事態を無事に収拾する事が出来ました」 

 

「あ、あはは……でも、私達は殆ど何も」

 

「そうだな、ほとんど先生が片付けた……テロリストをこうも容易く片付けてしまうとは、やっぱりすごいな✨」

 

「すごいのは認める……けど、なんであんなことができるのか説明して欲しいんだけど」

 

「コハル、何を言ってるんだ? 説明も何も、ただの筋肉だぞ?」

 

「だからその筋肉でなんであそこまでやれるのか聞いてんのよ! 何もかもおかしいし!」

 

「ヒフミちゃんもほとんどツッコンでいませんでしたね」

 

「慣れちゃいました…」

 

 

 

 

 

そう言ってヒフミは小さなため息をつく、先生の役に立てれば…!と考えていたのだが、思いの外早く終わったので、マッシュの役に立てず、少し残念そうにしていた。

 

 

 

 

そして美食研究会を鎮圧し、ゴールドマグロを店へ返して来たマッシュは……

 

 

 

 

 

 

 

 

「美味しいな〜シュークリーム、美味しいな〜シュークリームパフェ」

 

「うぅ……これは…これはあんまりです!先生!!」

 

「一口!一口食べさせて〜〜!!」

 

「こんなことなら……何か食べてくればよかったです…」

 

「先生のドS!悪魔ぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

縄で縛り上げている美食研究会の目の前でシュークリームパフェやら限定シュークリーム(さっきのお店で買ったもの)を食べていた、しかもしっかりと味わって、見せつけるように。

 

 

 

 

 

 

 

「人は肉体面よりも、精神面で追い詰めた方が効くって何処かの本で読みまして」

 

「せ、先生は素直で、優しい先生のはずでは…?」

 

「優しい先生でも怒る時は怒るのよ!」

 

 

 

 

ぷんぷんと怒りを表しているフウカ、マッシュはそんなフウカに話しかける。

 

 

 

 

「フウカちゃんも大変だったね」

 

「危うく私までテロリストになるところだったんです……先生がいて本当によかったです」

 

「最近そっちに顔を出せなくてごめんね、せっかく料理を教えてくれるって言ってくれたのに」

 

「先生も大変なんですから仕方ないですよ――それに私よりも委員長さんが…」

 

「ヒナさんが、どうかしたんですか?」

 

「うーーん……話しちゃっても……ううん、話しておいた方がいい」

 

 

 

 

 

 

シュークリームを食べたそうに、慈悲を与えてくれと言わんばかりの顔をむけている美食研究会達をよそに、フウカはマッシュにあることを伝える。

 

 

 

 

「実は最近、委員長さんの元気が無いんです」

 

「元気が?」

 

「はい……この前なんて」

 

 

  

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

先生の話を聞いて、私なりに委員長さんの力になりたい!って思って、最近はずっとお弁当を作って渡していたんです。ヒナ委員長も感謝してくれて、ほとんど毎日それを繰り返していたんですけど…

 

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

 

『委員長さん、給食部・部長のフウカです!お弁当をお持ちしました!』

 

『…………どうぞ』

 

『失礼します! 委員長さん、今日のお弁当は……』

 

『………………』

 

『委員長さん?』

 

『…!…ごめんなさい、少しぼーっとしていたわ』

 

『最近ずっとそんな感じですけど…大丈夫ですか?』

 

『大丈夫、心配しないで』

 

『そ、そうですか……』

 

 

 

 

 

最近はずっとテンションも低くて、どこか疲れた顔をしていて…何かを抱えているような、そんな感じが続いているんです。

 

 

 

 

『……ねえ、フウカ』

 

『は、はい!なんでしょうか?』

 

『………いえ、なんでも無いわ』

 

『あの……何か悩んでいますよね?私でよければ――』

 

『あなたは気にしなくてもいい……それにこれは私の勝手なわがまま…

 

『……委員長さん?』

 

『―!……また、やっちゃった……今のは忘れてちょうだい』

 

『…………』

 

 

 

――――――――――――――――ーーー

 

 

 

 

 

「―と、こんな感じで……」

 

「最近忙しすぎて、連絡も取れてなかったな……後で電話でもして話をしないと」

 

「ぜひそうしてあげてください」

 

 

 

 

 

ヒナはどうやら何かを悩みを抱いているようで、フウカはそんなヒナを心配しマッシュに話をしてもらえるように呼びかけた。

 

 

 

 

 

「エデン条約前だからと言うのもあるんでしょうか」

 

「きっとね………うーむ」

 

「―先生、今よろしいですか?」

 

「あ、はい。ごめんフウカちゃん、呼ばれたから行かないと」

 

「いえいえ!元気そうな姿が見れて満足でしたので……また、給食部に顔を出してくださいね?」

 

「勿論、それじゃあ」

 

 

 

 

マッシュはハスミと歩いていき、その様子をフウカはじっと見ていた。そして胸に手を置いて

 

 

 

 

 

「………もう少し……そばにいたかったな…」

 

 

 

 

そう小さく呟いた。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「僕が引き渡しの仲介に?」

 

「ええ」

 

「あくまでシャーレが生徒を引き渡す、という形であれば、トリニティ側にとってもゲヘナ側にとっても、政治的な憂慮が減りますものね」

 

「……えぇ、ハナコさんの云う通りです」

 

「分かった、引き渡しは直ぐに?」

 

「はい、既に輸送準備は整えてありますので……何から何までありがとうございます、先生」

 

「気にしないでください」

 

 

 

 

 

美食研究会はゲヘナの風紀委員に引き渡すことにして、マッシュ、つまりシャーレの先生がその仲介の役割を請け負おうことになった。

 

 

 

 

「そうなると……私達は一度寮に戻った方が良いですかね?」

 

「そうだね、そろそろ時間も時間だろうし……」

 

「外出理由については、今回の騒動に関して助力を請うた、という風に報告しておきます」

 

「助かります」

 

 

 

 

マッシュは先に補習授業部を合宿へと帰すことにした。ここからは後処理、護衛は正義実現委員会だけで十分である。

 

 

 

 

「先生とは一度、ここでお別れか…」

 

「と言ってもまたすぐに会えるよ」

 

「……そうか、なら、寮で…待っている」

 

「うん」

 

「で、では、私達はお先に……先生、お気を付けて!」

 

「先生、何かあったら連絡してくれ、直ぐに駆けつける」

 

「無理はしないで下さいね♡」

 

「えっと、それじゃあハスミ先輩、失礼します……!」

 

「えぇ、お疲れ様でした、皆さん」

 

 

 

 

 

ふとマッシュが顔を向けると、美食研究会を乗せた護送車は既に準備が完了しており、運転席には正義実現委員会のメンバーが座り、ハンドルを握っていた。

 

 

 

 

 

「私達は一旦引いた位置に居ますので、これ以上何かあるとは思えませんが……よろしくお願いいたします、先生」

 

「うす、また一緒にトレーニングをしましょうね」

 

「それは……………ええ…また」

 

 

 

 

 

ハスミは苦笑いをしながら去っていき、マッシュは一人その場に座り込む。

 

 

 

「もうこんな時間……だけど、もう少し頑張りますか」

 

 

 

マッシュはそう思いながら、シュークリームをパクパクを食べ始める、一人で食べるのは少し寂しいが、我慢して食べる。

 

 

 

 

「モグモグモグ……ん?」

 

 

 

マッシュがシュークリームを頬張っていると、向こう側から光が差し込んできた。それはゲヘナの校章を掲げた装甲車のヘッドライト。

 

 

 

「………」

 

 

 

マッシュはシュークリームを飲み込み、一応警戒体制へ入る。やがてその車は甲高いブレーキ音と共に車両は先生の傍へと急停止し、扉を乱雑に開け、飛び出す生徒が一人。

 

 

 

「―――お待たせしました、それで………

 

 

 

 

死体はどこですか?」

 

「いきなり物騒」

 

 

 

 

 

現れたのは白い髪をナースキャップで纏め、救急医学部の腕章を身に着けている生徒、氷室(ひむろ)セナがいきなりそんなことを言ってくるので、マッシュは驚いた。

 

 

 

 

「失礼しました、死体ではなく負傷者でしたね、偶に混同してしまって」

 

「そんなことあります?」

 

「それはそうと……貴方は?風紀委員会の方ではなさそうですが」

 

「あ、僕はマッシュ・バーンデッド、シャーレの先生です」

 

「シャーレの先生……では貴方が、人間兵器と言われている男性ですね」

 

「僕の異名それで通ってるんだ……」

 

「そのたくましい肉体をぜひ拝見して、色々と調べたいのですが……今は負傷者が先ですね」

 

 

 

 

 

彼女はそう云うや否や肩に掛けたポーチから端末を取り出す。そこには美食研究会の面々と人質のフウカが載っていた。

 

 

 

 

「それで怪我の具合の方は?」

 

「怪我というか……シュークリームを口に突っ込んで意識を刈り取っちゃいました」

 

「そうですか、シュークリームで意識を…………シュークリームで意識を?

 

「うす」

 

「……どんなスピードとパワーで突っ込めばそんなふうになるのですか?」

 

「とんでもスピードで突っ込みました」

 

「――んん、それで、外傷は特に無いのですか?」

 

「あ、ハルナさんだけは怪我をさせちゃったんです。ジャーマンスープレックスを喰らわせちゃって」

 

「――コンクリートの地面に向かって?」

 

「うす、大きなタンコブを負わせちゃいました」

 

「それで済んでいるのが奇跡なのですよ? いくらキヴォトス人でも…………いえ、これ以上はやめておきましょう」

 

 

 

 

 

色々と話したいことがあるが、長くなりそうだったので早々に切り上げ、セナは『新鮮な……いえ、珍しい負傷者』と呟きながら護送車の元へと駆け出す。

 

 

 

 

 

「………ゲヘナってクセの強い子が多いのかな」

 

「先生も人のこと、いえないわよ?」

 

「……ヒナさん?」

 

 

 

 

 

不意に、聞覚えのある声が響き、マッシュがそちらの方に顔を向ければ、助手席から飛び降りる風紀委員長のヒナ。

 

 

 

 

「久しぶりね先生、いつぶりかしら」

 

「お久しぶりです……その、なかなか連絡が取れなくてごめんなさい」

 

「気にしないで?別に怒ってはいないから……少し、寂しかったけど」

 

 

 

 

 

そう言って顔を少し横に向けるヒナに、罪悪感を覚えたマッシュは軽く謝る。

 

 

 

 

「ほんとすみません」

 

「ま、まあそこは置いておいて……先生は此処で何を?」

 

「トリニティとゲヘナの仲介役として、って云えば分かるかな」

 

「――そう、政治的配慮、って奴ね」

 

「そんな感じです、頭が痛くなりますね」

 

「それは…その通り」

 

 

 

 

 

そう言ってヒナは肩を軽くすくめた、彼女としても政治の絡む云々は避けたかったであろう。マッシュはシンプルに政治という難しいことを聞いて頭を痛くしていた。

 

 

 

 

「ヒナさんも僕と同じ…えーと、仲介ってやつですか?」

 

「似たようなものね、問題にしたくないのはこちらも同じだもの、だからこそ、公的にはこうして風紀委員会ではなく、こっちの『救急医学部』が来たって事になっているの……私は基本的に付き添い役、救急医学部はゲヘナでも政治的に関わり合いが薄い部活だから」

 

「……そういうことですか」

 

「そういう事よ」

 

 

 

 

ヒナは軽く笑いながら護送車の方へと目を向ける。そこには後部扉から美食研究会の面々を引き連れるセナの姿。その後ろには歩きで帰るわけには行かないので、渋々中に入るフウカの姿もあった。

 

 

 

 

「…………なんでシュークリームまみれなの?」

 

「シュークリームパーチをしました」

 

「ああそういうこと……先生の分はちゃんと残しておいたの?」

 

「勿論、あ、もう一つ残ってるので食べますか?」

 

「頂くわ……ふぅ、最近食べれてなかったの」

 

「それはそれは」

 

(…………ああそういう…こと?―え、ヒナさんはシュークリームパーチになんの疑問も浮かべないのですか?)

 

「さあ、中へ」

 

 

 

 

セナが雑に美食研究会達を中へと入れていく、そこでハルナは改めて先生を見て

 

 

 

「……先生、今度、シュークリームを食べさせてくださいませんか?」

 

「ちゃんと反省して、ちゃんとみんなに謝ったらね?」

 

「…ええ、フフッ、そうします―……先生、面会には―」

 

「……早く入って」

 

 

 

 

何かを話そうとするハルナと、美食研究会達を緊急車両十一号へと押し込んだヒナは乱暴にドアを閉める。フウカにも挨拶をしようとしたが、ヒナはあることが気になっていたので後にし、マッシュへと近づく。

 

 

 

 

「あれ、どうしました?」

 

「………先生、トリニティで一体何をしているの?」

 

「あ、実は僕、今補習授業部って所で担任をしているんですけど―」

 

「それはもう知っている、色々と情報部から報告は受けているから」

 

「わお」

 

「――私が言っているのは、中立的組織であるシャーレが何故、こんな時期にトリニティにいるのって話――これではまるで」

 

「僕がトリニティに肩入れしすぎている、と?」

 

 

 

 

 

真剣な表情で聞いて来たヒナにキョトン顔でそう答えるマッシュ、少し考え、マッシュが一つの学園だけに肩入れをするわけないと結論を出すヒナ。

 

 

 

 

「やっぱり今のはなし、気にしないで――先生がそんな事をする訳がない」

 

「色々と複雑でして、話せば結構長くなるんですが…………ヒナさん、少しお話をしてもいいですか?

 

「――構わないわ、セナ、もう少し待っていて」

 

「了解しました」

 

 

 

 

ヒナとマッシュはその場から少し離れ、互いに話をすることにした。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「成程……先生も結構複雑な状況にいるのね」

 

「はい……もうなんか、どんどん頭が痛くなっちゃって」

 

 

 

 

 

一通りの事情を聞き終わったヒナは、両手を組んだまま静かにそう呟き、マッシュは軽くそう言った……そんなマッシュの顔をヒナはよく見る。

 

 

 

 

「……寝れていないの?」

 

「………そ………そそそそんなこととななないですよよ?」

 

「嘘…相変わらず下手ね」

 

「……うす」

 

 

 

うっすらと写っている隈を見て、ヒナは色んなことを思う。

 

 

勉強が苦手といった、教えるのが下手と言っていたマッシュが、トリニティの生徒のために必死になって頑張っている。

 

 

凄いわね、とマッシュのことを賞賛している一方……ほんの、ほんの少し

 

 

 

 

「…………羨ましい

 

「―何か言いました?」  

 

「い……いえ、なんでも…無いわ――それにしてもトリニティの裏切者ね……先生はいないと思っているんでしょ?」

 

「はい、絶対にいないって信じてます」

 

「先生らしいわね」

 

 

 

 

 

そう云って肩を竦め、ヒナは聞いた情報を頭の中で整理しながらも、マッシュに向かって問いかけた。

 

 

 

 

「……と云うか、こんなトリニティの内情、ゲヘナの私に話して良いの? 一応、平和条約を結ぶ相手ではあるけれど、トリニティにとっては仮想敵でしょう」

 

「ヒナさんはこういう事、云い触らしたりしませんよね?」

 

「それは……そう、だけれど」

 

「なら問題ないですよ、それにヒナさんのことは信頼していますから」

 

「………そう(また貴方はそうやって……)」

 

 

 

 

 

信じる、そんな簡単な言葉だが、これを言っている人によって、この言葉の信頼性はかなり変わっていく。たとえばこれがあのマコトからの言葉なら、1000%信じていなかったし、トリニティトップであっても信じてはいないだろう。

 

しかしマッシュなら、その信じると言う言葉は信頼できる……そうヒナは確信していた。

 

 

 

 

 

「話を戻すけれど、エデン条約が軍事同盟って見方」

 

「はい」

 

「興味深い見方ではあると思う、ただ少なくとも私はそう思わない……アレはれっきとした平和条約、私はそう考えているわ」

 

「やっぱりヒナさんとは気が合うな」

 

「条約によって結成されるエデン条約機構、あれを武力集団と捉えたところで、ナギサ単身で統制出来るものじゃない、万魔殿のマコトもナギサと同様の権限を持つ事になるのだから」

 

「えーーと……確か、他のティーパーティーや万魔殿のメンバーにも、権限が分割されるんでしたっけ?」

 

「そう、だからエデン条約機構――ETOが誰かひとりの意思で暴走するような事は考え難い、勿論その全員が協力して……なんて事態になれば、理論的にはあり得るかもしれないけれど」

 

 

 

 

 

そこまで口にして、ヒナは呆れたように続けた。

 

 

 

 

「そもそも、そんな事が出来るのなら、初めから両学園の統合でも何でも出来た筈だもの、理論的に可能なだけであって、まず考えられない」

 

「おっしゃる通り」

 

「まあ……正直、あの万魔殿とティーパーティー全員が現時点で手を組む事は考え難いわ…マコトは誰かと協力するなんて事が出来ない性質だから」

 

「……マコトさんはエデン条約に賛同しているんですか?」

 

「賛同というか、多分、何も考えていないんじゃないかしら? そもそも、ゲヘナ側でエデン条約を推進したのは私だから」

 

「……もしかしてヒナさんは」

 

 

 

 

 

マッシュはヒナが悩んでいたことの理由を少し分かった気がして、思わず口に出して問いかけた。

 

 

 

 

「重みを、かなり感じているんじゃ…無いですか?」

 

「………」

 

「ごめんなさい、かなり直截的でした」

 

「別に良い、間違ってはいないもの」

 

 

 

 

空崎ヒナ、彼女はもうかなり長い間風紀委員として活動しており、委員長になった今もこの活動を嫌った事はない、大変な仕事ではあるが必要な事だと理解している。その背に何があるのかも分かっている……しかしふと彼女は思っていた。

 

 

 

 

 

「ETOが結成されたら、今よりも遥かにゲヘナの秩序はマシになる筈、そうなったらもう、私が風紀委員長じゃなくても良いでしょう?……そうなったら―

 

 

 

 

 

 

――良い加減、引退も悪くないと思って」

 

 

 

「……そう、ですか」

 

 

 

 

 

ゲヘナ風紀委員会、その最強と呼ばれる存在、ヒナはいわば抑止力。今までもかなり負担を抱えて来た

 

 

しかし、ETOが結成されれば風紀委員会の負担も随分と減るだろう。取り締まる存在が単純に二つに増え、その戦力も十二分となればヒナが抑止力を務める必要性は薄まる。

 

 

 

 

 

「……別の生き方を、探したいな…って」

 

「別の生き方」

 

「―――先生は、風紀委員会がゲヘナ内でなんて言われているか…知ってる?」

 

「治安を守ってくれているヒーロー……とか?」

 

「いいえ……ゲヘナ生徒達からは、『自由を妨害する集団』『鬼の集団』なんて言われてるの」

 

「……そんなのあんまりじゃ無いですか」

 

「最近ふと思ってしまうの………―自分は誰のために戦っているのか…って」

 

 

 

 

 

 

 

ゲヘナの生徒達からしてみれば、風紀委員会は自分たちが済んでいる場所を守ってくれているヒーローではなく、自由を妨害するただの邪魔者。

 

 

特にヒナは風紀委員長であるため、周りからの嫌悪感は凄まじい……風紀委員内ではかなり慕われて、好かれているが――その風紀委員会達も

 

 

 

 

 

『空崎ヒナ一人で充分、自分達は任せておけばいい』

 

 

 

 

と思っている者達が、少なからずいる。

 

つまり真の意味でヒナに休みや自由は無い、マッシュのおかげで以前よりかはマシになったが……それでも青春を謳歌できる時間は少ない。

 

ヒナはそんな生活に、いい加減飽き飽きしていたのだ。

 

 

 

 

 

「だから、平和になった後は……そうしようかなって」

 

「引退した後は、どこにいくとか、どうするのかとか、決まってるんですか?」

 

「……いいえ、正直やめた後は何も……生きがい…っていうのも…あんまり…」

 

 

 

 

 

ヒナは、引退後のことを考えるのもめんどくさくなっており、何も考えていなかった。

 

 

 

 

 

 

「……やりたいこととか、楽しいこととか、生きがいとか……考えてなくて…」

 

「だったら―――シャーレに来ませんか?」

 

「シャーレ…に?」

 

 

 

 

マッシュはヒナに近づき、色々と提案や話をしていく。

 

 

 

 

「シャーレに来てからは、僕と一緒に色々としましょう。筋トレをしたり、一緒にシュークリームを作ったり……あ、ゲームなんてどうですか?結構楽しいですよ」

 

「一緒に……けど、それだと先生に負担が…」

 

「負担なんてかかりませんし、ヒナさんが気にする必要なんてありません」

 

「例えそれで…生きがいとか、やりたいこととか見つかっても、先生に私は…恩返しなんて」

 

「僕はただ、ヒナさんに人生を楽しく過ごしてくれればいいので、恩返しとか考えなくてもいいです」

 

「………先生にはなんのメリットも無いのよ?」

 

「たくさんありますよ?」

 

「…たくさん?」

 

 

 

 

マッシュは一つ、二つと指を出し、メリットをどんどん上げていく。

 

 

 

 

「一つ目に、シャーレのオフィスにいるのって基本的に僕一人なんですよ……だからかなり寂しくて、ヒナさんが一人いてくれれば、その寂しさは無くなります

 

 

二つ目に、友達とずっと一緒に過ごせるっていう結構なメリットです。一つ屋根の下で友達と一緒に過ごす……これぞ青春って感じがしませんか?

 

 

三つ目に『待って、待って!!ストップ!』…あれ」

 

 

 

 

 

様々なメリットを挙げられ、ヒナは変な気分になる。自分がシャーレにいるだけでそこまで嬉しがられるなんて思わなかったため、ヒナは徐々に恥ずかしくなっていった。

 

 

 

 

「そ、そもそもそんなこと許されるの?立場的な問題も」

 

「まあなんとかしますよ、最悪力技で」

 

「力技!?」

 

「なんか楽しみになって来ちゃったな……ヒナさんと一緒に、シャーレで過ごすのが」

 

「―――――――」

 

 

 

 

驕っているわけでも無く、たぶらかしているわけでも無く、やましい心なんて一切なく、ただマッシュはヒナと、友達と一緒にいたい……ただそう言っているだけ

 

 

 

ヒナに青春を、楽しみを、生きることへの実感を味合わせたい

 

 

 

マッシュはただ……ただそう言っている。

 

 

 

 

 

「……っ〜〜〜〜〜!!!」バッ!

 

「あ、あれ、ヒナさん?」

 

 

 

 

 

ヒナは溢れそうな涙を堪えながらしゃがみ込み、羽で自分を隠す。それと同時に、未来への楽しみも増えていった。

 

 

 

 

「……………もう少し、考えるわ」

 

「いつまでも待ちますよ」

 

「――お礼を言うのも、これで何回目かわからないけど………先生、そこまで言ってくれて……ありがとう」

 

「いえいえ……うん、やっぱりヒナさんは笑顔じゃ無いと」

 

「笑顔……あっ!」

 

「いやぁ久々にヒナさんの笑顔が見れて満足です、眼福眼福」  

 

「……………先生?」

 

「……すみません、調子に乗りました」

 

「もう…………フフフッ」

 

 

 

 

ヒナは笑みを溢し、マッシュは(…これだな)と何かを噛み締める。そしてセナがポーチに入れていた懐中時計を開き、告げる。

 

 

 

 

 

「風紀委員長、そろそろ時間が――」

 

「……ん、分かった」

 

 

 

 

ヒナはその言葉に頷くと、かなり残念そうな顔をして車の方へゆき、マッシュはそんなヒナを見送るためについていく。

 

 

 

 

 

「………今日はたくさん話せてよかった」

 

「僕もです、この一件が終わったら、またそっちに顔を出しますね」

 

「……うん、来てくれるのを楽しみにしてるわ………またね、マッシュ先生」

 

「うん、またね、ヒナちゃん

 

 

 

 

 

 

互いに軽く手を振り、互いに別れる。寂しい気持ちを抑えながらも、二人は元いた場所へと帰っていった。

 

 

 

 

 





ヒナさんをデロデロに甘やかして、青春を謳歌させたい今日この頃……みなさんいかがお過ごしでしょうか。


僕はX(旧Twitter)から完全に抜け出しました、なんか今のXが怖くて仕方ないので……ネットの意見を見るのが怖くなって来たってのもあります。……あ、小説でのコメントは無茶苦茶大歓迎です。


弟先生も妹先生、どうやら二人揃ってエデンを見るそうでして、これからの反応が楽しみです。(愉悦)


励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします!(誤字報告もありがとうございます)

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。